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少し早いサンタクロース

コアラのところにサンタは来ない
子供達の家に行くことだけで精いっぱい
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疲れて、サンタは来ない
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クリスマスは12月
コアラには寒くて寒くてしょうがない
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サンタさんもきっとさ、クリスマスの日には寒いんだ
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動物園が始まって、お客さん達来る前に私はそっとコアラの家を抜け出して、動物園の散歩に出かける
お姉ちゃんがいなくなってしまってからは寂しくて頻繁に出かけてる
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玄関の赤い実
本当に真っ赤になった
冬が来た証拠
そのうち寒くなりすぎて、こんなお散歩にもしばらく出かけられなくなりそうだ
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今日は風がない
すっきりと晴れた日にはならなかったとしても、多分震えるような寒さじゃない
少しの散歩なら大丈夫
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オセアニア区の広場の芝はすっかり黄色くなった
また工事をしている
今度は休憩所
早く終わればいいんだけれど
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てくてく歩くとヒロキさんの庭がある
芝生が張られた
これじゃ穴掘りできないね、ヒロキさん
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石のヒロキさんとは夢の中でお話できる
今度は芝生のことを聞いてみよう
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オセアニア区の大きなユーカリ
葉っぱが減ってすっかりと冬の様子
ユーカリだって寒いんだ
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オセアニア区への坂道下り、私は続けて散歩
まだ少し眠い私はときおり目をこする
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アフリカ区のみんなもそろそろ寒いね
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冬はやけに急ぎ足
私もつられて急ぎ足
きっとみんな急ぎ足
もっともっとのんびりしていたいのに、何故かみんなで急ぎ足
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セコイヤ並木
秋の色
もう少しで茶色くなって葉っぱが落ちる
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ブッチさんもお空の向こうへ走っていった
見上げたロッキーマウンテンは霞んだ青空
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早くしないとお客さんが来ちゃいそう
ほのぼの広場の飼育係さんたちにも見つからないように、私は早足
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ポポさんにセーター編んでとお願いしたよ
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ユーラシア区を歩く頃には空は青く、雲はずっと控えめに
このままずっとお散歩続けていたいけど、コアラの家、みんなから見える所は私一人
戻らなければみんなはコアラに会えない
そんなことになったらきっとみんな寂しいって思うはず
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そして、お空の向こうへ行ってしまったお姉ちゃんやお母さんは誰もいないコアラの家をどう思うだろか
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「もう一日くらいはお散歩出来るかな─────」
来た道を少し戻ってインタンさんにそっとささやいた
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コアラのところにサンタは来ない
子供達の家に行くことだけで精いっぱい
────疲れて、サンタは来ない
クリスマスは12月
コアラには寒くて寒くてしょうがない
────サンタさんもきっとさ、クリスマスの日には寒いんだ
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『オ~~アオ~~オアオ~~ オアオ~~~~~~ア』
私のことを誰か呼び止める
『ア~オアオッオアオ~~~~』
誰?誰かそこにいるの?
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『オ~~~~』

覗くとそこには鳥が二羽
一人は前から暮らすウミネコだ
そしてもう一羽
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────見慣れない鳥一羽
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「あれ、はじめまして」
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『サンタ』
アオバトという鳥は一言

「サンタさん?サンタはあのサンタ? サンタさんがどうしたの?」
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『サンタが来るぞ』
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「─────サンタさんが来る!?」
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サンタクロースはきっと夜に来る
コアラの所にも今夜きっとやって来る─────
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お客さんが帰った後、私はまたお部屋を抜け出して外へ出た
外灯がいつの間にか灯り、そっと辺りを照らしてる
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“シャンシャンシャンシャン”
遠くの方で音が聞こえる
目を閉じてうんと耳を澄ます
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“シャンシャンシャンシャン、シャンシャンシャンシャン”
音がどんどん近づいてくる

“シャンシャン、シャ……”
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音が止まる
─────すぐ傍だ

そっとそっと目を開き、そっとそっと覗き込む
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『メリークリスマス!』
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「─────あっ!」
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『少し早いけど、メリークリスマス!』
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「メリークリスマス、メリー、メリークリスマス─────」
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少しびっくりしながら私はサンタクロースとクリスマスの動物達をじっと見つめる
みんな笑顔だ
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子供達だけで精いっぱい
コアラの所にサンタは来ないと思っていた
でも今年はちょっと早いけど、サンタが私の所へやって来た
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メリークリスマス

ちょっと早いメリークリスマス
動物園に、動物達の所に、コアラの所に─────
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“Merry Christmas”

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「メリークリスマス」
サンタクロースと動物達に私は微笑む
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その瞬間、私は光りに包まれた
冬の始まり、寒い夜のはずなのになんだかとても温かい
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これがクリスマス
サンタがやって来てくれた日は、少し早いクリスマス
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きらきらきらきら
光はきらきらクリスマス
ここはどこ?
星空、それとも宇宙銀河系
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夢じゃないけど夢のよう
“シャンシャンシャンシャン”
音が聞こえる
“シャンシャンシャンシャン、シャンシャンシャンシャン”
鈴の音どんどんスピードアップ
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トナカイ、ソリを引いてきた
星空サンタと一緒にシャンシャン鈴の音鳴らして、コアラのところへやって来た
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────まだ行かないで
私は笑う
光の中で私は微笑む
クリスマス、今日は私のクリスマス
コアラのところへサンタがやって来て、少し早いクリスマス
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“Merry Christmas”
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メリークリスマス
サンタが遠く離れてく
“シャンシャンシャンシャン”
手を振り遠く離れてく

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メリークリスマス
きっと夜が明けるんだ
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メリークリスマス
また始まるんだいつもの毎日
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メリークリスマス
ありがとう
コアラのところへサンタがやって来た
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そんなメリークリスマス
私の大切なメリークリスマス
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ざわざわざわざわ、ユーカリ揺れる音がする
きっと風に吹かれた大きなユーカリ
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いつもよりも多いユーカリの葉っぱの香り
私はそっと夢から醒めて目を開く
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頭の中に昨日の光
『周りを見てごらん』
どこからなのか優しくささやく
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「ユウキ君!?」
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どうしたんだろう─────
下のお部屋で暮していたユウキ君が隣りにいる
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「ふぁー」
ユウキ君の反対側で「がさがさ」というユーカリの葉っぱの音とあくびの声が聞こえた
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「コアラ────」
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「チャーリーだよ。名古屋の動物園からお引っ越しをしてきたんだ」
戸惑う私にユウキ君がそっと言う
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「下のお部屋でさ、少し前に隣へ来ていたんだ。ユイは体調が良くなかった時もあったし、気がつかなかったのかもしれないね」
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「─────チャーリー」
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しばらくするとチャーリーは目を覚まして、なんだか思い思いに色々と始めていた
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そんなチャーリーと隣に来たユウキ君
そして私
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今まで一人だったコアラの部屋は賑やかになった
元通りってことじゃない─────けど嬉しい
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また昨日の光が私の頭の中を通り過ぎる
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「サンタさん、ありがとう」
私は気がついた
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コアラが増えてたくさんになったユーカリの葉っぱの香り、コアラの賑やかな声、立てる音
温かさ
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二人の笑顔と優しい言葉
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─────これが何より素敵なプレゼント、クリスマスプレゼントなんだ

