タグ:バニラ ( 42 ) タグの人気記事
バニラとユイの幸せの種
「今日も戻ってこなかった───」
飼育係さんがいなくなった夜の動物園でふと呟いた
a0164204_11455282.jpg
a0164204_11372190.jpg
お姉ちゃんが一人の部屋で過ごすようになってからだいぶ経つ。私だけの広い部屋、今は薄暗さと静けさが息苦しい
わかっていた───お母さん、ハヤト、そしてワカちゃん
あの部屋で過ごすようになるとある日いつのまにか、そして急にお空の向こうへとみんな行ってしまう
a0164204_11372200.jpg
───怖くて怖くてしかたない。どんどんやって来る嫌な予感に私は脅され続けている
「大丈夫、お姉ちゃんは大丈夫」って、負けないように何度も何度も声に出してみても、またすぐにその嫌な予感に押しつぶされる
a0164204_11372166.jpg
お姉ちゃんとお別れなんか絶対にしたくない───大好きなお姉ちゃんとずっと二人、一緒に窓の外を眺め微笑んで、一緒にお散歩に出かけて笑って、二人同じ夢を見て気持ちよく眠っていたい
a0164204_22562214.jpg
a0164204_11455394.jpg
優しいお姉ちゃんといつまでも、ここでのんびりいつまでも暮していたい───ただそっと暮していたい
a0164204_11455202.jpg
ふと眺めた窓の外の星空に、きらりと一つ大きな大きな流れ星
「あっ───」とただそれだけ声が出た
a0164204_12021437.jpg
a0164204_12035134.jpg
“本当はもう、ドアの向こうにはもう誰も───”
怖くてずっと動けなかった私の気持ちはその大きな流れ星に気付かされ、そして急かされた
a0164204_12035177.jpg
静まり返ったオセアニア区、コアラの家
私の小さな足音だけが小さく響く
立ち止まったドアの向こうで寝息と寝言、ここの部屋はユウキ君が眠っている
a0164204_12070468.jpg
a0164204_12035172.jpg
「こっちかな───」
別のドアの前に立ち、少し迷ってから静かにドアを開けてみた
私の目から涙が溢れた
a0164204_12070389.jpg
聞き慣れた寝息といつもの匂い
きっと何か夢を見ているんだろう───時々その小さな口を動かしてお姉ちゃんは一人眠っていた
a0164204_12091364.jpg
a0164204_12070387.jpg
「来たよ、お姉ちゃん」
私は眠っているお姉ちゃんを起こさないように気をつけて隣に座り、むにゃむにゃと動く小さな手をそっと握った───
a0164204_12105362.jpg
a0164204_12105366.jpg
a0164204_12123624.jpg


「おはよう」
今日もちゃんと朝が来て、飼育係のお姉さんの顔を見ることが出来た
a0164204_12184909.jpg
この小さな部屋で過ごすようになってどのくらい経ったんだろう
もう何日もユイの顔をずっと見ていない
a0164204_12185009.jpg
a0164204_12185025.jpg
ユイは今何をしているんだろう
大きな部屋で一人、静かに窓の外を眺め、怖くなればユーカリにの中へ逃げ込んで、毎日きっと寂しくしている───
a0164204_12355892.jpg
a0164204_12355808.jpg

ずっと一緒に暮らしてきた私、ユイの気持ちはどんなことでもよくわかる
a0164204_12355704.jpg
今すぐユイの傍へ行きたいけれど、なんだか身体が上手く動かない
a0164204_12474818.jpg
ここで過ごすようになったときからわかっていた
───そう、私は病気になってしまったんだ
a0164204_12474867.jpg
a0164204_12590292.jpg
朝が来て段々と明るくなるオセアニア区、大きなユーカリの木の向う側へと沈む太陽───そして晴れた夜の明るい月とたくさんの星
この部屋からはどれも眺めることが出来ない
小さな窓から小さな景色がみえるだけだ
私はその景色を好きになれなくて、小さな窓の向こうを見ないようにしていた
a0164204_16142742.jpg
飼育係のお姉さんの「おはよう」で朝に気がつき、「また明日ね」という優しい笑顔でまた夜になることを知る
a0164204_12590376.jpg
“夢を見るための準備”はあまり上手く進まない
ぼんやりといつのまにか眠りについた私が見る夢は昔の風景、そして楽しかった思い出のことばかり
a0164204_12474881.jpg
───しかたない
病気になってしまった私、ずっと待っていた春の風景をまだ見ていないのだから
a0164204_13113591.jpg
「春、終わっちゃうね」と、チューリップのお花が風に揺れる様子を頭のなかに描いてふと呟いた
ユイと一緒にお花を見にいくこと、今年はこのまま出来ないかもしれない
a0164204_13172426.jpg
───ごめんね、ユイ
a0164204_13213228.jpg
a0164204_14215927.jpg
「おはよう」とドアは開き、また変わらない朝が来る
飼育係のお姉さんは一日に何度も何度も様子を見に来てくれて、そのたび優しい笑顔を見せてくれる
a0164204_13320793.jpg

お姉さんの言葉に耳を澄まし、ふと思う───私はちゃんと笑顔を返してあげられているのか
それが気がかりだった

日に日にぼんやりとしていく私
“自分が今どんな顔をしているのか”、それがわからないでいた
a0164204_13331936.jpg
精一杯、一生懸命に精一杯、だから私は笑顔を作る
私が笑顔なら、コアラが笑顔なら───動物達が笑顔であったなら
きっとみんな笑顔になれる、みんなの笑顔で優しく温かくなっていく
動物園ってきっとそんな場所
a0164204_13320709.jpg
飼育係のお姉さんの笑顔を見ていつだってそう思っていた
悲しいことがあった日もそうして毎日少しづつ、私は素敵な笑顔に元気を貰っていたから
a0164204_13482261.jpg
a0164204_13490242.jpg
お母さんの笑顔を思い出す
ワカちゃんとハヤトの笑顔を思い出す
a0164204_14043053.jpg
a0164204_14043103.jpg
少ししかないお父さんの思い出も頭の中に浮かんでくる
a0164204_14043074.jpg
みんなの声が聞こえてくるようだ
小さく、時々はっきりと楽しいコアラの声が聞こえてくるようだ
a0164204_14132103.jpg
なのにユイは今一人、きっと一人
「ごめんね、ユイ」と声に出すと涙が一粒、また一粒とこぼれていくのがわかった
a0164204_14132173.jpg
気がついていた
───私がみんなの所、“お空の上”へといく日が近づいている
a0164204_14132047.jpg
病気になること
それは悲しくて悔しくて、そして凄く怖いことだ
a0164204_14392997.jpg
私はコアラだった
どんなときでも眠くなる、いつのまにか眠っている
a0164204_14492825.jpg
必要だった眠ること、大好きだった夢の中
今は不安でしかたない
一度閉じた目はまた開くのかがわからない、「おはよう」って声をまた聞くことが出来るのか───
今は不安でしかたない
a0164204_14482976.jpg
夢の中でユイに会う
泣いてる私の傍へ来る、そっと傍へ来てくれる
一緒に暮らしてきたあの日のように、ユイは私の傍へ来る
a0164204_14562751.jpg
a0164204_14492899.jpg
a0164204_15082096.jpg
夢の中のユイが私の手をそっと握る
あったかくて柔らかい、私はゆっくり目を開く
a0164204_15035419.jpg
「お姉ちゃん───」

「ユイ───」


a0164204_15082024.jpg
「おはよう」
a0164204_15082084.jpg
a0164204_15100546.jpg
その日からユイは毎日来てくれるようになった
飼育係のお姉さんが帰ればすぐにドアを開け、朝日が登りだせばそっと静かに帰っていく
そんな日が何日か続いていった
a0164204_15125999.jpg
ユイの話に頷いて、ユイの笑顔で私も微笑む
怖い気持ち、不安な気持ちは少しずつ少しずつ、そっとどこかへ消えていった
a0164204_15125983.jpg
ユイは私の妹、たった一人の大切なかわいい妹だ
今までも、これからもずっとずっと変わらない
ユイは私の妹だ
a0164204_15125973.jpg
一度お別れをする日のことはもう怖くない、もう不安じゃない
ただ寂しく、ただ悲しいだけ

ただそれだけだ
a0164204_15235143.jpg
a0164204_15235104.jpg
本当はいつまでもこの優しい日々が続いて欲しい
ただそれだけだ
a0164204_15250380.jpg

───私はいつものようにお昼寝をして、またユイが来る夜を待っていた
a0164204_15344463.jpg
新しいユーカリの匂いでふいに目を覚ます
ゆっくりと目を開けると飼育係のお姉さんの目に涙が溜まっているのが見えた
a0164204_15344553.jpg
「泣かないで」
そう言ったつもりだったけど飼育係のお姉さんに私の声は届かなかったみたいだ
ほっぺを涙がつたっていき、ぽたりとそのまま床へ落ちる
a0164204_15425927.jpg
「私は元気、こんなに元気だよ」と、そう言いたいのに上手くしゃべることが出来ない

───食べてるところを見ればきっと安心してくれる
そう思った私は新しいユーカリに手を伸ばす
a0164204_15503297.jpg
「おかしいな」
力が入らない
ユーカリをいつものように上手く掴むこと、それが私にはもうできなかった
a0164204_15531631.jpg

a0164204_16305215.jpg
それからはもう眠くならなかった
私は今まで好きになれなかった小さな窓から外を眺め夜を待ち、そしてユイが来るのを待った

───お母さんの声がどこからかずっと聞こえてきている
a0164204_16002887.jpg
a0164204_16002835.jpg
「よくがんばったね、バニラ。本当によくがんばったね」
a0164204_16002845.jpg
声がするたび私は頷き、頷くたびに涙がこぼれる
夜が来るのはあっという間だ
空はまた暗くなる

