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みゆき
王子動物園で暮らすホッキョクグマ、みゆき
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「朝から暑いな」
ふと声に出る頃、みゆきは思い出す
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いつも一緒だったもう一人のホッキョクグマ
いつもの声が聞こえなてこなくなったあの日のことを
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最後の言葉、静かな声にしてくれた優しい言葉を思い出す
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その言葉は誰にも教えたことがない
言葉は伝わり、また先へと伝わって、伝わり続けていく途中───
少しづつ少しづつ、必ず変わっていってしまう
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みゆきはそれが凄く嫌だった
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もう聞くことが出来ない大切な言葉
少しでも変わって伝わること、それが本当に嫌だった
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自分にかけてくれた言葉
心の奥底、大切にとっておいた
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「朝から暑いな」
ふと声に出る頃、みゆきは思い出す
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一緒に暮らしてきたホッキョクグマ、その最後の言葉を思い出す
思い出して涙をこぼす
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ぽろりと一粒
涙をこぼす

お客さんがみゆきを見てる
涙はプールでごまかした
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プールで泣いた
溢れる涙、濡れてごまかし泣き続けた
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大切な言葉、大切な笑顔
涙と一緒に心にしまう
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忘れないように、なくさないように
───またいつでも思い出せるように
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言葉思い出すうち、言葉繰り返すたび
何度も何度もつぶやくたびに、言葉はだんだん歌になる
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リズムに乗せてゆっくりゆらゆら
言葉はだんだん歌になる
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あの言葉はみゆきが歌う歌になる
少し悲しいあの日の風景、空の色
最後の笑顔
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合わせて歌う歌になる
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さみしい時つらい時
いつでも口ずさめるように
最後の言葉、静かな声にしてくれた優しい言葉
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みゆきが歌う歌になる
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歩けば足跡、いつもどおり
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歌のリズム刻むよう
ゆっくりスロー、歩きながら口ずさむ
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いろんなことが形になって、2年経って想いになって
言葉はみゆきの歌になって
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みゆきは一人、口ずさむ
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たまに吹く風、リズムになって葉っぱを揺らし
テンポ合わせて歌にした
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みゆきが聞いたアイスの言葉
みゆきが歌う歌になる
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一人で歌うみゆきの歌
何度も何度も口ずさむ
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「朝から暑いな」
ふと声に出る頃、みゆきはゆっくり歌い出す
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大切な言葉、悲しい歌
涙の笑顔で口ずさむ
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いろんなことが形になって、2年経って大きな想いになって
アイスの言葉、心の言葉───
ホッキョクグマ達そっと癒やす、みゆきが歌う歌になる
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ゆっくりスロー
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つぶやくように
リズムに乗せて
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みゆきが歌う心の歌、口ずさむ
みゆきは一人、口ずさむ






   

by bon_soir | 2017-05-24 08:21 | 王子動物園 | Comments(0)
ツヨシのお気に入り
ズーラシアで暮らすホッキョクグマ、ツヨシ
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遊ぶツヨシのお気に入り
この日はこの小さい方の黒いパイプ
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こうして進む
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けっこう何度も
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楽しいね!
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でも本当のお気に入りはジャンブイ
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勝手に遊べるわけじゃないけれど……

※4/26のことになります



    

by bon_soir | 2017-05-02 12:13 | ズーラシア | Comments(2)
ジャンブイとツヨシ
ズーラシアで暮らすホッキョクグマ、ジャンブイとツヨシ
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ツヨシ、横浜での二回目の春
それは二人一緒に過ごす姿、初めての春
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ぱっと輝く流れ星が交わるように、この刹那、どんなことより特別に
───膨らんだ蕾がそっと咲くように、どこか当たり前のように訪れた二人一緒の春
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二人のホッキョクグマ、時には温かさを越え熱く、時には穏やかに広がる波紋のように静か
短い春に訪れる短い時間
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ホッキョクグマの庭、恋する気持ちが二つ、何度でも何度でも交わればいいと駆け抜ける
そんな二人の輝く季節
それは大切な物語、まだまだ途中の春のこと
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「名前? 私、ツヨシ。本当は男の子の名前なんだよね。少し恥ずかしい───」
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「恥ずかしいことなんてあるもんか。とても素敵な名前だよ───優しくてかわいい名前だよ」
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ツヨシの横浜での暮し、それはそんな話で始まった
一年と少し前、たくさんの花が咲きだしてきた春の始まりのことだ
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ツヨシのこと、まだ名前しか知らない去年の春のこと
あれからどうだ、僕はツヨシのことをもっとたくさん知ることが出来たのか
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全部知ってるなんてことは絶対ない
半分、半分の半分か
まだまだほんとちょっぴりなのか
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───そうだ、僕は今ツヨシのこと、どれだけ知っているんだろう
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追いかける
ツヨシは僕から離れていこうとする
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何故なんだ
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ツヨシが僕を見つめている
なのに他のことに僕は夢中だ
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すれ違う
届かない
見えない
感じない
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きっとツヨシのことを僕がまだ何も知らないからだ
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二人一緒の春は短い
短い春の中、もっともっと短い時間
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そっと追いかけ、そっと待ち続け
すれ違う僕達の春はそっと過ぎていく
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チロちゃん、バリーバさん───そしてツヨシ
みんな違う、誰もみんな違ってる
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二人一緒に過ごすこと
それは簡単なことじゃない
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ツヨシが僕にそっと微笑む
微笑みながら僕を見ている
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春の風、草の匂い
強い陽射しと青い空
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僕はふと思う
いつだってそんな春が好きだった、待ち遠しかった
誰かと一緒の時間、それはとても幸せな時間なんだ
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チロちゃんのことは悲しかったけれどね
あれは春の終わり、夏の始まりの日のこと、か
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守りきれなかったあの日
今でも思い出すよ
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そう、どうすることも出来ない時がある
なんとかなる時もある
明日のことはわからない、一時間先、一分先のことだって本当はわからない
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確かなのは気持ちだけ
今出来るのはその気持で触れるだけ
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ツヨシの身体に、ツヨシの気持ち、ツヨシの心にそっと触れること
ただそれだけだ
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もしそれが出来たならもっと知ること出来るだろう
かわいいツヨシのこと、もっとたくさん知ること出来るだろう
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僕は知らなくちゃ駄目だ
もっとたくさんのツヨシのこと、感じていないと駄目なんだ
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今よりもっと、もっと大きな幸せのために、ね
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───僕は今まで何度も何度も夢に見た