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コアラのところにサンタは来ないわけじゃない
ちょっと早いけどこうしてちゃんとやって来た
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ありがとう、サンタさん
素敵なプレゼントをありがとう
私はもう大丈夫、来年は別のコアラのところへ行ってあげて
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みんなもこうして楽しい冬になるよ
サンタと会えればきっとみんなが喜び笑う冬になるよ
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「僕、チャーリー。もう知っているかもしれないけれどよろしくね」
傍で目が合ったチャーリーはそう言って微笑む
身体は大きいけれど、顔はまだ子供の様だ
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「窓の向こう、見えないんだね」
そう話すチャーリーに私は何も言わないで頷き、微笑む
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「ねぇチャーリー」
私はチャーリーの名前を初めて呼んだ
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「メリークリスマス────メリークリスマス、チャーリー」
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by bon_soir | 2017-11-24 14:50 | 金沢動物園 | Comments(3)
秋の冷たい雨と
秋の雨は長くて冷たい
あまり濡れたら風邪引くよ
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台風ばかり、日本の上を通ってばかり
やりたいこと出来ないね
行きたいところに出かけにくいね
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強い風の日
風の無い日
雨、雨、雨、雨
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入り口、赤い実
だめになったら悲しいね
見てきて誰か、赤い実見てきて
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あれ
お客さんも雨でいないよ
誰も居ないよ
静か、静か、静かだね
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雨、うんざりたくさん
もうたくさん
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青空、白く軽い雲
すっきり星空、冬の星座
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見たくならない?眺めたくはなってこない?
雨、うんざりたくさん
もうたくさん
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濡れたら寒い
風邪引くよ
上がれば空気
澄んでるよ
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濡れたあなた
大丈夫?
一人の私は大丈夫
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眠って夢見て
長い夢見て大丈夫
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夢の中なら私は自由
どんな場所へも飛んでいける
コアラだけれど飛んでいく、自由に気楽に飛んでいける
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そこには雨、降ってない
そこでは私、一人じゃない
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歩いて覗いて
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歩いて私、振り返って飛んで何処かへ
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夢の中なら私は自由
どんな場所へも飛んでいける
コアラだけれど飛んでいく、自由に気楽に飛んでいける
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そこには雨、降ってない
そこでは私、一人じゃない
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お姉さん、空は晴れた?
お姉さん、みんなは元気? 笑ってる?
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お姉さん、私今
笑ってる?
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強い風の日
風の無い日
雨、雨、雨、雨
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雨、うんざりたくさん
もうたくさん

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空の涙に付き合わせないで
やけくそ涙、悔し涙に無理にみんなを付き合わせないで
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見たいもの
青空すーっと飛んでく赤とんぼ
目立った赤
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星、おうしの目ン玉アルデバラン、もやもや固まる星々“すばる”
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雨、上がった?
雨、もう大丈夫?
私、笑えてる?
私、もう大丈夫?
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夢の中なら私は自由
どんな場所へも飛んでいける
コアラだけれど飛んでいく、自由に気楽に飛んでいける
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夢の中じゃなくたって私は自由
どんな場所へも歩いていける
コアラはてくてく歩いてく、自由に気楽にのんびりきままに歩いていける
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あなたの傍まで歩いていける
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あなたの顔、そっと覗くよ
動物達はそっと、そっと覗くよ
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だから静かに、静かに見てね
びっくり、驚き見上げ振り返る
そんなの覗いたことにはならないよ
楽しくないよ、かわいくないよ
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強い風の日
風の無い日
雨、雨、雨、雨
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もうたくさん
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今日はもう晴れている
強い風が雲、雲を全部吹き飛ばす
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青空、白く軽い雲
すっきり星空、冬の星座
見える、見えるよ
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このままずっと
ずっとずっと
続けばいい、ずっとずっと続けばいい
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見て
紅葉してる、よ
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本当の秋だね
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by bon_soir | 2017-10-31 09:14 | 金沢動物園 | Comments(2)
ポッケの中にはどんぐり一つ
ポッケの中の赤ちゃんは、また一人空の上
大好きなコアラ達、そっと浮かんでみんなが過ごす空の上
小さな鳥達迎えに来たら、そっと笑ってまた一人
私を置いてまた一人、「ありがとうさようなら」
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私のポッケ
ポッケの中の赤ちゃんは、また一人そっと旅立つ空の上
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大きなユーカリくるりと越えて、だんだん登ってどんどん小さくなってお空に消えた
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声にはならない、声は出ない
溢れてくるのは涙だけ
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去年と同じ
同じよう
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違っているのはお姉ちゃん
優しいお姉ちゃんが今年は傍にいないこと
いつだって優しかったお姉ちゃん
かわいいコアラが今年は傍にいないこと
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コアラの神様どこにいる
コアラの神様は今どこにいる
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もしお願いできるなら
もし私がコアラの神様だったなら
世界のコアラをこんな気持ちにさせないよ
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こんなに悲しい涙
誰の目にも光らせない
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私のポッケは軽くなる
急にぺたんこ、寂しいお腹
去年と同じ
同じよう
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違っているのはお姉ちゃん
優しいお姉ちゃんも今年は傍にいないこと
いつだって優しかったお姉ちゃん
かわいいコアラが今年は傍にいないこと
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今、私のポッケにどんぐり一つ
お姉ちゃんが入れてくれたかわいいどんぐり、ポッケの中にはどんぐり一つ
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いつまでも色褪せないでころりと笑う
ポッケの中にどんぐり一つ
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私を励ます笑顔のどんぐり一つ
ポッケの中にはどんぐり一つ
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大丈夫かどうか
それは私にはわからない
でも元気
私はきっと、きっとそう
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ありがとう
みんなみんなありがとう
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心配いっぱいしてくれて
みんなどうもありがとう
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季節は進む
秋から冬へ
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ヒロキさんのお庭は今少し酷い秋
秋の草でぼうぼうだ
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ススキだけが優しく揺れて、秋の香りを優しくくれる
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家の入口、実は赤く
お姉ちゃんが好きだと言ったあの実は赤く
きっと冬を呼び込む目印に
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わずかばかりのお花は咲いて
見つけた子達と短いお話
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秋の風にそっと揺れて頷き、笑う
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ありがとう
みんなみんなありがとう
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心配いっぱいしてくれて
みんなどうもありがとう
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大丈夫かどうか
それは私にはわからない
でも元気
私はきっと、きっとそう
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みんなの笑顔
優しい笑顔
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一緒に泣き出す曇り空
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どこかから聞こえる、傍で聞こえる優しい声に向こうで聞こえるワライカワセミの大合唱
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大きなユーカリゆっくり揺れて、虫の声は秋の声
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みんな私を励ましてくれている
ポッケがぺたんこ
そんな私
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みんなが私を励ましてくれている
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ポッケの中にはどんぐり一つ
お姉ちゃんが入れてくれたかわいいどんぐり、どんぐり一つ
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みんなと一緒
ありがとう
優しい声、聞こえるよ
ありがとう
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夢の中で吹いた風
そっと優しく私を運ぶ

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夢の中なら私は自由
身体軽く風吹く方へ
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ひかりのコアラ、いつの間にか追い越して
私は笑う、ポッケの中のどんぐりと同じ顔して心落ち着く
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秋の長い雨に出来た、一つ綺麗な水たまり
水たまりには映ってた
私の笑顔がどんぐり一つと一緒に映って波紋と一緒に広がった
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あの日、ポッケの赤ちゃん去年と同じ
同じよう
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声にはならない、声は出ないあの日の私
溢れてくるのは涙だけ
あの日はあの日と同じ、同じよう
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違っているのはお姉ちゃん
優しいお姉ちゃんは今、私の傍にいないこと
いつだって優しかったお姉ちゃん
かわいいコアラが今年は傍にいないこと

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そこから私に笑いかけてよ
お姉ちゃん、お母さんと一緒にそこから私に笑いかけてよ
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私も一緒にもっともっと笑って過ごしたいから
そこから笑って、笑って見せてよ
優しい笑顔を私に見せてよ
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私はお母さんの娘、そしてお姉ちゃんの妹
いつまでも離れても
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ずっとずっと、ずっとそう
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そこから私に笑いかけてよ
お姉ちゃん、お母さんと一緒にそこから私に笑いかけてよ
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今、私のポッケにどんぐり一つ
お姉ちゃんが入れてくれたかわいいどんぐり、ポッケの中にはどんぐり一つ
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いつまでも色褪せないでころりと笑う
ポッケの中にどんぐり一つ
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私を励ます笑顔のどんぐり一つ
ポッケの中にはどんぐり一つ
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みんなと一緒
ありがとう
優しい声、聞こえるよ
ありがとう
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by bon_soir | 2017-10-20 08:00 | 金沢動物園 | Comments(8)
ひかりのコアラ
前回(→☆☆☆☆☆)からの続きです


