タグ:ユイ ( 30 ) タグの人気記事
慣れること、いつか思い出に変わること
「─────少し不思議な事だけど、私はここのお部屋に慣れてきた」
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「最初、あんなにドキドキしていたことだけど、私、ここのお部屋に慣れてきた」
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「高い天井、吸い込まれそうになっていたけど今はもう大丈夫。その天井の向こう側、星空だって何故か自然に見えるよう─────」
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「飼育係のお姉さん、心配しないで待っててね。私もユウキ君も大丈夫。もう平気、きっときっと大丈夫」
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今だけ多摩動物公園で過ごすコアラ、ユイ
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そしてユウキ
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お引っ越し
はじめはあんなに緊張していた二人
何日かが過ぎた多摩動物公園、コアラ達の家
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ユイはせっせっせっせと横木を渡り
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ユウキ君は難しい顔して辺りを見渡してみたり、居眠り繰り返してみたり
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特別な時には特別なこと続けて起こり
動物園にはたくさんの雪が降って、今まで知らない寒くて寒くてしかたのない日々続いてる
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二人の近くにヤモリが一匹
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そっと見守る誰かの視線
いつもどこかで誰かが傍に
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多摩動物公園に短い間のお引っ越し
慣れていくユイ、思い出に変わる経験積んでいくユイ
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ここで嗅いだユーカリの香り
きっと特別、きっと必ず忘れない
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ここで出会ったお友達
それも特別、それもきっと忘れない
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見上げた天井、高い天井
忘れない、きっと忘れない
色々なこと、想う途中、今それは旅の途中
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「飼育係のお姉さん、誰もみんな優しくて─────お話しまだどこかぎこちないけど、飼育係のお姉さん、やっぱりとっても優しくて」
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「そう、旅に出れば新しい出会いがあるって私は一人頷いた」
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「色々なこと想えるくらい今、私は慣れた。きっとみんな少しずつ少しずつ、この状況に慣れていった」
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「弱虫な私、一度さようなら」
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「──────きっとオセアニア区では工事がどんどん進んでる」
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「雪、オセアニア区にも積もったのかな」
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「カンガルー達、寒そうだね」
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「ユウキ君、昼の間に目が覚めたらすごい顔してたりするけど、暗くなってくればいつもの顔に戻るようになった」
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「ユウキ君はユウキ君なり、慣れたんだ」
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「ほら、毛づくろいをしているよ」
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「小さな旅はまだ途中。いつまで続くかわからない」
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「わかっているのはまたちゃんとオセアニア区に帰るってこと、チャーリーと三人、またオセアニア区に戻るってこと。そんなこと」
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「またオセアニア区の大きなユーカリ、見上げて頷く。そんなこと」
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「帰るときまでその日まで「、私は静かに一生懸命。色々なもの見つけてみるよ」
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「なにかある、なにか聞こえる─────どれもみんな思い出に変わってく」
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「ほら、コタロウ君が寝ぼけているよ」
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「風、そっと、吹いてそっと。小さな音が聞こえてくるね」
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「ユウキ君、ほら早く起きないと。ユーカリ交換の時間だよ」
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「いい香り、してきてるでしょ。目を覚まして待ってよう」
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「同じ味、違う味─────ユーカリ、やっぱりみんないい香り」
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「慣れた私、たくさん食べるよ。ちょっと暗くなってから、私たちはたくさん食べるよ」
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「元気でいないとね、元気で戻らないとね。本当にそうなんだよね」
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「大好きな飼育係さん、心配ばかりかけている飼育係さんに笑顔見せてあげないと、ね」
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「お母さんとお姉ちゃんにも心配させたら駄目だもの─────」
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心配ばかりのユイの短いお引越
ちゃんと慣れて、少しずつ
少しずつ少しずつ時間は進んで、旅の途中
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優しい人はどこででも
コアラ達を見守るきっとどこででも
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動物達のペース、動物時間はゆっくりゆっくり、本当は早く進んでいく
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コアラの家にも夕方、そして夜が来る
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コアラ達の本当の顔、これから始まる
そう、コアラは薄明薄暮性
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薄暗くなって動き出す
身体も心も、何から何まで動き出す
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多摩動物公園でも金沢動物園でも、それは雲の上、青空星空彼方でも
きっと同じことかもしれません
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オセアニアの動物達と一緒に始まる時間が来たよ
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ユイもユウキ君も、きっとコタロウ君も大丈夫
慣れてくよ、毎日、毎分、毎秒、刹那
全部思い出に、思い出に変わっていくよ、変えてくよ
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みんなみんなコアラだよ
かわいいかわいいコアラだよ
儚く健気にそっと暮らす、みんなみんなコアラだよ
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ユーカリと一緒に暮らす、コアラだよ





   

