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フクちゃん
五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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工事前のとある日
朝のフクちゃん
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何度か部屋に戻っていくけどまたすぐに出てきていたフクちゃん
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フクちゃんの庭、日陰ばかり
見ているお客さんもまた、日陰ばかりでとても寒い

小さな日向でじっとするフクちゃん
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眠いよね
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小さな日向
向こう側にはワインとワンダー
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なんだかちょっと羨ましい
二人の庭は日向が多い
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そしてなにより、二人は幸せそう
毎日毎日、それはそれは幸せそう

フクちゃん木に足を乗せる
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少し不安定
この木は少し不安定
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ワインとワンダーの笑い声、楽しそうな会話が聞こえてくるね
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なにより二人は温かいね
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小さな日向でだんだん身体が温まる
ついついあくびが出てしまう
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地球は回る
自転する
小さな日向も動いていく
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合わせて移動
日向に合わせて移動しなければ寒くて寒くてしかたない
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小さな日向でだんだん身体が温まる
ついついあくびが出てしまう
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あくびの終わり
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気持ちいいね
そんな朝だね
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なんだか少し寒い
そんな冬の終わりの朝のこと
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小さな日向でだんだん身体が温まる
ついついあくびが出てしまう
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小さな日向は今日もまたいなくなる
そっと隠れ、そっと離れてまた後で
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工事前
ブルーシートを気にしてました
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工事終わってよかったね
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頑張れフクちゃん




   

by bon_soir | 2017-03-01 11:00 | 五月山動物園 | Comments(4)
ワインとワンダー、まだまだ続く物語
五月山動物園で暮らすウォンバット、ワインとワンダー

工事が本格的に始まる前、冬の終わりかけの少し暖かい日
ワンダーは穏やかに微笑み、どこか名残惜しく感じる朝を漂い始めていました
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「この風景がもうそろそろ変わるんだね───」
ワンダーはわかっていました
長い間過ごしてきたこの庭が変わる日がすぐそこだということを
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朝の日差しがウォンバット達を少し温め、ときおり吹くゆっくりとした風がまた少し身体を冷やす
そんな晴れた冬の朝
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庭を散歩して眺めていると、なぜだか色々な風景が時々目の前に表れます
懐かしい声が耳の傍で、そして少し離れた所から聞こえてきます
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ワンダーはその度に足を止め、その懐かしい姿を目で追い、聞こえる笑い声に耳を傾けました
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全てはこの庭で過ごしてきた日々の記憶
嬉しいこと、悲しいこと
楽しかったこと、寂しかったこと
そんな全部のこと
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ワインと一緒に笑って、そして泣いた
───二人と五月山動物園の物語
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この風景が変わる前にその物語をもう一度読み返すような、そんな不思議な時間をそっと過ごす
そんなワインとワンダーの、そんなある日の朝のこと
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「ワンダーさん、おはよう」
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「朝ご飯、美味しいかい? たくさん食べられているかい?」
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「美味しく、ちゃんとたくさん食べられているなら安心だ。なんの不安もない」
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「ワンダーさん、気がついているんだろう?この風景がもう少しで変わっていくことを」
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「気がついているんだろう?サツキとサクラ、そしてティアやアヤハの姿も今ぼんやり、そっと見えていることが、ね」
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「そうだ───全ては僕達の記憶の中のこと」
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「───僕ら二人の物語だ」
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「色々なことがあった。楽しいこと嬉しいこと、悲しいこと寂しいこと───本当にいろんなことがあったんだ」
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「ワンダーさん、僕はね。二人でいたから良かったんだと思うよ、一緒に笑って、喜んで───そして一緒に涙を溢してこれたからね
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「一人だったらね、きっともっと味気なく、そしてもっと辛かったはずなんだ───物語はすぐに終わってしまっていたかもしれないね」
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「そうだよ、ワンダーさんと僕の物語は二人だからこれからも続くんだ───」
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「まだまだ途中、終わりなんかぜんぜん見えてこない、そんな物語がね」
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「これからもずっと続いていくんだ」
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「ヒーローは僕、ヒロインは君。いろいろあるけれど、最後は必ず傍にいる───そんな当たり前の物語」
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「それでいいよね、それがいいよね───大丈夫僕ら二人、ほら、わくわくしてる
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「サツキもサクラも、ティアもアヤハもみんな、みんなが動物園を見守っている、見守ってくれている」
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「きっと大丈夫。この物語はハッピーエンドだ」
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心配していたワンダーとワイン
ワンダーは部屋の前でも青草をたくさん食べ、不安はどこにもありません
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ぽかぽかとした陽気の中へ、走るわけでもなくそっと滑り込む
そんなワンダー
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なにより大切な「いつもどおり」
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光る朝日の光、ずっと変わらない陽の光
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ふわふわワンダーの毛がきらきら光る
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そのフェンスはもう無くなるよ
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それは寂しいけれど、必要なこと
人の都合で申し訳ない、動物達にそんなお願い
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動物達に頼ってばかり