ヒロキさんの声はワライカワセミの小さな子に乗せて私の元へ────
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────夜中まで動物園が終わらない日
その日が来るまで何度か眠り夢を見て、また何度か目を覚ます
その時それが何回目の夢なのかなんて数えたりはしなかった
ただのんびりと、いつもどおりの時間を過ごせば、楽しみにしている瞬間はきっと普通にやって来る
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あの時ヒロキさんから聞いた言葉
“優しい人からのプレゼント”
その言葉を時々呟き、私はのんびりいつものようにお部屋で一人過ごしてた
時々ぼんやり眺める窓の外、セミの声は減った気がするし、雲は軽く空が高い
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「お空の上のみんなもまた高く、距離は少し離れちゃったかな───」
お母さん、お姉ちゃん、ワカちゃんにハヤト
みんなの顔が秋の空にぼんやり浮かぶ
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飼育係のお姉さんが交換してくれるユーカリの美味しさも、やっぱり少しずつ変わっているような気がしていた
きっと夏のユーカリから秋のユーカリへ───
種類は一緒かもしれないけれど、でもどこか少し違う
昨日と今日、そしてきっと今日と明日も同じ日が無いように、色々なことが少しづつ変わっていく
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たった一日、それだけで色々なことが変わっていく
去年と今年、そして今年と来年ならもっともっと違うだろう
「みんなどうしているのかな───」
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いつもそう───考えていること、それはすぐに言葉になった
傍にお母さんが、お姉ちゃんが、そしてワカちゃんやハヤトがいてくれた日々
それをついさっきのことのように思い出す
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思い出はいつも心の中に───
すぐに浮かぶその風景
私が思い出をしまっている場所は奥底の方じゃない
凄く手前に置いてある
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「みんなどうしているのかな───」
また同じことを呟いた
数えていないだけで、きっと何度も何度も呟いているはずだ
でも今、部屋に私は一人
───独り言は誰かに聞かれるわけじゃない
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何度も何度もその時思う言葉を呟いて、思い出したり想像したり───
いつものようにお部屋に一人、暗くなってもお客さんが帰らない日を私はただ待っていた
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夏は長いようでいて振り返れば結構短い
一日一日、本当に短い

“暗くなってもお客さんが帰らない日”

そう───その日はすぐに訪れた
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「あっ───」

コアラの家、廊下で動くたくさんの人影
寝起き、すぐに気がついた私は振り返り、窓の向こう“オセアニア区”をゆっくり眺める
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大きなユーカリの木の陰に隠れ始めた太陽はスピードを徐々に上げ、山の向こうへと足早に沈んでいく
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───暗くなってもお客さんが私を見てる
「今日だ───」
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楽しみにしていた気持ちは大きく急に膨らんで、私の胸や頭をいっぱいにする
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「もう一度、早くもう一度眠らなきゃ───」
私は急いでぎゅっと目を閉じた
ユーカリの葉っぱに埋もれこっくりこっくり、コアラはそっと夢を見る
私はコアラ、眠るのなんて簡単なはずだった


「駄目だ────眠れないよヒロキさん」
今の私は目を閉じているだけのコアラだ────
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お昼に眠りすぎていたせいなのか────

ずっとわくわくしてきた、夢を見るための準備は必ず出来ている
それなのに眠くならない時があることを私は初めて知った
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「眠らなきゃ眠らなきゃ───」
そう思えば思うほど気持ちは焦り、胸がドキドキしてくることがわかる
ヒロキさんは空が暗くなり始めたらまた眠りなさいと言っていた
目が覚めたままでいると“優しい人からのプレゼント”は貰えないのかもしれない
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ドンドン、ドーン
遥か遠くで花火の音が聞こえだし、そして時間が過ぎてまた静か
お客さんもいなくなりいつもの夜へと戻ってしまう
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───暗くなったらまた眠る
私はこの日、その大切なことが出来なかった

チャンスは明日、もう一度
明日一日、最後のチャンス
神様お願い眠らせて
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───そっと始まる夢の中、いつものように私を夢の中へとそっと滑り込まさせて
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────いつもより短く感じた夜は明け、動物園はまた始まった
「おはよう」
飼育係さんの声がする
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私の頭の中は今夜のことでいっぱいだ
考えながら過ごす時間は変に長い
いつもよりも遅く進み、暗くなリはじめを気にするあまり何度も何度も空を見上げてしまう
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「ずっと眠っていたら駄目なのか────」
ふと思ってみたりもしたけれど、きっとそれじゃ駄目なんだ
明るい間に見る夢は、夜から始まる夢とは違う
そういうこと、きっとそんなこと────
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「そろそろだ」
昨日と同じように大きなユーカリの木の陰に隠れ始めた太陽がだんだんと山の向こうへと沈んでいく
どんなに遅く進む時間でも、こうしていつかは時間が過ぎて朝から昼、昼から夕方
短い夕方さっと過ぎて、また必ず夜が来る
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────眠るんだ、暗くなったら眠るんだ

オセアニア区の大きなユーカリ夜風に揺れて優しいリズム
気の早い秋の虫の声は優しい歌を歌うよう

私はそっと目を閉じた

『とっ、とっ、とっ、とっ』
音が聞こえる
『とっ、とっ、とっ、とっ』
どこからするのか静かに音が聞こえてきてる
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誰かの音、誰かが生きてる心臓の音
ポッケの中で聞いていた、あの柔らかくて温かいポッケの中でずっと聞いていた
なんだかとっても懐かしい、優しく包むあの音に私はそっと癒される

「お母さん、ありがとう」

気持ちはすぅっと温か落ちついて、私はすぅっと眠りに落ちる
お母さんの音、私の音、そして聞こえるもう一つの音

そっと広がる夢の中、3つの音が重なり歌う

優しい優しい夢の中
夢の中なら私は自由、私は自由どこまでも────
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開かなかったドアが開く
そう、夢の中なら私は自由────
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夜の動物園を楽しむお客さんの側をすり抜けて、私はオセアニア区を歩いていく

『ドアを開けて大きなユーカリ眺めながらあそこを歩いて、こっち側、それとも向う側───』
ずっと考えていたこと想像ばかりしていたこと
夢の中なら私は自由、今の私はどこでも行ける
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ヒロキさんの家の側
石のヒロキさんに「こんばんは」
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来年は8月24日にきっと来るねと、ちゃんと約束
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『ユイ、君はアフリカ区を抜けていくんだ』と低い声
石のヒロキさんが私に言った
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「一緒に行こうよ」
私はにっこり笑ってそう言い誘う
『いいね』
石のヒロキさんはにやりと笑う
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今、私達は夢の中
夢の中ならみんな自由、楽しいことおもしろいこと、なんでもきっと必ず出来る

────ヒロキさんが言っていた“暗くなったらまた眠る”ということ、それは今の私に自由が必要だってこと
きっと訳があって外には出られなくなっていた
だから眠って夢の中、夢の中から外へ出るということ
そんなこと、ヒロキさんが教えてくれたことってそんなこと
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私達はアフリカ区を抜け、お客さん達が大勢いる場所へと着いた
『向こうを見てごらん。あれが“優しい人からのプレゼント”だ』
石のヒロキさんはそう言いながら指をさす
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私はその指さす先、なかよしトンネルの方へ振り返った
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「わぁ」

そこには優しく歌い楽しそうに踊るコアラ達がいた────
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ひかりのコアラ
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そう、私を待っていたのは“ひかりのコアラ”達────
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“優しい人からのプレゼント”
みんなをここまで連れてきくれた

私の目から涙がぽとりと地面に落ちた
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ひかりのコアラは歌って踊る
リズム刻んで奏でるメロディー
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ひかりのコアラが歌って踊る
夜風に吹かれて不思議な笑顔
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コアラ、コアラ
私達はみんなコアラ
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コアラ、コアラ
一人、二人、三人四人
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十人、百人、一万人
私達はみんな笑顔のひかりのコアラ
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ブッチさんにキリンさん
みんな一緒に踊っているよ
みんな一緒に歌っているよ
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石のヒロキさんが笑って言った
『ユイも一緒に歌ってみなよ、ユイも一緒に踊ってみなよ』
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石のヒロキさんはそう言って、笑い転げて光の中へ
みんなと一緒に歌って踊る
なんだかとっても嬉しそう、なんだかとっても楽しそう
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私も笑って光の中へ
みんなと一緒に歌って踊ってたくさん跳ねる
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───そう、今の私は夢の中
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優しい優しい夢の中
夢の中なら私は自由、私は自由どこまでも────

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ひかるコアラと歌って踊る夢の中
夢の中なら私は自由───
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あの日ヒロキさんが言っていたこと
暗くなったらまた眠るってこと
そこから始まる夢の中
自由で楽しい夢の中
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心配してくれている飼育係さんに気を使わせないで外へ出るため
───自由に歌って踊って笑うため
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優しい優しい夢の中
夢の中なら私は自由、私は自由どこまでも────
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私は歌う、私は踊る、みんなと一緒に笑ってる
ひかりのコアラと一緒に歌う、一緒に踊る
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夢の中なら私は自由
───私達はみんな自由
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夢を見ようよ
夢で会おうよ
お母さん、お姉ちゃん、ワカちゃんハヤト
────世界中のコアラ達
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夢を見ようよ
夢で会おうよ
───夢の中ならみんな自由