by bon_soir | 2018-01-29 12:57 | 多摩動物公園 | Comments(4)
季節の変わり目、ミモザが咲く前
「高い天井、凄いんだ。見上げているとなんだか遠くまで来た気持ち。そんなに離れてないのにね──────」
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「お引っ越しってこういうこと。知らない場所で知らない人の顔を見て、最初は戸惑い緊張ばかり」
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「慣れるのかな、馴染むのかな──────いつかまたオセアニア区に戻るときには寂しくなったりするのかな」
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「私は帰る、オセアニア区に必ず帰る。季節が変わるその前に、あのミモザのお花が咲く前に──────」
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「ユウキ君と一緒に来たよ。飼育係のお姉さんも一緒に来たよ。そしてユウキ君と一緒に帰るよ──────飼育係のお姉さんが迎えに来るよ」
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「それまでここで暮らすんだ。『ようこそ』ってみんなが迎えてくれたんだ」
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「いつかみんなとお別れする日が来るね。その時私はどんな顔しているのかな──────どんな涙をこぼしてしまうかな」
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「コタロウ君、はじめまして」
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「タイチ君、私たちにお部屋を使わせてくれてありがとう。そしてごめんなさい」
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「もしここが工事をする時来れば、金沢動物園に、オセアニア区に来たらいいよ」
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「私は帰る、オセアニア区に必ず帰る。季節が変わるその前に、あのミモザのお花が咲く前に──────」
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「高い天井見上げて思う。いつかこの時のことを懐かしく思う日来るのかな──────心の中にずっとずっと残るかな」
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金沢動物園のコアラの家が工事の間、多摩動物公園に一度お引っ越しをしたユイとユウキ
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ユイはどこかよそ行きの顔をして
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少し落ち着かない表情で
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高い天井時々見上げて何かを思う
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ユウキもこの表情で落ち着かず
金沢動物園で見せる顔とはぜんぜん違う
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お引っ越しはいつでも誰でも大変なこと
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フェンスの向こうへ移動してくれたタイチ
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まだ慣れたわけじゃないのにまたざわざわさせてしまったコタロウ
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今、多摩動物公園のコアラの家には合わせて四人
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ユイとユウキ
二人は耳を大きく開いて色々な音に耳を澄ませて、まだまだ緊張抜けてない
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二人、まだまだ落ち着かない
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そんな二人に、タイチとコタロウそんなみんなに思うこと
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がんばれがんばれ
コアラがんばれ
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ユイの表情、金沢動物園のときとはやっぱり違う
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早く慣れたい、早く馴染みたい
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早く落ち着き、ぐっすりと眠りたい
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きっとそれがユイの思い
きっとそれはみんなの思い
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高い天井、広い部屋
きっと戸惑うことばかり
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見上げて感じて考えて
きっと今、戸惑うことばかり
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お引っ越しは誰にとっても大変で
動物達はもちろんで、飼育係さん達にとっても本当に難しい
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無事にまた、何事もなくまた戻れるその日まで
まだまだ頑張るコアラ達──────支えてくれる人達と
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「辺りが暗くなってきた。ここは景色が見えないけれど、時間が過ぎていること、それはわかる」
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「私といえば少しお腹が空いてきて、ユーカリゆっくり食べていた」
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「今頃、オセアニア区の空はどんなだろう。大きなユーカリの木、どんなふうに揺れているんだろう」
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「高い天井、凄いんだ。見上げているとなんだか遠くまで来た気持ち。そんなに離れてないのにね──────」
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「私は帰る、オセアニア区に必ず帰る。季節が変わるその前に、あのミモザのお花が咲く前に──────」
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「ユウキ君と一緒に来たよ。飼育係のお姉さんも一緒に来たよ。そしてユウキ君と一緒に帰るよ──────飼育係のお姉さんが迎えに来るよ」
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「いつかみんなとお別れする日が来るね。その時私はどんな顔しているのかな──────どんな涙をこぼしてしまうかな」
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「高い天井見上げて思う。いつかこの時のことを懐かしく思う日来るのかな──────心の中にずっとずっと残るかな」
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by bon_soir | 2018-01-15 15:51 | 多摩動物公園 | Comments(4)
またすぐに戻ってくるからね
私は一度お引っ越し
心配だけど心配だからと、私は一度お引っ越し
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オセアニア区の大きなユーカリ
冬の冷たい風に揺れてるよ
『気をつけて行ってきなさい、また戻ってきなさい』って手を振って笑っているよう
風に揺れて静かに静かにささやいた
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ユウキ君が一緒に行くよ
ユウキくんとまた帰ってくるよ
お引っ越しってどんなだろう
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車に揺られて行くんだね
車に揺られてまた帰って来るんだね
見上げた空はきっと同じで、何も変わらないんだね
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私達が暮らしてきたコアラの家
オセアニア区にずっと建ってるコアラの家
少し古くなってきたからね、少し直すって飼育係のお姉さんが言っていた
私達はその間、少しの間のお引っ越し
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どんなところに行くんだろう
向こうで暮らすコアラ達はどんなだろう
私はどんな顔して笑うんだろう
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オセアニア区の大きなユーカリ
冬の冷たい風に揺れてるよ
『ちゃんと笑顔でいられるかい?』って心配してくれているようで
風に揺れて静かに静かにささやいた
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「大丈夫だよ」
オセアニア区の大きなユーカリに私は笑顔でささやいた
風が少し強く吹いて大きなユーカリ大きく揺れた
何度も頷いてくれているように
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チャーリーはもとのお家に一度帰るんだって
なんだか少し照れくさいって笑ってた
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「お母さんにまた会える─────」そこまで言って「あ、ごめん」って気を使う
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大丈夫、私のお母さんはいつもオセアニア区の青い空のどこかにいるよ
大丈夫、私のお母さんはいつも心のなかで笑っているよ
遠くはなれているけれど、きっと傍でお昼寝しているよ
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大丈夫
夢の中で会えるときもあるからね─────
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──────お母さん、お姉ちゃん
私、一度お引っ越し、だよ
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もし、お母さんが
もし、お姉ちゃんが
もし、一緒だったなら
もっともっと楽しかったのかもしれないね
もっともっと安心だったのかもしれないね
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ユウキ君も一緒、みんなで賑やか
それが良かったのかもしれないね
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早く帰ってきたい
今は思う、そう思う
やっぱり私は不安なんだ
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最初は飼育係のお姉さんが一緒に来てくれる
そう、また一緒に帰ってこよう──────
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新しいお家、新しい出会い
──────きっと新しい夢
いろんなことがきっとある
ぐるっと回って一通り
そしたら私、帰ってこよう
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みんな揃って一緒にね
オセアニア区に帰ってこよう
ちゃんとしっかり何もなく
みんなで揃って帰ってこよう
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──────お散歩しようよ
私はユウキ君とチャーリーを誘って外へ出た
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お引っ越しする少し前のオセアニア区は綺麗に青く晴れていて、ほっぺに当たる風は少し冷たい
今は冬
──────私達のお引っ越しは冬のこと
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広がる景色
見慣れた景色、大好きな場所
オセアニア区のこの景色
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歩く歩く
コアラが歩く
きれいな青空時々見上げて
歩く歩く
コアラが歩く
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カンガルー達
いつも賑やか
私たちに気がついて、そっと手を振り笑ってる
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ワライカワセミ笑う声
ユウキ君が真似して笑う
みんなも笑う笑い声
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春になる前
ちゃんと帰ってこれるかな
工事できちんと直ってさ、飼育係のお姉さんも笑うかな
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夕暮れ、夜が来る前に
ヒロキさんのお庭へ行こう
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お姉ちゃんと私の大切な
大切なあの場所行って一休み
それがいい
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石のヒロキさんにみんなで挨拶
「こんにちは」
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少し変わったお庭を眺めて、あの楽しかった日のこと思い出して涙一粒
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私は一度お引っ越し
心配だけど心配だからと、私は一度お引っ越し
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オセアニア区の大きなユーカリ
冬の冷たい風に揺れてるよ
『気をつけて行ってきなさい、また戻ってきなさい』って手を振って笑っているよう
風に揺れて静かに静かにささやいた
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どんなところに行くんだろう
向こうで暮らすコアラ達はどんなだろう
私はどんな顔して笑うんだろう
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新しいお家、新しい出会い
──────きっと新しい夢
いろんなことがきっとある
ぐるっと回って一通り
そしたら私、帰ってこよう
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石のヒロキさんの前で誓う
みんなで笑ってそっと誓う
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みんな揃って一緒にね
オセアニア区に帰ってこよう
ちゃんとしっかり何もなく
みんなで揃って帰ってこよう
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ヒロキさんのミモザの木
蕾も膨らんできそうだね
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オセアニア区の日が暮れる
お腹、空いたね
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by bon_soir | 2018-01-13 15:38 | 金沢動物園 | Comments(0)
少し早いサンタクロース

