金沢動物園で暮らすベアードバク、アグア
庭の緑色が濃くなっていくこの季節、アグアは楽しそうに散歩を繰り返すのです
「暑いと思っていても曇りの日なら過ごしやすい」
「そうだ、まだ夏は来ていない」
「僕はバクだ。みんなは漫然と『夢を食べる』って言うよね」
「そのくせ、本当は夢を食べるだなんて思ってなかったりする」
「こうして葉っぱや草、野菜とかを食べると思ってるんだろう」
「そう、それは別に間違いじゃない」
「だけどね、バクは“夢も食べる”かもしれないよ」
「怖い夢を見ている時、『今のこれは夢だ』って考えてる時は無いかい?」
「そんな時は僕の顔を思い浮かべるんだ」
「どうせ夢なんだ。覚める時がかならず来る。だから一度試してみればいい」
「怖い夢が早く終わるかもしれないよ」
アグアはそう言いながら草を思わせぶりに少し食べました
バクが何を食べるのか――夢の中にバク達が現れた時、本当の答えがわかるかもしれません
「春の草から夏の草へと変わっていく、この時期の庭はとても綺麗だ」
「イチゴちゃんはどうしているのかな?」
「ははっ、今日も大きくてかわいいや。元気そうだね」
「雨の季節が来る前に、暑くてしょうがない季節が来る前に」
「この緑色の庭を散歩しよう」
「どこか遠くへ繋がっているかもしれないね」