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私の目が覚めてしまうその前に
みんな一緒に笑おうよ
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夢の中、醒める前に自然とつぶやく
「ありがとう」
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それは寝言に、そのまま寝言で
「ありがとう」

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ひかりのコアラ、会わせてくれた優しい人
ありがとう
みんなみんな本当に───
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「ありがとう」
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「ポッケの中まで温かいね───」
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※文中の映像作品は「ひかるどうぶつえん2017」に出展された作品、『コアラのグッバイソング』です
こちらから2016年の動画が見られます


     

by bon_soir | 2017-09-05 15:38 | 金沢動物園 | Comments(6)
8月24日に聞こえてきた声
金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
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静かな部屋に一人
今年の夏は静かに一人
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そっと眺めた窓の外
雨が多いと思った日々は過ぎ、夏の終わりにまた夏空光る
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今年も暑い日、8月24日
暑くて暑くてこんな日は、誰もみんな思い出す
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あの庭でそっと微笑むおでこに“シワ模様”
笑顔と優しい声を思い出す
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今年もまた8月24日
悲しい日、寂しさ心の奥底膨らむ日
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でも大切な日
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高い雲は秋の雲
秋の準備は進んでる
ぽろりと一粒涙をこぼせば秋は近づく
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もっと近くに、もっと傍に
8月24日
風さえ吹けば秋はすぐそこ
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───ドアをそっと開けてオセアニア区に出る
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───大きなユーカリの木、何度も何度も見上げて歩く
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───こっち側からにしようか
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───それとも少し静かな向う側
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───部屋で一人過ごす時間、私は色々考える。頭の中に色々な景色や音、風の雰囲気、草の匂い
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───暑くなれば私はいつも考える、あの場所、あのお庭。そこまで歩く私
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───でも
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「駄目だ、今日もやっぱり開いていない───」
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飼育係さんがどんなにちゃんと閉めても私が押せばそっと開く部屋のドア
いつの頃からだろう、どうしてもドアは開かなくなった
オセアニア区へ、動物園のどこかへ、私はお散歩が出来なくなっていた
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あそこを通ってあの場所へ
───石のヒロキさんが待っているあの場所へ
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8月24日───お姉ちゃんと二人、飼育係さんに教えてもらった日
側へ行こうと思っていたのにドアは開かない
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暑くなってからずっと考えていたこと、傍へ行くこと
それを今日するはずだったのに、なんでだろう
───ドアが開かない
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仕方がないから私は窓の向こう、オセアニア区を眺めてまた思う
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「ドアを開けて大きなユーカリ眺めながらあそこを歩いて、こっち側、それとも向う側───」
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「ヒロキさん、ごめんね。なんだか傍にいけないみたい」
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こんな時、お母さんならどうしただろう
こんな時、お姉ちゃんならどうしただろう
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こんな時、私はどうすればいいんだろう
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飼育係さんに聞くわけにはいかない
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───全部内緒のことだから
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私はコアラ
長く眠る
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今日の夢はどんな夢
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飼育係さんとたくさん話す、そんな夢
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いつもよりもたくさん話す、そんな夢
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今日の夢はどんな夢
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オセアニア区をてくてく歩いて大きなユーカリそっと見上げて
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咲き戻したブラシノキの花やっぱり真っ赤
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ほら、石のヒロキさんも笑ってる───
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今日の夢はどんな夢
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ワライカワセミの子供、私の所へ飛んできて
なぜか知ってる声で話す
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「その声は───ヒロキさん?」
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『少し身体を借りたんだ。また空を飛んでみたくって、少しの間、この子に身体を借りたんだ』
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『ユイ、大事なことだ───目を覚まさないでいい、夢の中で僕の話をそのまま聞いてくれないか』
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『ドアが開かなかったこと、外へ出ることができなかったこと───それは少し残念だと思ったかもしれないけれど大切なことなんだ』
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『コアラの神様がユイを大切に思い、しばらくの間ドアを開かなくさせた。そういうことなんだ』
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『飼育係さんに心配かけるわけにもいかないしね』
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『ユイ、わかっているんだろう? ───君にもその理由が、さ』
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『今はそっと、お部屋でそっと過ごすんだ。いいね?』
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『一人で頑張るユイに優しい人からのプレゼントがある。きっと素晴らしい贈り物に違いない───』
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『また夜中まで動物園が終わらない日が来る。今年最後の2回、知っているだろう?』
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『暗くなってもお客さんが帰らなければその日ってことだ。その日が来たら、ユイ───』
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『いつもなら空が暗くなって、コアラ達の目が覚めるころ───ユイ、君はもう一度眠るんだ。大丈夫、プレゼントを楽しみにしていれば夢を見るための準備は出来ている』
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『いつも見る風景から夢は始まり、その中へいつものようにそっと入っていくことが出来るだろう』
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『その夢の中のユイはきっと自由さ。夢の中ならなんでも出来るって信じる気持ちで自由を感じてしまえば後は大丈夫』
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『優しい人が用意してくれたプレゼント、素晴らしい贈り物───その場所まできっと、きっとたどり着くことが出来るだろう』
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『いつもと違うことだからもう一度言うよ。空が暗くなったら眠るんだ。わかったね?───』
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『ユイ、今日は8月24日だ───僕のこと、想ってくれてどうもありがとう』
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『じゃあ、またね』
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───すぐ傍にヒロキさんの顔を見た気がした
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「暗くなったらまた眠る」

夢の中でヒロキさんが言っていたこと、私は忘れないように何度も呟いた
───そう、夢で見たことはすぐに忘れてしまうかもしれないから
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あんなにはっきりと聞こえていたヒロキさんの声
今はもう聞こえない
いつもどおり、静かなお部屋に私一人
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8月24日
外へは出ることが出来なかったけど、私はヒロキさんに会うことが出来たようだ
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“優しい人からのプレゼント”
それはどんな物なんだろう

“優しい人”
それはどんな人なんだろう
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考えていたらまた眠くなってきた
私はコアラだから───
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「ひかりのコアラ」→☆☆☆☆☆へ続く





    

by bon_soir | 2017-09-03 15:40 | 金沢動物園 | Comments(4)
ユイと鳥の巣
金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
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少し賑やかになる予感のコアラのお部屋
静かな夏はもうきっとこれっきり