「お姉ちゃん───」
いつものように笑顔のユイがドアを開ける
a0164204_16180476.jpg
「ユイ───」
涙を手でぬぐい大好きな名前を言葉にすると、少し温かい気持ちになった
a0164204_16242844.jpg
───大丈夫、私もユイもきっと大丈夫
a0164204_16253872.jpg
a0164204_16242829.jpg
「ユイ、今日はお願いがあるの」


「何?なんでも言って」
a0164204_16242899.jpg
a0164204_16305340.jpg
「ヒロキさんの家に“旅の箱”が置いてあるのは知ってるよね。その中にミモザの種が置いてあるの。去年の夏にヒロキさんの庭で拾って集めて入れておいた種が内緒で置いてあるの。それを取ってきて欲しいんだ」
a0164204_16435764.jpg
a0164204_16435864.jpg
「大丈夫、私はここで待ってるから。ユイが戻ってくるのをここで待ってるから、ね───」
a0164204_16435854.jpg
a0164204_16305267.jpg
a0164204_22562123.jpg
「───あった、ミモザの種。お姉ちゃんが言ってたのはこれだ」

a0164204_16463745.jpg
a0164204_16463669.jpg
「取ってきたよ、お姉ちゃん。これのことでしょ───」
ユイは少し息を切らしてバニラの待つ部屋へと戻ってきました
手には一掴みの“ミモザの種”
去年、ヒロキの庭のミモザが落とした種でした
a0164204_16535402.jpg
「これ、どうするの?」
そう訊くユイにバニラはそっと微笑み、そのミモザの種を受け取り半分に分け、そっとまたユイに渡しました
a0164204_16571446.jpg
「ユイ、今から言うこと、少し聞いて───」
バニラはユイの目を優しくそっと見つめ、ゆっくりと話を始めました
a0164204_18050724.jpg
a0164204_16571480.jpg
「ユイ、今渡したミモザの種をどこかに蒔いてお水をかけてみて。そう、陽の当たる所がいい。いつか芽を出し伸びていきお花が咲く。あの黄色いお花が咲いてくる。ただヒロキさんのミモザのように大きくなって木になるには何年も何年もかかるはず。木が大きくなるにはたくさんの時間がかかるの。動物園にある大きな木、みんな長い時間をかけてあれだけ大きくなった。動物達みんなが木陰で休めるくらい大きくなった。凄いでしょう、大きな木は長く長く生きてるの。この種、半分は私が蒔く。お母さん達と一緒に、お空の上の方でね───」
a0164204_23230768.jpg


「そう、私はお母さんとお父さん、そしてワカちゃんとハヤト、そしてヒロキさんの所へいかなければいけない時が来た───」

a0164204_17183159.jpg
「そんなの嫌だよお姉ちゃん、私も一緒に───」

「駄目、絶対に駄目だよ。お母さんも言っていた、自分から望んじゃ駄目なこと、絶対にいけないことがある。いつになるのか、どんな風になるのかは誰にもわからない。今の私のようにその日が来るまで、その日が来るまでただ毎日のんびりと頑張って、ここで暮してみんなと笑顔でいなければいけないんだよ。もし自分でお空へ行こうとしてしまったら、きっと私達に会うことは出来ないんだよ。ユイ一人どこか変な所へたどり着いてしまうんだよ。そんなの私は嫌、またいつか大好きなユイに会いたいよ。みんなでユイを迎えたいよ。またみんなで笑いたいよ。わかって、ちゃんと───」
a0164204_17183143.jpg
「だからね、ユイはミモザが種から大きな木になるまでを見ていくの。さっきも言ったとおり何年も何年もかかること。それでも途中で止めちゃ駄目だよ。大きく育ってたくさんのお花が咲くのを見ていないと駄目なんだよ。私はお空の上で同じように種を蒔き、お花が咲いて大きな木になっていくのを見ているよ。最初に芽が出てきたら同じように芽が出たかなって考えて、最初にお花が咲けばユイのミモザも咲いたかなって笑顔になれる。何年も何年もずっと先、ずっとずっと先のこと、立派な大きい木になれば───そろそろユイに会えるかなって涙を流すことができるでしょ───」
a0164204_17551104.jpg
a0164204_17183153.jpg
「ユイ、大丈夫だよ最初のお花が咲く頃にはきっとお友達が増えてるよ。木になって、木が大きくなってたくさんのお花が咲く頃になればこのコアラの家も賑やかになってるよ───今こうして分けたミモザの種は私達二人の幸せの種。コアラの未来へ続く私達二人の幸せの種。みんなをきっと笑顔にしてくれる、そんな種は幸せの種───」
a0164204_17551014.jpg
a0164204_17551042.jpg
「わかったよ、お姉ちゃん───」
バニラが別の部屋で過ごすようになってからずっと溜めていた涙をユイは一度に溢していました
a0164204_18002502.jpg
バニラは何度も何度もユイのほっぺをぬぐっても涙はどんどんあふれ、ぜんぜんぬぐいきれません
「泣きすぎだよ」
バニラは優しく微笑み、そしていつのまにか溜まっていた涙を同じようにあふれさせました
a0164204_18153301.jpg
二人はいつまでも涙を溢し続け、バニラはユイを、そしてユイはバニラを優しくぎゅっと抱きしめて二人最後の朝を迎えました
a0164204_18112272.jpg
a0164204_17572117.jpg
「行かなくちゃ」
そう一言小さく声に出し、そしてバニラはミモザの種を自分のポッケにしまって部屋のドアを開けました
a0164204_18525124.jpg
明るくなり始めた空の不思議な色、綺麗な光はドアの隙間をそっと抜け、バニラを温かく包みます
a0164204_17572023.jpg
a0164204_18344281.jpg
a0164204_20223723.jpg

光に照らされたバニラはの身体はユーカリの葉っぱを掴むことが出来なかったことを忘れてしまうほどに動くようになり、足は自然とオセアニア区の大きなユーカリの木の方へと向います
a0164204_20223871.jpg

a0164204_18344235.jpg
ユイは何も言わずバニラの後ろを歩き背中を見つめ、バニラと過ごした日々のことを思い出していました
a0164204_18505345.jpg
どんなことでも頭の中へ浮かび、そっと心の奥へとしまわれていきます
悲しいこと寂しいこともたくさんあったコアラの家での二人の思い出
いつだって二人一緒に泣いて、笑って過ごした大切な思い出はきっと忘れることがありません
a0164204_18505321.jpg
「ポッケの中のミモザの種は幸せの種。きっと大きく育ってく───」
あと少し、これからは離れてしまう二人
一緒に芽を出し長い時間をかけて大きく育っていくミモザの木
きっとそれは二人の心を繋いだままにしてくれると信じ、種の入ったポッケをそっと触り、ユイはふと“種の源”ヒロキの庭のミモザの木を眺めました
a0164204_18524980.jpg
夜の間は気がつかなかった風景───
朝日の中で見たミモザの木は満開に咲いていました
a0164204_19165088.jpg
本当ならもう花も終わっているはずのミモザの木は眩しく、黄色く輝き、ヒロキがまだ暮していたあの頃のように立派な枝を風に揺らせていました
バニラを少しでも明るく送り出すために“ヒロキがかけてくれた魔法”だとユイは信じ、「ヒロキさんらしいな」と小さく呟き、どんどんと前を行くバニラを早足で追いかけました
a0164204_19464597.jpg
a0164204_19414674.jpg
a0164204_19414748.jpg
「お姉ちゃん、待ってよお姉ちゃん」
a0164204_20210486.jpg
a0164204_19410014.jpg



「たんぽぽだ。たんぽぽは咲いてるんだ。今年もこんなにたくさんかわいらしく咲いているんだ───」
大きなユーカリの木に向かう途中でたくさんのたんぽぽが咲いていることに私は気がついた
a0164204_20223730.jpg
a0164204_20210490.jpg
どこにでも咲いている花だけど、どこで出会っても優しさをくれる花、たんぽぽ
私はたんぽぽが大好きだった
「───きっとお母さんも、ワカちゃんとハヤトも、ヒロキさんはもちろんのこと、お父さんも大好きなんだろうな」
a0164204_20304276.jpg
かわいらしく咲いているたんぽぽの傍に綿毛を見つけた
まだ丸い綿毛、少し欠けた綿毛───色々なたくさんの綿毛

綿毛は風に乗り色々な所を旅して回る
そしてお気に入りの場所を見つけて、またお花を咲かせるんだ
a0164204_20362618.jpg
a0164204_20382285.jpg
「よかったら私と一緒に来てくれない?」
綿毛にそうお願いをした
出来ることなら私の傍でも咲いていてほしい、みんなの傍でかわいらしく咲いていて欲しい
そう思った
a0164204_20362565.jpg
a0164204_20382228.jpg
すると一本の綿毛がこくりと頷いた
ただ春の風に揺れたってわけじゃない、本当に頷いてくれたんだ───
a0164204_20382378.jpg
「痛かったらごめんね」
私は頷いてくれた綿毛をなるべく優しく切り取った
そして潰れてしまわないようにそっとポッケの中へとしまった
a0164204_20470011.jpg
「後はあの木に登るだけだ」
一本の大きなユーカリの前で立ち止まり、幹や枝、そして葉っぱの形をよく確かめた
a0164204_20470127.jpg
a0164204_20470188.jpg
間違いない、この木を登ってお母さんは旅立った
あの時途中まで追いかけたからちゃんと覚えてる
この大きなユーカリは雲の上、もっともっとずっと上まで伸びている
───金沢動物園のコアラのためのユーカリだ
a0164204_20581197.jpg
a0164204_20581083.jpg
「ユイ、寂しいけれどここでお別れ。一度さよならだよ」
私がそう伝えるとユイはやっぱりまた泣き出した
でも大丈夫、もうユイはちゃんとわかっている
このお別れはどうしてもしかたないことを、そしてまたいつか会える日が来るということを
a0164204_21033134.jpg
a0164204_21052008.jpg
ユイの涙は止まらない
ぼやけて何も見えなくなりそうなくらい涙は溢れ続けていた
「動物園が始まっちゃったら大変だから私は行くね」と言うとユイは泣きわめいたまま何度も何度も頷いた
今では私よりも身体の大きなユイ、そのときだけは何故かとても小さく見えた