そんなわがまま、そんなお願い
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ワンダーさんは穏やかに
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朝日の中で朝ご飯
穏やかな陽の光、穏やかなその笑顔
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ワインを癒やし、みんなを癒やす
小さな身体の大きな笑顔
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ワンダーさんの素敵な笑顔
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そんなワンダーさんをワインはずっと気にかけ眺めるフェンス越し
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それはいつものことだけど、やっぱり嬉しいワンダーさんを大好きな優しいワイン
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なるべく近くへ
なるべくなるべく、なるべく近くへ
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なるべく
近くへ
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かわいいワイン
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ワンダーさんが一度離れてしまっても大丈夫
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ずっと隣を気にしていれば大丈夫
ワインの時間はワンダーさんに捧ぐ、そんな愛情を生むための時間だから
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ワンダーさんの方からちゃんと傍へやって来る
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食べてる間も一緒だよ
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ワインはワンダーさんと一緒だよ
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きっと一緒だよ
ずっと一緒だよ
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ワインとワンダーいつまでも一緒
きっと、ずっと一緒───
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「───ワンダーさん、聞いてるかい?」
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「きっと無くなるフェンスにさ、秋の名残、冬が消しきれなかった物があったんだ」
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「ワンダーさんの大好きなイチョウの葉っぱさ。あの日のことを思い出すだろう、また物語の一部が浮かんでくるだろう?」
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「散歩してれば色々見つけるんだ。季節が変わっていく時はっきりとしていない部分、そんな曖昧なところをね」
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「これが“滲んでる”ってことなんだろうね」
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「そんな“滲み”が今は心地よいね。なんだか曖昧な方がいい、はっきりばかり少し冷たい気がするんだよ」
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「思い出だってそうさ。なにからなにまではっきり覚えていることばかりじゃないだろう?」
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「少しずつ滲み、曖昧になっていくことだってあるだろう」
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「その方が楽なことだって、いくつか思い出の中にあるだろう?」
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「わかるかい?物語はそうして出来ていくんだ」
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「嬉しいこと楽しいことはもっと大きく滲む、嬉しいこと楽しいことは暖かく周りを包むように滲んでいくんだ」
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「そして悲しいこと寂しいことを少し曖昧にしてくれる。そう、そっと包み込むように、ね」
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「こうして、いつのまにか物語は出来上がっていく。最後はハッピーエンド、全体はとっても温かい───そんな僕らの物語さ」
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「いつかどこかで読み返す、一緒に作った物語をいつか二人で読み返すんだ」
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「この物語はどこでだって読めるんだ。二人一緒にいる時はいつだって読めるんだ」
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「もちろん今だってそうさ。物語を作りながら僕達は読み返す。そんな途中───」
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「まだまだ続く旅をしているような物語、書くのは僕らさ」
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「そして読むのも僕ら。そんな僕らのお話、それが僕ら二人の物語」
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「今、物語は重要な場面を迎えたんだ。工事が始まり風景が変わるって言う大事な場面だ」
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「騒々しいのは嫌いな僕らだ。少し我慢をしなければいけないね」
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「慣れた風景がが変わること、寂しくて、でも少し楽しみだ」
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「ほらね、もう少し滲んでる。気持ちはやっぱり曖昧で、もう滲み出している」
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「あとはみんなが変わらず元気で、その変わった風景を一緒に眺めること。それだけでいいんだ」
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「騒々しいのを少し我慢。大丈夫、工事なんか上手くやってくれるさ」
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「ワンダーさん、知っているだろ。君には僕がいる」
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「君のことをかわいいと思ったあの日から、いつだって君の傍に僕はいる」
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「サツキもサクラも、ティアもアヤハも、どこか近くで見てくれてるさ」
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「僕ら二人の物語はまだまだ続く。まだずっと続いていく」
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「何ページあったとしても足らないよ、ぜんぜん足らないよ」
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「長い長いお話さ、どこかに書き留めるには無理がある」
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「だから僕ら二人の心の中に書いていく、それがいい」
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「僕が書き忘れたこと、知らなかったこと───それを君が僕に読み聞かす」
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「君が書き忘れたこと、知らなかったこと───それは僕が君に読み聞かす」
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「二人の物語だからね、それできっとちょうどいい」
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「ワンダーさん、いつか君はどんなお話をしてくれるんだい?」
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「ワンダーさん、君はどんなお話を聞きたいって思うんだい?」
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「いつかどこかで読んで過ごそう、ずっと二人で毎日毎日読み続けて過ごそうよ」
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「まだまだ続く長い物語、二人で暮せば終わりなんか来るはずないよ」
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「先のことは考えなくて大丈夫、きっと大丈夫。さっき言ったとおりさ───」
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「いつかの最後はハッピーエンド、全体が温かい───そんな僕らの物語さ」
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何事もなく工事が早く終わること
それを祈って───