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コアラは薄暮性
晴れた空、照りつけた庭はちょっと眩しい
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ユイがふと見た窓の外
パンパスグラスの大きな穂がふわりと光る
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そっと一人、夏を過ごすユイの所へ
そっと近づく秋の予感
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まだ今は、うとうとうとうと夏の夢見て
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まだ外は、みんみんみんみんセミの声
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オセアニア区は夏から秋へ
ヒロキとお別れをした日はそっとみんなの所を通り抜け
オセアニア区は夏から秋へ
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あたりは静かに
ゆっくりゆっくり時間は進む
時間は途中で休憩取らないで
あたりは静かにゆっくりゆっくり
ゆっくりゆっくり時間は進む
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「目が覚めた。今日の夢も夏の夢」
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「ピンク色したサルスベリ、まわりではしゃいだコアラ達」
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「今日の夢はそんな夢。静かに始まりそっと目は覚め、静かに終わったそんな夢」
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「夏の動物園はどこか静か。一昨年も去年もそうだったのかは思い出せない」
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『ユイ、登っておいで───ユイ』
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「オセアニア区の大きなユーカリ、風に揺れて小さくて優しい声。私をそっと呼んでいる」
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「少し前に気がついた。目が覚めても私は自由。ユーカリの声聞こえたら私はまだ夢の中にいるようにふわりと自由」
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「外へ繋がるドアを開け、私はそっと外へ出る」
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「大丈夫、誰にも見つからない───一人だけの内緒のお散歩」
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てくてくてくてく
ユイは歩く
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ときおり見上げる夏の空
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目の前通る夏の虫
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てくてくてくてく
夏のお散歩
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てくてくてくてく
ユイは一人で不思議なお散歩
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夢で見たのと同じ色したサルスベリ
いつかみんなで眺めた夏の花
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楽しかったあの日々を思い出してそっと微笑み、涙がぽろり
涙はぽとりと地面に落ちて陽射しで乾く
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ユイをそっと見つめるオセアニア区の大きなユーカリ
ゆっくり静かに見上げたコアラ
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コアラの可愛い女の子
ユイ
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『ほら、登っておいでよ───高く登れば風が気持ちいいい』
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『ほら、登っておいでよ───ユイはコアラ、木に登ることが出来るんだ』
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ユーカリの声聞こえたら、誰もが高く登ることが出来るはず
ユーカリの声聞こえたみんな誰もが高く登ることが出来るはず
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高く登って風に揺れ、高く登って一休み
高く登って景色を眺めて、高く登って夢を見る
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ときどき誰かに話しかけ、ときどき誰かが背中を押して
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みんなは大きなユーカリ登る
みんな、みんなコアラの気持ち
コアラも人も動物達はみんなユーカリ登ってコアラの気持ち
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季節は静かに
ゆっくりゆっくり季節は進む
季節は途中で休憩取らないで
そっと静かにゆっくりゆっくり
ゆっくりゆっくり季節は進む
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「あ、あれだ───」
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「お部屋から眺めていた鳥の巣、誰かの巣」
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「どんな鳥が暮しているんだろう、どんな卵が、どんな雛が、どんなお父さんとお母さんが暮しているんだろう────ずっと思ってた」
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「驚かさないようにそっとそっと。私は登ってそっと近づく」
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「そっとそっと静かにそっと」
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「そっと、そーっと覗かせて────私にそっと覗かせて」
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「誰もいない」
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「そうか、雛は大きくなって巣立った。鳥は大きくなって空を行く。みんなまた新しい世界へ、と────飛んで行ったんだ」
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「少し食べさせて」
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「私は大きなユーカリの木の葉っぱを食べさせてもらう」
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「美味しい葉っぱ。私はコアラ、ユーカリの声を聞いてユーカリの葉っぱを食べて、ユーカリと一緒に眠るんだ」
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「柔らかい、柔らかくてなんだかとっても温かい」
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「誰もいない鳥の巣に私はそっと腰掛ける」
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「大きくなった鳥が巣立って飛んでいったように、私ももう大人────お母さんもお姉ちゃんも、ワカちゃん達ももう傍にはいない」
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───今年もサルスベリのお花が咲いたよ
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「そう呟いた時ぽとりとまた涙がこぼれた」
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「やっぱり一人じゃ寂しいよ────」
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「『また泣いちゃった』────そう呟いたときだった」
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「風が少し強く吹いて、大きなユーカリの木がゆっくり大きく揺れていた」
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「温かい鳥の巣の中、私は一緒に大きく揺れる」
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「────この感じ、なんだかとても懐かしい。懐かしくて優しくて、私の心をふわっとぎゅっと包み込む」
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「お母さん────これはきっとお母さんのポッケの中のあの感じ」
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「お母さんは私をポッケに入れて登ってたんだ。まだ小さな私を連れてオセアニア区の大きなユーカリの木に登ってこうして揺れていたんだ────」
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「お母さんの音が聞こえる、お母さんの声が聞こえる────ポッケの記憶、あのリズムと歌声。何より優しい子守唄。コアラ達の子守唄」
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「寂しい涙は嬉しい涙へ変わっていく。安心してそっと一緒に眠りにつく前の、あの子供の頃の涙へそっと変わる────」
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「大きなユーカリの木に優しく揺られた今の私、温かい鳥の巣の中で眠ります」
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「おやすみなさい、お母さん。おやすみなさいお姉ちゃん」
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「寂しくなったらまたここに、ここで揺られて夢の中────私はは風にそっと揺られて夢の中」
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コアラは風に揺られてそっと眠って夢の中
ユーカリと一緒、風に揺られて思い出すお母さん

────温かくて柔らかい、優しいポッケの記憶と夢の中




   

by bon_soir | 2017-08-15 12:11 | 金沢動物園 | Comments(4)
オセアニア区の夏空
金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
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窓から空を見上げるだけ、ただそれだけでも暑さが伝わる夏のこと
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何故か長く眠りたくなる夏のこと
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夏のユーカリ、夏の香り
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少し齧って広がる香り
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夏のオセアニア区は少し静か
ただ聞こえてくるのはワライカワセミ笑う声と、数増えてくるセミの声
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夏に見る夢長い夢
ふわりふわりと静かにゆっくり
そんな夢
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淡く輝く景色がぼんやり
色鮮やかに滲む色
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跳ねていたのはカンガルー
遠くで跳ねて笑ってる
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目が覚めたのに夢の中
そんな気がする夏のこと
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長い夢からゆっくり醒めて
ゆっくり今の時間の中へ
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夢の終わり、夏の色と夏の香りに滲んでる
滲む時間の上を滑る
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窓の向こうにカンガルー
夢の中で跳ねていた子と違う笑顔
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カンガルーを真似して跳ねた
コアラだけれど真似して跳ねた
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今年の夏はどんな夏
オセアニア区にはどんな夏
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どんな夏がやって来た
どんな夏が過ぎていく
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ユイの夏はどんな夏
今年の夏はどんな夏
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夢の中とは違う景色
いつもの景色は夢じゃない
今、ユイはオセアニア区、コアラの家の部屋の中
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窓の外には夏の空
大きなユーカリ風に揺れ
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窓の向こうにカンガルー
夢の中で跳ねていた子と違う笑顔
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お母さん、お姉ちゃん
ワカちゃん、ハヤト
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そしてポッケの中にいた小さな赤ちゃん
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みんなの笑顔が空に浮かぶ
大きなユーカリの木よりももっと高く
夏の雲よりもっと高く
夏の青空、そのまた向こう
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優しい笑顔がたくさん浮かぶ
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夏のユーカリ夏の香りに夏の味
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少し齧って広がる香り
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食べた後はコアラのベッド
香りで包む優しいベッド
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また静かな夢へと誘うコアラのベッド
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眠る前に一回り
木の上歩く一回り
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夢を見るための準備、そのまとめ
またいい夢見ることできるように
安心して眠れるように
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コアラは長い夢を見る
悲しい夢、怖い夢
嫌な夢を見ないようにしっかり準備
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ぐるっと、ぐるっとひと回り
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遠くで聞こえるセミの声
夏の空まで届いてる
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お空の上のみんなのところ
オセアニア区の夏の音
きっと聞こえているんだね
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同じ声、同じ音がみんなの所へきっと聞こえているんだね
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青い夏空どこかふんわり
太陽隠れてそっとふんわり
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夢の中でも何度も跳ねた
カンガルーの真似して跳ねた
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跳ねて一人、笑顔のコアラ
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儚く健気に暮らすコアラ
頑張るコアラ
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夏は一日一日過ぎていく
オセアニア区の夏の空は変わらない
空だけは何も変わらない
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頑張るコアラが笑顔な限り
青い空は変わらない




  

by bon_soir | 2017-07-26 08:00 | 金沢動物園 | Comments(4)
ユイ、一人の散歩

金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
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そっと一人で暮らす日々
今は一人、そっと一人で暮らす日々
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ユイは知っている
大好きなお母さんやお姉ちゃん、みんなが今どこにいるのかを
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果てしなく遠くはなれているはずなのに、いつもどこかで繋がっているということを
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同じもの、同じような風景を今でも一緒に見ているということを
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寂しいけれど大丈夫
ユイは寂しいと感じているけれど、きっと大丈夫
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バニラが残してくれたもの
たくさんのものを心の奥にそっとしまっているから大丈夫
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オセアニア区の優しさ、そして温かさ
全部感じて大丈夫
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もう一人のお母さん、傍で笑顔
きっと大丈夫
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ユイ、一人で過ごす初めての夏
それはまだ梅雨から始めてみたばかり、まだまだ続く暑い夏
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「かりかり、ぎっぎっ」

────どこかで声が聞こえてる
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声のする方を私は探す
ヤマモモの実がなっている

────あそこだ
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リス、タイワンリス君だ────
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「────外へおいでよ」
リス君は私を誘う

雨が降ったり止んだり、そんな季節
お姉ちゃんと撒いた種、雨が芽を出し育てていく
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私がお水をかけなくても大丈夫、今の時期、雨降り多い時期なら大丈夫
私はあまり外へは出ていない

あのヤマモモの実の色────季節はすっかり進んでいるようだ
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季節は私の心を追い越して、少し先で待っている
「早くおいでよ、外へおいでよ────」
リス君の声は季節の声だ
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────あの声、あれはきっと夏の声だ
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気がついてしまったら動かなければいけない
気がついてしまったらやらなくっちゃいけない
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知っているのに、気がついているのに────何もしないこと
知らないこと、気がつかないこと────それより駄目なこと、寂しくて悲しくて嫌になること