コアラのところにサンタは来ない
子供達の家に行くことだけで精いっぱい
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疲れて、サンタは来ない
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クリスマスは12月
コアラには寒くて寒くてしょうがない
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サンタさんもきっとさ、クリスマスの日には寒いんだ
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動物園が始まって、お客さん達来る前に私はそっとコアラの家を抜け出して、動物園の散歩に出かける
お姉ちゃんがいなくなってしまってからは寂しくて頻繁に出かけてる
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玄関の赤い実
本当に真っ赤になった
冬が来た証拠
そのうち寒くなりすぎて、こんなお散歩にもしばらく出かけられなくなりそうだ
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今日は風がない
すっきりと晴れた日にはならなかったとしても、多分震えるような寒さじゃない
少しの散歩なら大丈夫
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オセアニア区の広場の芝はすっかり黄色くなった
また工事をしている
今度は休憩所
早く終わればいいんだけれど
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てくてく歩くとヒロキさんの庭がある
芝生が張られた
これじゃ穴掘りできないね、ヒロキさん
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石のヒロキさんとは夢の中でお話できる
今度は芝生のことを聞いてみよう
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オセアニア区の大きなユーカリ
葉っぱが減ってすっかりと冬の様子
ユーカリだって寒いんだ
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オセアニア区への坂道下り、私は続けて散歩
まだ少し眠い私はときおり目をこする
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アフリカ区のみんなもそろそろ寒いね
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冬はやけに急ぎ足
私もつられて急ぎ足
きっとみんな急ぎ足
もっともっとのんびりしていたいのに、何故かみんなで急ぎ足
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セコイヤ並木
秋の色
もう少しで茶色くなって葉っぱが落ちる
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ブッチさんもお空の向こうへ走っていった
見上げたロッキーマウンテンは霞んだ青空
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早くしないとお客さんが来ちゃいそう
ほのぼの広場の飼育係さんたちにも見つからないように、私は早足
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ポポさんにセーター編んでとお願いしたよ
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ユーラシア区を歩く頃には空は青く、雲はずっと控えめに
このままずっとお散歩続けていたいけど、コアラの家、みんなから見える所は私一人
戻らなければみんなはコアラに会えない
そんなことになったらきっとみんな寂しいって思うはず
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そして、お空の向こうへ行ってしまったお姉ちゃんやお母さんは誰もいないコアラの家をどう思うだろか
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「もう一日くらいはお散歩出来るかな─────」
来た道を少し戻ってインタンさんにそっとささやいた
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コアラのところにサンタは来ない
子供達の家に行くことだけで精いっぱい
────疲れて、サンタは来ない
クリスマスは12月
コアラには寒くて寒くてしょうがない
────サンタさんもきっとさ、クリスマスの日には寒いんだ
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『オ~~アオ~~オアオ~~ オアオ~~~~~~ア』
私のことを誰か呼び止める
『ア~オアオッオアオ~~~~』
誰?誰かそこにいるの?
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『オ~~~~』

覗くとそこには鳥が二羽
一人は前から暮らすウミネコだ
そしてもう一羽
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────見慣れない鳥一羽
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「あれ、はじめまして」
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『サンタ』
アオバトという鳥は一言

「サンタさん?サンタはあのサンタ? サンタさんがどうしたの?」
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『サンタが来るぞ』
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「─────サンタさんが来る!?」
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サンタクロースはきっと夜に来る
コアラの所にも今夜きっとやって来る─────
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お客さんが帰った後、私はまたお部屋を抜け出して外へ出た
外灯がいつの間にか灯り、そっと辺りを照らしてる
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“シャンシャンシャンシャン”
遠くの方で音が聞こえる
目を閉じてうんと耳を澄ます
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“シャンシャンシャンシャン、シャンシャンシャンシャン”
音がどんどん近づいてくる

“シャンシャン、シャ……”
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音が止まる
─────すぐ傍だ

そっとそっと目を開き、そっとそっと覗き込む
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『メリークリスマス!』
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「─────あっ!」
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『少し早いけど、メリークリスマス!』
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「メリークリスマス、メリー、メリークリスマス─────」
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少しびっくりしながら私はサンタクロースとクリスマスの動物達をじっと見つめる
みんな笑顔だ
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子供達だけで精いっぱい
コアラの所にサンタは来ないと思っていた
でも今年はちょっと早いけど、サンタが私の所へやって来た
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メリークリスマス

ちょっと早いメリークリスマス
動物園に、動物達の所に、コアラの所に─────
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“Merry Christmas”

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「メリークリスマス」
サンタクロースと動物達に私は微笑む
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その瞬間、私は光りに包まれた
冬の始まり、寒い夜のはずなのになんだかとても温かい
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これがクリスマス
サンタがやって来てくれた日は、少し早いクリスマス
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きらきらきらきら
光はきらきらクリスマス
ここはどこ?
星空、それとも宇宙銀河系
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夢じゃないけど夢のよう
“シャンシャンシャンシャン”
音が聞こえる
“シャンシャンシャンシャン、シャンシャンシャンシャン”
鈴の音どんどんスピードアップ
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トナカイ、ソリを引いてきた
星空サンタと一緒にシャンシャン鈴の音鳴らして、コアラのところへやって来た
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────まだ行かないで
私は笑う
光の中で私は微笑む
クリスマス、今日は私のクリスマス
コアラのところへサンタがやって来て、少し早いクリスマス
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“Merry Christmas”
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メリークリスマス
サンタが遠く離れてく
“シャンシャンシャンシャン”
手を振り遠く離れてく

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メリークリスマス
きっと夜が明けるんだ
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メリークリスマス
また始まるんだいつもの毎日
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メリークリスマス
ありがとう
コアラのところへサンタがやって来た
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そんなメリークリスマス
私の大切なメリークリスマス
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ざわざわざわざわ、ユーカリ揺れる音がする
きっと風に吹かれた大きなユーカリ
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いつもよりも多いユーカリの葉っぱの香り
私はそっと夢から醒めて目を開く
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頭の中に昨日の光
『周りを見てごらん』
どこからなのか優しくささやく
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「ユウキ君!?」
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どうしたんだろう─────
下のお部屋で暮していたユウキ君が隣りにいる
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「ふぁー」
ユウキ君の反対側で「がさがさ」というユーカリの葉っぱの音とあくびの声が聞こえた
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「コアラ────」
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「チャーリーだよ。名古屋の動物園からお引っ越しをしてきたんだ」
戸惑う私にユウキ君がそっと言う
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「下のお部屋でさ、少し前に隣へ来ていたんだ。ユイは体調が良くなかった時もあったし、気がつかなかったのかもしれないね」
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「─────チャーリー」
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しばらくするとチャーリーは目を覚まして、なんだか思い思いに色々と始めていた
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そんなチャーリーと隣に来たユウキ君
そして私
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今まで一人だったコアラの部屋は賑やかになった
元通りってことじゃない─────けど嬉しい
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また昨日の光が私の頭の中を通り過ぎる
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「サンタさん、ありがとう」
私は気がついた
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コアラが増えてたくさんになったユーカリの葉っぱの香り、コアラの賑やかな声、立てる音
温かさ
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二人の笑顔と優しい言葉
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─────これが何より素敵なプレゼント、クリスマスプレゼントなんだ

