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ユイと春の願い
金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
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春が終わってしまったかのような暑い日、それは初夏のような眩しい陽射し
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あのミモザも花も散りだして、ヒロキがいれば今頃きっと食べて歩いてる
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そんな速い季節の流れに置いていかれないように、急いでたんぽぽ咲き出した
春のそんなオセアニア区
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楽しい季節のはずなのに、今ユイは部屋に一人
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大好きなお姉ちゃん「バニラ」は今、別のお部屋で過ごしていました
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どんなにお客さんが賑やかにしていても、かわいいお花がどんなにたくさん咲いていても
コアラの家はとても静か
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仲良しの二人、ずっと一緒に暮らしてきた二人が揃わなければ楽しいコアラの歌は聞こえてこない

一人寂しい思いの中で健気に過ごし、寂しそうに時々微笑むユイ
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今はただ、バニラがまた戻ってきてくれる日を信じ、色とりどりでも寂しい春を、なぜか無表情で進む季節の流れを涙こらえて眺めていました
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「ポッケの中のどんぐりはいつも私に微笑みかけてくる───そう、お姉ちゃんがくれたあのどんぐりがそっと優しく」
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「部屋に一人でいること、ここがこんなに静かでこんなに寂しくて、そしてこんなに心細いなんて知らなかった」
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「私の傍にはいつだって笑顔があった。今までずっと優しい笑顔に励まされていたんだ」
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「コアラの笑顔にずっと、そっと励まされてずっと───」
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「飼育係のお姉さんにお姉ちゃんのことは聞けないよ。だって怖くてしかたない」
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「何も聞けないよ、怖くて怖くて何も、何も聞けないよ」
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「お姉ちゃん、今どうしているのかな。いつものように笑っているのかな。今頃夢でも見ているのかな」
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「こうして優しく抱っこして貰っているのかな」



雲のない空はどんなに晴れていても何故か寂しい
風が無ければ木はささやかない、自然の声は聞こえてこない
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そんなどこか居心地悪い春の日
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ユイは一人コアラの家からそっと抜け出し、思い出の場所へと歩いていきました
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それはバニラと二人、まだまだ小さかった頃に出かけた場所
───アメリカ区の小さなロッキーマウンテン
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楽しくわいわいと騒ぎながら歩いていったあの日と違い、遠く感じるアメリカ区
長く感じる一人の時間
ユイはただ前を見つめ頭にバニラの顔を思い浮かべ、そしてできる限りの早足で向かいました
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「お姉ちゃんと見たあのチューリップ達に会いたい───力強くそっと伸びてころりとふわっとかわいく咲く、あのチューリップ達に会いたい」
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「きっと今頃、きっとあそこで咲いているはず───きっと、きっとそう」
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静かな静かな金沢動物園
アメリカ区に着いたユイをそっと眺める動物がいました
プロングホーンのブッチです
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ロッキーマウンテンのショートカットの階段を一段一段登っていくユイを見つめ、ブッチはなんども頷くように優しく微笑みました
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「───ユイ。そうだ、お花は今綺麗に咲いている。かわいい女の子を笑顔にするように一生懸命に咲いている」
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「まるで君のことを待っていたように、たくさん咲きだし、そして揺れているんだよ」
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「そうだ、そこに咲いているだろう、あそこにもあっちにも、みんな咲いて君を待っていたんだよ」
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「みんな揺れて笑っているだろう───ここには風が吹いている。小さなロッキーマウンテンにはいつだって風が吹いている」
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小高い丘にたくさんのお花、優しく咲いたチューリップ
みんなユイに話しかけているようでした
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春の風に花は揺れ、会いに来た動物達もみんな一緒に微笑んで
春の優しさ楽しさそっと伝え、また来年と希望をつなぐ
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「ありがとう。そしてお願い───」
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ユイは花と一緒に風に吹かれ、話をしながら一緒に揺れ
溢した涙は土に染み、それを眺め自然の優しさいっぱい感じ───
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いつのまにか小さな笑顔を取り戻したユイ
「また来るね───」とそっと手を振り、小さなロッキーマウンテンを後にしようと階段を降りていきました
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「ユイ」
呼ぶ声の方を振り返ればそこにはブッチ
プロングホーンのブッチがユイに声をかけました
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「ブッチさん。お昼寝かと思って声かけなかったの。こんにちは、なんだか久しぶりになっちゃった」
ユイはブッチの傍へ行き、まだ少し涙のあとが残る笑顔でそっと腰掛けました
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「バニラの様子はどうなんだい」と心配するブッチに「お姉ちゃんはきっと大丈夫」と自分にも言い聞かせるように話し、ポッケの中のどんぐりを見せてもう一度微笑みました
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「お花を、チューリップを眺めてたら元気になった。ここは風も気持ちがいいね」
そう話すユイにブッチはそっと頷きました

