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ユキとわくわく

ここのドアが開くんだ
ここのドアはいつかそのうち開くんだ
遠くへ行こう、もっと遠くまで行ってみよう
大丈夫、傍には僕がいるからね─────
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ユキがどこに向かっていくのか、僕にはいつもわからない
ユキは教えてくれない
いつだって一人、どこかへ向かって歩いてく
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いままでよりもたくさん散ったよ、黄色い葉っぱ
ユキ、知ってるかい? イチョウって言うんだよ
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イチョウを見ながらワインさんが泣いていた
大人なのに泣いていたんだ
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いつか僕にもそんな気持ちがわかるかな
空を見上げてずっと涙をこぼす日、いつか僕にもあるのかな
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ユキは止まらない
くっついていくだけで精一杯
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本当は横顔見て歩いていたいけど、今見えているのはユキの背中
ユキ、ちょっと待ってよ
あそこ、鳥が飛んで行くよ
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僕はユキを呼び止めることがまだ出来ない
きっと僕のほうがユキより小さいからなんだ
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でもさ
トンネルくぐるのは僕のほうが上手いんだ
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お部屋に戻っていたユキは、空を見上げてポツリと言った
「─────ワインさん、優しいな」
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─────ユキ、僕だって優しくできると思うんだ
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僕はいつも君を追って歩いているだけじゃないんだよ
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もっともっと聞かせてよ
どんなことでもいいからさ、何かあれば僕に聞かせてくれよ

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僕達二人、まだまだ傍にいるんだから
こうして二人、いつも一緒にいるんだから
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困ったな
ご飯をたくさん食べているのに、まだユキのほうが大きいや
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僕は色々なものを見たいんだ
きっとユキだって同じ気持ち
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二人で見れば、二人で話せば楽しいものさ
きっとどんなことでもね
きっとどこへ行ってもね
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悲しいことがあったって、二人で一緒に泣いたらそれでいいんだよ
多分それでいいんだよ
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僕はまだまだわからないこと、知らないことばかり
でもそうさ、きっとそうさ
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僕達二人そうやって、そうして大人になっていくのさ
そうさ、きっとそうさ
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イチョウの季節はまた来年だってさ
日本に来てさ、秋が好きになったよってカッコつける
そんな僕さ
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ユキ、どこへ行くんだい?
お鼻にさ─────
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またユキを追っていく
そんな僕さ
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ユキはあそこだ─────
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この前ここが開いたのに、今日もどうやら閉じたままだとユキは言う
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そう、ここが開けば僕等二人はもっと遠くまで歩いていける
もっと色々なものを見て回ることができるんだ
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ユキ、今度ここが開いたらさ、この前よりも遠くへ行こう
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ユキ、今度ここが開いたらさ、もっと色々見て回ろう
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わくわくするね
なんだかとってもわくわくするね
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きっとワラビー達ともお話できるよ
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わくわくするね
僕達まだまだ知らないことばかり
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わくわくわくわくしてくるね
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フクさん、知ってる?
あそこの扉
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みんなで行けたらいいののね
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ユキ、その時僕は隣を歩こう
歩きたいんだ、隣でさ
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ユキの背中を見るのだって嫌いじゃないよ
でもやっぱり見ていたいのはかわいい顔さ
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そう、いつものようにお部屋を出たら左に行こう
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きっと開いてる時がある
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何かあったとしたってさ、ユキは心配しないで大丈夫
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後戻りなんかしなくたって大丈夫
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僕が傍にいるからね
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その時僕は君の後ろになんていないのさ
君の隣、君の前で笑っていよう
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僕はユキを守るんだ
任せておいてよ、ご飯はたくさん食べてるよ
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怖いことなんかあるもんか
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僕は男のウォンバット
まだまだ身体は小さいけれど大丈夫
そうさ、絶対大丈夫
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あのドア開くその日まで、遠くへ出かけるその日まで
やっぱりユキを追って歩く、そんな僕さ
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何も言わないユキの後、背中を見つめてそっと歩く
そんな僕さ
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わくわくするんだ、止まらないんだ
早く遠くへ行きたいな
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開いてくれよ、早く開いてくれよ
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開かないね
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僕等のわくわく
二人一緒に毎日わくわく
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大人になるため
わくわくわくわく
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昼も夜もわくわくわくわく
青空、星空
昼の日向、夜はすっきり月明かり
影も伸びて一緒にわくわく
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ユキの後ろで
僕はわくわく
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隣で笑うよ
わくわくわくわく
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まだまだ知らないことばかり
わくわくわくわく