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コアラのところにサンタは来ないわけじゃない
ちょっと早いけどこうしてちゃんとやって来た
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ありがとう、サンタさん
素敵なプレゼントをありがとう
私はもう大丈夫、来年は別のコアラのところへ行ってあげて
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みんなもこうして楽しい冬になるよ
サンタと会えればきっとみんなが喜び笑う冬になるよ
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「僕、チャーリー。もう知っているかもしれないけれどよろしくね」
傍で目が合ったチャーリーはそう言って微笑む
身体は大きいけれど、顔はまだ子供の様だ
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「窓の向こう、見えないんだね」
そう話すチャーリーに私は何も言わないで頷き、微笑む
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「ねぇチャーリー」
私はチャーリーの名前を初めて呼んだ
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「メリークリスマス────メリークリスマス、チャーリー」
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by bon_soir | 2017-11-24 14:50 | 金沢動物園 | Comments(6)
秋の冷たい雨と
秋の雨は長くて冷たい
あまり濡れたら風邪引くよ
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台風ばかり、日本の上を通ってばかり
やりたいこと出来ないね
行きたいところに出かけにくいね
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強い風の日
風の無い日
雨、雨、雨、雨
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入り口、赤い実
だめになったら悲しいね
見てきて誰か、赤い実見てきて
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あれ
お客さんも雨でいないよ
誰も居ないよ
静か、静か、静かだね
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雨、うんざりたくさん
もうたくさん
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青空、白く軽い雲
すっきり星空、冬の星座
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見たくならない?眺めたくはなってこない?
雨、うんざりたくさん
もうたくさん
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濡れたら寒い
風邪引くよ
上がれば空気
澄んでるよ
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濡れたあなた
大丈夫?
一人の私は大丈夫
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眠って夢見て
長い夢見て大丈夫
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夢の中なら私は自由
どんな場所へも飛んでいける
コアラだけれど飛んでいく、自由に気楽に飛んでいける
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そこには雨、降ってない
そこでは私、一人じゃない
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歩いて覗いて
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歩いて私、振り返って飛んで何処かへ
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夢の中なら私は自由
どんな場所へも飛んでいける
コアラだけれど飛んでいく、自由に気楽に飛んでいける
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そこには雨、降ってない
そこでは私、一人じゃない
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お姉さん、空は晴れた?
お姉さん、みんなは元気? 笑ってる?
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お姉さん、私今
笑ってる?
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強い風の日
風の無い日
雨、雨、雨、雨
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雨、うんざりたくさん
もうたくさん

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空の涙に付き合わせないで
やけくそ涙、悔し涙に無理にみんなを付き合わせないで
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見たいもの
青空すーっと飛んでく赤とんぼ
目立った赤
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星、おうしの目ン玉アルデバラン、もやもや固まる星々“すばる”
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雨、上がった?
雨、もう大丈夫?
私、笑えてる?
私、もう大丈夫?
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夢の中なら私は自由
どんな場所へも飛んでいける
コアラだけれど飛んでいく、自由に気楽に飛んでいける
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夢の中じゃなくたって私は自由
どんな場所へも歩いていける
コアラはてくてく歩いてく、自由に気楽にのんびりきままに歩いていける
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あなたの傍まで歩いていける
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あなたの顔、そっと覗くよ
動物達はそっと、そっと覗くよ
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だから静かに、静かに見てね
びっくり、驚き見上げ振り返る
そんなの覗いたことにはならないよ
楽しくないよ、かわいくないよ
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強い風の日
風の無い日
雨、雨、雨、雨
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もうたくさん
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今日はもう晴れている
強い風が雲、雲を全部吹き飛ばす
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青空、白く軽い雲
すっきり星空、冬の星座
見える、見えるよ
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このままずっと
ずっとずっと
続けばいい、ずっとずっと続けばいい
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見て
紅葉してる、よ
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本当の秋だね
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by bon_soir | 2017-10-31 09:14 | 金沢動物園 | Comments(2)
ポッケの中にはどんぐり一つ
ポッケの中の赤ちゃんは、また一人空の上
大好きなコアラ達、そっと浮かんでみんなが過ごす空の上
小さな鳥達迎えに来たら、そっと笑ってまた一人
私を置いてまた一人、「ありがとうさようなら」
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私のポッケ
ポッケの中の赤ちゃんは、また一人そっと旅立つ空の上
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大きなユーカリくるりと越えて、だんだん登ってどんどん小さくなってお空に消えた
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声にはならない、声は出ない
溢れてくるのは涙だけ
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去年と同じ
同じよう
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違っているのはお姉ちゃん
優しいお姉ちゃんが今年は傍にいないこと
いつだって優しかったお姉ちゃん
かわいいコアラが今年は傍にいないこと
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コアラの神様どこにいる
コアラの神様は今どこにいる
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もしお願いできるなら
もし私がコアラの神様だったなら
世界のコアラをこんな気持ちにさせないよ
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こんなに悲しい涙
誰の目にも光らせない
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私のポッケは軽くなる
急にぺたんこ、寂しいお腹
去年と同じ
同じよう
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違っているのはお姉ちゃん
優しいお姉ちゃんも今年は傍にいないこと
いつだって優しかったお姉ちゃん
かわいいコアラが今年は傍にいないこと
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今、私のポッケにどんぐり一つ
お姉ちゃんが入れてくれたかわいいどんぐり、ポッケの中にはどんぐり一つ
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いつまでも色褪せないでころりと笑う
ポッケの中にどんぐり一つ
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私を励ます笑顔のどんぐり一つ
ポッケの中にはどんぐり一つ
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大丈夫かどうか
それは私にはわからない
でも元気
私はきっと、きっとそう
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ありがとう
みんなみんなありがとう
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心配いっぱいしてくれて
みんなどうもありがとう
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季節は進む
秋から冬へ
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ヒロキさんのお庭は今少し酷い秋
秋の草でぼうぼうだ
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ススキだけが優しく揺れて、秋の香りを優しくくれる
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家の入口、実は赤く
お姉ちゃんが好きだと言ったあの実は赤く
きっと冬を呼び込む目印に
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わずかばかりのお花は咲いて
見つけた子達と短いお話
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秋の風にそっと揺れて頷き、笑う
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ありがとう
みんなみんなありがとう
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心配いっぱいしてくれて
みんなどうもありがとう
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大丈夫かどうか
それは私にはわからない
でも元気
私はきっと、きっとそう
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みんなの笑顔
優しい笑顔
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一緒に泣き出す曇り空
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どこかから聞こえる、傍で聞こえる優しい声に向こうで聞こえるワライカワセミの大合唱
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大きなユーカリゆっくり揺れて、虫の声は秋の声
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みんな私を励ましてくれている
ポッケがぺたんこ
そんな私
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みんなが私を励ましてくれている
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ポッケの中にはどんぐり一つ
お姉ちゃんが入れてくれたかわいいどんぐり、どんぐり一つ
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みんなと一緒
ありがとう
優しい声、聞こえるよ
ありがとう
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夢の中で吹いた風
そっと優しく私を運ぶ

