金沢動物園で暮らすコアラ、ハヤトとワカ
工事の都合で会えなかった期間
続く工事
大きくなり続けるハヤト
ハヤトの様子を伺う
まだまだ小さなハヤトの手
ハヤトが起きているとワカも眠れない
でも大丈夫、ワカはしっかりとお母さんになった
この先いつか、ハヤトが親離れしたその時はまたぐっすりと眠る
きっとまたいつものワカに戻る
それも少し寂しい
交換前のユーカリの葉っぱを一人食べるハヤト
これからもずっと、たくさん食べるユーカリの葉っぱ
きっと今は美味しくて楽しいに違いない
そんな笑顔
小さな口で食べる
一生懸命に食べる
たくさん食べて大きくなる
お母さんよりずっと大きくなる
そう、ハヤトは男のコアラ
いつかきっと風に吹かれ揺れるユーカリの木の上で微笑む時が来る
今誰よりも大切な時間を過ごしてる
甘えていられる時間は長くない
この大切な時間をハヤトはずっと忘れない
ワカもきっと忘れない
久しぶりに見る飼育係さんのワカを抱く姿
色々なことを誰も忘れない
一度でも会い、見て、温かい何かを感じれば何も忘れない
それは動物達も人間達も一緒
きっと同じ、一緒のこと
「お母さんの背中が少し小さく見えるんだ」
「僕が大きくなった証拠。時間が過ぎているそんな証拠だ」
「でもまだ、まだ足らない」
「お母さんと一緒の時間はまだ足らない。まだまだ足らないんだ」
「お母さん、僕は少し重いかもしれないけれど、もう少し一緒にいようよ」
「もう少し、もう少しだけ、違う――もっともっと一緒にいようよ」
「僕はお母さんの背中から見る景色が大好き、お母さんに抱っこされて眠るのが大好き」
「お母さんのあったかさが大好きなんだ」
ハヤトとワカ、二人がこうして一緒に入られるのはいつごろまでなのか
正確になんてわかりません
可愛い姿をただ見つめ追いかけることしか出来ません
きっと誰でもそれしか出来ません
ハヤトはもっと大きくなり、ワカは身体を休めなければいけない時がきっと来ます
でも「こうして暮らすコアラがオーストラリアの森の中に大勢いるのか」と思いを馳せれば広がります
儚く健気に頑張る動物達、動物達が暮らす世界の風景が頭のなかに広がります
動物園は世界への入り口
そんな入り口の一つ、大切な一つ
かわいい動物達の暮らしをそっと覗けば広がる
そんな世界
「僕はいつの間にか眠っていた。お母さんに抱っこされてると眠くなる。気持ち良く、心地よく僕は眠くなる」
「お母さんが窓の外を眺めてる、ずっと静かに眺めてる」
「僕も窓の外を見た。ほら見てよ、風景が変わっているんだ」
「『壁が無くなった』ってお母さんは言う。僕にはなんのことなのかわからない」
「でも見えたんだ。明るく広い風景が、僕のまだ知らない世界がぱーって広がって見えたんだ」
「オセアニア区の大きなユーカリの木が揺れている。気持ち良さそうな風に吹かれてさわさわと揺れている」
「あそこはみんな新しい世界。僕の小さな手が届く新しい世界だ」
「お母さん、僕に色々教えてよ。これからもっと教えてよ」
「春はたくさんのお花が咲くんでしょ。そんな話をするバニラさんとユイさんの声が聞こえてきたんだ」
「今行くの?今教えてくれるの? これから出かけるの?」
「楽しいね!」