夢の時間は夢への時間
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二人の気持ちはすれ違い、繰り返す
春の風、二人の気持ち、いつか交わりそっと触れ
夢へと続く夢になる
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ジャンブイ、何度も見てきた青い夢───
忘れることない、あの青い空と青い水
大きな白い身体に青く澄んだあの気持ち
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ジャンブイとツヨシ
二人の春、二人一緒の青い春
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ツヨシのこと、もっと知りたいと思っていた
ずっとね
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でもあの日、あの時僕達は手を伸ばし触れ合った
僕はツヨシのことをもっと知り、ツヨシは僕のことをきっと少しわかってくれたはずなんだ───
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優しく、激しく
二人の気持ちは弾けながら交差して
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きらきらきらきら波しぶき
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ジャンブイ、ツヨシ
身体の距離と心の距離、短い春に縮まって
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気持ちと気持ち
巡り合わせの二人の気持ち
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きらきらきらきら波が立ち
きらきらきらきら水しぶき
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ジャンブイ、ちゃんと優しいか
ツヨシは本当にかわいいか
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そっと近づきそっと距離をおいていた
二人は近づき触れ合った
ジャンブイ、大人の恋
ホッキョクグマ、春の恋
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短い春、二人の気持ちが交差して
青い夢を見る日々、もっと素敵な夢のため
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短い春から長い夏、巡る季節
その刹那
春が終われば静かな夏がやって来る
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夏より熱いホッキョクグマ達の春
そっと傍へやって来てそっと向こうへ離れてく
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尊い尊い優しい気持ち
傍に誰かがいてくれる
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ジャンブイ
ツヨシ
出会い、お互い知っていたのは名前だけ
二人は今思う───特別な気持ちで二人を知る
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ジャンブイはツヨシのことをもっと知り、ツヨシはジャンブイのことを少しわかった春の日々
少しづつ少しづつ傍の気持ちにそっと触れ、大きな夢へと少しづつ少しづつ
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たどり着くのは簡単なことじゃないけれど、いつだって少しずつ少しずつ
二人のホッキョクグマ、触れ合いながら少しずつ
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簡単じゃないこと奇跡的なこと
たどり着くかはわからない
だから二人は少しずつ、優しい気持ちで少しずつ
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長く感じる夢だけど、見ている時間は実は一瞬
夢というのは一瞬のこと
一瞬の夢を積み重ね、少しずつ少しずつ積み重ね
描いた夢まで届くかはまだ誰も、誰もまだわからない
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今はただ優しい二人に会えるなら、会うことが出来たならそれで十分
普段会えない顔に会えただけ
それだけで十分なこと
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ジャンブイが、ツヨシが見た一瞬の青い夢
二人と一緒に見ただけ、感じただけ

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ただそれだけで十分なこと───
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かわいいツヨシ、横浜に来てくれてありがとう
僕は見た、確かに見たんだ
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あの青い夢を、ね
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ツヨシ、君の傍に僕はいる
だから心配いらないよ
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チロちゃん、そしてバリーバさんが教えてくれたんだ
優しいことってどんなこと、ってことをね
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ツヨシ、君が横浜にいる間、僕の傍にいてくれる間
僕は君を守るよ
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今度は運命からも守る
今度こそどんなことからも守る
チロちゃんも応援してくれているんだ
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だから離れないで、僕の傍にいて
ツヨシ、いつまでも傍にいて
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二人で夢を見よう
夢を見ながら夢に近づいていこう
少しずつ少しずつ近づいていこう

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春は暑い
もうこんなに暑いんだ
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名前しか知らなかった君のこと
僕は今どれくらいわかったかな、話して感じて今どれくらい知ること出来たかな───
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“レ”禿のあるホッキョクグマ、こんな僕のことどれだけわかってもらえたのかな
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横浜の夏は北海道の夏よりずっと暑いんだろ?
夏の太陽ギラギラしてきたら、僕ら二人ゆっくりしよう

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日陰でゆっくり眠ってさ、プールをゆっくりと泳いでさ
暑い夏を二人そっと越えていこう
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セミの声が聞こえてこなくなればすぐ秋だ
秋はすぐに過ぎていく、そうすればもう冬だよ
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そうだツヨシ、アラースの谷にお花を眺めに行かないか?
夜空に輝く星、北極星を眺めに行かないか?
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ツヨシ、不思議だね
この場所で、僕達二人が出会ったこと
こうして二人で春を過ごすこと───不思議な事だね
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───なんだか不思議で嬉しくて、とっても素敵なこと
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僕の傍に今───ツヨシ、君がいる
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バリーバさん、今どうしていますか
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僕は今ツヨシという女の子と一緒に春を、ホッキョクグマの春を過ごしています

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あの時と同じように春の風が木を揺らし、緑の香りが庭を包む
大切な気持ちをバリーバさんと過ごした日、あの日と同じように今を感じています
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お客さん達で賑やかな何日かの間───
過ぎればもう夏の陽射しです
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身体に気をつけてゆっくりと過ごしましょう
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春に比べて夏は長いからね
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そう、すぐに夏が来る
僕はきっとあの青い夢を何度も見て、夏を越えていく
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ツヨシと一緒にね
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by bon_soir | 2017-04-29 15:22 | ズーラシア | Comments(2)
ツヨシと待ち合わせの印