   

by bon_soir | 2017-02-23 07:00 | 五月山動物園 | Comments(8)
ウォレスと人間の神様③

☆☆☆☆☆←前回よりの続きです
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「僕が頼まなければいけないのは───人間の神様だ」

いつもどおりの優しい笑顔に会い、いつもどおりの楽しい日々を過ごしたい
「特別嬉しいことは必要ない、ただこれまでどおりいつもどおり───」
閉園後、一度部屋に戻ったウォレスは今日お昼寝をしているときに見た怖くて寂しい夢のことを思い返し、“これからもいつもどおりに──”ということだけを願うように考えていました
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そうして考えついたのは
「人間の神様にお願いすること」
そのことでした
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「ウォンバットのことはウォンバットの神様にお願いしている。今の飼育係さんとずっと一緒に過ごせるようにお願いするには、きっと人間の神様にお願いしなくちゃいけない───」
何度も頭のなかでそのことを考え、何度か小さな声でそのことを呟いた
そんなウォレス
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大きな月が夜空に浮かぶ冬の寒い真夜中、ウォレスは一人そっと外へ出ました
澄んだ夜空には月だけじゃなく、たくさんの星が動物園をそっと照らし、どこか動物達を呼んでいるようでした
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綺麗な夜空の下、穴を掘り始めたウォレス
ウォレスはウォンバット、木には登れないけど穴を掘ることができます
静かな夜、ただ静かに“さっさっさっ”と穴を掘り続けるウォレス
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「人間の神様に会ってお願いをする、それはどういうことなんだ。僕はどうすれば人間の神様に会えるんだろう───」
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穴を掘っていた手を一度止め、ウォレスは夜空を見上げました
東の空は光で滲み始め、不思議な色で朝が近づいてきたことを知らせています
「寒いね」
冷たい地面に穴を掘り続けたウォレスは少し前から泥で汚れ、かじかんできていた自分の手を一度見つめ寂しそうに微笑み、温かい干し草のベッドが待つお部屋へと戻っていきました
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「また朝になれば飼育係さんが迎えに来てくれる、眠っている僕を起こしに来てくれる───」
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ウォレスはそっと目を閉じ、すぐに夢の中へと滑り込んでいきました
「飼育係さん、これがオーストラリアだよ」
小さな声で寝言を言ったウォレス
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明け方から朝に見ていた夢
それは夜の動物園で見る星を100倍にもしてぶちまけたような星空の下、大好きな飼育係さんと一緒にオーストラリアの高原を散歩してまわる、そんな夢でした
もちろんひときわ明るく輝く南十字星も二人の目にはそのまま輝いています
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「最高の気分だ」
動物園にはすっかりと朝日が登っていましたが、ウォレスはもう一度寝言を言い、楽しい夢を見続けていました
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夢の中で飼育係さんがウォレスを呼びます
「ウォレス、ウォレスっ!」
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「ウォレス」
その声はそのまま眠っているウォレスを呼ぶ声へと変わっていきました
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「朝だ、ウォレス」
そのいつもの優しい声に起こされたウォレス
少し寝ぼけながら庭へ向かい、ふと立ち止まり晴れた空を見上げ、ウォレスを待ついつもの笑顔を見つめます
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「良かった、今日もいつもどおりの朝だ」
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「そう、またいつもどおりの一日が始まる───」
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ウォレスは毎朝と同じように壁を見て、そして土管へと向かいます
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「今日は昨日よりも少し暖かい」と呟き、とことこと歩くウォレス
いつもと少し違うのは動物園を歩く人の中に“人間の神様”を探すこと───
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少し探したくらいでは見つかりません
そもそも今、人間の神様が傍にいるのかいないのか、ウォンバットのウォレスには全くわかりません
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「この土管の向う側に神様がいればいいのにな」
ウォレスはそう言って、いつものように土管の中に入りました
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「神様に会うためには、そしてお願いをするためには、やっぱりお行儀よくしていた方がいいかもね」
そう考え、はみ出た干し草を集める
そんなウォレス
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全部土管の中へ───
それはお昼寝も気持ちよくするためには重要なこと
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丁寧に丁寧に
手前から奥の方へと、丁寧に丁寧に
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そして今日もお昼寝の間の夢の中
温かい干し草に顔を埋めて夢の中
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テポリンゴ達の声もだんだんと小さくなって夢の中
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ウォレスはいつものように土管の中で夢の中
きっと心配なんていらない、そんないつもどおりの動物園でいつもどおり夢の中
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夏の虫、虫の声に代わり聞こえてくるのは渡ってきている鳥の声
少し冷たい冬の風、空気を澄ませる冬の風
風と一緒に空は澄んで、動物達は青い世界に包まれる
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「ウォレス、ウォレス」
いつものように飼育係さんがウォレスを優しく起こす優しい声がしました
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すぐに目を覚ましたウォレス
「やあ、今日は少し早いんだね。朝の夢が途中で終わってしまったよ」
そう言ったウォレスの顔は嬉しそうに微笑んでいました
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ウォレスが楽しむ動物園、ウォレスが幸せだと感じる動物園
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ウォレスと楽しむ動物園、ウォレスに愛情を、幸せを貰う
そんないつもどおりの東山動物園
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ウォンバットの神様がいるように、どこかに人間の神様がいてくれるなら
この小さな幸せがずっと続くように、ずっといつまでもみんなの幸せが続くように、と
ただそれだけを、お願いします
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人が幸せを祈るように、動物達も幸せであることを祈ります
いつもどおり、いままでどおり
ただそれだけの小さな幸せ
ただそれだけを、お願いします
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「今日は“ほうき”じゃないんだね。草を持ってきてくれたのかい?」
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「みんなにとっての幸せってどんなこと?僕にとっての幸せってこんなこと」
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「好きな人の笑顔を見て僕も笑う、そうやってただ毎日過ごす。今日も明日も明後日も───」
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「僕の幸せって、ただそんなこと」
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「飼育係さんが干し草を撒く。新しいふかふかの干し草だ」
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「僕は干し草を土管の中に集める。また、もっともっと、あるだけ全部集めていく」
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「干し草と一緒に集めるのは愛情だ」
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「みんなになら僕の言っていることがわかるだろ」
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「えっ、反対側から出ちゃってるって?」
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「ああ、本当だね……」
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「大丈夫、少しくらいどうってことない」
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「飼育係さんがたくさん持ってきてくれたんだ、大丈夫」
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「干し草は潤沢だ」
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「一緒に集めた愛情もね、もちろん潤沢だ」


干し草が少し多いこと
それ以外何も変わらない、みんなが望むいつもどおりの一日
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眠っているといつの間にか閉園の時間
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目を覚ましたウォレスはすぐに部屋へと戻っていきました
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「人間の神様、聞こえているかい?どこかで聞いてくれているかい? 今日一日、特に何も無いような一日だった。ただの冬の一日さ」
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「これでいいんだ、これだけでいいんだ。このくらいでも望んじゃだめかい? お願いしちゃ駄目なのかい?」
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「いつもどおり、何も変わらずいつもどおり、こんな日々はずっと続いていくんだよね?」
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「続けさせてくれるんだよね?」
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「特別美味しいものを食べさせろとか、そんなことは言わないよ」
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「草だけでもいいんだ」
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「眠る場所も土管でいい。いままでどおりだって言っただろ。あの土管は大切な物だ」
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「人間の神様、ウォンバットの声は聞こえるかい? 変わらないいつもどおりの毎日を、ずっと、これからも───」

