金沢動物園で暮らすオカピ、キィァンガ
部屋から庭へのドアが開く、そんないつも通りの朝
奥に見えたキィァンガ
草を引き抜く
せっかくだけど、それは食べなくたっていい
庭では飼育係のお姉さんが美味しそうな御飯を用意している
だからそれは食べなくたっていい
「そうだね。いつも通りの朝だ」
キィァンガはドアの所で立ち止まりました
それはきっと感じたから
夏が過ぎ秋が来る
少し前に考えた、そんなことじゃない───
来るんじゃない、秋はもう来ている
すぐ側に、いつの間にか秋が来ている
ほっぺに当たる秋の風
夏の草の間から伸びてきている秋の草
夏の終わり、秋の始まり
一日の始まりは同じようで同じじゃない
変わらないのはキィァンガ自身、飼育係のお姉さんの優しい笑顔
きっとそれだけ
昨日と少し違う、一昨日とはもうちょっと違う
そんな朝、一日の始まり
今日は曇り
空の色は少し汚れた白い色
「しかたないね」
キィァンガ、晴れを諦める
きっと今日は静かな日
少し寂しく落ち着く日
食べよう
美味しいね!
いつもと同じ様に食べる、少しずつ変わる味自然の物を食べること、自然と一緒に過ごすこと今日は静かな動物園セミの声、小さくなったそんな夏の終わり葉っぱに色が付きだした赤いトンボが飛び出したそんな秋の始まり時間はいつの間にか過ぎていく朝はすぐ終わる昼はすぐに過ぎていく夕方はすぐにやって来る
目の前に見える動物園の出入り口にいつもの人影今日も閉園時間がやって来る部屋へのドアがまた開く今度は逆に歩いて入る一日の終わり、季節の終わりでも心配なんかいらないよまた始まるし、また巡るキィァンガ、今日はさようなら今日一日にさようならまたいつか、おはよう、そしてこんにちは