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夢の中なら私は自由
身体軽く風吹く方へ
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ひかりのコアラ、いつの間にか追い越して
私は笑う、ポッケの中のどんぐりと同じ顔して心落ち着く
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秋の長い雨に出来た、一つ綺麗な水たまり
水たまりには映ってた
私の笑顔がどんぐり一つと一緒に映って波紋と一緒に広がった
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あの日、ポッケの赤ちゃん去年と同じ
同じよう
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声にはならない、声は出ないあの日の私
溢れてくるのは涙だけ
あの日はあの日と同じ、同じよう
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違っているのはお姉ちゃん
優しいお姉ちゃんは今、私の傍にいないこと
いつだって優しかったお姉ちゃん
かわいいコアラが今年は傍にいないこと

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そこから私に笑いかけてよ
お姉ちゃん、お母さんと一緒にそこから私に笑いかけてよ
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私も一緒にもっともっと笑って過ごしたいから
そこから笑って、笑って見せてよ
優しい笑顔を私に見せてよ
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私はお母さんの娘、そしてお姉ちゃんの妹
いつまでも離れても
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ずっとずっと、ずっとそう
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そこから私に笑いかけてよ
お姉ちゃん、お母さんと一緒にそこから私に笑いかけてよ
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今、私のポッケにどんぐり一つ
お姉ちゃんが入れてくれたかわいいどんぐり、ポッケの中にはどんぐり一つ
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いつまでも色褪せないでころりと笑う
ポッケの中にどんぐり一つ
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私を励ます笑顔のどんぐり一つ
ポッケの中にはどんぐり一つ
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みんなと一緒
ありがとう
優しい声、聞こえるよ
ありがとう
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by bon_soir | 2017-10-20 08:00 | 金沢動物園 | Comments(8)
ひかりのコアラ
前回(→☆☆☆☆☆)からの続きです


ヒロキさんの声はワライカワセミの小さな子に乗せて私の元へ────
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────夜中まで動物園が終わらない日
その日が来るまで何度か眠り夢を見て、また何度か目を覚ます
その時それが何回目の夢なのかなんて数えたりはしなかった
ただのんびりと、いつもどおりの時間を過ごせば、楽しみにしている瞬間はきっと普通にやって来る
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あの時ヒロキさんから聞いた言葉
“優しい人からのプレゼント”
その言葉を時々呟き、私はのんびりいつものようにお部屋で一人過ごしてた
時々ぼんやり眺める窓の外、セミの声は減った気がするし、雲は軽く空が高い
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「お空の上のみんなもまた高く、距離は少し離れちゃったかな───」
お母さん、お姉ちゃん、ワカちゃんにハヤト
みんなの顔が秋の空にぼんやり浮かぶ
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飼育係のお姉さんが交換してくれるユーカリの美味しさも、やっぱり少しずつ変わっているような気がしていた
きっと夏のユーカリから秋のユーカリへ───
種類は一緒かもしれないけれど、でもどこか少し違う
昨日と今日、そしてきっと今日と明日も同じ日が無いように、色々なことが少しづつ変わっていく
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たった一日、それだけで色々なことが変わっていく
去年と今年、そして今年と来年ならもっともっと違うだろう
「みんなどうしているのかな───」
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いつもそう───考えていること、それはすぐに言葉になった
傍にお母さんが、お姉ちゃんが、そしてワカちゃんやハヤトがいてくれた日々
それをついさっきのことのように思い出す
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思い出はいつも心の中に───
すぐに浮かぶその風景
私が思い出をしまっている場所は奥底の方じゃない
凄く手前に置いてある
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「みんなどうしているのかな───」
また同じことを呟いた
数えていないだけで、きっと何度も何度も呟いているはずだ
でも今、部屋に私は一人
───独り言は誰かに聞かれるわけじゃない
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何度も何度もその時思う言葉を呟いて、思い出したり想像したり───
いつものようにお部屋に一人、暗くなってもお客さんが帰らない日を私はただ待っていた
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夏は長いようでいて振り返れば結構短い
一日一日、本当に短い

“暗くなってもお客さんが帰らない日”

そう───その日はすぐに訪れた
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「あっ───」

コアラの家、廊下で動くたくさんの人影
寝起き、すぐに気がついた私は振り返り、窓の向こう“オセアニア区”をゆっくり眺める
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大きなユーカリの木の陰に隠れ始めた太陽はスピードを徐々に上げ、山の向こうへと足早に沈んでいく
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───暗くなってもお客さんが私を見てる
「今日だ───」
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楽しみにしていた気持ちは大きく急に膨らんで、私の胸や頭をいっぱいにする
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「もう一度、早くもう一度眠らなきゃ───」
私は急いでぎゅっと目を閉じた
ユーカリの葉っぱに埋もれこっくりこっくり、コアラはそっと夢を見る
私はコアラ、眠るのなんて簡単なはずだった


「駄目だ────眠れないよヒロキさん」
今の私は目を閉じているだけのコアラだ────
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お昼に眠りすぎていたせいなのか────

ずっとわくわくしてきた、夢を見るための準備は必ず出来ている
それなのに眠くならない時があることを私は初めて知った
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「眠らなきゃ眠らなきゃ───」
そう思えば思うほど気持ちは焦り、胸がドキドキしてくることがわかる
ヒロキさんは空が暗くなり始めたらまた眠りなさいと言っていた
目が覚めたままでいると“優しい人からのプレゼント”は貰えないのかもしれない
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ドンドン、ドーン
遥か遠くで花火の音が聞こえだし、そして時間が過ぎてまた静か
お客さんもいなくなりいつもの夜へと戻ってしまう
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───暗くなったらまた眠る
私はこの日、その大切なことが出来なかった