「ウォレス、何を話しているんだ?」
ウォレスが呟いていると、大好きな飼育係さんが家に帰る前にウォレスの様子を見に来ていました
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見上げればいつもの優しい笑顔
「あぁ、ごめん。なんでもないよ」
ウォレスは首を少し横に振り、微笑みながら飼育係さんの目を見つめます
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「そうだ、これから僕と一緒にオーストラリアに行かないかい?」
ウォレスがそう聞くと少し驚いて、飼育係さんが笑いました
「今からかい? そんなこと、できたら楽しいだろうね───」
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「本当さ、僕はからかってるわけじゃない。嘘を言ってるわけでもない───本当のことさ」
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「オーストラリア大陸へ、行こう。僕と一緒に、今から、ね」
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「いいね。行こうか、ウォレス」
飼育係さんは今までで一番優しい顔で微笑みました
ウォレスも微笑んで頷き、「着いてきて」と一言言って歩き出しました
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「オーストラリアへは土管のトンネルを抜けていく。知っているかい?庭にあるあの土管はオーストラリアと繋がっているんだ」
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「行こう、僕と一緒にオーストラリア大陸の旅に出かけよう」
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「わくわくする気持ち、それだけあれば旅の準備は出来ている」
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「優しい人、大好きな人。僕と一緒にオーストラリア大陸へ旅に行こう。土管のトンネルを僕と一緒にくぐり抜けて出かけよう」
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「ちゃんと帰ってくるから怖くない。優しい人、みんなを僕はオーストラリアへと連れて行く」
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「それが僕の役目だ」
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by bon_soir | 2017-02-10 11:00 | 東山動物園 | Comments(8)
ウォレスと人間の神様②
☆☆☆☆☆←前回よりの続きです
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「“ほうき”だ───」
───いつもと同じあの“ほうき”が目の前で動く
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夢の中にいるのか、もう目は覚めているのか───
どっちなのかわからなくなっていた僕は“いつものように”手を伸ばす
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呼ばれるように、迎え入れるように───求めるように
手を伸ばし、起き上がり、そして近づきさえすれば“ほうき”は僕を気持ちよくしてくれる
───そのはずなのに
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「待ってくれよ」
僕が追いかけてもなかなか手は届かない、僕の身体は土管から出ようとしない
“ほうき”を動かす人は黙っているまま、何も言わない
辺りからは誰の声も聞こえない、なんの音も聞こえてこない
───僕は怖くなってきていた
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「飼育係さん、どうしたんだい?意地悪しないでくれよ───」
僕は必死になって声をあげ、土管から出ようとした

“ほうき”を持つ人、僕と遊んでくれる、安心させてくれる優しい人───
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いつもの飼育係さんの顔が見たい、僕をその温かい目で見つめてもらいたい
『ウォレス』
あの声で呼んでもらいたい───
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“ほうき”を追いかけ、土管からなんとか出た僕は見上げたんだ
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そこにはじっと見下ろす光りの無い目があった
冷たく無表情で、僕を見ているようで見てくれていない
そう、どこも見ていない、動物達のことなんかきっと見てはいない
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「あなたは誰、あなたは誰なんだ───」


色々な人がウォンバットの庭を眺め、「寝てるね」と微笑んでいました
ウォレスはいつものように土管の中でぐっすりと眠っていたのです
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ウォレスが見た“ほうき”が揺れていた光景、見上げた知らない人、何もかも全て夢だったのです
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「ウォレス、ウォレスっ!」
いつもの声を聞いたウォレスは終わりかけの嫌な夢から醒めはじめ、楽しい動物園の日々の中へ戻ろうとしていました
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少し顔を上げた時、「ウォレス、起きたー!」と、喜ぶお客さん達の声も聞こえ、陽の光やフカフカの干し草の温かさがウォレスを包みます
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「ウォレス!」
その声が聞こえる方をそっと見上げると、大好きな飼育係さんの優しい顔がウォレスをいつものように見つめ、静かに微笑んでいます
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「ウォレス、起きたか?」
その声、その笑顔、動かしてくれるいつもの“ほうき”
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全てに愛情を感じたウォレス
ふと安心して、ついついと呟いてしまいます
「さっきのは夢だ、全部、全部夢だ───」
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何もかもが“いつもどおり”
いつもどおりの動物園の、いつもどおりの楽しい時間
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会いにきてくれるみんなのいつもどおりの顔、喜ぶ声
何もかもがいつもどおりの東山動物園
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それがウォレスの大好きな日々
ウォンバットのウォレス、ずっと過ごしてきた日々
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「ウォレス」
何度も呼びかけてくれるその優しい声
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そして優しく温かい手
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ウォレスは思います
「こんな日がずっと続いていけばいい。僕が生きている間、ずっとずっと続いていけばそれでいい───」
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「みんなもそう思うだろう? こんな楽しい日々が続いていけば、ずっと続いていけばって、ね」
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「動物園は動物達と人が交わる場所、繋がっていく場所なんだ」
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「楽しい声、優しい笑顔、色々なものが溢れる毎日がこの先ずっと、ずっと続いていけばいい───」
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「そう思うだろう?」
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「そのために、僕には、こんな毎日のためには必要なんだ」
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「僕は大好きなんだ───」
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「───この人、この飼育係さんが大好きなんだ」
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動物園にみんなの笑顔が溢れ、ウォレスもまたそっと眠ります
風も収まり少し暖かくなった、そんな冬の動物園
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今度は楽しい夢を見てウォレスはそっと眠ります
ウォンバットは穏やかに、動物園の動物達はそっと穏やかに眠ります
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会いにきた人に愛情を伝え、会いにきた人から愛情を感じて動物達は眠ります
幸せだって感じること、動物達のも人も皆、みんなが幸せだって感じること
それが楽しい動物園、それでやっと楽しく素敵な動物園

