────春になれば必ず会えるって信じてた
いつしかそれは楽しい時間に変わっていって
目印の近くにきっと、きっと────そう考えて夢に見て
「────そろそろだね、もう本当は傍に来ているのかな」って少しそわそわ
疲れて眠る、また夢に見る────
それは小さなお花の可愛らしい不思議な微笑み
また目印の周りを探し回って
それでも庭には、目にしだすのはフキノトウばかり
────春になれば声が必ず聞こえてくるって知っていた
いつも探して、季節外れだってわかっていたけど探し続けて
いつしかそれは楽しい時間に変わっていって
目印の近くにきっと、きっと────そう考えて夢に見て
またその夢の中にスミレちゃん
今はウォレス君が過ごしている庭のどこかに
どこか動物園の、どこか────あれはどこ
揺れる小さなスミレのお花は、そう────スミレちゃん
私達、ウォンバットの女の子
信じてる、春になればまた会える
知っている、春になれば小さなスミレの花が咲く
それともどこか、私どこかを見落として────
きっと知ってる、小さなスミレの花のこと
私達をそっと眺める優しい気持ちが傍にいつも、いつもどこかでって
そんなこと
ウォレス君にはウォレス君の小さなスミレ
心の中の想い、大切な思い出記憶
そういうことは誰にもそっと、一人そっと想うこと
────大丈夫
雪が溶けてもう何度目の夢の中
夢で会うのが先なのか、それとも目の前現実に
私の傍で小さなスミレ、少し冷たい春風吹かれてそっと揺れる
静かでとてもきもちがいい
みんなと一緒に笑ってる
楽しそうに嬉しそうに、時々強がる私のように
雪が溶けてもう何度目の夢の中
────数えてない
夢で会うのが先なのか、それとも目の前現実に
────きっといつもに散歩の最中にふと
心の中にずっとずっと、スミレちゃんの笑顔がずっと
きっと飼育係さんも、お客さんたちも
この春をまた待っていて────
────たとえば美味しいフランスパン
その気持ち、そんな暮らし
瞬間、時間
一日、一週間
────早く早くって気持ちをふと忘れたその瞬間に
私の傍で小さなスミレ、少し冷たい春風吹かれてそっと揺れる
私は涙をこぼして回った
私の気持ちは少し複雑
ただスミレちゃんはもういないって、そんな当たり前のことをまた告げられるような気がしたから
────それが小さなスミレに姿を変えたスミレちゃん
ついつい怒鳴ってしまう、そんな私の代わりにね
だからお花になれた、姿を変えてずっと動物園を眺めてこれた
そしてそれはこの春も
またこの春これから、しばらくずっと
そして一粒、涙が落ちた
あの日とは違う涙────きっとそう
ねえ、ウォレス君
気がついてる、見つけてる?
────飼育係さんならもうきっと
私達に会いに来てくれるお客さん
気がついてる、見つけてる?
この幸せをみんなで一緒に感じてくれている────
春っていいね
いい季節だね
お花が咲くね、散った葉がまた芽吹き、また草は伸びてくる
さみしさ、悲しさ、それもやっぱり無くなることは無いけれど
必ず何か、必ず誰かが傍にいること
こうしていつも教えてくれる
ウォレス君の庭には大きな木のトンネルが運び込まれた
ウォレス君はそんなわけのわからないことを言う
でもその目は自信とわくわく、それの輝き
わくわくわくわく、心と頭にその気持
────後は晴れた日、そんな日に
そう微笑んだ
ウォレス君も小さなスミレのお花を見つけたんだ
きっと会えたんだ────
この春みんなの傍に、私の傍に
動物園のどこかに咲いてる小さなスミレ
それが春の動物園
ちょっと冷たさ感じる春風吹けばちょうどいい
微笑み、涙
見せてくれたらもっともっと距離は近づく動物園
スミレちゃんも動物園をそっと眺めているんだよ
────春になれば声が必ず聞こえてくるって知っていた
いつも探して、季節外れだってわかっていたけど探し続けて
いつしかそれは楽しい時間に変わっていって
目印の近くにきっと、きっと────そう考えて夢に見て
山の春はまだまだとても気持ちがいい
踏まないように気をつけて
見つけて素敵な笑顔になれる、なっている
声をかけてくれるから
「こんにちは」
小さなスミレに姿を変えて
動物園で
「こんにちは」