「バニラにお花を摘んでいってあげたらどうだい? バニラも元気が出るかもしれない」
ブッチはユイに微笑みます

「それは、駄目。きっと駄目なの。お姉ちゃんもきっと喜ばない」
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「お花を見ること、触れることは本当に優しいこと、素敵なこと。でも今ここで摘んでいったらきっとすぐに萎れてしまう。ここで風に吹かれながら咲いていればもっともっと大勢の動物達に会うことができる。もっと長い時間かわいく咲いていられるよ。お姉ちゃんもきっとすぐに気がつき、そう考えるはず。お姉ちゃんとお花を見にいった時同じようなこと、もっと優しくそう言っていた。私は優しいお姉ちゃんに優しいことを教わった。大切なお姉ちゃんに色々なことを教わってきた。お花達には元気になったお姉ちゃんと一緒にまた見にくる、会いに来ることにしたの。だからさっきお花に、神様にお願いしたの───お姉ちゃんが元気になりますように、って───」
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「そうか、そうだな。それがいい。ユイ、君達は優しい───本当に優しいね」
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願いをこめて過ごすこと
願う前に想い、心に抱いて毎日過ごすこと
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それはきっと辛く寂しく、大切なこと
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みんな誰かに寄り添い優しさ貰って生きていく
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お花、植物、土、大地
風と太陽、全ての自然
───自然と自然に力を貰って生きている

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楽しい時、上手くいっているように感じている時
心がはしゃぎ浮かれている時
見えなくなっていること必ずある
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どんなに好きだと思っていてもどんなに大切だと考えていても、動物達にはいつでも会えるわけじゃない
いつまでも会えるわけじゃない
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動物達を想うこと、大切だというのなら日々忘れずに想うこと
それからはじめて願うこと、願い続けるということ
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願うだけなら叶わない

大切なことなのに忘れてる
大変なことが起こるまで気がつかない


「帰ろう。オセアニア区へ」
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「お母さんの写真が待つ、あのオセアニア区へ早く帰ろう───」
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「私達はコアラ。金沢動物園で暮らすコアラ」
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by bon_soir | 2017-04-20 07:00 | 金沢動物園 | Comments(10)
ユイのポッケにどんぐり一つ



金沢動物園で暮らすコアラ、バニラとユイ
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ずっと一緒、くっついて暮してきた二人
お姉ちゃんのバニラ、そして妹のユイ
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今、同じ家のままだけど少しだけ距離は離れ、二人はのんびりのんびり
のんびりと暮らす毎日
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時々は前のように肩寄せあって小さな声で話をする
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そんなバニラとユイ、オセアニア区のコアラの家
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悲しいこと(☆☆☆☆☆)があってからずっと涙をこぼし続けてきたユイ、いつも傍にいたバニラ
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オセアニア区の大きなユーカリに見守られる動物達の誰も気が付かない小さな物語
誰よりも優しいコアラ“バニラ”の誰も知らない物語
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「ユイは私の大切な妹───ユイが笑って私に話すこと、私がいつでも笑顔になれるそんなこと」
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───あの日からユイの笑顔は変わった
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今までよりももっともっと輝いて、もっともっと幸せそうな優しい笑顔
何度もあった悲しいことをそっと優しく包んでやわらげる、そんななにより素敵な笑顔───

それは“お母さんの笑顔”と一緒だった
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ユイはそんな笑顔で私に言う

「お姉ちゃん、ポッケの中に赤ちゃんが入っていった」
「お姉ちゃん、ポッケの中の赤ちゃんが少し大きくなってきた」
「お姉ちゃん、ポッケの中の赤ちゃんがもぞもぞ動いてるよ」
「お姉ちゃん、ポッケの中の赤ちゃんが小さな小さな小さな小さな声を出した」
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ユイは幸せそうだった
飼育係さんもお客さんもみんな、みんなが笑顔で、みんながユイを眺めていた

でもある日、ユイからそんな笑顔が消えた

「お姉ちゃん、ポッケの中の赤ちゃんが動いていないの───」
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「眠っているだけだよ。コアラだもん、長いこと眠っているだけ───」
私の言葉を遮るようにユイは何度も首を振った
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「お姉ちゃん、言わなかっただけ。もうしばらくこのまま、このままなんだ───」
ユイの目から最初はぽろぽろと、そしていつのまにかたくさんの涙が溢れ出していた

気がついてからもしばらくユイは頑張って笑っていたんだろう
みんなを心配させないように、もう一度動き出すと信じて───明日にはまた心から笑えるように
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しばらくして飼育係さんがユイのポッケの中をそっと覗く
ユイは飼育係さんの顔を見ようとはしないで遥か遠くを眺めていた
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飼育係さんは手で顔を覆い肩を落とし、ふらふらと戻っていく
私の心が悲しさでいっぱいになっていく
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ユイにもそれは伝わった、きっとわかってしまった
本当は最初からわかっていたことを、もう一度確認してしまっただけのことなのかもしれない
泣いてない、もちろん笑ってもいない
ただ一言呟いた
「お母さん、私はお母さんのようになれなかった、みたいだよ」

ユイから表情が消えてしまっていた───
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そのまま時間は過ぎていく
楽しいことがあっても悲しいことがあっても、時間だけはどんなときでも変わらず過ぎていく
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夕暮れオセアニア区が夜へと変わる
冬の始まり夜空には、冬の星座とたくさんの星
青い夜空を飛んでくる、青い羽の一羽の鶏
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ユイのポッケをちょっとつつく
優しくそっと、ちょっとつつく
そんな不思議な青い羽の不思議な鳥
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今が何時かなんてわからない
星空見えても昼なのか、青空見えても夜なのか
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ユイのポッケがぼんやり光る
小さな小さな、小さなコアラがポッケの中から顔を出す
青い羽の鳥の背中にそっと乗る