───私達が一緒に暮らし始めたあの日のように
a0164204_21033297.jpg
「ありがとう」
私は最後の言葉をユイに言う
a0164204_21145930.jpg

「ありがとう」

それが金沢動物園、オセアニア区でユイから聞いた最後の言葉だった


オセアニア区の大きなユーカリの木を登っていくのは簡単なことじゃない
普段よりもずっと高く伸びているユーカリの木だ、何故か身体は疲れないけれどやっぱり時間はかかる
ただ上を見て登っている間にはたくさんの思い出が青い空に浮かび上がってきてくる
a0164204_21261553.jpg
楽しい毎日だった
a0164204_21243349.jpg
a0164204_21243427.jpg
a0164204_21243491.jpg
本当に楽しい毎日だったんだ
a0164204_21484313.jpg
a0164204_21273493.jpg
a0164204_21273415.jpg

楽しかったね、ユイ
ユイは私の妹、これからもずっと、ずっとかわいい私の妹
a0164204_21305111.jpg
a0164204_21341890.jpg
a0164204_21305116.jpg
楽しかったよ、ユイ
毎日毎日本当に、本当に楽しかったよ
a0164204_21305077.jpg
思い出した───お母さんのポッケ、あったかかったな

一番あったかい場所
私はそこへ行くのかもしれないな───
a0164204_21380827.jpg
a0164204_22380100.jpg
a0164204_22380117.jpg
a0164204_22380163.jpg
a0164204_21380920.jpg

a0164204_21380997.jpg
───お姉ちゃんが大きなユーカリの木を登っていく
私はあの姿を忘れない、絶対に忘れない
a0164204_21434322.jpg
登ってきた太陽が眩しい
けれど目を離しちゃ駄目なんだ
a0164204_21413891.jpg
窓の向こう、段々と遠くへ飛んでいく鳥たちは一度でも目を離すともう二度と見つけることは出来なかった
きらりと光る飛行機だってそうだった
一度でも目を離しちゃ駄目、特に大切なことからは絶対に目を離しちゃ駄目なんだ
a0164204_21484341.jpg
a0164204_21484279.jpg
「ありがとう」
私はお姉ちゃんにそれだけしか言えなかった
もっともっとたくさん伝えたい事があったはずなのに「ありがとう」ただそれだけだ
a0164204_21574036.jpg
お姉ちゃんが青い空に溶けていく
オセアニア区を離れ、空の向こうへだんだんと
だんだんと青い空に溶けていく

一度お別れ、さよならだ
a0164204_22112815.jpg
「お姉ちゃん、今まで本当にありがとう」
a0164204_21574003.jpg
「ありがとう」は不思議な言葉
みんなを笑顔にさせる、そんなことば「ありがとう」

「ありがとう」は別れの言葉
綺麗な涙をみんなにそっと落とさせる、そんな別れの言葉

a0164204_21574085.jpg
「ありがとう」は大切な言葉
心を込めて伝えればただそれだけでも大丈夫
a0164204_22080640.jpg
a0164204_22080646.jpg


「ありがとう」


「ありがとう」
a0164204_22080540.jpg
バニラ、今まで本当にありがとう
a0164204_22101001.jpg
a0164204_22122827.jpg
「あっ、お母さん」
お空の上で最初に出迎えてくれたのはやっぱりお母さんだった
a0164204_22141355.jpg
何も言わずただ笑顔で私のことをぎゅっと抱きしめる
懐かしい匂いと懐かしい温かさ
やっぱり私はお母さんの子供だ───
a0164204_22112700.jpg
綿毛をそっと取り出して、コアラのポッケからそっと優しく取り出して
まん丸欠けてしまわないよう丁寧に、そっと優しく取り出して
a0164204_22112887.jpg
綿毛にふーっと息を吹きかけて、一人一人が旅の空
春の風にすーっと吹かれて思い思いに旅の空
オセアニア区へアメリカ区へ、ユーラシア区、アフリカ区そしてほのぼの広場のみんなの所へ
一人一人が思い思いに旅の空
a0164204_22122840.jpg
a0164204_22470429.jpg
a0164204_22362419.jpg
a0164204_22362536.jpg
a0164204_22470467.jpg
バニラのことを好きだったみんなの所へ優しさ持って旅の空
コアラを好きなみんなの所へ愛情込めて旅の空

優しい春風、綿毛をそっと
お空の上のみんなの所へ───
a0164204_22534173.jpg
a0164204_22534245.jpg
a0164204_22545864.jpg
a0164204_22534216.jpg
バニラ
大好きなコアラ

金沢動物園で暮らしたかわいいコアラ
みんなのバニラ
a0164204_22565297.jpg













by bon_soir | 2017-05-10 23:42 | 金沢動物園 | Comments(10)
バニラのお知らせ
金沢動物園のコアラ、バニラが遠く高くへと旅立ってしまいました
a0164204_06442108.jpg
こちらがリリースです→☆☆☆☆☆
大好きだったコアラ、テルちゃんの初めての子供として生まれたバニラ
もちろん私にとってはとても大切な存在、いつしか凄く大きな存在になっていました
そして私だけではなく多くの方に愛されていたコアラでした
a0164204_06490190.jpg
体調不良で非展示となってから覚悟をしつつ奇跡信じ祈っていましたが、やはりリンパ腫というのはどうしてもコアラの命を奪っていきます
先月誕生日を迎えたばかりのバニラ、まだ6歳
やっぱり早すぎます
a0164204_06490299.jpg
今はただ
「さようなら」と「ありがとう」
そして「もっと早くみんなの声を聞いてあげられなくてごめんね」としか言えません

バニラ、本当にごめんなさい


※しばらくブログの更新をお休みします

このブログのバニラのタグが付いた記事→☆☆☆☆☆
コアラのタグが付いた記事→☆☆☆☆☆




by bon_soir | 2017-05-03 07:04 | 金沢動物園
ユイのポッケにどんぐり一つ



金沢動物園で暮らすコアラ、バニラとユイ
a0164204_16161367.jpg
a0164204_16312445.jpg
ずっと一緒、くっついて暮してきた二人
お姉ちゃんのバニラ、そして妹のユイ
a0164204_16212971.jpg
a0164204_16212871.jpg
今、同じ家のままだけど少しだけ距離は離れ、二人はのんびりのんびり
のんびりと暮らす毎日
a0164204_16250053.jpg
a0164204_16250191.jpg
時々は前のように肩寄せあって小さな声で話をする
a0164204_16250156.jpg
そんなバニラとユイ、オセアニア区のコアラの家
a0164204_16270664.jpg
悲しいこと(☆☆☆☆☆)があってからずっと涙をこぼし続けてきたユイ、いつも傍にいたバニラ
a0164204_16161311.jpg
a0164204_16301260.jpg
オセアニア区の大きなユーカリに見守られる動物達の誰も気が付かない小さな物語
誰よりも優しいコアラ“バニラ”の誰も知らない物語
a0164204_16341314.jpg
a0164204_16341386.jpg
a0164204_16333272.jpg
a0164204_16333110.jpg
「ユイは私の大切な妹───ユイが笑って私に話すこと、私がいつでも笑顔になれるそんなこと」
a0164204_16474878.jpg
───あの日からユイの笑顔は変わった
a0164204_16525544.jpg
今までよりももっともっと輝いて、もっともっと幸せそうな優しい笑顔
何度もあった悲しいことをそっと優しく包んでやわらげる、そんななにより素敵な笑顔───

それは“お母さんの笑顔”と一緒だった
a0164204_17052553.jpg

a0164204_17030458.jpg
ユイはそんな笑顔で私に言う

「お姉ちゃん、ポッケの中に赤ちゃんが入っていった」
「お姉ちゃん、ポッケの中の赤ちゃんが少し大きくなってきた」
「お姉ちゃん、ポッケの中の赤ちゃんがもぞもぞ動いてるよ」
「お姉ちゃん、ポッケの中の赤ちゃんが小さな小さな小さな小さな声を出した」
a0164204_16301348.jpg
ユイは幸せそうだった
飼育係さんもお客さんもみんな、みんなが笑顔で、みんながユイを眺めていた

でもある日、ユイからそんな笑顔が消えた

「お姉ちゃん、ポッケの中の赤ちゃんが動いていないの───」
a0164204_17174001.jpg
「眠っているだけだよ。コアラだもん、長いこと眠っているだけ───」
私の言葉を遮るようにユイは何度も首を振った
a0164204_17235561.jpg
a0164204_17235496.jpg
「お姉ちゃん、言わなかっただけ。もうしばらくこのまま、このままなんだ───」
ユイの目から最初はぽろぽろと、そしていつのまにかたくさんの涙が溢れ出していた

気がついてからもしばらくユイは頑張って笑っていたんだろう
みんなを心配させないように、もう一度動き出すと信じて───明日にはまた心から笑えるように
a0164204_17335550.jpg
a0164204_17281383.jpg
しばらくして飼育係さんがユイのポッケの中をそっと覗く
ユイは飼育係さんの顔を見ようとはしないで遥か遠くを眺めていた
a0164204_17430525.jpg
飼育係さんは手で顔を覆い肩を落とし、ふらふらと戻っていく
私の心が悲しさでいっぱいになっていく
a0164204_17483121.jpg
ユイにもそれは伝わった、きっとわかってしまった
本当は最初からわかっていたことを、もう一度確認してしまっただけのことなのかもしれない
泣いてない、もちろん笑ってもいない
ただ一言呟いた
「お母さん、私はお母さんのようになれなかった、みたいだよ」