ズーラシアで暮らすホッキョクグマ、ツヨシ
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暖かいと思ったり、寒いなと思ったり
足踏みしながら少しづつ、少しづつ進む動物園の春
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ツヨシの気持ちも少しづつ
少しずつ少しずつ大きなホッキョクグマの方へと寄せていく
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そんなロマンチック大きく膨らむ横浜の春
こんな気持ち、初めてかもしれない
ツヨシのそんな春
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雨上がり、ホッキョクグマ達の庭
のんびりのんびり岩の上
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しっかり丁寧、地面を整えそろりと横に
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空は少し重さが残るけど、流れる風は春の手触り
ツヨシの傍に優しすぎる愛情溢れ、いつしかそれに包まれて
ふと思い出したお父さんとお母さん
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お母さんはどうしてあんなに優しかったんだろう
お父さんはどうしてあんなに大きかったんだろう
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二人は今どうしているんだろう
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傍にいるホッキョクグマは今どうしているんだろう
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ずっと大人のあのホッキョクグマは今どうしているんだろう───
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少しおとぼけだけど温かくて、誰より優しいあのホッキョクグマは今どうしているんだろう
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「これじゃない」
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「これでもない」
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「───さっき見つけたあれがいい」
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ツヨシが見つけた水色の
ツヨシが見つけた小さなかけら
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ツヨシが見つけた水色の
ツヨシが見つけた大切な一つのかけら
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優しく咥えた水色の
優しく運ぶ小さなかけら
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そっと覗いて探してる
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ぐるっと周って探してる
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あのホッキョクグマを探してる
あの優しくて大きなホッキョクグマを探してる
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小さなかけらをそっと置く
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探して見つけて、そっと運んだ水色の───小さなかけらをそっとここへ
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その時、小さなかけらは二人にとって大切に
───水色綺麗な小さなかけらは二人の印
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「ここで会おうね───」
それは大きな二人の小さな印
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ツヨシの所に春の風
運んで来たのは心を灯すあの気持ち
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ツヨシを包む春の風
胸で膨らみ大きくなったあの気持ち
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「少しおとぼけだけど温かくて、誰より優しいあのホッキョクグマは今どうしているんだろう───」
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「誰より大きなあのホッキョクグマは今、今何を考え、今何を思っているんだろう───」
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「───声が聞こえる」
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「優しく私を呼ぶ声が今───今、聞こえてきた」
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「───大丈夫、空は曇っているけどとっても気持ちがいい日だよ」
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小さなかけらは二人にとって大切に
───水色綺麗な小さなかけらは二人の印
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少し寂しい気持ちのときは、印のところで待ち合わせ
二人が同じ気持ちになった時、あの印のところで待ち合わせ
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動物見る夢どんな夢
ツヨシが見る夢どんな夢
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ツヨシが見る夢どんな夢
鼻に「レ」マーク、あの大きなホッキョクグマの夢
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二人が見る夢どんな夢
きらきらきらきら北極星
笑顔がたくさん、ちいさな笑顔もたくさん輝く
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かわいいホッキョクグマの女の子
ツヨシが見る夢、そんな夢
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みんながツヨシを眺めてる
飼育係さんもお客さんも───どこかで二人を見守るチロちゃんも
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みんなが二人を眺めてる
今、そっと輝く二人のホッキョクグマを眺めてる
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少し遅れてやって来た二人の心の中の春
今きっと何よりどんなことより温かい
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そのとき傍へ、みんなの傍へ
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誰でも感じる、誰もがわかる
きっと必ず、きっとそう
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動物達のかわいい姿
今日の思い出
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動物達の優しい気持ち
ずっと忘れない、心に刻むそんな思い出
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動物達に愛情貰う
動物園から愛情あふれた
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恋する動物達はきっと何かを、何かをみんなに───
二人の恋が遥か先まで進むなら、もしも奇跡が二人の間に起こるなら───
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───そっと静かに、ホッキョクグマの大きな愛がそっと静かにあふれてきたのなら
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きっとそこには見たことないジャンブイと、見せたことのないツヨシの笑顔が輝いているはず

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きっとそう
きっと、きっといつか輝く、そんな笑顔に会えるはず
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毎年毎年いつだって、動物達にとっては特別な春のはずだけど
少し遅れたこの春はきっとこのまま進んでく
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暖かいまま、温かいまま
少しづつ少しづつ
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チロちゃん、バリーバさん
そしてツヨシ
横浜でジャンブイが出会ってきた女の子達
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出会いはいつも特別で、一緒に過ごしてきた時間はいつだって特別で
昔のことを思い出せば涙も溢れる
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未来のことを考えれば祈るように笑顔が溢れ
動物達の出会いは動物園に会いに来るみんなまでそっと優しくしていく大切なこと
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小さなかけらは二人にとって大切に
───水色綺麗な小さなかけらは優しさつめた恋の印
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ツヨシ、ジャンブイはどうしていますか?
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歳に似合わず可愛い顔したホッキョクグマ、そんなジャンブイはどうですか?
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ツヨシ、ジャンブイは、優しいホッキョクグマ、「レ」禿のジャンブイはどうですか?
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by bon_soir | 2017-04-11 13:58 | ズーラシア | Comments(4)
イコロが見た北極星、デアが見ていた北極星
上野動物園で暮らすホッキョクグマ、イコロ
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このお話は前回→☆☆☆☆☆の続きになります
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エミューに見送られ上野動物園を出発したモノレールは星空の中に吸い込まれ滑るように走り続け、
そして今度は北極圏、月に照らされぼんやり輝く氷の大地に引き寄せられるように降りていく。
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運転手の猿はいつまでも静かに上野動物園のモノレールを走らせ、動物園を出発してからもあまり話はしなかった。
走り出してから一言二言ほど話し、そしてさっき『北極点の近くまで来ました───』と言ったっきり、また黙っていた。
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上野動物園のモノレールはスピードを落として地面のすぐ上を走っていた。
ときおり雪のような氷の粒が舞い上がるのが見える。
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───どこまでいくんだろう
星空の中を抜け出してからだいぶ時間が経った気がした僕は、運転手の猿に小さな声で訊く───運転手の猿はうるさいのが嫌いなんだ。