僕はわくわく




   

by bon_soir | 2017-12-12 14:48 | 五月山動物園 | Comments(6)
ユキを追って
コウとユキ
一緒に過ごしている日々は、また一つの物語
まだまだ始まったばかり、終わりなんてちっとも見えない書き溜めていく物語
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五月山動物園で暮らすウォンバット、コウとユキ
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日向がとっても暖かい、離れたくなくなれば季節は冬
二人にとって初めての日本の冬
イチョウは散って地面を温め、明るく明るく動物園を黄色く照らす
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毎日自由気ままに過ごす女の子、ユキ
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トンネルからそっと出てきてお昼ごはん
今日はちょっとお寝坊さん
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ご飯の場所に陽がそっと
そっと当たって気持ちがいい
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そう、きっと今日も素敵な日
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遅れて外へ出てくれば、ユキの姿を先ず探し
日差しが眩しくコウを照らす
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コウはいつもユキを追う
きっとずっといつまでも、何かにそっと導かれ
コウはいつもユキを追う
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一緒に食べよう、隣でそっと
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今日の青草、二つの入れ物
潤沢、潤沢
まだまだたくさん
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ユキは静かな女の子
普段はコウに何も言わずにただ気まま
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お行儀良いのかどうなのか
静かに静かに二人でご飯
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美味しいね!
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向かいで食べる? 隣で食べる?
コウはやっぱり隣で食べる
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コウも静かに何も言わずに隣でそっと
二人のご飯はただそっと
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交わす言葉
そっと一言「美味しいね」
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お客さんも少ない日
コウもユキも、動物園もなんだか静か
風の音も聞こえない
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食べている、陽に照らされている
ゆっくりゆっくりぽかぽかぽかぽか
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冬の晴れた日、日向がみんなを温めて
ぽかぽかぽかぽか、気持ちぽかぽか
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ぽかぽかぽかぽか
傍にいればみんなでぽかぽか
温かさ、暖かさ
伝わる伝える温かさと暖かさ
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はみ出しちゃったご飯を食べるコウ
お皿のご飯を食べるユキ
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そっとごめんね「ありがとう」
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「─────僕はユキの傍がいい」
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「ユキは何も言わないけれど、大丈夫」
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「そう、僕も何も言わなきゃいい─────」
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「追いかけて傍にいるだけ、それだけで楽しいからね」
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「ユキは僕を誘うわけじゃない、ただ一人そっと出かける」
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「静かに急いで追いかける、そんな僕さ」
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「『ユキ、今日はそこ開かないよ』と、わかっていても僕は言わない」
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「がっかりさせたくないからね」
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「大丈夫、またそのうち開くよ。そのドアは、ね」
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「お昼寝でもするのかと思ったけれど、ユキはまた出かけた」
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「毛づくろいしていて出遅れた、そんな僕さ」
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「……止まらないよ」
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「ユキは何処だと、探す僕」
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「寄り道してたら見失う」
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「─────ユキ、僕はここにいるよ」
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「どうやら僕と入れ違い」
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「やっぱりさ、僕が声をかけなきゃいけないね」
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「やっぱりさ、早く大人になりたいね」
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「ユキのこと、追いかけてるだけじゃ駄目だよね」
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「でもさ─────僕は今、それが楽しいんだよ」
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晴れた空の青と散り行くイチョウの黄色の中で、コウとユキはころころころころ
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コウは静かにユキを追って、ころころころころ
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二人はころころ
そっところころ、小さな二人
ころころころころ
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今は後を付いていくだけだけれど
いつか二人、隣で手を取りいつまでも
ワインとワンダー、二人のようにずっと、ずっといつまでも
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二人の暮らし、まだ始まったばかり
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追いかけて、追いかけあって
支えて支えて、支えられて
二人大人になっていく
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今はただユキを追って─────
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ユキを追って、いつも隣に
ずっとずっと隣で二人一緒
─────ここで暮らそう
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五月山動物園で二人、一緒に暮らしていこう