チャンスは明日、もう一度
明日一日、最後のチャンス
神様お願い眠らせて
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───そっと始まる夢の中、いつものように私を夢の中へとそっと滑り込まさせて
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────いつもより短く感じた夜は明け、動物園はまた始まった
「おはよう」
飼育係さんの声がする
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私の頭の中は今夜のことでいっぱいだ
考えながら過ごす時間は変に長い
いつもよりも遅く進み、暗くなリはじめを気にするあまり何度も何度も空を見上げてしまう
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「ずっと眠っていたら駄目なのか────」
ふと思ってみたりもしたけれど、きっとそれじゃ駄目なんだ
明るい間に見る夢は、夜から始まる夢とは違う
そういうこと、きっとそんなこと────
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「そろそろだ」
昨日と同じように大きなユーカリの木の陰に隠れ始めた太陽がだんだんと山の向こうへと沈んでいく
どんなに遅く進む時間でも、こうしていつかは時間が過ぎて朝から昼、昼から夕方
短い夕方さっと過ぎて、また必ず夜が来る
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────眠るんだ、暗くなったら眠るんだ

オセアニア区の大きなユーカリ夜風に揺れて優しいリズム
気の早い秋の虫の声は優しい歌を歌うよう

私はそっと目を閉じた

『とっ、とっ、とっ、とっ』
音が聞こえる
『とっ、とっ、とっ、とっ』
どこからするのか静かに音が聞こえてきてる
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誰かの音、誰かが生きてる心臓の音
ポッケの中で聞いていた、あの柔らかくて温かいポッケの中でずっと聞いていた
なんだかとっても懐かしい、優しく包むあの音に私はそっと癒される

「お母さん、ありがとう」

気持ちはすぅっと温か落ちついて、私はすぅっと眠りに落ちる
お母さんの音、私の音、そして聞こえるもう一つの音

そっと広がる夢の中、3つの音が重なり歌う

優しい優しい夢の中
夢の中なら私は自由、私は自由どこまでも────
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開かなかったドアが開く
そう、夢の中なら私は自由────
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夜の動物園を楽しむお客さんの側をすり抜けて、私はオセアニア区を歩いていく

『ドアを開けて大きなユーカリ眺めながらあそこを歩いて、こっち側、それとも向う側───』
ずっと考えていたこと想像ばかりしていたこと
夢の中なら私は自由、今の私はどこでも行ける
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ヒロキさんの家の側
石のヒロキさんに「こんばんは」
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来年は8月24日にきっと来るねと、ちゃんと約束
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『ユイ、君はアフリカ区を抜けていくんだ』と低い声
石のヒロキさんが私に言った
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「一緒に行こうよ」
私はにっこり笑ってそう言い誘う
『いいね』
石のヒロキさんはにやりと笑う
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今、私達は夢の中
夢の中ならみんな自由、楽しいことおもしろいこと、なんでもきっと必ず出来る

────ヒロキさんが言っていた“暗くなったらまた眠る”ということ、それは今の私に自由が必要だってこと
きっと訳があって外には出られなくなっていた
だから眠って夢の中、夢の中から外へ出るということ
そんなこと、ヒロキさんが教えてくれたことってそんなこと
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私達はアフリカ区を抜け、お客さん達が大勢いる場所へと着いた
『向こうを見てごらん。あれが“優しい人からのプレゼント”だ』
石のヒロキさんはそう言いながら指をさす
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私はその指さす先、なかよしトンネルの方へ振り返った
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「わぁ」

そこには優しく歌い楽しそうに踊るコアラ達がいた────
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ひかりのコアラ
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そう、私を待っていたのは“ひかりのコアラ”達────
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“優しい人からのプレゼント”
みんなをここまで連れてきくれた

私の目から涙がぽとりと地面に落ちた
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ひかりのコアラは歌って踊る
リズム刻んで奏でるメロディー
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ひかりのコアラが歌って踊る
夜風に吹かれて不思議な笑顔
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コアラ、コアラ
私達はみんなコアラ
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コアラ、コアラ
一人、二人、三人四人
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十人、百人、一万人
私達はみんな笑顔のひかりのコアラ
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ブッチさんにキリンさん
みんな一緒に踊っているよ
みんな一緒に歌っているよ
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石のヒロキさんが笑って言った
『ユイも一緒に歌ってみなよ、ユイも一緒に踊ってみなよ』
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石のヒロキさんはそう言って、笑い転げて光の中へ
みんなと一緒に歌って踊る
なんだかとっても嬉しそう、なんだかとっても楽しそう
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私も笑って光の中へ
みんなと一緒に歌って踊ってたくさん跳ねる
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───そう、今の私は夢の中
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優しい優しい夢の中
夢の中なら私は自由、私は自由どこまでも────

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ひかるコアラと歌って踊る夢の中
夢の中なら私は自由───
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あの日ヒロキさんが言っていたこと
暗くなったらまた眠るってこと
そこから始まる夢の中
自由で楽しい夢の中
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心配してくれている飼育係さんに気を使わせないで外へ出るため
───自由に歌って踊って笑うため
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優しい優しい夢の中
夢の中なら私は自由、私は自由どこまでも────
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私は歌う、私は踊る、みんなと一緒に笑ってる
ひかりのコアラと一緒に歌う、一緒に踊る
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夢の中なら私は自由
───私達はみんな自由
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夢を見ようよ
夢で会おうよ
お母さん、お姉ちゃん、ワカちゃんハヤト
────世界中のコアラ達
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夢を見ようよ
夢で会おうよ
───夢の中ならみんな自由

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私の目が覚めてしまうその前に
みんな一緒に笑おうよ
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夢の中、醒める前に自然とつぶやく
「ありがとう」
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それは寝言に、そのまま寝言で
「ありがとう」

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ひかりのコアラ、会わせてくれた優しい人
ありがとう
みんなみんな本当に───
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「ありがとう」
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「ポッケの中まで温かいね───」
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※文中の映像作品は「ひかるどうぶつえん2017」に出展された作品、『コアラのグッバイソング』です
こちらから2016年の動画が見られます