小さなコアラ、ユイの赤ちゃん
儚くそっと笑ってる
聞き取れない、声にもならない小さな声でユイに言う
口の動きを見ていればすぐにわかる

「あ り が と う」

私の目から涙が溢れる
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ユイに声をかけたけど、私はちゃんと喋れなかった
言ってあげたいことがあったのに、私はちゃんと喋れなかった
きっとユイには何も聞こえていない
ユイはただぼんやり空を見上げ、もう枯れてしまっていた涙の最後のひと粒をぽろりとこぼした
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ぱたぱたぱたぱた
小さなコアラを背中に乗せて青い羽の鳥が飛んで行く
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大きなユーカリの大きな枝の間を抜けて、オセアニア区の上でぐるっと大きく一回り

ぱたぱたぱたぱた、ぱたぱたぱたぱた
ふわっと浮かぶ白い雲の上まで、青空の中、星空の中へ

ぱたぱたぱたぱた
小さなコアラを背中に乗せて青い羽の鳥が飛んで行く
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「ユイ、ユイはちゃんとお母さんだよ。その子の大切なただ一人のお母さんだよ───」
私はさっき言ったことをもう一度言った
でもユイにはまた届いていない、きっと届くはずがない

お腹のポッケが空っぽになる、考えてもなかった出来事でポッケの中には何も無くなってしまう
きっと、そんなに悲しいことは他にない

ユイは疲れたのかいつのまにか眠っていた
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ユイが見る夢どんな夢───
コアラのお母さんが見る夢どんな夢───
小さな赤ちゃん抱っこする、小さな赤ちゃんおんぶする
風に吹かれて木に揺れて、二人で笑って二人でお昼寝
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ユイが見る夢どんな夢───
コアラのお母さんが見る夢どんな夢───
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あの日からユイに私は話しかけることが出来ないでいた

ただ毎日お願いだけをしていた

「ユイを守ってあげてね、お母さん───」
オセアニア区の大きなユーカリの木よりももっと上を見つめ、どこかで見守ってくれているお母さんにただ毎日お願いをして過ごした
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「お姉ちゃん、なんでコアラにはポッケがあるの?」

クリスマスが近づいたある日、ふと遠くを眺めながらユイが言った
ユイの方を見ると目に涙が浮かんでいる
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「ポッケ、無くてもいいよね」

ユイの声はどこか冷たく、かわいい顔は涙に濡れ、そしてその日は少しも動かず少しもユーカリを食べなかった


「ユイ、駄目だよ───思い出してよ、私達のお母さんのポッケのことを。あの温かくって柔らかくって優しくて幸せだった、あのポッケのことを思い出してよ───」
そう言えばいい、と思っても言葉に出来ない
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私にはユイの気持ちがよくわかる
そして勇気の出ない私は弱虫だ
大切な妹一人励ましてあげることが出来ない
あの日からずっと、私はずっと弱虫コアラだった
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元気がないユイを見ていると何かしなくちゃって思う
それはユイのためかもしれない、弱虫コアラのままの私のためなのかもしれない

「───お母さん、ヒロキさん」
大好きだった二人の顔がぼんやり浮かぶ
私は外へのドアをそっと開け、ヒロキさんのお庭へと歩いた
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「何も変わってないね、ヒロキさん
涙で霞むヒロキさんの庭、そしてヒロキさんの写真を眺めているとふと小さく声に出た
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すると今にも開きそうなドアの向こう、中庭から声が聞こえたような気がした
「ヒロキさん? ヒロキさんなの?」

少し隙間の出来たドアの向こうにそっと浮かぶヒロキさんの顔
それが本当のことなのか、私の頭の中だけのことなのかはわからない
変わらない、優しいヒロキさんが今目の前にいる
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(バニラ、君は優しいコアラ、コアラの女の子だ。そしてみんなが言うとおり少し不思議な不思議コアラ、昔からそうだろう。ユイのために出来ること、当たり前のことばかり考えていたってしかたないよ。君がすること、なんでもみんなを楽しくさせてきた。想像力だ、バニラ。君が思っているほど君は駄目じゃない)


「ヒロキさん、私駄目なの。私は弱虫、弱虫コアラなの。大切だと思っていても、思っているだけ。怖くて怖くて、何か言ってあげる、してあげることも出来ない弱虫コアラなの」
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(バニラ、君は弱くない、虫でもない。そうだ、弱虫コアラなんかじゃないよ。ユイのために何かをしなくちゃいけないよ、そしてきっと何かしてあげられるはずだ。想像するんだ、楽しいことを。ユイを笑わせる、なんだか楽しいことを想像するんだ。大切な妹のことを想い、想像する。君が笑った時、きっとユイも笑顔になるよ)
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「ヒロキさん」


(バニラ、僕の庭の花壇を見てごらん。もし君の顔に笑顔が戻ったのなら、今度は君が、君がユイを笑顔にしてあげるんだ。いいね、バニラ───)