そんなこと
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飼育係さんにはちょっと内緒
内緒のお散歩
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そんなお散歩に出かけよう
夏が私を待っている
そんな気がする
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くもり空でもしかたない
思ったとき、次へと進まなければ忘れてしまう
きっと忘れてしまう
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夏は私を待っている
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リス君の声で気がついた
私はやっと気がついたんだ
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きっと去年と変わらない夏が来てる
色々なことがまた、またそっと変わっている
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出かけよう、お散歩に出かけよう
オセアニア区にまた、またあの夏がやって来てる
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お母さん、お姉ちゃん
ヒロキさん
みんなが知ってる夏が来ている
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もう来ているんだ
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一人のお散歩、一人でお散歩
出かけよう

ドアをそっと開けてすり抜けて、コアラの家をそっと抜け出す
────オセアニア区へ出かけよう
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ヒロキさんの庭の前、デイゴのお花咲いている
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デイゴは急に芽が伸びて、急いで蕾が膨らんで
急いで咲いて散っていく
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そんなお花、赤いお花
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お尻がちょっと引っかかる
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あぶないあぶない
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ヒロキさんのお庭のミモザ
また種になっているね
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今年もちゃんと種になっているんだね
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今日も空は曇ってる
また雨になるかもしれない
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でも大丈夫
少しくらい濡れたって大丈夫
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気にしてばかりじゃどこにも行けない
大丈夫、すぐにまた乾くよ
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雨の日は雲が低い
きっとお空のみんなも近くへ来てる
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きっと近くまで来てるんだ
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耳をすませば声だって、みんなの笑う声だって聞こえてくるかもしれないね
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「大丈夫、元気でやってるよ────」
小さな私の声だって、みんなのところに届くのかもしれないね
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雨の日、曇りの日
こんな日にお散歩するのも悪くない、そう考えれば悪くない
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かえって楽しいかもしれないね
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────キウイ、そうだキウイだ
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お姉ちゃんと“もいだ”あの実
かわいいキウイの実────
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今年もなっているのかな
大きくなっているのかな
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探す
私は探すよ、キウイの実
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どこかにあるよ、きっと今年もなっているよ
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「あっ」

────キウイの実は今年もちゃんと、ちゃんとなっていた
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毎年お姉ちゃんと一緒に“もいだ”あのキウイ
今年もちゃんとなっていた
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「お姉ちゃん、見えてる? ヒロキさんの庭のあのキウイ、なってるよ────今年もまたなってるよ」
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「戻ろう」
私は一言呟いて、部屋に戻る
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「どこへ行ってたの?」
飼育係さんは私に優しく聞いてくる
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「夏を見てきたよ」
私は一言そう伝える
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「そうか────」
飼育係さんはそっと微笑む
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夏が来たことに気がついて良かった
気がついたらあとは動くだけ
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気がついたら動くだけ
ただそれだけ────だよ
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楽しいね!
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夢を見るための準備
終わったかな
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動物園に遊びに来たみんな
みんなの準備は終わったのかな
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一緒に寝ようよ
夢の中でまた会えるかもしれないよ
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by bon_soir | 2017-06-28 10:53 | 金沢動物園 | Comments(2)
夏が来て
金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
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雨が降らない日々、それでも梅雨のこと
オセアニア区は夏の空
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ユイが見る夢、それはもう夏の夢
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コアラが見る夢、きっと夏の夢
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「一人で過ごす夏が来て、動物園は少し静か」
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「部屋で過ごしてばかりいるとわからない。外はもうぐーっと暑くって、太陽、青空も夏のもの」
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「去年の夏はどんなだったか、みんなは覚えているのかな」
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「去年の暑さ、去年の夕立、去年聞いた虫の声」
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「みんなは覚えているのかな、みんな覚えているのかな」
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「一人で過ごす夏が来て、私は全部覚えてる」
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「一人で過ごす夏が来て、私は全部思い出す」
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「私はコアラ。コアラのこと、私が一番覚えてる」
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「大切な思い出ばかり───大丈夫、私は全部覚えてる」
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「一人で過ごす夏だから、どんなことでも思い出す」
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「一人で過ごす夏が来て、コアラの家はどこか静か」
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「話し声、私の独り言ばかり」
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「早く夕方来ないかな」
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「早く夕方来ないかな」
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「夏の陽射し、輝く景色」
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「コアラには少し眩しすぎる」
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「太陽まだまだ枝の隙間。大きなユーカリ、枝の隙間」
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「動いて動いて向こうの方へ」
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「早く夕方来ないかな」
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「きっとみんなも涼しいね」
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「今頃一番日が長い。なかなか太陽沈まない」
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「一人で過ごす夏が来て、私は色々考えてばかり」
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「一人で過ごす夏の日に、一人私は考えてばかり」
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「窓の側から目をこらして外を眺める」
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「ヒロキさんの家にもちゃんと夏が来ている」
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「春は過ぎた。動物園を夏色に変えて過ぎていった」
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「あじさい咲けば夏の始まり、いつもどおり」
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「去年と違う一人で過ごす夏、私の夏」
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「みんな、みんなは変わりない?」
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「みんなの夏は変わりない?」
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「私は色々思ってる、色々色々思い出している」
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「みんな、みんなは変わりない? みんなの夏は変わりない?」
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「早く夕方来ないかな」
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「一人で過ごす夏が来て、私は色々考えて」
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「一人で過ごす夏が来て、私は色々思い出した」
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「寂しい寂しい毎日に、私は色々思い出した」
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「早く夕方来ないかな───それは」
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「───それは、お母さんに会えるから」
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「思い出した───私にはもう一人お母さんがいる」
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「優しくて温かい、私にはもう一人お母さんがいる。飼育係さんは私のお母さん、もう一人のお母さん」
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「お姉ちゃん、私は大丈夫。本当に大丈夫」
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「もう一人のお母さんが一緒にいてくれるから、私はきっと大丈夫───夏が来て私はきっと大丈夫」
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by bon_soir | 2017-06-17 15:50 | 金沢動物園 | Comments(8)
バニラとユイの幸せの種
「今日も戻ってこなかった───」
飼育係さんがいなくなった夜の動物園でふと呟いた
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お姉ちゃんが一人の部屋で過ごすようになってからだいぶ経つ。私だけの広い部屋、今は薄暗さと静けさが息苦しい
わかっていた───お母さん、ハヤト、そしてワカちゃん
あの部屋で過ごすようになるとある日いつのまにか、そして急にお空の向こうへとみんな行ってしまう
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───怖くて怖くてしかたない。どんどんやって来る嫌な予感に私は脅され続けている
「大丈夫、お姉ちゃんは大丈夫」って、負けないように何度も何度も声に出してみても、またすぐにその嫌な予感に押しつぶされる
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お姉ちゃんとお別れなんか絶対にしたくない───大好きなお姉ちゃんとずっと二人、一緒に窓の外を眺め微笑んで、一緒にお散歩に出かけて笑って、二人同じ夢を見て気持ちよく眠っていたい
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優しいお姉ちゃんといつまでも、ここでのんびりいつまでも暮していたい───ただそっと暮していたい
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ふと眺めた窓の外の星空に、きらりと一つ大きな大きな流れ星
「あっ───」とただそれだけ声が出た
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“本当はもう、ドアの向こうにはもう誰も───”
怖くてずっと動けなかった私の気持ちはその大きな流れ星に気付かされ、そして急かされた
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静まり返ったオセアニア区、コアラの家
私の小さな足音だけが小さく響く
立ち止まったドアの向こうで寝息と寝言、ここの部屋はユウキ君が眠っている
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「こっちかな───」
別のドアの前に立ち、少し迷ってから静かにドアを開けてみた
私の目から涙が溢れた
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聞き慣れた寝息といつもの匂い
きっと何か夢を見ているんだろう───時々その小さな口を動かしてお姉ちゃんは一人眠っていた
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「来たよ、お姉ちゃん」
私は眠っているお姉ちゃんを起こさないように気をつけて隣に座り、むにゃむにゃと動く小さな手をそっと握った───
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「おはよう」
今日もちゃんと朝が来て、飼育係のお姉さんの顔を見ることが出来た
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この小さな部屋で過ごすようになってどのくらい経ったんだろう
もう何日もユイの顔をずっと見ていない
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ユイは今何をしているんだろう
大きな部屋で一人、静かに窓の外を眺め、怖くなればユーカリにの中へ逃げ込んで、毎日きっと寂しくしている───
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ずっと一緒に暮らしてきた私、ユイの気持ちはどんなことでもよくわかる
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今すぐユイの傍へ行きたいけれど、なんだか身体が上手く動かない
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ここで過ごすようになったときからわかっていた
───そう、私は病気になってしまったんだ
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朝が来て段々と明るくなるオセアニア区、大きなユーカリの木の向う側へと沈む太陽───そして晴れた夜の明るい月とたくさんの星
この部屋からはどれも眺めることが出来ない
小さな窓から小さな景色がみえるだけだ
私はその景色を好きになれなくて、小さな窓の向こうを見ないようにしていた
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飼育係のお姉さんの「おはよう」で朝に気がつき、「また明日ね」という優しい笑顔でまた夜になることを知る
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“夢を見るための準備”はあまり上手く進まない
ぼんやりといつのまにか眠りについた私が見る夢は昔の風景、そして楽しかった思い出のことばかり
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───しかたない
病気になってしまった私、ずっと待っていた春の風景をまだ見ていないのだから
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「春、終わっちゃうね」と、チューリップのお花が風に揺れる様子を頭のなかに描いてふと呟いた
ユイと一緒にお花を見にいくこと、今年はこのまま出来ないかもしれない
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───ごめんね、ユイ
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「おはよう」とドアは開き、また変わらない朝が来る
飼育係のお姉さんは一日に何度も何度も様子を見に来てくれて、そのたび優しい笑顔を見せてくれる
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お姉さんの言葉に耳を澄まし、ふと思う───私はちゃんと笑顔を返してあげられているのか
それが気がかりだった