いつもどおりが続くこと、なにより幸せないつもどおりが続くこと
もっともっとを求めなくても大丈夫
ただこんな日が、いつもと同じ幸せな日々がただ続くこと───


夕方になりもう一度優しく起こされたウォレス
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根っこごと抜いてもらった草を少し食べ、きちんと目を覚ます
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そんなウォンバット、ウォレス
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もそもそと食べ、奥でお水を少し飲む
そんな閉園前の静かな動物園
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儚く健気に、ウォンバット達は暮します
今日も一日、地球は一回転
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また明日、また次の一回転のために、ウォレスは部屋へと戻ります
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部屋に戻ったウォレスは今日の一日のことを思い返していました
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いつもだったらそのうち、いつの間にか忘れてしまう夢
でも今日見た夢のことは忘れてしまっていけない
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なぜだかそう思いました
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「夢に出てきたあの人は誰だったんだろう───」
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「怖くて寂しい夢だったけれど、僕はそれでわかったよ」
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「僕にはあの飼育係さんが必要だ」
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「その人はここのところ赤い手袋をしている」
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「僕はあの人が好きだ」
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「あの飼育係さんが来てくれるようになってから、僕にもお客さん達にも笑顔が増えたんだ」
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「ただいつ今日の夢のように“違う人”が来るようになるのか、それがわからない」
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「ずっとあの飼育係さんと、大好きなあの人と過ごせるように、僕はそう願うんだ」
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「でもそれは人の世界のこと───僕が決めることじゃない、決められることじゃない」
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「そうだ、ウォンバットの神様にお願いしても駄目だろう」
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「───誰にお願いすればいい、誰に頼めばこの毎日は続いていくんだい?」
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「やっぱりそうか。そうだね、わかったよ」
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「僕が頼まなければいけないのは───人間の神様だ」



続く




   

by bon_soir | 2017-02-09 14:03 | 東山動物園 | Comments(2)
ウォレスと人間の神様①
東山動物園で暮らすウォンバット、ウォレス
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“土管王子”、ウォレス
ウォレスの普段の毎日は特に何も無い、そんな何も変わらない平穏な毎日
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でも別に退屈じゃない、そんな毎日
いつも見に来てくれる優しいお客さん、色々な動物達の賑やかな声
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そして、誰よりも大好きな飼育係さん
何よりも楽しい飼育係さんと遊ぶ時間
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「特に何も無い、そんな何も変わらない」
それはウォレスにとって、そして会いに来るお客さん、一緒に暮らす動物達
みんなにとっての安心でした
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眠っていてばかりだけれど、それがウォンバット
土管の中で眠っていてばかりだけれど、それがウォレス
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それが東山動物園、“とある場所”でのいつもの風景
ゆっくりと動物達の時間が流れる、いつも変わらない優しい毎日でした
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ウォレスの毎日は変わらない、動物達の微笑みは変わらない
もし変わることがあれば、それはたいてい人間の都合
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変わることがいいときもある、変わらないことがいいときもある
どんなことでももちろん、それは誰にもわからないことばかり
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晴れているけど寒い
そんな冬のある日のこと───
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「朝だ。良く晴れた、当たり前のように寒いけど爽やかな朝だ」
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「こんな日はそうだ───いつも会いにきてくれるお客さん、みんなの笑顔がガラスの向こうで待っている」
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「部屋から出た僕はゆっくりと歩き、一度壁を眺める」
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「眠っている間におかしな場所へ来てしまっていないかを確認するんだ。いつもの壁が見えればOKだ」
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「そして次にゆっくりと振り返る」
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「みんな、いつもの笑顔だ」
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「今日も僕に会いにきてくれてありがとう」
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「今、そっちへ行くよ」
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「いつもの土管のところだ。今そっちへ、僕は行くよ」
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「ゆっくりゆっくり歩くんだ。みんなに僕の顔が見えるように、僕はゆっくりと歩くんだ」
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「ちゃんと意識しながら、ね」
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「僕は今日もここにいる、ちゃんとここで暮らしてる」
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「当たり前だけど、当たり前のようなことだけど嬉しいね、当たり前で嬉しいね」
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「みんなも笑顔さ。嬉しいね、僕を見ている優しい笑顔───きっと日向よりも温かいのさ」
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「今日も変わらない、きっと何も変わらない一日になる」
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「───本当に嬉しいね」
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「今朝もみんなに会えた、いつもと変わらないみんなの笑顔を見ることが出来た」
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「さぁ、行くよ」
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「そう、土管の中へと歩くんだ」
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「大丈夫、夢を見るための準備はもう出来ている───僕は大好きな土管の中で眠るんだ」
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───今日の夢はどんな夢

そう呟きながら土管の中へと入っていったウォレス
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土管の中、ふかふかの干し草、ほんのり照らす“あったかライト”
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ウォレスはすぐに夢の中へと入っていきました
ガラスの向こう、お客さんの笑顔を眺めながらまぶたをゆっくりと閉じていきました
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今日の夢はどんな夢
ウォレスが見る夢、ウォンバットが見る夢はどんな夢───
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「僕はいつものようにお昼寝だった」
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「うとうとうとうと、ときおり目を覚ましたりしてまた目を閉じる。そんなお昼寝だ」
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「そうしているといろいろな声が途切れ途切れで聞こえてくる。気持ちよく眠る前に聞く言葉だ、ほとんど忘れてしまうけどね」
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「今日もそんな声が頭の中を通り過ぎていく。僕はいつも通り夢の中へとゆっくり向かっていく」
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「───今日の夢はどんな夢。そう、いつも通りのことだ。大好きな土管の中でお昼寝だ」
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「隣で暮らすテポリンゴ達が跳ねている。今日の夢は動物園の夢らしい───」
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「ただね、この動物園の夢っていうのは少し厄介なんだ。夢の話なのか本当の話なのか、わからなくなってしまう時がある」
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「みんなもそうだろう? 『なんだ夢か……』って思ったり『良かった、夢か……』って思ったり」
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「夢は夢らしい方がいい。世界中を旅するような、そんな夢らしい夢の方がいい───」
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「そんな夢を見れるのは、“夢を見るための準備”が上手く行った時、そんなときだけだけどね」
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「今日の夢は動物園の夢───本当に夢なのか、本当はもう目が覚めているのか、どちらなのかわからない」
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「そんな夢だ」
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「動物園の風景だ。夢の中でも特別なことは起こらない。ゆっくり流れていく時間、のんびりとした僕」
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「夢の中でも同じこと。僕に会いに来るお客さん達の優しい笑顔、楽しそうな声───温かい干し草の匂い」
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「だんだんと本当にわからなくなってくる。僕は今、夢の中にいるのかい?それとももう目は覚めているのかい?」
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「教えてくれよ、テポリンゴ。僕達は今、どっちの世界にいるんだい───」
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「今日は何故か不安なんだ。一度目を覚まそうと思っても上手く行かない───僕は今、どっちの世界にいるんだろう」
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「どっちの世界を散歩して、どっちの世界でお昼寝しているんだろう───」
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今日のウォレスは夢の中をさまよっていました
上手く進むことも出来ず、目を覚ましてやり直すことも出来ない
少し怖くて、なんだか不安でしかたない
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そんな今日のお昼寝
そんな今日のウォレスの夢
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夢の中にいるはずなのに、考えてばかりいるウォレス
夢の中にいるのか、もう目は覚めているのか───いつまで経ってもわからない
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“動物園の夢”
それはウォレスを悩ませ続けていました
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「あっ!」
僕は目の前で動く物に気がついた───
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「僕を気持ちよくする、あのいつもの“ほうき”がやって来た───」
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続く