「あとどれくらいかかるんだい?」
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その声を聞いた運転手の猿は運転席の前の窓をちらりと上目遣いで見た。
きっと僕の顔が映っているんだろう。
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「そうですね、ではこの辺りにしましょうか───」

そう小さな声で一言言うと、上野動物園のモノレールは更にスピードを落とし、そして氷の大地の上にそっと停まった。
静かに動いていたモノレールのモーターの音が止まり、そっとドアが開く。
「さあ、着きましたよ」と、運転手の猿は僕の方に振り返る。
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ドアの外へ出た僕はまず最初に夜空を見上げた。
普段見る夜空とは何もかもが違う、僕一人を包み込むような力強い星空が広がっている。
「あぁ、凄いや───」
僕の口からふいに言葉が出る。
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傍で僕を見つめる運転手の猿の顔は少し微笑んでいる。
「どうかしたのかい?」と僕が聞くと、
「みんな同じ、だなと思いましてね」と、星空を見上げて言った。
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「ここへ来た、またはこんな星空を見た動物達はみんなイコロ君と同じような顔をして、同じようなことを言うものです。運転している間、ずっと考えていたんです───イコロ君はどんな顔してなんていうかなって、てね」
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「そうしたら想像通りの感じでイコロ君は星空を見上げた。それが少し可笑しかった、ってだけのことです」
運転手の猿は今までで一番楽しそうだ。
少し照れくさかった僕は少し慌て、少し早口で訊いた。
「北極点、北極点はどこなんだい?僕は北極点に行くためにモノレールに乗ったんだ」
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「実を言うと、北極点まではまだもう少しかかります。まだ見えているわけじゃありません」
あいかわらずの小さな声で運転手の猿は話す。顔はもう笑ってはいないように見える。
「またモノレールに乗れってことかい?」
僕は戸惑いを隠すように、なるべくゆっくり、なるべく静かに一言また訊いた。

運転手の猿はゆっくりと首を横に振り、指差しながらまた小さな声で話し始めた。
「向こうの方角です。ここから先はイコロ君、自分で歩いて一人で行きなさい。考えていた、モノレールを走らせながらずっと考えていたんです。なにも、星空を見上げた時のイコロ君の顔のことだけ考えていたわけじゃありません」
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「自分で、自分で歩く───」
運転手の猿が指差す方を僕はじっと見つめたけど何かが見えるわけじゃない。ただ氷の大地がどこまでも広がっている。
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「───いいですか」
運転手の猿はそう切りだし、静かに話を始めた。

「もう動物園からはずっと遠い所に私達はいるんです。モノレールを走らせれば北極点まではすぐに着きます。ただ、さっきも言ったとおり私は考えていた。イコロ君にとって一番いい形で北極点まで行くことということは、それはどんなことなのか、ってことをね。考えた結果が最後は自分で歩いて行く、っていうことなんです」

風も無い北極圏、たくさんの星はそれぞれがそれぞれに瞬くけど、当たり前のように音がするわけじゃない。
静かな静かな北極圏に運転手の猿の小さな声だけが聞こえている。

「少しの距離でも自分で歩き、一人でたどり着く。ただ誰かに連れられて行ってきたってだけじゃない、ということ。それだけでも意味があるでしょう。特にイコロ君、君は男のホッキョクグマだ。旅には冒険、素敵なことです。大丈夫だとは思いますが万が一迷いそうになってもその時は───きっと君を誰かが導いてくれることでしょう」
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───北極点に向かって長い時間、もう何時間も僕は歩いていた。
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ユキオさんの代わりになろうとなんて思っていない、僕が上野動物園のホッキョクグマだとと胸を張って言える日なんていつ来るのかわからない。
けどデアと一緒に暮らしたい、暮していきたい。勝手だけれどデアの傍でデアを支えていきたいと思っていた僕には迷いがなかった。
「きっと何かを感じることができるでしょう───」と運転手の猿は言った。
僕はもっとたくましく、立派な大人になりたい。

───そう、一人で北極点にたどり着く
大好きなデアの顔を思い浮かべれば大丈夫、簡単だ
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「日本も北極圏も今は冬の始まり、特に北極圏の夜は驚くほど長い。だから時間がかかってしまっても大丈夫」と、運転手の猿は教えてくれた。
だから最後まで頑張りなさいという、そんな小さな声のメッセージだ。
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───デアは今頃どうしているんだろう。
いつものようにデアの北極星を窓から探し眺めているのだろうか、それとももう夢の中へと入っていったのだろうか───
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ユキオさんのことを今日も思い出し、そっと涙を溢しているのだろうか───
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それとも、今部屋にいない僕のことを少しでも思ってくれてはいるのだろうか───
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圧倒的な数の星にも慣れてきた僕は、その星空を眺め考え出していた。
「そうだ、北極星ってどれだろう───」
一人でいる時、考えていることはふいに声になる。
でも今はまず先に北極点に行くことだけを考えなくてはいけないのかもしれない───そう、北の果てまでの冒険中だ。緊張感が無ければ僕自身の強さはきっと生まれない。
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夜は長く昼が短いと言っても少しずつ空は明るくなりだしていた。
もうどれだけ歩いたんだろう、僕はまだ北極点にたどり着かないことに少し焦りを感じ出していた。
早くたどり着かないと星も見えなくなってしまうかもしれない。北極星を見ることが出来なければここまで来た意味が無くなってしまいそうだ。

北の果てで世界中で一番大きな北極星を見る───それがこの旅の目的だ。
運転手の猿は元の場所で待っている、今僕は北極圏に一人、ただ一人歩くホッキョクグマだ。
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寂しくなるとデアの顔が頭に浮かぶ。
デアだけじゃない、お母さんやキロル、みんなの顔が次々に思い出されていく。
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「みんな、元気かな」
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流れ星が続けて輝き、明るくなりだした夜空へと次々に消えていく。
流れ星は見る方向見る方向で輝き流れている時もあれば、何故かなかなか目に入らない時もある。
星空の動きが止まり静かさがふと僕を包んだ瞬間、僕はやっぱり不安になった。
「星ばかり眺めすぎたのか───道に迷ったのかもしれない」
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「緊張感を───」と考えていたはずなのに、すぐに忘れてしまっていた僕はなかなか駄目な奴だ。
一度不安になると急に怖くなってくる。思えば一人でどこかへ行ったことなんか今まで無かった。
初めての引っ越しだってキロルと一緒だ。お母さんがいない寂しさもキロルと二人一緒だったから自然と乗り越えていたのかもしれない。