日に日にぼんやりとしていく私
“自分が今どんな顔をしているのか”、それがわからないでいた
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精一杯、一生懸命に精一杯、だから私は笑顔を作る
私が笑顔なら、コアラが笑顔なら───動物達が笑顔であったなら
きっとみんな笑顔になれる、みんなの笑顔で優しく温かくなっていく
動物園ってきっとそんな場所
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飼育係のお姉さんの笑顔を見ていつだってそう思っていた
悲しいことがあった日もそうして毎日少しづつ、私は素敵な笑顔に元気を貰っていたから
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お母さんの笑顔を思い出す
ワカちゃんとハヤトの笑顔を思い出す
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少ししかないお父さんの思い出も頭の中に浮かんでくる
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みんなの声が聞こえてくるようだ
小さく、時々はっきりと楽しいコアラの声が聞こえてくるようだ
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なのにユイは今一人、きっと一人
「ごめんね、ユイ」と声に出すと涙が一粒、また一粒とこぼれていくのがわかった
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気がついていた
───私がみんなの所、“お空の上”へといく日が近づいている
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病気になること
それは悲しくて悔しくて、そして凄く怖いことだ
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私はコアラだった
どんなときでも眠くなる、いつのまにか眠っている
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必要だった眠ること、大好きだった夢の中
今は不安でしかたない
一度閉じた目はまた開くのかがわからない、「おはよう」って声をまた聞くことが出来るのか───
今は不安でしかたない
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夢の中でユイに会う
泣いてる私の傍へ来る、そっと傍へ来てくれる
一緒に暮らしてきたあの日のように、ユイは私の傍へ来る
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夢の中のユイが私の手をそっと握る
あったかくて柔らかい、私はゆっくり目を開く
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「お姉ちゃん───」

「ユイ───」


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「おはよう」
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その日からユイは毎日来てくれるようになった
飼育係のお姉さんが帰ればすぐにドアを開け、朝日が登りだせばそっと静かに帰っていく
そんな日が何日か続いていった
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ユイの話に頷いて、ユイの笑顔で私も微笑む
怖い気持ち、不安な気持ちは少しずつ少しずつ、そっとどこかへ消えていった
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ユイは私の妹、たった一人の大切なかわいい妹だ
今までも、これからもずっとずっと変わらない
ユイは私の妹だ
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一度お別れをする日のことはもう怖くない、もう不安じゃない
ただ寂しく、ただ悲しいだけ

ただそれだけだ
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本当はいつまでもこの優しい日々が続いて欲しい
ただそれだけだ
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───私はいつものようにお昼寝をして、またユイが来る夜を待っていた
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新しいユーカリの匂いでふいに目を覚ます
ゆっくりと目を開けると飼育係のお姉さんの目に涙が溜まっているのが見えた
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「泣かないで」
そう言ったつもりだったけど飼育係のお姉さんに私の声は届かなかったみたいだ
ほっぺを涙がつたっていき、ぽたりとそのまま床へ落ちる
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「私は元気、こんなに元気だよ」と、そう言いたいのに上手くしゃべることが出来ない

───食べてるところを見ればきっと安心してくれる
そう思った私は新しいユーカリに手を伸ばす
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「おかしいな」
力が入らない
ユーカリをいつものように上手く掴むこと、それが私にはもうできなかった
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それからはもう眠くならなかった
私は今まで好きになれなかった小さな窓から外を眺め夜を待ち、そしてユイが来るのを待った

───お母さんの声がどこからかずっと聞こえてきている
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「よくがんばったね、バニラ。本当によくがんばったね」
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声がするたび私は頷き、頷くたびに涙がこぼれる
夜が来るのはあっという間だ
空はまた暗くなる

「お姉ちゃん───」
いつものように笑顔のユイがドアを開ける
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「ユイ───」
涙を手でぬぐい大好きな名前を言葉にすると、少し温かい気持ちになった
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───大丈夫、私もユイもきっと大丈夫
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「ユイ、今日はお願いがあるの」


「何?なんでも言って」
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「ヒロキさんの家に“旅の箱”が置いてあるのは知ってるよね。その中にミモザの種が置いてあるの。去年の夏にヒロキさんの庭で拾って集めて入れておいた種が内緒で置いてあるの。それを取ってきて欲しいんだ」
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「大丈夫、私はここで待ってるから。ユイが戻ってくるのをここで待ってるから、ね───」
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「───あった、ミモザの種。お姉ちゃんが言ってたのはこれだ」

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「取ってきたよ、お姉ちゃん。これのことでしょ───」
ユイは少し息を切らしてバニラの待つ部屋へと戻ってきました
手には一掴みの“ミモザの種”
去年、ヒロキの庭のミモザが落とした種でした
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「これ、どうするの?」
そう訊くユイにバニラはそっと微笑み、そのミモザの種を受け取り半分に分け、そっとまたユイに渡しました
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「ユイ、今から言うこと、少し聞いて───」
バニラはユイの目を優しくそっと見つめ、ゆっくりと話を始めました
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「ユイ、今渡したミモザの種をどこかに蒔いてお水をかけてみて。そう、陽の当たる所がいい。いつか芽を出し伸びていきお花が咲く。あの黄色いお花が咲いてくる。ただヒロキさんのミモザのように大きくなって木になるには何年も何年もかかるはず。木が大きくなるにはたくさんの時間がかかるの。動物園にある大きな木、みんな長い時間をかけてあれだけ大きくなった。動物達みんなが木陰で休めるくらい大きくなった。凄いでしょう、大きな木は長く長く生きてるの。この種、半分は私が蒔く。お母さん達と一緒に、お空の上の方でね───」
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「そう、私はお母さんとお父さん、そしてワカちゃんとハヤト、そしてヒロキさんの所へいかなければいけない時が来た───」