     

by bon_soir | 2017-02-07 15:54 | 東山動物園 | Comments(6)
フクちゃん
五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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フクちゃん覗く向う側
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なんだか“そわそわ”
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何か言って微笑む
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撫でてもらった
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よかったね!
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by bon_soir | 2016-12-14 22:59 | 五月山動物園 | Comments(4)
フクとみんなの言葉
五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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まだまだ子供のように感じられるフク
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でも本当はもう立派な大人
大人のウォンバット
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五月山動物園で日本の四季を何度も感じ、そしてこれからも巡り続ける季節を眺める
そんなウォンバット
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悲しいこと寂しいことも何度も経験し、優しく、強くいつの間にか大人になった
そんなウォンバット
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ワイン、そしてワンダーから本当の優しさを、そして純粋な愛情の意味を
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アヤハ、そしてサツキから生きていることの意味、そして命の尊さを───
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みんなから教えてもらい、そして自然と感じ、学び
フクは大人になっていました
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フクには聞こえていました
フクには聞こえています
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優しい動物達の言葉が
そして飼育係さんやお客さん達の声が───言葉が聞こえています
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言葉を聞いて喜ぶ、笑う、楽しくなる
時には悲しく、寂しく、涙さえこぼす
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それがフク
それが動物園の動物達
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秋の終わり、冬の始まり
また季節が一回り
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もう戻せない時間と引き換えた、そんな想い
大切な言葉───
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「あの日、ワンダーさんは泣いたんだ」
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「イチョウの木が──と悲しみ、たくさんの涙がこぼれ落ちた」
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「あの日、たくさんの言葉を聞いたんだ」
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「ワンダーさんが悲しむ言葉、そんなワンダーさんをそっと包むワインさんのあったかい言葉」
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「そうだ、大切な二人の心の言葉、優しい気持ちの言葉だ」
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「どんなに不安なことを考えてしまっても優しい言葉さえあれば大丈夫、気持ちの言葉さえあれば大丈夫」
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「僕はワインさんとワンダーさんに、教えてもらっている。毎日、いつだって教えてもらっている」
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「いつもの優しい顔を見て、心が作る言葉を聞く───」
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「それで大抵のことは大丈夫」
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「本当にそうなんだ」
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「僕はちゃんと聞いている、どんな言葉でもちゃんと聞こえている」
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「あまり悲しい言葉は聞きたくないね」
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「動物達から、飼育係さん達から───そしてお客さん達から」
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「悲しい言葉までちゃんと聞こえているんだ、聞こえてしまうんだ」
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「出来ることなら僕は聞きたくないね」
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「でもね、嬉しい言葉、楽しい言葉、悲しい言葉と寂しい言葉、そして嫌な言葉。全部を聞いてわかったこともある」
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「結構上手く出来ているんだ───この世界はね」
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「嬉しい知らせ、楽しい知らせはゆっくりとやって来る。予告もあるしだんだんと近づいて来る」
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「わくわくする気持ちはその間にだんだんと大きくなってくる、長い時間幸せな気持ちでいられるんだ」
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「わかるかい?」
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「そして悲しいこと、寂しいこと───その知らせは突然やって来るんだよ、急に聞こえてくるんだよ」
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「心配が、不安が長い時間続かないようにね」
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「もしそんなことが長く続いたらどうだい? 辛くてしかたないだろう? 待っているなんて耐えられないだろう?」
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「上手く出来ているんだ」
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「あてはまらないこともあるだろうけどね」
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「僕はたくさんの言葉を聞いてきた。そして大人になった」
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「これからもたくさんの言葉を聞くだろう、そして大人の次は何になるんだろう───」
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「おじいさんか───その前にお父さん、なのか」
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「わからないね」
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「ワインさん、ワンダーさん、動物園の動物達、飼育係さんやお客さん達───」
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「これからもたくさんの言葉を聞くんだろう。みんなの言葉を、声を聞いていくんだろう」
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「そうだね、嬉しい言葉、楽しい声をたくさん聞きたいね」
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「ゆっくりと時間をかけて幸せだと思うその時まで、できる限り長い時間をわくわくと───」
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「そうだったのなら僕は幸せだ」
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「そして、あなたには聞こえますか?」
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「僕の声が聞こえていますか?僕の言葉が聞こえていますか?」
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「僕にはあなたの声が聞こえるんだ。あなたにも僕の言葉が聞こえるはずなんだ」
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「楽しいかい?嬉しいかい?───動物達の声を聞いて幸せだと少しでも思えるかい?」
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「そうか、ありがとう───」
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「ワンダーさん、知っているかい? あの大きなイチョウの木、今僕の傍にいてくれているよ」
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by bon_soir | 2016-12-11 10:45 | 五月山動物園 | Comments(4)
ワインと黄色い落ち葉