     

by bon_soir | 2017-09-05 15:38 | 金沢動物園 | Comments(6)
8月24日に聞こえてきた声
金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
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静かな部屋に一人
今年の夏は静かに一人
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そっと眺めた窓の外
雨が多いと思った日々は過ぎ、夏の終わりにまた夏空光る
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今年も暑い日、8月24日
暑くて暑くてこんな日は、誰もみんな思い出す
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あの庭でそっと微笑むおでこに“シワ模様”
笑顔と優しい声を思い出す
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今年もまた8月24日
悲しい日、寂しさ心の奥底膨らむ日
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でも大切な日
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高い雲は秋の雲
秋の準備は進んでる
ぽろりと一粒涙をこぼせば秋は近づく
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もっと近くに、もっと傍に
8月24日
風さえ吹けば秋はすぐそこ
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───ドアをそっと開けてオセアニア区に出る
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───大きなユーカリの木、何度も何度も見上げて歩く
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───こっち側からにしようか
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───それとも少し静かな向う側
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───部屋で一人過ごす時間、私は色々考える。頭の中に色々な景色や音、風の雰囲気、草の匂い
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───暑くなれば私はいつも考える、あの場所、あのお庭。そこまで歩く私
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───でも
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「駄目だ、今日もやっぱり開いていない───」
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飼育係さんがどんなにちゃんと閉めても私が押せばそっと開く部屋のドア
いつの頃からだろう、どうしてもドアは開かなくなった
オセアニア区へ、動物園のどこかへ、私はお散歩が出来なくなっていた
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あそこを通ってあの場所へ
───石のヒロキさんが待っているあの場所へ
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8月24日───お姉ちゃんと二人、飼育係さんに教えてもらった日
側へ行こうと思っていたのにドアは開かない
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暑くなってからずっと考えていたこと、傍へ行くこと
それを今日するはずだったのに、なんでだろう
───ドアが開かない
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仕方がないから私は窓の向こう、オセアニア区を眺めてまた思う
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「ドアを開けて大きなユーカリ眺めながらあそこを歩いて、こっち側、それとも向う側───」
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「ヒロキさん、ごめんね。なんだか傍にいけないみたい」
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こんな時、お母さんならどうしただろう
こんな時、お姉ちゃんならどうしただろう
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こんな時、私はどうすればいいんだろう
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飼育係さんに聞くわけにはいかない
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───全部内緒のことだから
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私はコアラ
長く眠る
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今日の夢はどんな夢
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飼育係さんとたくさん話す、そんな夢
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いつもよりもたくさん話す、そんな夢
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今日の夢はどんな夢
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オセアニア区をてくてく歩いて大きなユーカリそっと見上げて
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咲き戻したブラシノキの花やっぱり真っ赤
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ほら、石のヒロキさんも笑ってる───
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今日の夢はどんな夢
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ワライカワセミの子供、私の所へ飛んできて
なぜか知ってる声で話す
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「その声は───ヒロキさん?」
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『少し身体を借りたんだ。また空を飛んでみたくって、少しの間、この子に身体を借りたんだ』
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『ユイ、大事なことだ───目を覚まさないでいい、夢の中で僕の話をそのまま聞いてくれないか』
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『ドアが開かなかったこと、外へ出ることができなかったこと───それは少し残念だと思ったかもしれないけれど大切なことなんだ』
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『コアラの神様がユイを大切に思い、しばらくの間ドアを開かなくさせた。そういうことなんだ』
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『飼育係さんに心配かけるわけにもいかないしね』
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『ユイ、わかっているんだろう? ───君にもその理由が、さ』
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『今はそっと、お部屋でそっと過ごすんだ。いいね?』
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『一人で頑張るユイに優しい人からのプレゼントがある。きっと素晴らしい贈り物に違いない───』
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『また夜中まで動物園が終わらない日が来る。今年最後の2回、知っているだろう?』
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『暗くなってもお客さんが帰らなければその日ってことだ。その日が来たら、ユイ───』
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『いつもなら空が暗くなって、コアラ達の目が覚めるころ───ユイ、君はもう一度眠るんだ。大丈夫、プレゼントを楽しみにしていれば夢を見るための準備は出来ている』
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『いつも見る風景から夢は始まり、その中へいつものようにそっと入っていくことが出来るだろう』
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『その夢の中のユイはきっと自由さ。夢の中ならなんでも出来るって信じる気持ちで自由を感じてしまえば後は大丈夫』
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『優しい人が用意してくれたプレゼント、素晴らしい贈り物───その場所まできっと、きっとたどり着くことが出来るだろう』
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『いつもと違うことだからもう一度言うよ。空が暗くなったら眠るんだ。わかったね?───』
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『ユイ、今日は8月24日だ───僕のこと、想ってくれてどうもありがとう』
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『じゃあ、またね』
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───すぐ傍にヒロキさんの顔を見た気がした
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「暗くなったらまた眠る」

夢の中でヒロキさんが言っていたこと、私は忘れないように何度も呟いた
───そう、夢で見たことはすぐに忘れてしまうかもしれないから
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あんなにはっきりと聞こえていたヒロキさんの声
今はもう聞こえない
いつもどおり、静かなお部屋に私一人
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8月24日
外へは出ることが出来なかったけど、私はヒロキさんに会うことが出来たようだ
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“優しい人からのプレゼント”
それはどんな物なんだろう

“優しい人”
それはどんな人なんだろう
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考えていたらまた眠くなってきた
私はコアラだから───
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「ひかりのコアラ」→☆☆☆☆☆へ続く





    

by bon_soir | 2017-09-03 15:40 | 金沢動物園 | Comments(4)
ユイと鳥の巣
金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
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少し賑やかになる予感のコアラのお部屋
静かな夏はもうきっとこれっきり