私はヒロキさんの庭の花壇を見た───
季節外れのたんぽぽ一つ、ヒロキさんも私もユイも大好きな、黄色いたんぽぽ一つ
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なんだかニコニコ笑ってる
黄色いたんぽぽ一つ、花壇のすみに咲いていた

「ヒロキさん───」
振り返るともうそこにヒロキさんはいない
───大丈夫、夢でもなんでも大丈夫
ヒロキさんが言ったとおり私は笑顔になっていた
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涙をぬぐって走り出す
大きなユーカリの木が揺れて応援してくれる
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ユイの笑顔が頭に浮かぶ
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楽しい毎日、お母さんも隣で笑うあの楽しい日々
色々なことが頭に浮かぶ
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「あの日からずっと、ユイはポッケを見ていない」
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「お母さんになれなかった───そう考えてしまっているから駄目なんだ」
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「ユイはちゃんとお母さんできていたのに、ポッケの中にかわいい赤ちゃんがちゃんと入ってたのに。赤ちゃん、笑顔でお空の向こうへ行ったのに───」
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「───それなのに」
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「ユイはポッケのことを見ようとしない」
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「ユイがこのまま、ユイがこのままポッケを嫌いになる前に」
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「大切なポッケを嫌いになって、そのまま嫌いなまま、笑顔も取り戻せなくなるその前に───」
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「私は何をすればいいんだろう、何してあげればいいんだろう」
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「ユイがそっと笑うには、可愛い笑顔を見せてくれるには、私は何をすればいいんだろう───」
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クリスマス前のオセアニア区
冬の風が吹き外を駆けるバニラの身体をだんだんと冷やしました
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アフリカ区へ向かう坂道の途中で少し休憩をして、「アフリカ区、それともユーラシア区かなぁ」と呟いたバニラ
ヒロキに言われたように一生懸命にユイのことを想い、そして笑顔になるその時を想像していました
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「ユイ、やっぱりポッケは大切だよ。あの温かさ、覚えてるでしょ。ポッケを嫌いになんかならないで、ユイ───」
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「ユーラシア区に行ってみよう」
そう呟いたバニラがあるき出したその時、藪の中からコロリと転がり出てきた物がありました
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それは一粒のどんぐり
リスたちが食べ忘れた、少し大きめの丸いどんぐりでした

「どんぐりさん?どんぐり君? どっちかわからないけどこんにちは」
爪を立てないように、そっとどんぐりを掴んだバニラ
秋のこと───ハヤト、そしてワカが旅立ってしまった日のことがどんぐりに写っているような気がして、ふと寂しく微笑みました
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「ワカちゃん、ハヤト、私達を見守っていてね」
ぎゅっとどんぐりを掴み、そっと呟いたバニラ
ゆっくりと手を開き、またどんぐりを見つめました
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その時風が吹き、どんぐりがぶるっと震えたような気がしました

「お帽子、無いんだね。落っことしちゃったのかな、忘れてきちゃったのかな。もう冬だもん、寒いよね」
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「そうだ───ねえ、温かい所に行かない? 連れてってあげる、決めた!」
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ユイのポッケにどんぐり一つ
ユイのポッケにどんぐり一つ連れていこう
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ユイのポッケにどんぐり一つ
ユイのポッケにどんぐり一つ入れておこう
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ユイのポッケにどんぐり一つ
ユイのポッケにどんぐり一つ笑っているよ
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ユイのポッケにどんぐり一つ
ユイのポッケに丸くてかわいいどんぐり一つ

ユイのポッケに、ユイのポッケにどんぐり一つ
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バニラは眠っているユイにそっと近づき、帽子の無い丸いどんぐりをそっとポッケの中にしまいました
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バニラはそっと自分の部屋に戻り、静かに振り返るとユイはまだ眠ったままでした
「おやすみ、ユイ」
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バニラは微笑み、そして自分も夢の中へと滑り込んでいきます
“夢を見るための準備”
今日一日いろいろなことを考え、いろいろな物を見てきたバニラにはたくさんの準備が出来ていました
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ユイの見ていた夢は途中から変わっていました
バニラがポッケの中へどんぐりをしまってからすぐのこと
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それはコアラのお母さんの夢
ポッケの中で赤ちゃんが育っていっていた、あの幸せなとき毎日のように見ていた
そんな夢でした

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コアラが見る夢どんな夢───
コアラのお母さんが見る夢どんな夢───
小さな赤ちゃん抱っこする、小さな赤ちゃんおんぶする
風に吹かれて木に揺れて、二人で笑って二人でお昼寝

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「なんだろう、なんでこんなに温かい、幸せな夢を見てしまったんだろう」
ユーカリの中でそっと目を覚ましたユイは、明るくなってきた窓の向こうを眺めながら今見た夢を思い返しました
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自分の顔が笑顔になっている、そのことには気がつかないユイ
でも気がついたのはポッケの中に何かがしまってある、ということ
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笑顔になっていたユイはあの日から今まで出来なかったこと
“ポッケの中を覗く”
そんなことが出来るような気がしました
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そっと手でポッケを開き、中を覗いたユイ
そこにはコアラのような顔が描いてあるどんぐりが一つ入っていました
そっと取り出してどんぐりを見つめました
裏側には小さな文字で「あ り が と う」と書いてあります