五月山動物園で暮らすウォンバット、ワイン
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庭に落ちたイチョウの葉、すっかり黄色くなったイチョウの葉
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ワインはお昼前からせっせとお散歩
冬が来る前に見る風景は毎年変わらないことばかり
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冷たい風がワインのほっぺにあたり、秋から冬への交代を告げるよう
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立ち止まっては思い出す、思い出してはそっと微笑む
そんな一日を過ごすワイン
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ワインにとって、秋は大切な季節
巡る四季の中、過ぎていくのが惜しい季節
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五月山動物園の秋は今年も過ぎていく
ワイン、ワンダー、そしてフク
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みんなの秋は今年もそっと、最後に少しだけ存在感を示して過ぎていく
黄色い秋が過ぎていく
そんなある日のお話
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「雨は少ししか降らなかった」
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「でも、そのせいだろうか。今日は少し暖かい」
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「不思議だね。晴れた日が続くほうが朝と夜は寒いんだ」
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「そうだ、今日ならワンダーさんも外へ出てきやすいだろうね」
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「まだ部屋で眠っているようだ。長いお昼寝、ウォンバットだからね」
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ワインは大きなイチョウの木を眺めました
風に吹かれた黄色い葉がときおり地面に向かってはらりと落ちてきます
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「今年、大きなイチョウの木が一人、そこからいなくなってしまった」
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「ワンダーさんは酷く寂しがっていた。ずっとそばに居てくれた木だったからね」
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「横になったイチョウの木───しかたないとはいえ、それは確かに寂しく悲しい光景だった」
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「残ったイチョウの木もきっと同じ気持ちだ。眺めていればわかる、声を聞かなくてもわかる───僕達は昔からずっと一緒だったんだ」
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「ずっとイチョウの木と一緒だったんだ、わからないわけ、感じないわけがない」
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「一度落ちた葉っぱが春にまたそっと出てきて大きくなる、夏はその葉っぱが木陰を作り、そして秋の中で黄色くなるんだ」
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「そして冬へと進む時、僕達の庭を黄色く染めるんだ───」
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「今年もそう、残ってくれた木がそうしてくれた。今までと同じように、あったかく優しくね」
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「変わらない、ずっとずっと変わらない───僕達の大好きなイチョウの木、僕達の大好きな季節」
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「───あの時、僕達がまだ小さかったあのときもそうだったんだ。イチョウの木は僕達を優しく見つめ、そして微笑んでいたんだ」
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“あのとき”
その言葉を声にしたワインはまだ小さな時の記憶を鮮明に思い出していました
散歩をしながら思い出し、
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道草しているときも考え続け、
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そして大好きなイチョウの木を見上げて微笑みました
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あの日のまだ幼い自分と、小さなワンダー
きらめくように大切な子供の頃のどこまでも純粋に澄んだ想い、気持ちの記憶
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ワインの胸を今また満たす
“あの日”の思い出───
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「───今日のような秋の終わり、冬の始まり。そんな日だ」
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「ワンダーさんは朝から喜んでいた。前の夜に風が強く吹いたんだろう。散ったイチョウの葉っぱで僕達の庭が一面黄色に光っていたからだ」
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「ワンダーさんは駆け回って笑っていた。その笑顔は今まで見たなにより輝いていた───その時僕は見とれていたんだ」
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「時間を忘れ、大好きなご飯のことや、ときおり身体をぶるっとさせる冬の風のことも忘れて、ずっと───ずっとね」
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「黄色い庭に聞こえる可愛い声。僕は思ったんだ、この風景が秋の終わりの僕達の風景なんだってね」
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「そして、ワンダーさんには黄色が似合う───そう、感じたんだ」
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「ずっと見とれていた、ずっと眺めていた。黄色い世界の中で僕はワンダーさんから目を離さなかった」
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「そうさ、それは今も変わらないこと。あの日から今までずっと変わらない、そんなことだ」
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「そしてあの瞬間がやって来る───」
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『どうしたのワインさん、なんだかぼーっとしてる』
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「ワンダーさんは立ち止まり、僕の顔を眺めてそう言ってそっと笑った」
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「いや、なんでもないよ───」

そう言いかけた瞬間のことだ
風に乗ったイチョウの黄色い落ち葉がワンダーさんのおでこにそっと乗った
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「あっ!」
僕の口からふいに声が出る
『えっ!?』
ワンダーさんは僕の目を見つめながら少し戸惑う
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「なんでもないんだ、ごめん」
とだけ小さな声で言った
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僕はおでこに乗っかった葉っぱのことをワンダーさんには言わない
もし、「おでこに葉っぱが───」と教えていたら、きっとすぐに払ってしまっていただろう
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おでこにイチョウの葉っぱのワンダーさんがとても可愛らしくて、少しでも長く見ていたくて
だから僕は教えなかった
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『なんだか変なワインさん』
ワンダーさんはそっと微笑みながら僕に言う
上手く話せなかった僕は思っていたことを慌てて言った
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「ワンダーさんには黄色が似合うよ」
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その時僕はきっと変な顔していたんだろう
ワンダーさんは困ったような顔をして、僕から目をそらした
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そしてそのまま小さな声で言った
『ありがとう。でも何で黄色が似合うと思ったの?』
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「ごめん、ただなんとなく、なんとなくだよ───」
僕はそう答えることしかできなかった
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言葉になんか出来ないそんな気持ち
僕はワンダーさんのことを好きになっていた
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「フク、君にも来る。必ず来る」
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「僕がワンダーさんのことを好きだと思った日のような、世界が違って見える素晴らしい日がきっと来る」
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「君がアヤハのことをどう思っていたかはわからない。ただこうして大人になった君なら感じるだろう、きっとわかるだろう」
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「フクのその目で優しく見つめ、大切に思うということがなんなのか───」
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「そのうちきっとわかるだろう。フクならきっとわかるだろう」
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冬になるとすぐに夕方がやってくる
少し暗くなりだすとワンダーさんが部屋から出てきて散歩を始めた
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イチョウの黄色い落ち葉が輝く庭のお散歩
少しだけ少ないけれど、あの時と同じ黄色く輝く僕達の庭だ
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そうだ、何から何まで一緒だ
あの時と同じ、イチョウの葉の上で楽しそうに微笑むワンダーさんを僕は傍で見つめている
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『ワインさん』
ワンダーさんがふと遠くを眺めていた僕をそっと呼ぶ
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僕と目が合ったワンダーさんは、地面の落ち葉を一枚優しく手に取りおでこにそっと乗せた
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『どう?似合ってる?』
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あぁ、あの瞬間と一緒だ
小さかった頃、あの日の思い出───幼い僕とずっと小さなワンダーさんが頭の中を駆け巡り、僕は一粒涙を溢す
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来年も、そのまた来年も
ずっと、ずっとずっといつまでも僕達は一緒だ
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「似合ってる、ワンダーさんにはやっぱり黄色が似合うよ」