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「そんなの嫌だよお姉ちゃん、私も一緒に───」

「駄目、絶対に駄目だよ。お母さんも言っていた、自分から望んじゃ駄目なこと、絶対にいけないことがある。いつになるのか、どんな風になるのかは誰にもわからない。今の私のようにその日が来るまで、その日が来るまでただ毎日のんびりと頑張って、ここで暮してみんなと笑顔でいなければいけないんだよ。もし自分でお空へ行こうとしてしまったら、きっと私達に会うことは出来ないんだよ。ユイ一人どこか変な所へたどり着いてしまうんだよ。そんなの私は嫌、またいつか大好きなユイに会いたいよ。みんなでユイを迎えたいよ。またみんなで笑いたいよ。わかって、ちゃんと───」
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「だからね、ユイはミモザが種から大きな木になるまでを見ていくの。さっきも言ったとおり何年も何年もかかること。それでも途中で止めちゃ駄目だよ。大きく育ってたくさんのお花が咲くのを見ていないと駄目なんだよ。私はお空の上で同じように種を蒔き、お花が咲いて大きな木になっていくのを見ているよ。最初に芽が出てきたら同じように芽が出たかなって考えて、最初にお花が咲けばユイのミモザも咲いたかなって笑顔になれる。何年も何年もずっと先、ずっとずっと先のこと、立派な大きい木になれば───そろそろユイに会えるかなって涙を流すことができるでしょ───」
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「ユイ、大丈夫だよ最初のお花が咲く頃にはきっとお友達が増えてるよ。木になって、木が大きくなってたくさんのお花が咲く頃になればこのコアラの家も賑やかになってるよ───今こうして分けたミモザの種は私達二人の幸せの種。コアラの未来へ続く私達二人の幸せの種。みんなをきっと笑顔にしてくれる、そんな種は幸せの種───」
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「わかったよ、お姉ちゃん───」
バニラが別の部屋で過ごすようになってからずっと溜めていた涙をユイは一度に溢していました
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バニラは何度も何度もユイのほっぺをぬぐっても涙はどんどんあふれ、ぜんぜんぬぐいきれません
「泣きすぎだよ」
バニラは優しく微笑み、そしていつのまにか溜まっていた涙を同じようにあふれさせました
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二人はいつまでも涙を溢し続け、バニラはユイを、そしてユイはバニラを優しくぎゅっと抱きしめて二人最後の朝を迎えました
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「行かなくちゃ」
そう一言小さく声に出し、そしてバニラはミモザの種を自分のポッケにしまって部屋のドアを開けました
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明るくなり始めた空の不思議な色、綺麗な光はドアの隙間をそっと抜け、バニラを温かく包みます
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光に照らされたバニラはの身体はユーカリの葉っぱを掴むことが出来なかったことを忘れてしまうほどに動くようになり、足は自然とオセアニア区の大きなユーカリの木の方へと向います
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ユイは何も言わずバニラの後ろを歩き背中を見つめ、バニラと過ごした日々のことを思い出していました
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どんなことでも頭の中へ浮かび、そっと心の奥へとしまわれていきます
悲しいこと寂しいこともたくさんあったコアラの家での二人の思い出
いつだって二人一緒に泣いて、笑って過ごした大切な思い出はきっと忘れることがありません
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「ポッケの中のミモザの種は幸せの種。きっと大きく育ってく───」
あと少し、これからは離れてしまう二人
一緒に芽を出し長い時間をかけて大きく育っていくミモザの木
きっとそれは二人の心を繋いだままにしてくれると信じ、種の入ったポッケをそっと触り、ユイはふと“種の源”ヒロキの庭のミモザの木を眺めました
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夜の間は気がつかなかった風景───
朝日の中で見たミモザの木は満開に咲いていました
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本当ならもう花も終わっているはずのミモザの木は眩しく、黄色く輝き、ヒロキがまだ暮していたあの頃のように立派な枝を風に揺らせていました
バニラを少しでも明るく送り出すために“ヒロキがかけてくれた魔法”だとユイは信じ、「ヒロキさんらしいな」と小さく呟き、どんどんと前を行くバニラを早足で追いかけました
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「お姉ちゃん、待ってよお姉ちゃん」
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「たんぽぽだ。たんぽぽは咲いてるんだ。今年もこんなにたくさんかわいらしく咲いているんだ───」
大きなユーカリの木に向かう途中でたくさんのたんぽぽが咲いていることに私は気がついた
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どこにでも咲いている花だけど、どこで出会っても優しさをくれる花、たんぽぽ
私はたんぽぽが大好きだった
「───きっとお母さんも、ワカちゃんとハヤトも、ヒロキさんはもちろんのこと、お父さんも大好きなんだろうな」
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かわいらしく咲いているたんぽぽの傍に綿毛を見つけた
まだ丸い綿毛、少し欠けた綿毛───色々なたくさんの綿毛

綿毛は風に乗り色々な所を旅して回る
そしてお気に入りの場所を見つけて、またお花を咲かせるんだ
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「よかったら私と一緒に来てくれない?」
綿毛にそうお願いをした
出来ることなら私の傍でも咲いていてほしい、みんなの傍でかわいらしく咲いていて欲しい
そう思った
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すると一本の綿毛がこくりと頷いた
ただ春の風に揺れたってわけじゃない、本当に頷いてくれたんだ───
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「痛かったらごめんね」
私は頷いてくれた綿毛をなるべく優しく切り取った
そして潰れてしまわないようにそっとポッケの中へとしまった
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「後はあの木に登るだけだ」
一本の大きなユーカリの前で立ち止まり、幹や枝、そして葉っぱの形をよく確かめた
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間違いない、この木を登ってお母さんは旅立った
あの時途中まで追いかけたからちゃんと覚えてる
この大きなユーカリは雲の上、もっともっとずっと上まで伸びている
───金沢動物園のコアラのためのユーカリだ
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「ユイ、寂しいけれどここでお別れ。一度さよならだよ」
私がそう伝えるとユイはやっぱりまた泣き出した
でも大丈夫、もうユイはちゃんとわかっている
このお別れはどうしてもしかたないことを、そしてまたいつか会える日が来るということを
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ユイの涙は止まらない
ぼやけて何も見えなくなりそうなくらい涙は溢れ続けていた
「動物園が始まっちゃったら大変だから私は行くね」と言うとユイは泣きわめいたまま何度も何度も頷いた
今では私よりも身体の大きなユイ、そのときだけは何故かとても小さく見えた

───私達が一緒に暮らし始めたあの日のように
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「ありがとう」
私は最後の言葉をユイに言う
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「ありがとう」

それが金沢動物園、オセアニア区でユイから聞いた最後の言葉だった


オセアニア区の大きなユーカリの木を登っていくのは簡単なことじゃない
普段よりもずっと高く伸びているユーカリの木だ、何故か身体は疲れないけれどやっぱり時間はかかる
ただ上を見て登っている間にはたくさんの思い出が青い空に浮かび上がってきてくる
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楽しい毎日だった
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本当に楽しい毎日だったんだ
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楽しかったね、ユイ
ユイは私の妹、これからもずっと、ずっとかわいい私の妹
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楽しかったよ、ユイ
毎日毎日本当に、本当に楽しかったよ
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思い出した───お母さんのポッケ、あったかかったな

一番あったかい場所
私はそこへ行くのかもしれないな───
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───お姉ちゃんが大きなユーカリの木を登っていく
私はあの姿を忘れない、絶対に忘れない
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登ってきた太陽が眩しい
けれど目を離しちゃ駄目なんだ
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窓の向こう、段々と遠くへ飛んでいく鳥たちは一度でも目を離すともう二度と見つけることは出来なかった
きらりと光る飛行機だってそうだった
一度でも目を離しちゃ駄目、特に大切なことからは絶対に目を離しちゃ駄目なんだ
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「ありがとう」
私はお姉ちゃんにそれだけしか言えなかった
もっともっとたくさん伝えたい事があったはずなのに「ありがとう」ただそれだけだ
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お姉ちゃんが青い空に溶けていく
オセアニア区を離れ、空の向こうへだんだんと
だんだんと青い空に溶けていく

一度お別れ、さよならだ
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「お姉ちゃん、今まで本当にありがとう」
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「ありがとう」は不思議な言葉
みんなを笑顔にさせる、そんなことば「ありがとう」

「ありがとう」は別れの言葉
綺麗な涙をみんなにそっと落とさせる、そんな別れの言葉

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「ありがとう」は大切な言葉
心を込めて伝えればただそれだけでも大丈夫
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「ありがとう」


「ありがとう」
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バニラ、今まで本当にありがとう
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「あっ、お母さん」
お空の上で最初に出迎えてくれたのはやっぱりお母さんだった
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何も言わずただ笑顔で私のことをぎゅっと抱きしめる
懐かしい匂いと懐かしい温かさ
やっぱり私はお母さんの子供だ───
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綿毛をそっと取り出して、コアラのポッケからそっと優しく取り出して
まん丸欠けてしまわないよう丁寧に、そっと優しく取り出して
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綿毛にふーっと息を吹きかけて、一人一人が旅の空
春の風にすーっと吹かれて思い思いに旅の空
オセアニア区へアメリカ区へ、ユーラシア区、アフリカ区そしてほのぼの広場のみんなの所へ
一人一人が思い思いに旅の空
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バニラのことを好きだったみんなの所へ優しさ持って旅の空
コアラを好きなみんなの所へ愛情込めて旅の空

優しい春風、綿毛をそっと
お空の上のみんなの所へ───
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バニラ
大好きなコアラ

金沢動物園で暮らしたかわいいコアラ
みんなのバニラ
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by bon_soir | 2017-05-10 23:42 | 金沢動物園 | Comments(10)