五月山動物園で暮らすウォンバット、ワイン
朝は雨降り、静かに過ごしたお部屋の中
晴れた空のお昼頃
雲の隙間、青空の向こうを眺め、静かに歩き出したワイン
桜の蕾、開くのにはそう時間もかからないこと予感させた日のこと
そう、ワンダーさんはあの空のもっともっと高い所
今は昼
雲の隙間、青空の向こう側
またすぐに、明日にでもさ、桜のお花が咲きそうなんだ
ワンダーさん、傍に降りてきてくれないかい僕の隣にさ、そっと戻ってきてくれないかい
少しだけ、少しだけでも大丈夫きっと君ならわかるだろ─────
「いつ咲くのかな、明日には咲くのかな─────」 二人の側の桜の木、眺めて僕らは笑ってた
─────ほんの一年前のあの笑顔
今年も笑顔になりたくて
今年も笑顔を見せたくて、ね
僕が笑顔じゃなければさ、会いに来てくれる人も笑顔になれるはずがない
ワンダーさんのお庭を見てね、みんなは寂しそうな顔をする
想い、時には涙をこぼしてくれる
優しい優しい人達さ
そんなみんなを笑顔にしてあげたいからさ、僕が先に─────ってことなのさ
昔からずっと、ずっとそう
ワンダーさんが傍にいれば、ワンダーさんの声聞けば
僕はいつでも笑顔になれたのさ
どんなに辛く悲しいときでも笑顔を作ることが出来たのさ
春は進む、緑を増やしてお花を咲かせて
色とりどりに辺りを染めて
春は進む、そっとそっと時には強く速い風
春は進む
一年前と同じよう
一年前と違うよう
ワンダーさんの気配を感じて僕は
ワンダーさんの影、見えたような気がして僕は
微笑みながら春を過ごす
きっとこうして季節を一人巡るんだ
何度も何度もなんべんも、ね
春の匂い、風に載せ
歩く僕らを追い越すように時間は過ぎて
今年もまた、そっと桜が咲いたのさ
ありがとう
ワンダーさんを思い出してくれてありがとう
ワンダーさんを想い涙を流してくれてありがとう
きっと喜んでいるはずさ
きっと頷き微笑んでいるはずさ
だから笑ってくれないかい
僕に笑顔、見せてはくれないかい
想う涙は素敵なものさ
想う笑顔はもっともっと素敵なものさ
寂しい冬はとっくに過ぎて、今度は寂しい春が来た
きっと次は寂しい夏さ
そして寂しさ一回り
どこまでいっても寂しくて、寂しくって当たり前
わかっていたこと、考えていたこと
あの日からずっと感じていたこと、感じていること
ずっと一緒だったんだ
ずっと眺め、見つめてきたんだ
会いに来てくれていたみんなもそう、きっとそう─────
ワンダーさんの姿が見えない毎日、風景、季節
時々傍に来てくれているのは知っている、感じているんだ
でも寂しい
しかたないこと、でもやっぱり寂しいね
ワンダーさん、今は傍に降りてきてくれないかい
僕の隣にさ、そっと戻ってきてくれないかい
少しだけ、少しだけでも大丈夫
きっと君ならわかるだろ─────
桜が咲いたよ、ワンダーさん
今年も咲いたよ、ワンダーさん
そう─────今、僕には見えるよワンダーさんの優しい笑顔が僕には見えるよ目を閉じても目を開いても涙で目の前ぼんやりしても
─────僕には君が見えるんだワンダーさんを想う、想ってくれるあなたならきっとこうして見えるはずさワンダーさんのあの姿、きっと見えているはずさそう、想う涙も嬉しいけれど、笑顔だったらもっといいみんなの笑顔を見ること出来たらワンダーさんもきっと笑顔
そういうことさ