ユイから表情が消えてしまっていた───
a0164204_17515970.jpg
そのまま時間は過ぎていく
楽しいことがあっても悲しいことがあっても、時間だけはどんなときでも変わらず過ぎていく
a0164204_18050476.jpg
夕暮れオセアニア区が夜へと変わる
冬の始まり夜空には、冬の星座とたくさんの星
青い夜空を飛んでくる、青い羽の一羽の鶏
a0164204_18000335.jpg
ユイのポッケをちょっとつつく
優しくそっと、ちょっとつつく
そんな不思議な青い羽の不思議な鳥
a0164204_18114052.jpg
今が何時かなんてわからない
星空見えても昼なのか、青空見えても夜なのか
a0164204_18140274.jpg
a0164204_18042492.jpg
ユイのポッケがぼんやり光る
小さな小さな、小さなコアラがポッケの中から顔を出す
青い羽の鳥の背中にそっと乗る

小さなコアラ、ユイの赤ちゃん
儚くそっと笑ってる
聞き取れない、声にもならない小さな声でユイに言う
口の動きを見ていればすぐにわかる

「あ り が と う」

私の目から涙が溢れる
a0164204_18252926.jpg

ユイに声をかけたけど、私はちゃんと喋れなかった
言ってあげたいことがあったのに、私はちゃんと喋れなかった
きっとユイには何も聞こえていない
ユイはただぼんやり空を見上げ、もう枯れてしまっていた涙の最後のひと粒をぽろりとこぼした
a0164204_18335199.jpg
ぱたぱたぱたぱた
小さなコアラを背中に乗せて青い羽の鳥が飛んで行く
a0164204_18344542.jpg
大きなユーカリの大きな枝の間を抜けて、オセアニア区の上でぐるっと大きく一回り

ぱたぱたぱたぱた、ぱたぱたぱたぱた
ふわっと浮かぶ白い雲の上まで、青空の中、星空の中へ

ぱたぱたぱたぱた
小さなコアラを背中に乗せて青い羽の鳥が飛んで行く
a0164204_18432460.jpg
「ユイ、ユイはちゃんとお母さんだよ。その子の大切なただ一人のお母さんだよ───」
私はさっき言ったことをもう一度言った
でもユイにはまた届いていない、きっと届くはずがない

お腹のポッケが空っぽになる、考えてもなかった出来事でポッケの中には何も無くなってしまう
きっと、そんなに悲しいことは他にない

ユイは疲れたのかいつのまにか眠っていた
a0164204_18500773.jpg
ユイが見る夢どんな夢───
コアラのお母さんが見る夢どんな夢───
小さな赤ちゃん抱っこする、小さな赤ちゃんおんぶする
風に吹かれて木に揺れて、二人で笑って二人でお昼寝
a0164204_19131439.jpg
a0164204_19134498.jpg
ユイが見る夢どんな夢───
コアラのお母さんが見る夢どんな夢───
a0164204_19295161.jpg


あの日からユイに私は話しかけることが出来ないでいた

ただ毎日お願いだけをしていた

「ユイを守ってあげてね、お母さん───」
オセアニア区の大きなユーカリの木よりももっと上を見つめ、どこかで見守ってくれているお母さんにただ毎日お願いをして過ごした
a0164204_17395811.jpg
a0164204_19193728.jpg

「お姉ちゃん、なんでコアラにはポッケがあるの?」

クリスマスが近づいたある日、ふと遠くを眺めながらユイが言った
ユイの方を見ると目に涙が浮かんでいる
a0164204_19262485.jpg
a0164204_19262334.jpg
「ポッケ、無くてもいいよね」

ユイの声はどこか冷たく、かわいい顔は涙に濡れ、そしてその日は少しも動かず少しもユーカリを食べなかった


「ユイ、駄目だよ───思い出してよ、私達のお母さんのポッケのことを。あの温かくって柔らかくって優しくて幸せだった、あのポッケのことを思い出してよ───」
そう言えばいい、と思っても言葉に出来ない
a0164204_19395294.jpg
a0164204_23055069.jpg
私にはユイの気持ちがよくわかる
そして勇気の出ない私は弱虫だ
大切な妹一人励ましてあげることが出来ない
あの日からずっと、私はずっと弱虫コアラだった
a0164204_19410725.jpg
元気がないユイを見ていると何かしなくちゃって思う
それはユイのためかもしれない、弱虫コアラのままの私のためなのかもしれない

「───お母さん、ヒロキさん」
大好きだった二人の顔がぼんやり浮かぶ
私は外へのドアをそっと開け、ヒロキさんのお庭へと歩いた
a0164204_20084928.jpg
「何も変わってないね、ヒロキさん
涙で霞むヒロキさんの庭、そしてヒロキさんの写真を眺めているとふと小さく声に出た
a0164204_20084975.jpg
すると今にも開きそうなドアの向こう、中庭から声が聞こえたような気がした
「ヒロキさん? ヒロキさんなの?」

少し隙間の出来たドアの向こうにそっと浮かぶヒロキさんの顔
それが本当のことなのか、私の頭の中だけのことなのかはわからない
変わらない、優しいヒロキさんが今目の前にいる
a0164204_21014565.jpg

(バニラ、君は優しいコアラ、コアラの女の子だ。そしてみんなが言うとおり少し不思議な不思議コアラ、昔からそうだろう。ユイのために出来ること、当たり前のことばかり考えていたってしかたないよ。君がすること、なんでもみんなを楽しくさせてきた。想像力だ、バニラ。君が思っているほど君は駄目じゃない)


「ヒロキさん、私駄目なの。私は弱虫、弱虫コアラなの。大切だと思っていても、思っているだけ。怖くて怖くて、何か言ってあげる、してあげることも出来ない弱虫コアラなの」
a0164204_21094168.jpg
(バニラ、君は弱くない、虫でもない。そうだ、弱虫コアラなんかじゃないよ。ユイのために何かをしなくちゃいけないよ、そしてきっと何かしてあげられるはずだ。想像するんだ、楽しいことを。ユイを笑わせる、なんだか楽しいことを想像するんだ。大切な妹のことを想い、想像する。君が笑った時、きっとユイも笑顔になるよ)
a0164204_21114886.jpg
「ヒロキさん」


(バニラ、僕の庭の花壇を見てごらん。もし君の顔に笑顔が戻ったのなら、今度は君が、君がユイを笑顔にしてあげるんだ。いいね、バニラ───)


私はヒロキさんの庭の花壇を見た───
季節外れのたんぽぽ一つ、ヒロキさんも私もユイも大好きな、黄色いたんぽぽ一つ
a0164204_21292765.jpg
a0164204_21020111.jpg
なんだかニコニコ笑ってる
黄色いたんぽぽ一つ、花壇のすみに咲いていた

「ヒロキさん───」
振り返るともうそこにヒロキさんはいない
───大丈夫、夢でもなんでも大丈夫
ヒロキさんが言ったとおり私は笑顔になっていた
a0164204_21371585.jpg
涙をぬぐって走り出す
大きなユーカリの木が揺れて応援してくれる
a0164204_21405673.jpg
a0164204_21405671.jpg
ユイの笑顔が頭に浮かぶ
a0164204_21440590.jpg
楽しい毎日、お母さんも隣で笑うあの楽しい日々
色々なことが頭に浮かぶ
a0164204_21493314.jpg
a0164204_21461567.jpg
a0164204_21493221.jpg
「あの日からずっと、ユイはポッケを見ていない」
a0164204_21520444.jpg
「お母さんになれなかった───そう考えてしまっているから駄目なんだ」
a0164204_21520367.jpg
「ユイはちゃんとお母さんできていたのに、ポッケの中にかわいい赤ちゃんがちゃんと入ってたのに。赤ちゃん、笑顔でお空の向こうへ行ったのに───」
a0164204_21520350.jpg
「───それなのに」
a0164204_21580934.jpg
「ユイはポッケのことを見ようとしない」
a0164204_21581059.jpg
「ユイがこのまま、ユイがこのままポッケを嫌いになる前に」
a0164204_22021144.jpg
a0164204_22044051.jpg
「大切なポッケを嫌いになって、そのまま嫌いなまま、笑顔も取り戻せなくなるその前に───」
a0164204_22013475.jpg
「私は何をすればいいんだろう、何してあげればいいんだろう」
a0164204_22071716.jpg
「ユイがそっと笑うには、可愛い笑顔を見せてくれるには、私は何をすればいいんだろう───」
a0164204_22071743.jpg
a0164204_22071714.jpg
a0164204_22163350.jpg
クリスマス前のオセアニア区
冬の風が吹き外を駆けるバニラの身体をだんだんと冷やしました
a0164204_22183899.jpg
アフリカ区へ向かう坂道の途中で少し休憩をして、「アフリカ区、それともユーラシア区かなぁ」と呟いたバニラ
ヒロキに言われたように一生懸命にユイのことを想い、そして笑顔になるその時を想像していました
a0164204_22142396.jpg
a0164204_22230143.jpg
「ユイ、やっぱりポッケは大切だよ。あの温かさ、覚えてるでしょ。ポッケを嫌いになんかならないで、ユイ───」
a0164204_22230020.jpg
a0164204_22330971.jpg
「ユーラシア区に行ってみよう」
そう呟いたバニラがあるき出したその時、藪の中からコロリと転がり出てきた物がありました
a0164204_22331018.jpg
それは一粒のどんぐり
リスたちが食べ忘れた、少し大きめの丸いどんぐりでした

「どんぐりさん?どんぐり君? どっちかわからないけどこんにちは」
爪を立てないように、そっとどんぐりを掴んだバニラ
秋のこと───ハヤト、そしてワカが旅立ってしまった日のことがどんぐりに写っているような気がして、ふと寂しく微笑みました
a0164204_22404152.jpg
「ワカちゃん、ハヤト、私達を見守っていてね」
ぎゅっとどんぐりを掴み、そっと呟いたバニラ
ゆっくりと手を開き、またどんぐりを見つめました
a0164204_22404097.jpg
その時風が吹き、どんぐりがぶるっと震えたような気がしました