「お姉ちゃん」
ユイはそう言いながら、隣の部屋を見るとバニラは微笑みながらまだ眠ったままでした
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「お姉ちゃん、こんな下手くそな顔描いちゃ、どんぐりがかわいそうだよ」
そう言ってユイは笑いました
久しぶりに見せるその笑顔はどんぐりに描かれたコアラの笑顔と同じくらい楽しそうに、そして輝いていました
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コアラの姉妹が今日も暮らす、金沢動物園のオセアニア区
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この先どんなことがあったとしても、二人はずっと仲良し姉妹
いつも二人で笑って暮らす、不思議コアラの仲良し姉妹
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二人で一緒に楽しんで、二人で一緒に喜んで
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二人で一緒に涙をこぼす
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バニラとユイ
かけがえのないコアラの二人
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「ユイのポッケにどんぐり一つ、私のポッケにもう一つ」
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「ユイのポッケにどんぐり一つ、みんなのポッケにどんぐりたくさん一つづつ」
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「ユイのポッケにどんぐり一つ、帽子が外れたどんぐり一つ」
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「ユイのポッケにどんぐり一つ、魔法をかけたどんぐり一つ」






    

by bon_soir | 2017-03-03 00:45 | 金沢動物園 | Comments(6)
変わったこと、変わらないこと
金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
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一年前に悲しいお知らせを聞いたのは、日向がまだ暑い夏の終わりかけ
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コアラ達の家の外にはお花を持ったお客さん
気がつくユイ
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「そうか、今日はそんな日───もう1年、か」
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オセアニア区の青い空を見上げたユイは一言呟き、一年前のあの日から今日までのことをふと考えました
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家の中には水が流れていく音
それは、朝時々聞こえるいつもの音
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「お掃除ありがとう」
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「ワカちゃんも起きてる。そうだよ、お部屋を綺麗にしてくれてるんだよ」
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「いつもと同じだね。お水の音がした後にはお部屋中が綺麗になってるね」
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「夏の間、暑い日にはお水の音はどこか涼しげ。冬になるとお水の音が何故か少し嫌になる」
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「冬になったらカンガルー達もお水には浸かれないね。冷たくって、きっと手足がかじかんじゃう」
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「季節の巡りは変わらない。去年も夏は暑かったし、冬は寒かった。晴れた日には空が青い───でもそれ以外は一年で色々なことが変わったな」
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「ワカちゃんのポッケからはハヤトくんが出てきた」
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「のんびりコアラのワカちゃん、いつの間にかお母さんになった」
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「ハヤトくんが大きくなるのに一年なんて必要なかった。もう私達と同じくらいになれたもんね」
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「またあと一年経ったら───また来年、ヒロキさんの家のところにお花を置いてもらえる日になったら、きっと大きなコアラになるね」
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「ハヤトくんは変わっていくんだね」
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「ワカちゃん、ハヤトくん、一年で二人は変わったのに、お姉ちゃんと私はなんだか変わってない気がする」
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「私が気がついてないだけなのかもしれないけれど、お姉ちゃんと私は変わってない」
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「あ、違う───お母さんがいなくなってしまった。私とお姉ちゃん、このコアラの家で凄く変わったことだった」
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「オセアニア区の大きなユーカリ、それを越えて空の上へ───高く高く登っていったって、泣きながらお姉ちゃんは言った」
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「変わらないこともたくさんある。変わったこと、変わってしまったこともたくさんある。動物園にも色々なことがある」
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「ナミヘイさんも引っ越しちゃった。残念だけどハヤトくんは会えなかった。やっぱり会わせてあげたかったね」
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「のんびり暮らす私達。暮らしているのはオセアニア区」
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「変わらないことは嬉しいこと、変わっていくことも嬉しいこと」
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「変わらないことは悲しいこと、変わってしまうことも悲しいこと」
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「いろいろ考えていると思い出す。お母さんのポッケのことを思い出す」
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「私たちはポッケの動物。ポッケの中が一番好き」
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「ハヤトくんもワカちゃんのポッケを探してる。お母さんのことをいつだって探してる」
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「でも見つけたってもうポッケの中には入れない。みんな大きくなっていくからね」
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「変わっていくね、変わってしまったね。変わらないね、何も変わらないね───」
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「明日はどうなるんだろ、来週はどうなるんだろう。来月はどうなるんだろう───また一年経ったらどうなっているんだろう」