今、僕は一人だ。運転手の猿はモノレールと一緒に待っていてくれているのかもしれないけど、後戻りはしたくない。
僕は一人でもデアを支え、守ることができるホッキョクグマにならなくてはいけない。
“北極点には着かなかった” ってことじゃ恥ずかしくてたまらない。
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ふと見上げた星の一つが急に強く、明るく瞬き出した。
その星の色は白く、瞬くリズムはゆっくりと落ち着いていて、眺めていると何故か気持ちが落ち着いてきた。
明るくなり始めた空に雲が一つ浮かんで見える。その雲はホッキョクグマのような形だと僕は思った。
頭の中にデアの顔がまた浮かび、今度はその雲から声が聞こえた。
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『輝く星が見えるかい?その方向へ歩くんだ。後は君ならすぐわかる』
落ち着いていてどこまでも優しい声、その声は男のホッキョクグマだ───

「ユキオさん、かい?」
僕はふと声に出して、星の方へと歩きだしていた。
会ったこともないのに絶対にそうだと、ユキオさんの声だと決めつけた。

そう決めた瞬間、今の僕の顔は小さかった頃のように無邪気に笑っている、そんなことを感じだしていた。
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一回、二回、三回、四回……と星が瞬く。僕は何故か子供のように数を数えて歩いている。
「十回だ」と呟いて声がした雲の方に振り返った。
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もうそこにさっきの雲は浮かんではいなかった。
「ユキオさん」
僕はもう一度呟いた。
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ふと足元を見ると大きな足跡が一直線に続いていた。
僕でもわかる。ホッキョクグマの足跡、大きな男のホッキョクグマの足跡だ。
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───北極点を目指して歩いたホッキョクグマが今の僕一人ってわけじゃない。
野生のホッキョクグマ、日本の、世界の色々な動物園で暮らしているホッキョクグマ。
そして遥か昔のことまで考えることをしたならば、それはもう数え切れない数のホッキョクグマが北極点へと歩いたことだろう。
いまここにある足跡はそんな北極点を目指し歩いたホッキョクグマの足跡だ。
僕より少し前のことかもしれない、もしかするとずっと昔のこと、ユキオさんの足跡なのかもしれない。
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そうだ、今はこの足跡をたどるんだ。
仲間たちの、先輩たちのこの大きな足跡を追いかけて、僕は北極点まで歩いていけばいい。
僕は今一人だけど一人ぼっちじゃない。今もどこかでホッキョクグマは暮らしてる。
そして上野動物園にはデアがいて、ユキオさんとレイコさんが僕達二人をきっと見守ってくれている。

僕は歩いた、足跡をたどり星を時々見上げ、疲れているのに早足だ。
「デア、僕は北極点まであと少し、僕の北極星に会えるまであと少しみたいなんだ」

頭の中に浮かぶのデアの顔はいつのまにか優しく微笑んでいた。
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さっきよりもより明るくなってきた空に照らされ、ぼんやりと浮かび上がる柱のようなものが遠くに見えてきた。
高く空を突き抜けていくようにそびえ立ち、足跡もそこへと向かって一直線───

「北極点だ───」

僕は力を振り絞って走り出す。あと少し───そんな時はきっと誰でも走り出す。
早くそこまで行きたい、早くそれを見たい───それは当たり前の気持ちなんだ。
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遠くから見たとおり北極点には大きな棒が立っていた。ずっと上まで伸びていて真下から見上げるとてっぺんは見えない。
触るとほんのり温かく、小さくずっと振動している。
少し上には“N”と書いてあった。
注意深く辺りを見回すとこの棒に向かってたくさんの足跡が集まってきている。
それは色々な方角からここを目指したホッキョクグマ達の足跡だ───

───僕は今、北極点に辿り着いた

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「デア───」
そう呟いたときにはもうイコロは眠ってしまっていました。
北極点にそびえ立つ“地球が自転するための芯棒”にもたれかかり腰掛けて、幸せそうにそっと微笑み、すぐにイコロは夢の中。
たくさん歩いて身体は疲れ、いつのまにか夢の中。

今日の夢は何の夢
今日の夢はホッキョクグマが笑う夢
今日の夢は世界中のホッキョクグマが北極点で集まりみんなで笑う、イコロの夢はそんな夢
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静かな静かな北極圏、北極点にそびえ立つ大きな芯棒の下
一人眠り続けたイコロ。

「おはよう、イコロ君」
夢から醒めそっと目を開くと、目の前には運転手の猿がいました。上野動物園のモノレールもしっかりと側まで来ています。

辺りを見回し「おはよう」とだけ少し寝ぼけた声で言うイコロ
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「そうだ、北極点に僕は今いるんだった。ありがとう運転手さん、ここまで来てくれたのかい?」

「最初からイコロ君が到着する頃を見計らって迎えに行くつもりだったんですよ。でも先に着いてしまい、少し待っていました。イコロ君がなかなか来ないから少し心配しました。少し道を外れていたようですが、よくここまで辿り着けましたね。きっと導きがあるとは信じてはいたのですが───もう少しで探しに行こうと思っていたところです」
運転手の猿はイコロに近寄り、そう言って優しく微笑みました。

「イコロ君が気持ちよさそうに眠りだしたから声はかけませんでした。きっと疲れていたんでしょう。でもその分いい夢を見られたんじゃないですか?」
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「なんだ、ずっと見られてたのか。僕は確かに道に迷ったんだ。星があまりにも凄くてさ、ずっと上ばかり見て歩いてたら変な方へと向かってしまったみたい。でもね、そのおかげなのか僕は声を聞いたんだ。その“導き”っていうのかな───きっとユキオさんの声だ」
イコロは頭のなかに残るユキオの声を何度も思い浮かべ、落ち着いて話していきました。