「お帽子、無いんだね。落っことしちゃったのかな、忘れてきちゃったのかな。もう冬だもん、寒いよね」
a0164204_22543451.jpg
「そうだ───ねえ、温かい所に行かない? 連れてってあげる、決めた!」
a0164204_23004542.jpg
a0164204_23055001.jpg
ユイのポッケにどんぐり一つ
ユイのポッケにどんぐり一つ連れていこう
a0164204_23085368.jpg
ユイのポッケにどんぐり一つ
ユイのポッケにどんぐり一つ入れておこう
a0164204_23054991.jpg
ユイのポッケにどんぐり一つ
ユイのポッケにどんぐり一つ笑っているよ
a0164204_23102352.jpg
ユイのポッケにどんぐり一つ
ユイのポッケに丸くてかわいいどんぐり一つ

ユイのポッケに、ユイのポッケにどんぐり一つ
a0164204_23123237.jpg
a0164204_23123346.jpg
a0164204_23123271.jpg
バニラは眠っているユイにそっと近づき、帽子の無い丸いどんぐりをそっとポッケの中にしまいました
a0164204_23161030.jpg
a0164204_23161151.jpg
バニラはそっと自分の部屋に戻り、静かに振り返るとユイはまだ眠ったままでした
「おやすみ、ユイ」
a0164204_00285286.jpg
バニラは微笑み、そして自分も夢の中へと滑り込んでいきます
“夢を見るための準備”
今日一日いろいろなことを考え、いろいろな物を見てきたバニラにはたくさんの準備が出来ていました
a0164204_23223527.jpg
ユイの見ていた夢は途中から変わっていました
バニラがポッケの中へどんぐりをしまってからすぐのこと
a0164204_23410725.jpg
それはコアラのお母さんの夢
ポッケの中で赤ちゃんが育っていっていた、あの幸せなとき毎日のように見ていた
そんな夢でした

a0164204_23434565.jpg
コアラが見る夢どんな夢───
コアラのお母さんが見る夢どんな夢───
小さな赤ちゃん抱っこする、小さな赤ちゃんおんぶする
風に吹かれて木に揺れて、二人で笑って二人でお昼寝

a0164204_23442701.jpg
「なんだろう、なんでこんなに温かい、幸せな夢を見てしまったんだろう」
ユーカリの中でそっと目を覚ましたユイは、明るくなってきた窓の向こうを眺めながら今見た夢を思い返しました
a0164204_23505860.jpg
a0164204_23534400.jpg
自分の顔が笑顔になっている、そのことには気がつかないユイ
でも気がついたのはポッケの中に何かがしまってある、ということ
a0164204_00134994.jpg
笑顔になっていたユイはあの日から今まで出来なかったこと
“ポッケの中を覗く”
そんなことが出来るような気がしました
a0164204_00004092.jpg
そっと手でポッケを開き、中を覗いたユイ
そこにはコアラのような顔が描いてあるどんぐりが一つ入っていました
そっと取り出してどんぐりを見つめました
裏側には小さな文字で「あ り が と う」と書いてあります

「お姉ちゃん」
ユイはそう言いながら、隣の部屋を見るとバニラは微笑みながらまだ眠ったままでした
a0164204_00045009.jpg
「お姉ちゃん、こんな下手くそな顔描いちゃ、どんぐりがかわいそうだよ」
そう言ってユイは笑いました
久しぶりに見せるその笑顔はどんぐりに描かれたコアラの笑顔と同じくらい楽しそうに、そして輝いていました
a0164204_23533203.jpg
a0164204_00142162.jpg
コアラの姉妹が今日も暮らす、金沢動物園のオセアニア区
a0164204_00152553.jpg
a0164204_00155645.jpg
この先どんなことがあったとしても、二人はずっと仲良し姉妹
いつも二人で笑って暮らす、不思議コアラの仲良し姉妹
a0164204_00181463.jpg
a0164204_00181481.jpg
a0164204_00181446.jpg
二人で一緒に楽しんで、二人で一緒に喜んで
a0164204_00202644.jpg
a0164204_00202674.jpg
a0164204_00202547.jpg
二人で一緒に涙をこぼす
a0164204_00220389.jpg
a0164204_00220340.jpg
バニラとユイ
かけがえのないコアラの二人
a0164204_00241894.jpg
「ユイのポッケにどんぐり一つ、私のポッケにもう一つ」
a0164204_00241858.jpg
「ユイのポッケにどんぐり一つ、みんなのポッケにどんぐりたくさん一つづつ」
a0164204_00264022.jpg
「ユイのポッケにどんぐり一つ、帽子が外れたどんぐり一つ」
a0164204_00301640.jpg
「ユイのポッケにどんぐり一つ、魔法をかけたどんぐり一つ」






    

by bon_soir | 2017-03-03 00:45 | 金沢動物園 | Comments(6)
ユイのポッケに
金沢動物園で暮らすコアラ、バニラ
a0164204_12170826.jpg
バニラが考えるのは、妹ユイのポッケの中のこと
a0164204_12195430.jpg
a0164204_12195523.jpg
気になって気になって、いつでも考えてしまう
そんなバニラ
a0164204_12213764.jpg
「ハヤトくんが心配」
a0164204_12230105.jpg

「ハヤトくんは今このお部屋の中にはいない。少し身体がだるいらしい」
a0164204_12230166.jpg
「きっと、外に植えられた不思議な草が怖いんだ」
a0164204_12230197.jpg
「いつのまにか周りじゅうに植えられているその草は“コキア”って言うらしい」
a0164204_12280177.jpg
「あっちにもこっちにも」
a0164204_12272392.jpg
a0164204_12272475.jpg
「寒くなりだした頃に赤くなる、そう聞いた」
a0164204_12294117.jpg
a0164204_12294175.jpg
「ハヤトくん、早く元気で戻ってきなよ」
a0164204_12305298.jpg
a0164204_12305154.jpg
「ハヤトくんはお兄ちゃんっぽくなるんだよ」
a0164204_12324112.jpg
「ユイのポッケの中に赤ちゃんがいる」
a0164204_12322542.jpg
「ユイのポッケの中には赤ちゃんがいる」
a0164204_13245194.jpg
「ユイのポッケの中には赤ちゃんがいる」
a0164204_13245115.jpg
「知ってる?ユイのポッケの中に赤ちゃんがいるんだよ」
a0164204_13260934.jpg
「知ってる?いつかポッケから顔を出すんだよ」
a0164204_13274996.jpg
a0164204_13274946.jpg
「みんな知ってる?ユイのポッケの中には赤ちゃんがいるんだよ」
a0164204_13414297.jpg
「ユイのポッケの中には赤ちゃんがいる」
a0164204_13291658.jpg
a0164204_13291687.jpg
「ワカちゃん、ユイに色々教えてあげてね」
a0164204_13355726.jpg
「ワカちゃん、ユイに色々教えてあげてね」
a0164204_13373726.jpg
「ユイもお母さんになるんだよ」
a0164204_13373711.jpg
「ユイがお母さんになるんだよ」
a0164204_13390275.jpg
a0164204_13390123.jpg
「ユイのポッケの中には赤ちゃんがいる」
a0164204_13401890.jpg
「ユイのポッケの中には赤ちゃんがいる」
a0164204_13441062.jpg
「ハヤトくん、早く元気になって戻っておいでよ」
a0164204_13440941.jpg
「ハヤトくんはお兄ちゃんっぽくなるんだよ」
a0164204_13454071.jpg
「ユイのポッケの中に赤ちゃんがいるんだよ」
a0164204_13465266.jpg
「ユイのポッケの中には赤ちゃんがいる」
a0164204_13465262.jpg
「私は伯母さんになる」
a0164204_13491931.jpg
a0164204_13482244.jpg
「なんだか不思議だね」





by bon_soir | 2016-09-10 13:51 | 金沢動物園 | Comments(6)
あの家、庭には誰がやってくるんだろう
金沢動物園で暮らすコアラ、バニラ
a0164204_09340140.jpg
梅雨が明けたことを感じたバニラ
8月が来たことを感じる
そんなバニラ
a0164204_09352986.jpg
「窓から空を見上げたらわかる。また来た。暑い夏」
a0164204_09370185.jpg
a0164204_09372597.jpg
「ヒロキさんが旅立って1年。もう1年。あの家にヒロキさんはもういない。あの優しかったおじいさんはもうずっといない」
a0164204_09383217.jpg
「今年はキウイの実を見に行かなかった。ヒロキさんの『ほら、あそこに実がなってるよ』って優しく言う声が聞こえないから、私達の笑顔を傍で見てくれるあの優しい顔がそこに無いから」
a0164204_09450752.jpg
「あのかわいいキウイの実を見に行かなかった──見には行けなかった」
a0164204_09475538.jpg
「きっと泣いてしまうから」
a0164204_09503332.jpg
「飼育係のお姉さんは言った。『もうすぐ8月24日だね』って少し寂しそうに小さな声で、そっと微笑み泣くように、そう言った」
a0164204_09523678.jpg
「そしてまた掃除をしている。いつもの様に私達のお部屋を綺麗に、静かに掃除してくれた」
a0164204_09540174.jpg
「ユイは『8月24日』という言葉が聞こえたみたいであのお庭の方を見つめ、ぽろぽろと泣いた」
a0164204_09555219.jpg
a0164204_09564415.jpg
「暑い夏はただ暑いだけじゃない。寂しくてたまらない、そんな暑い夏」
a0164204_09575912.jpg
「私たちはこれから毎年感じ、思い出す。そんな暑さ。去年の夏のあの暑さ」
a0164204_10012741.jpg
「ヒロキさん──」
a0164204_10030018.jpg
「お母さん、お父さん、ヒロキさんと楽しくしてますか?」
a0164204_10044508.jpg
「飼育係のお姉さんは言う『またいっぱいのお花で溢れるよ』って、慰めてくれるようにそっと言う」
a0164204_10072357.jpg
「そうしたらユイと二人でお花を見にいこう。あそこにキウイの実はきっともう無いけれど、ヒロキさんのための綺麗なお花を見にいこう」
a0164204_10100884.jpg
「8月24日──ヒロキさん、どうしてその日に出掛けたの?どうしてその日に旅に出たの?」
a0164204_10114414.jpg
「ヒロキさん──お礼をちゃんと言えなかったよ、私もユイもヒロキさんにお礼を言えなかったよ」
a0164204_10163743.jpg
a0164204_10163751.jpg
「ヒロキさん、いろんなお話ありがとう。楽しくって素敵なお話、本当にありがとう」
a0164204_10182133.jpg
「あの家、お庭には誰がやってくるんだろう」
a0164204_10195566.jpg
「今は誰もいないあの家、あのお庭には誰がやってくるんだろう」
a0164204_10205217.jpg
「誰も来ないわけじゃない。きっと誰かやってくる」
a0164204_10223004.jpg
a0164204_10222994.jpg
「あの家、お庭には誰がやってくるんだろう」
a0164204_10231327.jpg
「今は誰もいないあの家、あのお庭には誰がやってくるんだろう」
a0164204_10240158.jpg
「オセアニア区には誰がやってくるんだろう」