    

by bon_soir | 2017-12-10 14:56 | 五月山動物園 | Comments(2)
いつかまた、二人
イチョウ舞い散る黄色い地面、僕はそっと切り取って、君をふわっと包む毛布にしよう
あの空、上手に切り取って、君を映し僕等を映す水色の窓にしよう
あの雲、幾重に重ねてさ、君が大空羽ばたき翔る羽にしよう
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─────①ワイン
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────朝と夜、太陽が見えない間はずいぶんと寒くなった
秋が終わって冬が来たんだ
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冬に向かって空の様子はどんどん変る
晴れた空はより青く、夜空の星はどんどん数が増えていく
そう、一日一日と空気は澄みきっていくんだ
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「あの星座はなんて言ったかな────」
みんなが寝静まった頃、なぜか眠れない僕は一人夜空を見上げ、なんとなく呟いた
月明かりに明るく照らされた動物園と僕、そして少しづつ動き夜空を漂う雲
冷えた空気の中、すべての形がはっきりと浮かび上がっていた
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ワンダーさんは部屋で眠っている
寝息と一緒にときおり動く手と足は昔から変わらず小さい
ずっと見てきた、触れてきたかわいい手とかわいい足だ
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「ワンダーさん、大丈夫かい────」
なにか楽しい夢を見てそうにそっと微笑むワンダーさんの寝顔を近くで眺め、そっと呟いてみる
僕は気になっていた
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足元から影が伸び始めた夕暮れ時
なんだか少し身体が重い、ご飯があまり美味しくないと、ワンダーさんから聞いたからだ
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あの時の無理して見えた力の無い笑顔に僕は胸騒ぎ
色々なこと、昔のとある日々のことを思い出す
気がつけば見上げた月の色と模様がいつもと少し違って見える
「どんなことでも“いつもどおり”がいいんだけどね」
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穏やかだった夜風がふいに強く吹き、イチョウの枝と僕の身体を少し震わせる
「寒いね」
無意識なうちに出たのは冬の言葉だ
急に寒くなったからワンダーさんも少し調子を崩したんだろう、慣れればきっと大丈夫────と、不安を無理に隠すように僕は自分勝手を納得させる
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────そう、誰だって嫌なこと、嫌な気持ちからは離れていたい
ごまかしてばかり
良くないことだと知っておきながら、駄目な僕は自分の気持ちから距離を置こうとしてしまう

「知っていることあったらさ、僕に教えてくれないか────」
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僕は気配を感じた方へ向かってささやいた
「いるんだろ、僕に教えてくれないか────不安で不安でどうにかなりそうなんだ」
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「ワンダーさんを眺めていたんだ。ワイン君、気がついていたのかい?────久しぶりだね」

静かな優しい声と一緒に部屋の中へ影が伸び、すっと入ってくる
感じた気配どおり、ウォンバットの神様は部屋の外
変に明るい月明かり、星明かりにそっと照らされていた
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「────ワインさん、誰かいるの?」

ワンダーさんは静かに、そっと目を覚ました
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─────②ワンダー
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─────ワインさんの庭との間、私はフェンスの横を走り回ることが好きだった

お天気の良い日、気分がいい日に外へ出ればワインさんは必ず近くへ来てくれた
すれ違いざま何度も何度も目が合って、私達は他愛もない短い話を何度もかわし、小さな幸せの中、ゆっくりと日が暮れる