   

by bon_soir | 2016-12-07 14:43 | 五月山動物園 | Comments(6)
ワンダーと黄色い季節
五月山動物園で暮らすウォンバット、ワンダー
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庭一面のイチョウの落葉
急に広がりだんだんと減ってくる
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秋の終わりは冬の始まり
あまり寒くなると散歩はしにくくなってしまう
気持ちのいい時間、大切なその刹那
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この日は遅くなってから出てきたワンダー
隣でずっと待っていたワインを気にして、フェンス際のいつもの小道
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ワインの声、ワインの匂い、ワインの温かさ
ワインの存在を感じていつもの小道
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ワンダーとワイン
幸せな二人の一番幸せな時間
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その時間に日本の四季は欠かせない
四季が変えていく風景、混ぜる色が欠かせない
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イチョウの黄色、五月山の秋の色が無くなっていく
その途中の秋の終わり、冬の始まり
ワンダーはふと思い出し、本当に小さな声でそっと呟きました
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「あっ、ワインさんの背中にイチョウの落葉。可愛い黄色のイチョウの落葉」
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「私はこの黄色が好き」
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「紅葉した黄色、イチョウの黄色。この色、この季節、秋のことが一番好き」
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「春のお花のピンク色、暑い夏のお庭の緑色、晴れた冬の空の青い色。どんな色もみんな大好きだけど、秋の黄色が一番好き」
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「それはワインさんが『似合うよ』って言ってくれた色だから───」
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「それはずっと昔のこと───ワインさんも私もまだ子供だった今日と同じような秋の終わりのあの日のこと」
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「ワインさんは照れくさそうに───そう、はにかみながらそっと言った」
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「ワンダーさんには黄色が似合うよって、落ち葉の中走り回る私を見て言ってくれた」
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「男の子からそんなことを初めて言われてびっくりして、そして私まで照れた。ワインさんの顔、ちゃんと見ることができなかった」
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「でも、そんなあの日からずっと、あの時からずっと───私は秋の黄色が一番好き」
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「ワインさんが『似合うよ』って言ってくれた黄色、イチョウの葉っぱのこの黄色が一番好き」
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「ただ、どうしてだろう。今年は大きなイチョウの木が切られてしまった。私の庭の隣の木が一本、無くなってしまった」
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「長い時間音がして、ふと気がつたらイチョウの木は倒れていた」
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「横になってしまった大きなイチョウの木、『さようなら』って言っていた気がした───寂しそうに笑っているように、私にはそう見えた」
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「部屋の中で座っていると、涙が溢れた。ここに来てからずっと私達を見てくれていた大きなイチョウの木、優しかったイチョウの木」
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「その一人と急なお別れだから」
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「そんな私をワインさんも飼育係さんも慰めてくれた」
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「まだ全部無くなったわけじゃないよ。また秋にはきっと庭を綺麗な黄色にしてくれるよって、落ち込む私に言ってくれた」
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「いなくなってしまった木だって、また形を変えて傍に来てくれるかもしれないよってワインさんは言った」
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「いつもと同じように、優しい顔で、優しい声でそっと言う。ワインさんはそんなウォンバット───」
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「大好きな、私の大好きなワインさん」
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「ワインさんが言ってくれた」
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「黄色が似合うよって言ってくれた」
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「春のお花のピンク色、暑い夏のお庭の緑色、晴れた冬の空の青い色。どんな色もみんな大好きだけど、秋の黄色が一番好き」
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「そんなあの日からずっと、あの時からずっと───私は秋の黄色が一番好き」
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「来年も必ず秋はやって来る、季節はこれからも巡ってくる。今の葉っぱが無くなってしまっても、きっとまた動物園を黄色くしていく」
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「私達の庭に黄色い葉っぱが敷き詰められていく」
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「春のお花のピンク色、暑い夏のお庭の緑色、晴れた冬の空の青い色。どんな色もみんな大好きだけど、秋の黄色が一番好き」
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「あの日からずっと、あの時からずっと───私は秋の黄色が一番好き」
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「それはずっと変わらない、子供だったあの日から今日までずっと、これからもずっと」
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「ずっとずっと変わらない───」
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「今、ワインさんは傍にいる」
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いつだって一緒だよ
私たちはいつだって一緒だよ
これからもずっとずっと一緒だよ
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私はワインさんにそっと呼ぶ
「ワインさん」
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「どう? 似合ってる?」
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ワンダーとワイン
秋の終わりの二人のお話






   

by bon_soir | 2016-12-05 15:41 | 五月山動物園 | Comments(4)
五月山
秋の終わりの五月山
ワンダー、ワイン、そしてフク
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ウォンバット達はみんな元気

秋の終わり、冬の始まり
みんなそれぞれ、一人ひとりのお話はきっとある



   

by bon_soir | 2016-12-03 14:31 | 五月山動物園 | Comments(8)