    

by bon_soir | 2016-08-08 10:34 | 金沢動物園 | Comments(2)
バニラとユイ
金沢動物園で暮らすコアラ、バニラとユイ
a0164204_07533064.jpg
a0164204_07542195.jpg
二人のお父さんはライタ
二人のお母さんはテルちゃん
a0164204_07580160.jpg
a0164204_07580124.jpg
お父さんもお母さんも悲しいけれどもういない
金沢動物園にはもういない
a0164204_07590870.jpg
a0164204_07590852.jpg
笑顔の二人だけど、時々思い出せばきっと涙をこぼしてる
a0164204_08012347.jpg
a0164204_08012358.jpg
ぽろりと一粒
空を見上げてぽろりと一粒、きっと涙をこぼしてる
a0164204_08034682.jpg
a0164204_08034697.jpg
二人は金沢動物園で暮らすコアラ
きっといつまでも金沢動物園のコアラ
a0164204_08044379.jpg
a0164204_08044384.jpg
ライタとテルちゃん
二人に見守られて暮らす、そんなコアラ
a0164204_08062132.jpg
a0164204_08062232.jpg
ふとした瞬間が本当にテルちゃんに似てきた、かわいい二人のコアラ
a0164204_08085978.jpg
a0164204_08090002.jpg
それにしても大きな葉っぱばかり食べるバニラ
a0164204_08102105.jpg
a0164204_08102120.jpg
a0164204_08102172.jpg
朝早く、まだ交換前のユーカリを食べるユイの下
a0164204_08113245.jpg
a0164204_08113331.jpg
変な所で眠るバニラ
a0164204_08113323.jpg
不思議なコアラ
不思議な姉妹
a0164204_08113280.jpg
a0164204_08113207.jpg
特にバニラはどこか不器用
a0164204_08143445.jpg
そんなコアラ、大好きなバニラ
a0164204_08143405.jpg
a0164204_08143475.jpg
みんな優しいから大丈夫
きっと、ずっと大丈夫
a0164204_08143447.jpg



   


by bon_soir | 2016-06-27 19:00 | 金沢動物園 | Comments(2)
バニラとオーストラリアの写真
金沢動物園で暮らすコアラ、バニラ
a0164204_06421241.jpg
晴れたオセアニア区はカンガルー達の楽しそうな声が溢れ、コアラ達の家の静かさが際立つようでした
a0164204_06423662.jpg
いつもの様に床で一休み
そんなバニラ
a0164204_06442822.jpg
眠りから覚めたユーカリのポットの中から今朝最初に見つけた物はたくさんの写真でした
a0164204_06450110.jpg
それはオーストラリアの動物達そして素晴らしい景色の写真
a0164204_07181703.jpg
バニラはまどろみながらその写真をゆっくりと眺め、静かな空気の中で色々なことを思い浮かべていました
a0164204_06472017.jpg
「コアラの写真がある」
a0164204_06462872.jpg
「今のハヤトくらいの頃かな。お母さんからオーストラリアの話を聞いたんだった」
a0164204_07221949.jpg
「お母さんがお母さんのお母さんから、お母さんのお母さんはそのまたお母さんのお母さんのお母さんから」
a0164204_07224665.jpg
「ずっとずっと、ずっとずっと大勢のお母さんから教えてもらい続けた、そんな話」
a0164204_07250559.jpg
「オーストラリア大陸とオーストラリアのユーカリの木の、大切なお話」
a0164204_07271149.jpg
「ユーカリの森の空は青い。どこよりも、世界中のどこよりも青い」
a0164204_07281362.jpg
「そんなお話」
a0164204_07285400.jpg
「たくさんのユーカリと、大勢のコアラ」
a0164204_07293247.jpg
「見てみたい。会ってみたい」
a0164204_07300623.jpg
「オセアニア区の大きなユーカリの木の隙間から見える空も青いのに、もっと青い、もっともっと青いんだって」
a0164204_07302510.jpg
「ユーカリの森で暮らすコアラが見てる空。それはきっとこの金沢動物園で見上げる空と繋がってる」
a0164204_07314845.jpg
「空を超えることが出来るなら、鳥のように空を自由に飛べるなら、きっとオーストラリアに行くことだって出来るんだ」
a0164204_07350726.jpg
「でも私はコアラ。私は金沢動物園で暮らす、ちょっと不器用な女の子のコアラ」
a0164204_07365105.jpg
「飛べないよ」
a0164204_07385167.jpg
「今頃お母さんは見てるのかな。ユーカリの森と青い空、そして大勢のコアラ達。楽しそうなこと、素敵なこと。みんなみんな見てるのかな」
a0164204_07410906.jpg
「お母さん、たまには私たちのことも眺めていてね、近くから見守っていてね」
a0164204_07421816.jpg
「でも今は見ていてくれてそう。オセアニア区の空がとっても青いもの」






   

by bon_soir | 2016-04-25 06:41 | 金沢動物園 | Comments(0)
バニラが見たオセアニア区

金沢動物園で暮らすコアラ、バニラ
a0164204_23384295.jpg
「今年も咲いたね」
と去年まではお母さんのテルちゃんと一緒に笑っていた春の風景
a0164204_23400605.jpg
a0164204_23432368.jpg
テルちゃんが隣にいない今年の春
そして風景もがらりと変わってしまった今年のオセアニア区
a0164204_23450500.jpg
色々なことがバニラの気持ちを変えていきどこか不安な毎日のまま、オセアニア区には大好きだったはずの春が来ました
a0164204_23520356.jpg
毎年変わらないこと
それがどんなに安心できることなのか
a0164204_23581712.jpg
それとも変わっていくことに自分が慣れていかないだけなのか
バニラにはなにもわかりません
a0164204_00000836.jpg
a0164204_00004450.jpg
あの待ち遠しかった春は今のバニラには伝わってきません
バニラが眺める窓の外、暖かくてお花の香りがするはずなのに戸惑うばかりのコアラ、バニラ
a0164204_00385676.jpg
暖かく晴れた春の始まりの日、飼育係のお姉さんはそんなバニラをつれて歩きました
a0164204_00311760.jpg
a0164204_00395549.jpg
バニラを優しく抱いた飼育係のお姉さんが向かった先
a0164204_00405968.jpg
小鳥たちの声が聞こえてくる暖かい春の中へと進む二人
a0164204_00432982.jpg
a0164204_00454129.jpg
「暖かいね」
バニラがそうささやくと飼育係のお姉さんは何も言わずただオセアニア区を見渡して優しく微笑んでいました
a0164204_00590198.jpg
飼育係のお姉さんの温かい気持ち
お母さんに抱かれていた時と同じ心が穏やかに落ち着く、そんな気持ち
そんな気持ちの中でバニラは感じ始めていました
a0164204_01094810.jpg
オセアニア区の大きなユーカリの木
a0164204_01050413.jpg
まだ工事は終わったわけではないのにバニラが外に出れば笑顔で集まってくれる人
a0164204_01014087.jpg
穏やかな春の風、暖かな日差し
大好きな黄色、お花が咲いた黄色いミモザの木
a0164204_01114160.jpg
どんなに景色が変わっても何も変わっていない春がここにはたくさんありました
a0164204_01075718.jpg
何も話さなくても伝わる思い
春の優しい風にあたり、春の音を聞き、お母さんの笑顔を思い出す
a0164204_01184729.jpg
いつのまにか時間は経ち、そして飼育係のお姉さんを見つめる度にバニラは感じるようになっていました
a0164204_01191014.jpg
一緒にでかけた春のお散歩
バニラにはとても大切な時間になり、いつまでも忘れない春の大切な始まりになりました
a0164204_01271477.jpg
a0164204_01290191.jpg
「戻ろう、ユイが待ってるよ」
何も言わなかった飼育係のお姉さんが最初に言った言葉に頷いたバニラ
a0164204_01313198.jpg
バニラにいつもの笑顔が戻ってきていました
a0164204_01331567.jpg
変わっていくこと、変わってしまうこともあれば変わらないことだってきっとある
a0164204_01354017.jpg


大切なことは動物達の優しい気持ち、人の優しい気持ち
そんなことを感じ続けるということ
a0164204_01371981.jpg
より優しく変わり、いつまでも優しい気持ちを伝えること
寂しく悲しい春だから、いつもよりも必要な気持ちをしっかりとつかんでいなければいけないということ
a0164204_01403422.jpg
一緒に出掛けた春のお散歩
ずっとずっと忘れない暖かい春と温かい気持ちの春のお散歩
a0164204_01431547.jpg
a0164204_01540590.jpg
「私の傍にはユイがいる」
a0164204_01454948.jpg
「ただ一人の妹、ユイがいる」
a0164204_01475587.jpg
「ワカちゃんもハヤトもみんなここで暮らしてる」
a0164204_01560527.jpg
a0164204_01571550.jpg
「春は短い。楽しいって思わなければもったいない」
a0164204_02012429.jpg
「今度はユイとお散歩に出かけよう、ユーカリの葉っぱのお弁当を持ってお散歩に出かけよう」
a0164204_02030545.jpg
「二人で笑っておしゃべりをして、四つ葉のクローバーを探してみよう」
a0164204_02033907.jpg
「そう、それがいい」
a0164204_02103551.jpg
a0164204_02132358.jpg
「ユイが窓の外を眺めてる」
a0164204_02151175.jpg
a0164204_02155241.jpg
「きっとリスが跳ねたのが見えたんだ」
a0164204_02180553.jpg
「ユイ、今度は階段ができたんだよ。てっぺんからはどんな景色が見えるんだろうね」
a0164204_02204679.jpg
a0164204_02214278.jpg
金沢動物園で暮らすコアラ達
儚く健気な動物達