   

by bon_soir | 2016-08-31 07:00 | 金沢動物園 | Comments(2)
バニラとユイ
金沢動物園で暮らすコアラ、バニラとユイ
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二人のお父さんはライタ
二人のお母さんはテルちゃん
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お父さんもお母さんも悲しいけれどもういない
金沢動物園にはもういない
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笑顔の二人だけど、時々思い出せばきっと涙をこぼしてる
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ぽろりと一粒
空を見上げてぽろりと一粒、きっと涙をこぼしてる
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二人は金沢動物園で暮らすコアラ
きっといつまでも金沢動物園のコアラ
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ライタとテルちゃん
二人に見守られて暮らす、そんなコアラ
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ふとした瞬間が本当にテルちゃんに似てきた、かわいい二人のコアラ
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それにしても大きな葉っぱばかり食べるバニラ
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朝早く、まだ交換前のユーカリを食べるユイの下
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変な所で眠るバニラ
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不思議なコアラ
不思議な姉妹
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特にバニラはどこか不器用
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そんなコアラ、大好きなバニラ
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みんな優しいから大丈夫
きっと、ずっと大丈夫
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by bon_soir | 2016-06-27 19:00 | 金沢動物園 | Comments(2)
ユイと涙とブラシの木
金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
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まだ子供の頃、床を飛び跳ね走りまわり、部屋に来た大好きな飼育係さんに甘えたりと、明るい昼の間もよく起きていたユイ
でもここ最近、ここ何ヶ月か、ユイは昼の間は長く眠り、他の誰よりもコアラらしく過ごすことが多くなっていました
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それはユイが大人になったから
もしかするとそうなのかもしれません
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大好きだったウォンバットのヒロキ、そして大好きなお母さんのテルちゃんがオセアニア区から遠く旅立ち、悲しいということがどんなことなのか──
それを経験してきたユイ
ユイは色々なことを経験し、色々なことを想い、考え、色々な夢を見るようになってきているのです
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同じ部屋の中で赤ちゃんが産まれ育っていく、そんな嬉しいこともあれば悲しくて涙をこぼし続けなければいけないこともある
この世界には目の前の辛いこと、温かい気持ちになる素敵なこと、そして何故だかわからない不思議なこと
色々なことを考えればみんな夢を見るための準備になる、そしていつのまにかぐっすりとゆっくりと長く眠る
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そんなユイの毎日

今日の夢はどんな夢、さっき見た夢はどんな夢
これから見る夢はどんな夢
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「ブラシの木、真っ赤に咲いたブラシの木」
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「眠る前にずっと眺めていたブラシの木。やっぱり夢の中にも出てきてくれた」
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「今日見た夢はブラシの木。風に吹かれてそっと揺れ、虫が集まるブラシの木。間を抜けたり登ったり、そんな私と真っ赤な世界のそんな夢」
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「去年の今頃も咲いていた。そう、去年のことを思い出した」
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「──あの時ブラシの木を眺めていたヒロキさんは泣いていた。大人なのに泣いていたんだ」
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「遠く離れたお友達がいなくなったと言って泣いていた。泣き顔が恥ずかしいと背中を向けたり、一生懸命に笑顔を見せたり」
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「大人なのに泣いていたんだ」
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「でも今ならわかる。大人だから泣いていたんだ」


起きてきたユイは窓の外を眺め、少し曇ったオセアニア区に咲くブラシの木を見つめました
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「ヒロキさん、今年も真っ赤なお花がたくさん咲いたよ。ブラシの木がいっぱい咲いたよ」
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「どこかから見ていますか?あのブラシの木を見てくれていますか?」
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「あの時、涙をこぼし想ったお友達、そのお友達のウォンバットと一緒に見てくれていますか?」
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「今年もたくさん咲きました。真っ赤にたくさん咲きました。今年もブラシの木は咲きました」
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「ブラシの木だけじゃありません。ヒロキさんの部屋のキウイ、お姉ちゃんと実をもいだキウイも伸びました」
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「お庭のミモザのお花はもうすっかり種になりました」
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「春のお花は夏の花、草へと変わり出しました」
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「ヒロキさんが大好きだった夏の草です。美味しそうなあの夏の草です」
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「デイゴの葉っぱも茂り出しました」
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「気がつきましたか? 今年は煙の木も植えてもらったんですよ。ふわふわ揺れる煙の木です」
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「ブラシの木が咲くともう夏です。眩しくて暑い夏です」
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「あの時のヒロキさんの涙を思い出し、今ブラシの木を眺めています」
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「そしてヒロキさん、お母さんのことを想い、同じ様に今私も涙をこぼしています」
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「それはきっとお姉ちゃんも同じ、きっとそうです」
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「今年も夏がやって来る。ブラシの木と一緒に暑い夏がやって来る」
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「1年なんてすぐ。1年間はこんなに短い」
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「私もお姉ちゃんもあんまり変わらないけどワカちゃんはお母さんになっていて、ハヤトは大きくなった」
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「ワカちゃんそっくり」


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「咲いたブラシの木が風に微笑み、そして言う。夏が来るよと動物達にそっと言う」
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「ヒロキさんもお母さんもいない夏。工事が終わって初めての暑い夏」
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「涙はこれから何回こぼれるんだろう。夏が過ぎるまでに何を想い、思い出して私は泣くんだろう」
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「今はまだ外も賑やか」
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「真夏になると昼の間は少し静か。コアラの私は良く眠れる」
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「見る夢もその分増える。それはもうわかってる」
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「今日の夢はどんな夢、明日の夢はどんな夢」
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「準備をしてもわからない。見てみなければわからない」
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「夢はそう。夢はいつもそう」
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「ただひとつ──夢の中に出てくる動物達は笑ってる。みんな楽しそうに笑ってる」
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「だから笑う。夢の中の私も笑う、みんなと一緒に笑うんだ」
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「涙が出るのは、寂しく悲しい気持ちになるのは決まって目が覚めている時。眠ることが好きなのはそうだからなのかもしれないね」
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「ブラシの木が咲いている。今日も真っ赤に咲いている」
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「さっきお姉ちゃんも眺めてた。一粒一粒涙をこぼして眺めてた」
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「私と一緒。思い出していること、想っていることはきっと私と一緒」
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「暑い夏がまた来るね。すぐ1年経っちゃうね」
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「でも去年今年は違う夏。違って見える、違って感じるそんな夏」
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「今年の夏はどんなだろう、あなたの夏はどんなだろう」
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「どんなだろう」