「ユキオさん、ですか?」

「そうだよ、あの声はきっとユキオさんの声だ。わかるんだ、今回はなぜかね」
頷く運転手の猿の顔を見てイコロはそっと微笑みました。

「それとさ、足跡があるんだよ。先にここまで来た大勢のホッキョクグマの足跡が、地面にしっかりと残っていたんだ。途中からはその足跡をたどって歩いたんだ」
薄っすらと残るたくさんの足跡を指差してイコロは笑いました。
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「でもモノレールには気がつかなかった。きっとこの棒しか目に入ってなかったんだろうね。こんな凄いものがあるなんてさ───」
そう言って見上げるイコロ。ずっと眠っていたせいかすっかりと青空が広がり、星は見えません。
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小さな声で運転手の猿は話し出しました。
「この棒はですね、地球を北極と南極をつらぬいています、端っこがこうしてそびえ立って見えるんです。南極点の方もこうして同じようになっています。地球が自転するために必要な芯棒なんですよ。地球が自転しなければ一日が昼ばかりか夜ばかり、どっちかになってしまいます。一日という時間も味気なくなってしまいますね。とても大切な芯棒なんですよ」
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「なるほど、だからほんのり温かくて小さくずっと振動しているんだね」
手を芯棒にあて、もう一度温度と振動を感じ取ったイコロ。
「───あっ」と、大切なことを思い出し、傍で微笑んでいる運転手の猿に訊きました。

「北極星を見ていないんだ。あの時、歩いて行くってことに驚いていたからさ、どの星かを聞くのを忘れた。だからどれなのかわからなかった」
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「大丈夫、そろそろまた暗くなります。星はまたすぐに輝き出します。北極の冬はすぐに暗くなり、なかなか明るくなりません。もう少し待ってなさい」
イコロにそう言うと「寒い」といって上野動物園のモノレールの中へ入り、そっと目を閉じた運転手の猿。

「もう少し、か───」と、空を見上げまた暗くなるのを待つイコロ。
自転のための芯棒は震え続け地球は少しづつ回転し、時間もゆっくりと進んでいきました。
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一人空を見上げていると何度もデアの顔が浮かんできます。
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一人のデア、そして今まで浮かぶことのなかった自分と一緒、イコロとデア、二人のホッキョクグマの姿も浮かんでくるようになりました。
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「デア、北極星を見たらすぐに動物園に戻るからね。そうしたら二人で話をしよう。この旅の話、ユキオさんやレイコさん、そして僕達二人の話をたくさんしよう───」
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「デアは本当にかわいいね」
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モノレールのドアが開き、運転手の猿が静かに出てきました。
(どの星が北極星なんだい?)とは聞かず、ただ芯棒にもたれて座り、「運転手さん」と微笑んだイコロ。
見上げた空はすっかり暗くなり始め、気の早い星から順番に輝きだしていました。
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「イコロ君、真上を見上げて見なさい」

「真上、真上かい?」
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「北極点から真上に光る星、あの星が北極星ですよ」
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「そして北極星は“こぐま座”を形取る星、そういうことなんです」
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北極星を眺め、ふとあることに気がついたイコロは涙を溢していました。
「やっぱりそうだったのか。やっぱり、やっぱり───」と、声にならない小さな声で何度も何度も呟きます。

「イコロ君、」と運転手の猿が声をかけるようとすると、イコロは涙を何度も拭いました。
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「僕を励まし、導いてくれた星はあの星だ。北極星の隣で輝く、優しい光のあの星だ───」
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「デア、ユキオさんとレイコさんが輝かせている星を眺めてるって、それがデアの北極星だって、君はそう言っていたね」
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「僕にはわかる、デアの眺める星はきっとあの星だ───北極星を傍で眺めるあの星だ。僕もユキオさんとレイコさんの星を見ていたんだ」



続く



   

by bon_soir | 2017-03-23 06:01 | 上野動物園 | Comments(4)
遊ぼうよ、イッちゃん
天王寺動物園で暮らすホッキョクグマ、イッちゃん
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イッちゃん朝は遊ぶ時間
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一生懸命遊ぶ、そんな時間
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投げて貰ったおもちゃ達
なんだかとってもお気に入り
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持って上がる
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ちょっと得意げ
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なんだか合体しているおもちゃ
お気に入り
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ぽい
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楽しいね!
たくさん遊んで楽しいね!
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やっぱりなんだかお気に入り
なんでだろ
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いつのまにか別れたね
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遊ぶイッちゃんかわいいね
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楽しそうなイッちゃん
一番かわいいね
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これからもずっと遊ぼうよ、楽しく笑って遊ぼうよ
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遊ぼうよ、イッちゃん
楽しく笑って遊ぼうよ
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いつか、そのうちいつか帰ってくるよ
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凄いホッキョクグマが帰ってくるよ
優しいホッキョクグマが帰ってくるよ
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二人できっと楽しいよ
一緒に遊べばきっと、きっともっと楽しいよ
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遊ぼうよ、イッちゃん
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きっと何かが始まる二人の遊び
まだまだいつになるかはわからない
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まだ、わからない
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ホッキョクグマは冬でもプール
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気持ちよさそうにすいすい、ぷかぷか
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遊びを少し休憩するように
静かに穏やかに、気持ちよさそうにすいすい、ぷかぷか
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かわいいイッちゃん
すいすいっと、ぷかぷか、と
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なんだか少し大人になったね
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優しい顔で泳いでる
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すいすいすいすい泳いでる
ぷかぷかぷかぷか漂うイッちゃん
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なんだか少し大人になったね
優しい顔のまんま、なんだか少し大人になったね
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かわいいね
かわいいね、イッちゃん
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風はすっかり春の風
風だけ先に春になる
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春は駆け足
急にみんなの所へやって来て、急いで夏へと変わってく
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ホッキョクグマに優しい季節はどのくらい
あとどのくらい続くかな
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次の季節が待ち遠しい
過ぎてく季節は名残惜しい
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欲張ることなんかできないね
その時その時、いつも一つの季節だね
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足りなかった遊び
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それは夢を見るための準備
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楽しい夢を見るための
夢の中でも笑顔でいるようにするための
楽しい準備、大切な準備
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遊ぼうよ、イッちゃん
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遊ぼうよ、イッちゃん
楽しく笑って遊ぼうよ
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これからもずっと遊ぼうよ、楽しく笑って遊ぼうよ
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イッちゃん、今日はさようなら
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一度、今日はさようなら