   

by bon_soir | 2016-03-11 07:00 | 金沢動物園 | Comments(4)
テルちゃんとバニラ、どこまでも続くオセアニア区の大きなユーカリの木
金沢動物園で暮らすコアラ、バニラ
a0164204_05372684.jpg
大好きなお母さん、テルちゃんがいつの間にか隣にいなくなってから数日
どんな時でも下のお部屋にいるであろうお母さんのことを想い続け、毎日毎日心配をしていました
a0164204_06553395.jpg
大好きな飼育係さんに聞こうと思っても勇気が足りません
a0164204_06573513.jpg
妹のユイに相談しようと思っても、変に心配をかけたくないとも考えてしまいます
a0164204_07001024.jpg
バニラは毎日一人で心配し悩み、どこからかお母さんの声が聞こえてこないかなと大きな耳を澄ませていました
a0164204_07022282.jpg
でも何もわからない、変わらない日々が一日一日と過ぎていくばかりでした
a0164204_07032865.jpg
いつもの様に閉園の音楽が聞こえてきた夕暮れの金沢動物園
バニラがふと窓の外を見ると工事の壁の向こう側に陽は沈み、オセアニア区の大きなユーカリの木が影のようになっていくところでした
a0164204_07070515.jpg
バニラは寂しく微笑み、誰にも聞こえない小さな声で呟いていました
「今日も動物園が終わっていく。私たちはコアラ。暗くなれば何故かみんなが目を覚ます」
a0164204_07083929.jpg
「でもお母さんは今日も隣に帰ってこない。優しい笑顔はそこにない」
a0164204_07113122.jpg
「どうしてこんなに寂しいんだろう、どうしてこんなに辛いんだろう」
a0164204_07134694.jpg
「今さっきまでユイもワカちゃんも起きていたのに、またすぐに寝てしまった。そう、私はまた一人で考える。お母さんのことを今日も一人で考える」
a0164204_07161107.jpg
「考えてばかり。でもこれは夢を見るための準備にはならない。だから最近私は夢を見ていない。ただ眠っている」
a0164204_07181159.jpg
「でも悪い夢を見るよりはずっといい。そう、ずっといい――」


いつの間にかバニラの目にはたくさんの涙が溢れていました
見る物全てが涙でにじみ、ぼんやりとしか見えません
a0164204_07222509.jpg
今のバニラの目に映るのは光や色、みんなの境界線が溶けた不思議な景色でした
手探りで木を探し、ゆっくりと登るバニラ
a0164204_07583157.jpg
暗くなった窓の外をぼんやりと眺め、工事が始まる前のオセアニア区の風景を一生懸命に思い出してみました
カンガルー達の賑やかな声、季節ごとに咲くたくさんの綺麗な花、風に吹かれ飛んで行くタンポポの綿毛
そして夜空に輝くたくさんの星
a0164204_08055358.jpg
何もかもが懐かしく、その輝く思い出がバニラの瞳をもう一度濡らしていきました
「ヒロキさん、私は寂しいです」
バニラは小さな手で涙をぬぐい、みんなが寝静まった静かなコアラ舎の窓の外、月明かりに照らしだされた大きなユーカリの木を眺めました
a0164204_08120996.jpg
「早く工事が終わらないかな」
小さな声でそう呟いた次の瞬間、一番大きなユーカリの木に向かって歩く小さな影が見えました

「お母さんだ――」
a0164204_08221536.jpg
バニラはユイの方に振り返りました
さっきまでひとしきりユーカリの葉っぱを食べたユイはぐっすりと眠っていました

「ユイはきっと起きない。だめ、急がないと――」
a0164204_08251186.jpg
急いで木を降りドアへと向かったバニラ
「お願い」と願いをこめ、そっとドアを押してみました
a0164204_08275122.jpg
「開いた――」
“キィー”と小さな音を立て静かにドアは開きました
少しの隙間をそっと抜け、また静かにドアを閉めたバニラはあることに気がつきました
a0164204_08310244.jpg
星空が広がっているはずと見上げた空が、何故か綺麗な青空だったのです
a0164204_08345443.jpg
「あれ、おかしい。太陽はずっと前に沈んだ、もうとっくに夜のはず。違う、さっき部屋から見たときは確かに暗かったのに……」
夜のはずなのに綺麗な青空が広がるオセアニア区には誰の姿もありません
ただ大きなユーカリの木から伸びた影がバニラに向かって伸びています

「何か考えてちゃ駄目だ。走るんだ。そうしないときっと追いつかなくなる」
a0164204_08403217.jpg
誰の声も風の音も聞こえてこない時間が止まったようなオセアニア区の中、バニラは一番大きなユーカリの木に向かって走り出しました
「あれは絶対にお母さんだった。間違えるはずがない」
a0164204_08422747.jpg
「お母さん、身体は大丈夫なの?痛くないの?」
テルちゃんの優しい笑顔を思い浮かべながらできる限りの速さで走るバニラ
一番大きなユーカリの木を目の前に、最後までは見ることが出来ないてっぺんの方を見上げてみました

a0164204_08492185.jpg
「お母さんの姿は見えない、でも間違いない。きっとこの木を登って行ったんだ」
バニラは登り出しました
ずっと会いたかったお母さんの姿を探し、前のようにまた声をかけ一緒に笑いたい
その一心で一生懸命に登っていきました
a0164204_08543244.jpg
相変わらず静かな何故か青空のオセアニア区
ユーカリの木を登る自分の爪の音、普段より少し大きな自分の息の音だけが聞こえてきます
ただ登り続けるバニラ、そしてどこまでも伸びている大きなユーカリの木
a0164204_09005195.jpg
いくら登ってもテルちゃんの姿は見えてきません、いくら登ってもユーカリの木のてっぺんにはたどり着きません
「木を間違えたかな」
そう呟いたバニラが下を見下ろしてみると、金沢動物園全体が豆粒のように小さく見えていました
落ちてしまったら大変です
色々なことを考えだしはじめてしまったバニラはとても心細くなってきてしまいました
a0164204_09051040.jpg
「お母さん、何処に行っちゃったの。もう疲れちゃったよ。もうこれ以上登れないよ」
バニラは疲れてしまっていました
a0164204_09312870.jpg
そう呟いたバニラの目から涙が一粒地面に向かって時間をかけて落ちていきます
涙の行方は見届けられません
「ナミヘイさん、ワライカワセミさん、カンガルーさん」
a0164204_09325243.jpg
a0164204_09330079.jpg
a0164204_09332560.jpg
「ヒロキさん――力をください。私にお母さんに会うための力をください」
a0164204_09343881.jpg
バニラはまた涙をぬぐいました
小さな手で何度も何度も涙をぬぐいました
ふともう一度上を見上げると目の前にあるものがあることに気がつきました
「あっ」
a0164204_09121230.jpg
「これはお母さんの毛だ。いつだってふわふわの、どこの毛だろう――耳かな、お腹かな? 大丈夫、この木を登り続ければきっとお母さんがいる」
バニラの身体にはまた力が湧いてきていました
小さな身体を上に上にと押し上げる、儚く小さな決して強くはないコアラの力
a0164204_09164012.jpg
バニラはコアラでした
木に登ることができるコアラ、小さなコアラでした
a0164204_09384763.jpg
バニラは再び登り続けました
ただ上を見て、ただ大好きなお母さんの笑顔を思い浮かべて登り続けました
長い、長い時間が過ぎていきました
a0164204_09231988.jpg
a0164204_09235105.jpg
a0164204_09242440.jpg
どれくらいの時間が過ぎたのかわかりません、バニラにも誰にもわかりません
ふと気が付くと真っ白な雲に近づいていました
大きなユーカリの木のてっぺんはその真っ白な雲を突き抜けて伸びているようでした

「ずいぶん高いところまで――」
バニラがそう呟きかけた瞬間、聞き慣れた優しい声が大きな耳の中へと吸い込まれました
a0164204_09302024.jpg
「バニラ、バニラっ」
a0164204_09395355.jpg
そこにはずっと探していたテルちゃんの、お母さんの優しい笑顔がすぐ傍に輝いていました
「お母さん――お母さん、探したんだよ。追いかけてきたんだよ」
a0164204_09432682.jpg
「もう会えないかと思った、もうお話し出来ないかと思ってた。どうして黙って外に出たの?どうして大きなユーカリの木を登ってきたの?」
a0164204_09454265.jpg
「もうこんなことしちゃ嫌だよ。私やユイをおいてどこかに行っちゃ嫌だよ。帰ろう、みんなの所へ、お家に帰ろうよ。飼育係さんも待ってるよ」
a0164204_09475930.jpg
「バニラ、お母さんは戻らないよ、戻れないよ。これからもっと上に登るの、この白い雲の上、ずっと上に登って行くの」
a0164204_09495239.jpg
「じゃあ私も一緒に行く、一緒に登るよ。離れたくないんだもん。ずっと隣で見守ってきてくれたお母さんのことが大好きなんだもん」
a0164204_09515943.jpg
「駄目、それは駄目なんだよ。バニラはここで引き返しなさい。今ここから上はお母さんしか登れない。このままバニラを連れていったらみんな悲しむよ」
テルちゃんはバニラのほっぺの涙をそっとぬぐいながら優しく言いました。
a0164204_09562679.jpg
「バニラ、本当はわかってるんでしょ。お母さんがこれからどこへ行くのか。そこはね、バニラのお父さんも、お母さんのお母さんもみんないる。ヒロキさんもいる所。誰もがいつか必ず行く所。でもいつそこへ行くかはわからない、誰にもわからない。わかっているのはバニラにはまだ早いってこと。大丈夫、みんな待ってる。これ以上どこにもいかない。だからバニラはまだまだ動物園で暮らしなさい。優しい飼育係さん、動物達を見に来るお客さん。みんなと一緒に動物園で暮らしなさい。バニラやユイ、ワカちゃん、そしてみんなとは一度お別れ。次にバニラと会うのはずっと先。ずっとずっと、本当にずーっと先のこと」
a0164204_10082072.jpg
テルちゃんの話を聞いているバニラは何も声に出来ませんでした
ただ涙を流し、ただ頷いて泣いていました
a0164204_10102104.jpg
「バニラ、今日は夜のはずなのにコアラ舎の外は青空が広がっていたでしょう。それはどうしてかわかる? お母さんが頼んだの。私たちはコアラ、昼の間はたくさん眠っている。時々起きて晴れた空を見上げていても、またすぐに眠くなる。お母さんは青空をずっと眺めてみたかった。すっきりとどこまでも広がる青い空、色々なかわいい形の白い雲、そして光り輝くユーカリの木と葉っぱ。ずっと眺めてみたかった。こうして最後に明るい世界をずっと眺められて嬉しかった。ここは凄く高い、空気も澄みきっている、どこまでもどこまでも見渡せる――最後の旅は本当に素敵な旅になった」
a0164204_10181688.jpg
a0164204_10184671.jpg
「さあ、気を付けて戻りなさい。みんなが待ってるよ。お母さんはもう少し登っていく。勇気を出してお別れね」
a0164204_10505438.jpg