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コアラは薄暮性
晴れた空、照りつけた庭はちょっと眩しい
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ユイがふと見た窓の外
パンパスグラスの大きな穂がふわりと光る
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そっと一人、夏を過ごすユイの所へ
そっと近づく秋の予感
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まだ今は、うとうとうとうと夏の夢見て
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まだ外は、みんみんみんみんセミの声
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オセアニア区は夏から秋へ
ヒロキとお別れをした日はそっとみんなの所を通り抜け
オセアニア区は夏から秋へ
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あたりは静かに
ゆっくりゆっくり時間は進む
時間は途中で休憩取らないで
あたりは静かにゆっくりゆっくり
ゆっくりゆっくり時間は進む
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「目が覚めた。今日の夢も夏の夢」
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「ピンク色したサルスベリ、まわりではしゃいだコアラ達」
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「今日の夢はそんな夢。静かに始まりそっと目は覚め、静かに終わったそんな夢」
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「夏の動物園はどこか静か。一昨年も去年もそうだったのかは思い出せない」
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『ユイ、登っておいで───ユイ』
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「オセアニア区の大きなユーカリ、風に揺れて小さくて優しい声。私をそっと呼んでいる」
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「少し前に気がついた。目が覚めても私は自由。ユーカリの声聞こえたら私はまだ夢の中にいるようにふわりと自由」
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「外へ繋がるドアを開け、私はそっと外へ出る」
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「大丈夫、誰にも見つからない───一人だけの内緒のお散歩」
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てくてくてくてく
ユイは歩く
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ときおり見上げる夏の空
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目の前通る夏の虫
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てくてくてくてく
夏のお散歩
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てくてくてくてく
ユイは一人で不思議なお散歩
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夢で見たのと同じ色したサルスベリ
いつかみんなで眺めた夏の花
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楽しかったあの日々を思い出してそっと微笑み、涙がぽろり
涙はぽとりと地面に落ちて陽射しで乾く
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ユイをそっと見つめるオセアニア区の大きなユーカリ
ゆっくり静かに見上げたコアラ
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コアラの可愛い女の子
ユイ
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『ほら、登っておいでよ───高く登れば風が気持ちいいい』
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『ほら、登っておいでよ───ユイはコアラ、木に登ることが出来るんだ』
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ユーカリの声聞こえたら、誰もが高く登ることが出来るはず
ユーカリの声聞こえたみんな誰もが高く登ることが出来るはず
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高く登って風に揺れ、高く登って一休み
高く登って景色を眺めて、高く登って夢を見る
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ときどき誰かに話しかけ、ときどき誰かが背中を押して
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みんなは大きなユーカリ登る
みんな、みんなコアラの気持ち
コアラも人も動物達はみんなユーカリ登ってコアラの気持ち
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季節は静かに
ゆっくりゆっくり季節は進む
季節は途中で休憩取らないで
そっと静かにゆっくりゆっくり
ゆっくりゆっくり季節は進む
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「あ、あれだ───」
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「お部屋から眺めていた鳥の巣、誰かの巣」
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「どんな鳥が暮しているんだろう、どんな卵が、どんな雛が、どんなお父さんとお母さんが暮しているんだろう────ずっと思ってた」
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「驚かさないようにそっとそっと。私は登ってそっと近づく」
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「そっとそっと静かにそっと」
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「そっと、そーっと覗かせて────私にそっと覗かせて」
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「誰もいない」
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「そうか、雛は大きくなって巣立った。鳥は大きくなって空を行く。みんなまた新しい世界へ、と────飛んで行ったんだ」
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「少し食べさせて」
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「私は大きなユーカリの木の葉っぱを食べさせてもらう」
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「美味しい葉っぱ。私はコアラ、ユーカリの声を聞いてユーカリの葉っぱを食べて、ユーカリと一緒に眠るんだ」
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「柔らかい、柔らかくてなんだかとっても温かい」
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「誰もいない鳥の巣に私はそっと腰掛ける」
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「大きくなった鳥が巣立って飛んでいったように、私ももう大人────お母さんもお姉ちゃんも、ワカちゃん達ももう傍にはいない」
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───今年もサルスベリのお花が咲いたよ
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「そう呟いた時ぽとりとまた涙がこぼれた」
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「やっぱり一人じゃ寂しいよ────」
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「『また泣いちゃった』────そう呟いたときだった」
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「風が少し強く吹いて、大きなユーカリの木がゆっくり大きく揺れていた」
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「温かい鳥の巣の中、私は一緒に大きく揺れる」
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「────この感じ、なんだかとても懐かしい。懐かしくて優しくて、私の心をふわっとぎゅっと包み込む」
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「お母さん────これはきっとお母さんのポッケの中のあの感じ」
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「お母さんは私をポッケに入れて登ってたんだ。まだ小さな私を連れてオセアニア区の大きなユーカリの木に登ってこうして揺れていたんだ────」
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「お母さんの音が聞こえる、お母さんの声が聞こえる────ポッケの記憶、あのリズムと歌声。何より優しい子守唄。コアラ達の子守唄」
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「寂しい涙は嬉しい涙へ変わっていく。安心してそっと一緒に眠りにつく前の、あの子供の頃の涙へそっと変わる────」
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「大きなユーカリの木に優しく揺られた今の私、温かい鳥の巣の中で眠ります」
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「おやすみなさい、お母さん。おやすみなさいお姉ちゃん」
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「寂しくなったらまたここに、ここで揺られて夢の中────私はは風にそっと揺られて夢の中」
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コアラは風に揺られてそっと眠って夢の中
ユーカリと一緒、風に揺られて思い出すお母さん

────温かくて柔らかい、優しいポッケの記憶と夢の中




   

by bon_soir | 2017-08-15 12:11 | 金沢動物園 | Comments(4)
オセアニア区の夏空
金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
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窓から空を見上げるだけ、ただそれだけでも暑さが伝わる夏のこと
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何故か長く眠りたくなる夏のこと
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夏のユーカリ、夏の香り
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少し齧って広がる香り
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夏のオセアニア区は少し静か
ただ聞こえてくるのはワライカワセミ笑う声と、数増えてくるセミの声
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夏に見る夢長い夢
ふわりふわりと静かにゆっくり
そんな夢
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淡く輝く景色がぼんやり
色鮮やかに滲む色
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跳ねていたのはカンガルー
遠くで跳ねて笑ってる
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目が覚めたのに夢の中
そんな気がする夏のこと
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長い夢からゆっくり醒めて
ゆっくり今の時間の中へ
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夢の終わり、夏の色と夏の香りに滲んでる
滲む時間の上を滑る
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窓の向こうにカンガルー
夢の中で跳ねていた子と違う笑顔
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カンガルーを真似して跳ねた
コアラだけれど真似して跳ねた
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今年の夏はどんな夏
オセアニア区にはどんな夏
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どんな夏がやって来た
どんな夏が過ぎていく
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ユイの夏はどんな夏
今年の夏はどんな夏
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夢の中とは違う景色
いつもの景色は夢じゃない
今、ユイはオセアニア区、コアラの家の部屋の中
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窓の外には夏の空
大きなユーカリ風に揺れ
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窓の向こうにカンガルー
夢の中で跳ねていた子と違う笑顔
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お母さん、お姉ちゃん
ワカちゃん、ハヤト
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そしてポッケの中にいた小さな赤ちゃん
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みんなの笑顔が空に浮かぶ
大きなユーカリの木よりももっと高く
夏の雲よりもっと高く
夏の青空、そのまた向こう
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優しい笑顔がたくさん浮かぶ
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夏のユーカリ夏の香りに夏の味
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少し齧って広がる香り
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食べた後はコアラのベッド
香りで包む優しいベッド
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また静かな夢へと誘うコアラのベッド
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眠る前に一回り
木の上歩く一回り
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夢を見るための準備、そのまとめ
またいい夢見ることできるように
安心して眠れるように
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コアラは長い夢を見る
悲しい夢、怖い夢
嫌な夢を見ないようにしっかり準備
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ぐるっと、ぐるっとひと回り
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遠くで聞こえるセミの声
夏の空まで届いてる
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お空の上のみんなのところ
オセアニア区の夏の音
きっと聞こえているんだね
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同じ声、同じ音がみんなの所へきっと聞こえているんだね
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青い夏空どこかふんわり
太陽隠れてそっとふんわり
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夢の中でも何度も跳ねた
カンガルーの真似して跳ねた
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跳ねて一人、笑顔のコアラ
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儚く健気に暮らすコアラ
頑張るコアラ
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夏は一日一日過ぎていく
オセアニア区の夏の空は変わらない
空だけは何も変わらない
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頑張るコアラが笑顔な限り
青い空は変わらない




  

by bon_soir | 2017-07-26 08:00 | 金沢動物園 | Comments(4)