   

by bon_soir | 2017-02-20 13:34 | 天王寺動物園 | Comments(0)
サスカッチ
東山動物園で暮らすホッキョクグマ、サスカッチ
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ほんのり温かいお部屋でうとうと
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やわらかそうなくちびる
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一人になって寂しいね
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でもみんな会いにきてるよサスカッチ
「これからもずっと会いたい」
みんな嘘なんか言わないよ
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またね
かわいいサスカッチ
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by bon_soir | 2017-02-01 19:00 | 東山動物園 | Comments(2)
ジャンブイ
ズーラシアで暮らすホッキョクグマ、ジャンブイ 
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ジャンブイ、いつもの朝
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過ごしやすい冬の日々
ご機嫌なジャンブイはいつもの様子
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ご機嫌なときにだけかかってしまう、あの魔法
みんなが知ってる魔法の動き
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あんまり続けるもんだから時々心配されちゃうけど、ジャンブイは全然大丈夫
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過ごしやすい季節だよ、ってそんな合図
そんな時の魔法だから大丈夫
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気持ちがいいね
あくびも出ちゃうね
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ただみんなから貰ったおもちゃでは遊ばない
そんなこの日の午前中
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おやつの時間がいつもよりも少し遅いこの日
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ジャンブイは少し待ちくたびれた
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飼育係さんの気配だけで気がつくようになったのはいつ頃からなのか
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「どこに投げるのかな?」
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「美味しいサバはどこに投げてくれるのかな?」
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「早くサバを食べたいな」
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来たよジャンブイ!サバだよジャンブイ!
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どんなに待ってたおやつでも慌てないのが素敵なジャンブイ
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ゆっくり歩いてプールへ入る
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一度潜って咥えてザバッと
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美味しいね!
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そしてたくさん投げて貰ったアジを食べて待っている
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ジャンブイは知っている
だから待っている
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もう一匹のサバがあることを
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可愛い顔で見上げて待って
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なぜか水の中を覗いてみた
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いつものように今度は向う側へとサバは沈み、いつもの手順で美味しく食べた
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そんなジャンブイ
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「もう無いのかな……」
覗いて探す水の中
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ベロ出して、そして見上げて待ってみたりして
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「やっぱりもう無いのかな……」
もう一度覗いて探す水の中
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ベロ出してばっかり
そんなジャンブイ
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飼育係さんは帰っていった
プールの中をもう一度探す
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なんだかお腹が空いている
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ゆらりゆらりとホッキョクグマ
ふらりふらりといつものジャンブイ
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「今日はお魚だけだった。リンゴ無い、野菜も無い」
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「そうだ、あとはみんな夜ご飯だ。後でお部屋でツヨシの声を聞きながら食べるんだ」
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「今夜はツヨシに何を話そう、明日のツヨシは何を話してくれるんだろう」
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「今ツヨシは何をしているんだろう」
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「覗いても怒られないかな」
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「ツヨシ~」
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「ははっ、ツヨシは笑ってた」
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「とっても可愛く、ね」
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「不思議だね。またここに来てしまう」
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「魔法にかかったように僕の身体は動くんだ。決まって気分のいい時だ」
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「いつだってそう、僕がかかった魔法を解くのは女の子」
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「もうすぐ解ける。そんな気がする───」




   