「今は朝の8時半。バニラ、今日はさようなら」



二人は別れ、それぞれの場所へと行き、戻りました
バニラが戻ったオセアニア区はそのままずっと晴れ、冬なのに暖かい優しい日になりそうでした
a0164204_10363230.jpg
a0164204_10444452.jpg
一度空を見上げ、大きなユーカリの木のてっぺんを見つめたバニラ
出た時と同じ様にドアをそっと開け、静かに中へ入りました
a0164204_10365608.jpg
a0164204_10372374.jpg
その気配でユイは目を覚まし、眠そうに目をこすりながらバニラに話しかけました
a0164204_10383463.jpg
「お姉ちゃん、おはよう。どこかに行ってたの?」
a0164204_10390209.jpg
バニラは昨晩のことを話すのか一度迷いましたが、それは「また今度」と思い、今は別のことを話すことにしました
a0164204_10463123.jpg
a0164204_11124772.jpg
「お花を探しにいってきたんだよ。家の裏にはウメの蕾が膨らんで――」
a0164204_10442622.jpg
a0164204_10480693.jpg
バニラはそんなことを話しながら必死に涙をこらえていました
最後に見た笑顔、頭を優しく撫でてくれた時のテルちゃんの温かく優しい笑顔を思い出すとどうしても涙が出てきてしまいました
a0164204_10513620.jpg
バニラは心の中で言いました
――お母さん、今までありがとう
a0164204_10223578.jpg
「お姉ちゃん、どうしたの? 泣いてるよ」
a0164204_10535673.jpg
「なんでだろうね、わからないよ。ユイ、お姉ちゃんにもわからないよ」
a0164204_10553992.jpg
「変なお姉ちゃん」
ユイは微笑みながらバニラのほっぺをつたう涙をぬぐいました
a0164204_10560578.jpg
「ユイ、お母さんみたいなことしなくていいよ、恥ずかしいよ」
バニラは自分で涙をぬぐい、泣きながら少し笑いました
a0164204_10551368.jpg
a0164204_10583328.jpg
「そうだ、ユイ。ヒロキさんのお庭のミモザの蕾が膨らんできたんだ。もう少しで咲くね。暖かい日が続けばまた黄色いお花が咲くね」
a0164204_10591135.jpg
「春だよ、みんなの大好きな春がくるんだよ」
a0164204_11010676.jpg
「そうなんだ、見に行こうよ。ワカちゃんと赤ちゃんも一緒に見に行こう――」
a0164204_11020871.jpg
ユイが笑う傍でバニラはテルちゃんのお部屋の所にある物に気がつきました
a0164204_11015823.jpg
「あれはなんだろう?ユーカリかな」
a0164204_11044687.jpg
飼育係さんがテルちゃんのために供え、置いてくれたユーカリの花瓶
そのユーカリの花瓶が部屋の中で吹いているはずのない風に吹かれ、さらさらと揺れていました
a0164204_11014692.jpg
バニラはユーカリの花瓶の側へと自然に歩き出していました
a0164204_11074531.jpg
「このユーカリ、お母さんの匂いがする――」
a0164204_11082359.jpg
a0164204_11090499.jpg
a0164204_11095157.jpg
金沢動物園にはコアラが暮らしています
今日もかわいいコアラ達が静かに暮らしています
a0164204_11130279.jpg

儚い命はこれからもずっと
ずっと繋がっていきます
a0164204_11213154.jpg



    

by bon_soir | 2016-02-10 11:22 | 金沢動物園 | Comments(6)
バニラとお正月
金沢動物園で暮らすコアラ、バニラ
a0164204_12091122.jpg
1月1日、初日の出を見に大勢のお客さんが集まる金沢動物園
ほかのみんなより少しだけ早く目が覚めたバニラはただぐずぐずしているだけじゃもったいない、そんな時間をどう使うかで悩んでいました
a0164204_12124434.jpg
a0164204_12140373.jpg
「今日は朝だけお客さんが見に来てくれる日。そんな日、お正月。今頃みんな待っている、太陽が昇ってくるのをきっと待っている」
a0164204_12125813.jpg
「私はなぜだか急に目が覚めた。太陽が昇ってくるより早く、そしてはっきりと目が覚めた。また今すぐには眠れない」
a0164204_12171231.jpg
「今年の冬は少しだけ寒くない。暖かいわけじゃないけれど、何故かそんなに寒くない」
a0164204_12221992.jpg
「私も見に行こう。昇ってくる太陽を、冬の金沢動物園を、少しだけ見に行こう。少しだけ歩いて少しだけ見て回ろう」
a0164204_12244366.jpg
「ユイ、起きてる? 私と一緒に行ってみない?」
a0164204_12254453.jpg
「眠いの? やっぱり行かないの……」


「お母さんは相変わらず寝ぼけてる。お母さんも無理」
a0164204_12265736.jpg
「ワカちゃんはポッケの中に赤ちゃんがいるからまだちょっと駄目」
a0164204_12285416.jpg
「しかたがない、私一人で行ってこよう。早くしないと登ってしまう、初日の出に間に合わない」
a0164204_12303374.jpg
「あっという間、あっという間に空が明るくなってきた」
a0164204_12313982.jpg
「今日はオセアニア区の裏通りを歩けるみたい。お客さん達もそのうちここを歩いてくる、コアラの家に向かって歩いてくるんだね」
a0164204_12321378.jpg
「工事をしているけど、ここはまだ変わってない。これからどうするんだろう――どうなるのかはわからない」
a0164204_12341885.jpg
a0164204_12355355.jpg
「ここがヒロキさんのお部屋だった場所。ヒロキさんがずっと暮らしていたあのお部屋の裏側」
a0164204_12365536.jpg
「ほら、ドアに『ウォンバット』って書いてある」
a0164204_12381041.jpg
「トンネルの材料と、ヒロキさんが齧ってた木のぼっこ」
a0164204_12390441.jpg
a0164204_12404356.jpg
「そしてヒロキさんが中庭から裏側を眺めていた場所」
a0164204_12415537.jpg
「裏側から見たミモザの木。ヒロキさんが大好きだったあのミモザの木」
a0164204_12452794.jpg
「まだあの時のまま。まだ何も変わらない」
a0164204_12424000.jpg
「工事は大きな音を立てて進んでる。でもまだここは何も変わってない。嬉しいな」
a0164204_12430459.jpg
「太陽が登ってきたみたい。遠くからお客さんの声が聞こえてくる」
a0164204_12441229.jpg
「急がないと」
a0164204_12463614.jpg
「ヒロキさんの部屋の前には入れなくなってしまった。それだけが心配なこと。もうあの素敵な写真を眺めることは出来ないのかもしれない」
a0164204_12472920.jpg
「寂しいね」
a0164204_12493432.jpg
「これが図。新しいオセアニア区の出来上がりの図。色々想像できる、そんな図」
a0164204_12501536.jpg
「太陽が出てきた。時間が無い」
a0164204_12522371.jpg
「私は決めてある。どこで見るかを最初から決めてある」
a0164204_12535876.jpg
「初日の出を見るのはオセアニア区の大きなユーカリの木。大きなユーカリの木のてっぺんから私は見るの」
a0164204_12560454.jpg
「昇ってくる。太陽がゆっくりと早く登ってくる。夜明けだよ」
a0164204_12570776.jpg
「みんな、あけましておめでとう」
a0164204_12583325.jpg
「ヒロキさん、見えていますか? そこからあの初日の出が見えていますか?」
a0164204_12594409.jpg
「コアラはみんな元気です」
a0164204_13011930.jpg
「フクちゃんさん、おめでとう」
a0164204_13014930.jpg
「トビのトビンさん、チョウゲンボウさん、あけましておめでとう」
a0164204_13024586.jpg
a0164204_13025372.jpg
「キィアンガさん、キィアンガさん!」
a0164204_13031536.jpg
「あけましておめでとうございます」
a0164204_13053147.jpg
「私はお客さん達が来る前に一周りしています、少し寒いけど大丈夫。今年はそんなに寒くないんです」
a0164204_13074110.jpg
「ローラさん、おめでとう」
a0164204_13090246.jpg
「お客さん達も動物達も飼育係さん達も、おめでとう」
a0164204_13111159.jpg
「あけましておめでとう」
a0164204_13110131.jpg
a0164204_13120007.jpg
金沢動物園で暮らすコアラ、バニラ
大好きなテルちゃんの初めての子供
a0164204_13151058.jpg
大好きなコアラ、バニラ




   

by bon_soir | 2016-01-02 13:17 | 金沢動物園 | Comments(6)