  

by bon_soir | 2016-05-26 07:58 | 金沢動物園 | Comments(6)
ユイ
金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
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いつの頃からか、開園している間は眠っていることが多くなったユイ
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木に登るのは金沢動物園のコアラの中でも得意そうなユイ
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腰掛けるときも器用な感じ
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甘えん坊なユイがいつも飼育係さんを待っていた場所
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ここにいるユイもなんだか久しぶり
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コアラはかわいい
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ワライカワセミの声が聞こえるね
今までと違う方角から聞こえるね
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一番高いその場所でいつも何を見ているの?
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ユイの丸い顔は変わらない
小さな頃からずっと、ずっと変わらない
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眠っていない時、健康診断な時
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行きたくないのか足でつかまり、少し抵抗
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伸びたコアラはへんてこで可愛らしい
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いってらっしゃい
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おかえりなさい
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ユイもいつのまにかしっかりとしたお姉さん
小さい小さいと思っていたのは、もう昔のこと
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でも時々はずっこける
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きっとお部屋が暗い時間、みんなが見ていない時はもっと笑ってる
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みんなはもっと笑ってる
きっとそう
コアラ達はきっとそう
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お姉ちゃんといつまでも一緒に暮らせたらいいね
それがいいね
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静かに、何も変わらずいつまでも
それがいいね
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by bon_soir | 2016-04-23 07:00 | 金沢動物園 | Comments(2)
オセアニア区の小さな幸せな時間

そわそわそわそわ
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きょろきょろ きょろきょろ

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いつもの愉快な音楽が聞こえてきたなら それはおまちかね

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ワカちゃんもおまちかね

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まだ顔を見せてくれないポッケの赤ちゃんもきっとおまちかね
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もちろん テルちゃんだっておまちかね
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金沢動物園の午後1時30分 コアラのランチタイム それはおいしいユーカリがコアラたちのもとへやってくる楽しい時間です

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ユーカリしか食べられないコアラたちのために いろんな種類のユーカリを集めたポッドは
たくさんたくさん食べてくれますようにと 飼育係のお姉さんたちが願いが込められた優しいポッド


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おなかいっぱい食べたらすぐにおやすみ おなかいっぱいのおいしいだけではなくて
心地よく過ごせるように ふかふかのソファーのようになったり ベッドになったり

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優しい気持ちがコアラのおうちいっぱいに広がるランチタイム みんなが笑顔になる幸せな時間です

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だけれど もっと特別な時間が 週末にはあります

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大きなくるまが入り 古いれんががきれいにはがされて

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見慣れた風景が 少しずつ変わっていく さみしいオセアニア区を あったかい景色にかえてくれるやさしい時間

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週末の午後3時30分 それはコアラのガイドの時間

お天気がよくて 暖かい日ざしが優しい日には コアラのおうちの入口横の小さなお庭に
かわいいユイちゃん(もしくはバニラ)がやってきてくれます

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少しばかり冷たくなり始めた夕暮れ前の秋の感触 ユイちゃんはどう感じているのでしょう

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同じ景色を眺めて 同じ音を聞いて 外での楽しい時間を一緒に過ごせることは とってもうれしいことだよ ユイちゃん

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コアラの真っ白なおしりにはしっぽはないよ って飼育係のお姉さんのおはなしにあわせて いろいろな様子を見せてくれます

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ユイちゃんはまだおかあさんにはなっていないけれど おなかのふくろはどうなってるかな

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するどいつめはこんな感じ
工事前のユーカリ広場でのガイドよりも 今の方がちょっと高くなってるぶん 近くで詳しく見られるようになったかな

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ユイちゃん それはユーカリじゃないよ 小さな葉っぱはかわいいけれど これはつげの葉っぱだよ

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間近で感じられる動物たちの様子 大事なコアラの生態を知ることはもちろんだけれど
言葉は交わせなくても ユイちゃんの心の動きを感じることができる 優しい時間 みんなユイちゃんのことが大好きになる時間です

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まんまるの目で何が見えたかな 大きな耳で聞こえた音は どんな音
ユイちゃんが見上げた木立の向こうは 港へと続く高速道路

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車に乗ってる人たちは 木立の奥にこんな幸せな時間が流れているなんて まったく知らないだろうね ユイちゃん

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おかしいような うれしいような だけどもちょっと切ない気持ち

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ここオセアニア区以外の場所で 日本の動物園 世界中の動物園で コアラのふるさとオーストラリアで そしてユーカリの森の中で
私たちは知らないけれど 同じように幸せな時間が流れているにちがいありません