by bon_soir | 2017-01-25 07:00 | ズーラシア | Comments(4)
ツヨシの分はあるのかな、ツヨシの分は残るかな
ズーラシアで暮らすホッキョクグマ、ジャンブイ
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ジャンブイが庭へと出てくる木曜日
横浜にも初雪が降った
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ひさしぶりの雪、珍しい雪を楽しむジャンブイ
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「ツヨシ、こんな素敵な日に僕が外だ。一人で楽しむこと、許してね」
外へ出る時そう声をかけていたジャンブイ
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心躍る雪の中、真っ白な空を見上げ少し心配をしていたジャンブイ
「雪はいつまで降るのかな、雪はいつまで残っているのかな」
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「せっかくなんだ、この雪をツヨシにも見せてあげたい、この雪をツヨシにも触らせてあげたい───」
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「あんなこと言っていたけど、きっとツヨシも雪のことは好きなんだ」
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ジャンブイは色々なことを思い巡らせ、そして今日のことも考えていました
「そろそろ飼育係さんが来る。魚やリンゴ、美味しいものをたくさん持ってやって来る」
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「そんな時間だ」
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いつものように飼育係さんを待っている間に、雪は少しづつ弱くなってきてしまいました
「止んじゃうのかな……」
心配するジャンブイ
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「今止んでは駄目だ。雨に変わってしまっては駄目なんだ───」
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降り続けてきた雪が止みそうで止まない、雨に変わりそうで変わらない
そんな時間は過ぎていき、ジャンブイの大好きな飼育係さんがやって来ました
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飼育係さんの笑顔にツヨシの笑顔を重ねたジャンブイ
朝のツヨシの言葉を思い出していました
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「ジャンブイさん、私は大丈夫。雪が見られなくても大丈夫。今までたくさんの雪を見てきたんだよ、だから私は大丈夫───」
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思い出しながらまだ考え、そして一緒にご飯のことも気にしているジャンブイ
「───後でもう一度聞きに行こう。やっぱり雪はいいものなんだ」
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「リンゴだ」
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ゆっくりゆっくりプールに入り、リンゴを齧る
そんなジャンブイ
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「今日は水のほうが暖かいね」
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ジャンブイが来たよ
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ほら、ジャンブイが傍へ来たよ
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リンゴを探してみんなの傍へ
皆んなの傍でリンゴを齧り美味しそう、そして楽しそう
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リンゴはウォーミングアップ
齧れば美味しいウォーミングアップ
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ジャンブイは知っている
そのうち美味しくて大きな魚が来ると知っている
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小さいさかなが先に落ちてきても、全く気にしない
そんなジャンブイ
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先に食べたい大きな魚
サバ
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美味しいね!
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決まっていること、決まっていないこと
両方あるから毎日楽しい、両方あるからとても楽しい
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飼育係さんはまだ帰らない
きっとまだ何かある
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オレンジ色を投げてもらう
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「また向う側だ、みんなが見ているガラスのところだ」
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「あれだ!」
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柿だね
美味しそうな柿だね
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美味しくて冬らしい柿を齧る
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「美味しく食べた柿は冬のもの。あってますか?」
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「あぁ、雪が雨に変わる」
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「ツヨシ、本当に君はいいのかい?雪を見なくて、雪に触らなくていいのかい」
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「北海道とは違うんだ、雪が降ることはなかなかないんだ」
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「ツヨシ、本当に君はいいのかい?」
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「僕は君の笑顔が見たいんだ。楽しく遊ぶ君の優しい顔が見たいんだ」
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「僕ばかり楽しんでもつまらない。楽しいけれどつまらない」
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「僕のそんな気持ち、ツヨシ、君にはわかるだろう?」
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「雪が止んでは駄目なんだ」
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「神様───ツヨシの分はあるのかな、ツヨシの分は残るかな」
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「明日ツヨシは笑うかな」
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「僕はツヨシに聞いたんだ」
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「雪、見たいだろ?雪に触りたいだろ?」
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「そうしたことを聞いたんだ」
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「するとツヨシが壁の向こうで言ったんだ」
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「ジャンブイさん、雪も本当に素敵だけれど、それより私は星が見たい。ふたご座、こいぬ座、オリオン座───そう、冬の星座」
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「カシオペヤのその先には北極星。私は冬の綺麗な夜空が見たい。たくさんの星がきらめく澄んだ夜空に星が見たい」
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───ツヨシはそう言って笑っていたんだ
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「壁の向こうのツヨシの顔を思い浮かべた」
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「僕は決めた。今夜ツヨシを連れて部屋の外へ出るんだ───」
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「たくさんの星が輝く夜空の下を、僕らは二人で散歩して回るんだ」
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「大丈夫、凄く冷えてきた。今ある雪も溶けないさ」
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「優しい月明かりに照らされて残った雪が光るんだ」
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「そしてツヨシの笑顔も見えるんだ」
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「大丈夫雲が切れてきた。今夜はきっと晴れるよ」
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「そして雪は明日まで」
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「ツヨシの分は明日もちゃんとあるだろう、ツヨシの分は明日もちゃんと残るだろう───」





   

by bon_soir | 2016-12-01 07:00 | ズーラシア | Comments(2)
雪の日のホッキョクグマ

ズーラシアで暮らすホッキョクグマ、ジャンブイ
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横浜にも雪が降らないわけじゃない
ただ少し早くに降っただけ
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ただそれだけで少しだけ嬉しくなるときもある
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ただそれだけのこと

ホッキョクグマも胸が高鳴る、わくわくする
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そんな少し特別な日のこと
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朝、部屋から庭へと出てきたら、静かに雪が降っていた
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秋が終わる、冬が来る
そんな季節の巡りを天気が急に追い越した
そんな11月の終わりの方のこと
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ジャンブイはもちろん気分がいい
散歩する、白く覆われていくいつもの庭を見て回る
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「ははっ、凄いよツヨシ。今日は雪だ」
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「どんどん雪が降ってくる、どんどん雪は積もっていく」
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「楽しいね!」
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針葉樹の植え込みに何かを探す
そんなジャンブイ
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探してみた物、それが何かはわからない
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形があるのか、香りがあるのか
硬いのか柔らかいのか
───目には見えるのか、それはピカピカと光っているのか
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それは誰にもわからない
ジャンブイだけの秘密のこと
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少し早い雪と一緒に降りてきた───
かもしれないと探してみた
ただそれだけのこと
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いつもの岩の上へ登る
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積もった雪はジャンブイをそっと優しく乗せている
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ひさしぶりの雪は冷たくていい気持ち
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「少し前まで暑くてたまらなかったのに───」
夏の暑さをふと懐かしく思い出す
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でもホッキョクグマは冬が好き
冬から春へと変わる、その瞬間を感じることが好き
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まだ寒いけど少しずつ伸びてくる草、次々に咲き出すお花
それを見つける冬と春が混ざる時へと季節は進む
「今日はその日に向かう入り口だ───」
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辺りを見回し雪降る空を見上げたジャンブイ
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今日の朝はいつもと違う素敵な朝
ただそれだけのこと
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雪にごろごろ
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お腹もつける
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そう、今日の朝は気分がいい
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ふと考えて岩を降りて歩き出す
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「ツヨシ、今日は雪だ───」
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朝出てくるときに声をかけたジャンブイ
今度は一人で小さく声に出す
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「今日は雪だよ」
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少し弱くなったり、また少し強く降ったり
雪は空から降りてくる
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白い空から白い雪が降りてくる
地面で、木の枝で積もる雪、地面でプールで溶ける雪
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この雪はいつまで降るのか、いつまで残るのか
それは誰にもわからない
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「ツヨシの分、あるのかな───」
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空を見上げ、降り積もった雪を眺めて、ふとジャンブイはつぶやいた
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優しいホッキョクグマ、ジャンブイは空を見上げ、降り積もった雪を眺めてつぶやいた
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今この瞬間に感じる気持ち、瞳に映る辺りの景色
何もかもが素敵な朝のことだから、ジャンブイはふとつぶやいた
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「ツヨシの分、あるのかな───」
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by bon_soir | 2016-11-29 14:06 | ズーラシア | Comments(2)