そんないつもどおりの日々の中、私はフェンスの横を走り回ることが好きだった
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─────ワインさんの庭との間、私はフェンスの横を走り回ることが好きだった
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ふとしたある日、私は自分が少しおかしいことに気がついた
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今までのように身体は動かず、あまり急いで走れない
すぐに疲れてぺたりと座りたくなってしまう
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ご飯もあまり美味しいとは感じない
見る夢も短くて、その景色は不思議と色が薄く見えた
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そう、私が私でないように
色々考えてみたとしても、頭の中に浮かんでくるのは不安なことばかり
なんだか寂しいことばかり
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ワインさんはぐっすりと眠っているような、とある日、晴れた夜のこと
夜風はそっと優しくて、月も星もふんわり明るく私を照らす
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なぜか眠れない私は一人夜空を見上げ、星と星とを見えない糸で繋いで星座を作る
下手くそだったり、少し無理があったり
一つ作って、二つ作って何度も笑う
「こうして、こうして、あっちとこっち─────できた、これがワインさん座」
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夜空に浮かぶワインさん
ワインさんはその夜空でも優しく笑っていた
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穏やかだった夜風がふいに強く吹き、イチョウの枝と私の身体を少し震わせる
「寒い」
夜露が降った庭の中、空気は冷えて温かい手を恋しくさせる
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いつも触る、いつも握る優しくて温かい
そんなワインさんの大きな手
身体がうまく動かない、今の私はいつもどおりの優しさに触れることもままならない
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「これから私、どうなっちゃうんだろう────」
声に出るのはそんな弱音
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そう今、私の身体は弱っている
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ぽろりと一粒、涙が落ちた
─────ワインさんの庭との間、ゆっくりでもいいからフェンスの横を走り回ること
私は後どのくらい出来るんだろう────
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今すぐワインさんを小突いて起こして優しい声を聞いていたい
今すぐワインさんの目を見つめながらその手にそっと触りたい
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いつもどおりの日々というのは優しさ愛情溢れた日々のこと
─────知っている
私は凄く幸せなウォンバットなんだ
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涙を私はもう一つ、続けてこぼれてもう一つ
ほっぺをつたって落ちるその瞬間、流れ星も一つ二つと輝き、消えた
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「お母さん」
私を呼んだ懐かしい声
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振り返るとそこには二人のウォンバット
サツキとサクラ─────私とワインさんの大切な子供達
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私は二人をぎゅっと抱きしめる
なんだか上手く動かなかった身体にその時ぐっと力が入った
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「お父さん、眠っているけど起こそうか。今まであんまり何も言ってなかったようだけど、きっとあなた達には会いたいと思っていたはずだから」
そう言った私にサツキとサクラ、二人は涙をこぼして横に首を振る
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「駄目、お父さんにはまだ言えないこと、これからお母さんには伝えなければいけないから」

サツキとサクラはそう言ってもう一度涙をこぼす
最初よりもたくさんの涙、月明かりと星明かりできらきら光る
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私にはわかる
二人が何を言おうとしているのか、それがわかる
「大丈夫、あなた達の顔を見た時に全部わかったよ」
そう話すと私達三人は静かに抱き合い、そして静かに涙をこぼし続けた
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二人が言うとおり、ワインさんにはまだ伝えることができない
悲しい気持ち、寂しい気持ち
ただそれだけの日、ただそれだけの残り時間になってしまいそうだから
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残り何日かはまだわからない
ただ遠く高い所でサツキとサクラは待っている
心配そうに見つめてくるワインさんに身体のことだけ少し話し、いつもどおりの日々が少しでも長く続くように力を振り絞って私は笑った
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なるべく多くお昼寝をして身体を休める
そして夜にもまた長く眠っていた
不思議と怖い夢を一つも見ない
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夢の世界の良い所
夢の中なら毎日毎日少しだるい私の身体もちょっと自由
ささいだけれど大切な、そういうこと
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夢でワインさんとサツキとサクラが遊んでいる
それは家族写真のように幸せを映して私の頭の中へ
お客さんたちのように私達は写真なんて撮らないけれど、幸せな家族写真のように心の中へとしっかり残る
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みんな笑ってる
ワインさんもサツキとサクラも
みんな、みんな夢の中で笑ってる
私には今、なんの不安も無い
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夢の中に誰なのか知らない声がそっと聞こえてきた
誰の声かは知らないけれど、優しそうで温かそうで
─────とても素敵な声がそっと聞こえた
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夢の中に現実のことが少し滲んでいるみたい─────
滲み出した元の方を見るように、私は夢から一度醒め、声のする方そっと見る
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「────ワインさん、誰かいるの?」

ワインさんの横には大きなウォンバットが立っている
─────きっとウォンバットの神様だ
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「二人共、僕の話を聞いてくれないかい─────」
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─────③二人の旅
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「本当なら目的地まで行く途中のことも楽しめるのが旅なんだ。でもいつか説明したいけど今回は時間が無い。二人でそっと目を閉じて、二人で一緒の夢を見なさい。二人一緒に目を覚ました時、そこは旅の目的地─────君達はタスマニアにいるはずさ」