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きっと小さなことだけれど幸せな時間 みんなが笑顔で見つめあう時間が流れているよね ユイちゃん

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コアラのガイドは 土日の午後3時30分 お天気がよくて寒くない日には かわいいユイちゃんかバニラがみんなに会いにきてくれます
雨が降ったり、とっても冬の寒い日は コアラのおうちの中で ガラスの向こうのコアラたちを見ながらのガイドになります
間近で会えないのはちょっと寂しいけれど でもガラスの向こうのガイドに興味津々のユイちゃんの愉快な様子も案外楽しいです
























by bon_soir | 2015-10-23 07:02 | 金沢動物園 | Comments(0)
バニラとユイ
金沢動物園で暮らすコアラ、バニラとユイ
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なんだか最近二人はとても仲がいい
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二人で外に出てきても
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なんだかとっても仲がいい
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オセアニア区の大きなユーカリの木を一緒に眺めてきた二人だから
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ずっと一緒に暮らしてきた二人だから
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お姉さんのバニラ
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いつまで経ってもまだまだ子供のよう
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妹のユイ
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小さかったユイは大人になりました
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「ユイが来た」
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「ユイは私の上に行こうとする」
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「それは私がいつも下の方にいるから。コアラはやっぱり木に登っていく動物だから」
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「ユイ、今夜ヒロキさんの所へ行こう。ヒロキさんと一緒に夏の星空を眺めよう」
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「お母さんとワカちゃんも誘ってヒロキさんの所へ行こう」
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「ユウキ君はきっと眠ってる。女の子のコアラ4人で出かけよう」
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「オセアニア区のサルスベリが咲いている、ナミヘイさんが教えてくれた」
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「ユイ、楽しいね」
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「金沢動物園は楽しいね」
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「私達はいつまでも一緒だね」
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テルちゃんの子供、バニラとユイ
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二人ともバニラらしく、ユイらしく大きくなって、色々なことを憶えました
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二人で暮らせばもっとかわいい二人のコアラ
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ワカ、ユイと一緒に暮らしてきたバニラ
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これからもバニラは赤ちゃんの親離れを助けて行くのかもしれません
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ユイもいつかはお母さんになるのかもしれません
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そんな時が来るまでいつまでも一緒
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そんなバニラとユイ
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by bon_soir | 2015-08-21 00:01 | 金沢動物園 | Comments(0)
大きくなったユイ
金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
体の大きさはもうお姉ちゃんのバニラと変わらなくなりました
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ただ少しわがままな女の子だったユイ
でもここのところのユイ、様子が変わってきたようです

ユイがここにいる時は、たいていが「私をかまってよ」のサインみたい
でもここの所のユイ、以前のように前のめりに待たなくなり優しくそっと待つように
座り方も体育座りの形
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飼育係のお姉さんが来れば肩に乗ろうと狙います
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足とお尻がかわいいですね


こうして可愛らしくポーズをとっている時も、
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全体的にはこんなふう
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前はこんなふうに足を投げ出さなかったのに……
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そのすぐ後のユイの右手
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思い切りよく開いているのは何なんでしょう
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その足と右手
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かわいい

そのまま眠るとこんなふう
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かわいいユイ
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コアラ達は起きているところも眠っている所も色々眺めていると個性が強く、ほんとうに可愛くて面白いです
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一人ひとり、動物達もそれぞれ一人ひとり
儚く健気に頑張る一人ひとり






by bon_soir | 2015-06-21 07:30 | 金沢動物園 | Comments(0)
ユイ
金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
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この日、落ち着きがない期間のユイ
朝から歩き回ります
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「こんな気分なのは私だけかと思っていたら、ワカさんも少し変だ」
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「歩くことは負けたくないし、私はワカさんにもお姉ちゃんにも勝ってると思ってる」
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「でも、私がワカさんに少し負けてるかなと思うところ」
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「耳の形がワカさんの方がかわいいのかも、と思うところ」
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「お姉ちゃんは眠っている」
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「背中に陽が当たる。じんわりと暖かくなってくる」
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「もう外は夏の日差し。私達の家は快適だけど、みんなのことは心配になってくる」
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「ヒロキさんの家のキウイに実が付き始めたとお姉ちゃんが言っていた」
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「実が大きくなったらお姉ちゃんと一緒にもぎにいく」
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「そんな約束」
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「横木を何周も回る」
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「すると、お姉ちゃんも目を覚ます」
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「嬉しいけど、私がうるさくしているのが嫌なのかも」
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「ごめんね、お姉ちゃん」
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「私が床に降りていく理由」
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「そろそろ大好きな飼育係のお姉さんがやって来るから」
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「ほら、眠っていたワカさんも目を覚ました」
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「お姉さんが掃除をしてくれる」
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「傍にいたいのに、どうやら掃除の邪魔みたい」
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「だから上に登って傍にいる」
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「どうして私は飼育係のお姉さんが好きなんだろう」
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「どうしてこの人のことが好きなんだろう」
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「今はこれ以上考えなくて大丈夫」
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「きっと答えは難しい。そういうことだから」




   

by bon_soir | 2015-06-12 00:01 | 金沢動物園 | Comments(0)