────そうだ、僕とワンダーさんは今タスマニアにいる
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あの時、ウォンバットの神様は僕と後から目を覚ましたワンダーさんに言った
「遅くなってしまったけど旅に出かけよう。いつかワイン君が言っていたはずさ。フクの所にお嫁さんが来たら、その時出かけようって言っていた旅だ」
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そう、いつか確かに僕は言った
僕等の遠い記憶の片隅、タスマニア
色々見て回ってフクや動物園のみんなに土産話をすればきっと楽しいよって、ね
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その時の話、タスマニア旅行へ今僕等は出かけてきている
帰ったらちゃんとみんなに旅の話をしてあげよう
でも、そうだ─────フクはもうマルに色々聞いているのかもしれないね
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まあいいさ、大丈夫
僕等はマルもコウとユキも知らないタスマニアを見て回ればいいだけのこと
きっとそういうことだ
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少し歩いた所で気がついた
身体が重いと言っていたワンダーさんは今は平気だと笑顔で走り回って見せてみる
僕等はやっぱり夢を見ているのだろうと考えたけど、大丈夫
夢じゃないようだ
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楽しいことを夢に見るのもいいけれど、やっぱりちゃんと起きている時にしっかりと自分の目で見て回ること
きっとそれがいちばん大切なのさ
なぜなんだろう、夢というのはいつか忘れてしまうもの
なぜなんだろう、実際に見たこと感じたことっていうのはいつまでも忘れたりはしないもの
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できるというなら後回しなんてしては駄目
少し無理してでも頑張るべきなんだ──────

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綺麗な街、たくさんの公園、たくさんの大きな公園
たくさんの山、滝、洞窟に湖と川
ワンダーさんが歩きたがっていた深い森
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ここタスマニアには本当に多くの自然がある
流れる空気、吹き抜ける風、冷たいお水に澄んだ空

そして何よりクレイドルマウンテンだ
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その景色に僕とワンダーさんは言葉を失う
そうだ、表現なんてできっこない

ここの景色をどうすれば伝えることが出来るのだろうか
ここで感じたこの気持ち、僕等はどうすれば伝えることが出来るのだろうか
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─────答えは出ない、出るわけない
来るしかないんだ、見るしかない、感じるしかないことなんだ
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タスマニアの11月は春から夏に変わる時期
高原は色とりどり、見たことのないお花がたくさん咲いている
「ワイルドフラワー」
見渡すかぎりのお花に囲まれたワンダーさんはそう言うんだって幸せそうに笑って喜ぶ
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「このお花、中でも一番かわいいね」
ワンダーさんがとびきりの笑顔を見せた
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この笑顔、僕は今まで何回か、何回も見ているはずさ
凄く凄く懐かしい、そんな気持ちが心の中をそっと少しずつ熱くする
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「このままここで星が見たい」
ワンダーさんはそう言って、暗くなり始めた空をいつもの何倍にも輝く瞳で見上げていた
夕暮れ綺麗なタスマニアの空に一番星が光りだす
明るく輝いていた太陽は山あいにゆっくり沈む
きっと最高の夜が僕等の所にこれから静かにやって来る
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この夜、僕等と一緒にいるのは百万本のワイルドフラワー
そういうことだ
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いつも見ている夜空とは違う星空
南半球、タスマニア
僕等は今、遠く離れた場所にいる
本当は懐かしいはずなのに僕は何も覚えちゃいない
僕等は日本のウォンバット、素敵な動物園で優しい人達と一緒にずっと過ごしてきた日本のウォンバット
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そういうこと
きっとそういうこと
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「ワインさん、素敵な旅だね」
僕のすぐ傍、隣で肩寄せ、ワンダーさんはそっと小さく声に出す
「本当だね」と、僕はただ一言

きっとそれだけ言えばいいはずだ
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「日本へ一緒に行った、ずっと一緒に暮らしてきた男の子がワインさんで良かった─────ありがとう」
ふいにそんなことを言い出すから僕は戸惑いあわてて夜空を指差し、少し早口
「ワンダーさん、ほらあれが南十字星─────」
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お返事は聞こえない
ワンダーさんは眠っていた
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たくさん歩き回ってたくさん喋ってたくさん笑って、きっと疲れてしまったんだろう
月明かりが幸せそうに微笑みながらそっと横になったワンダーさんを優しく照らす
「ワンダーさん、そろそろ動物園に帰ろう─────」
僕はワンダーさんの隣で横になり、そっと目を閉じた
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二人でそっと目を閉じて、二人で一緒の夢を見る。二人一緒に目を覚ました時、そこはきっと動物園
僕等の大好きな五月山動物園──────そういうこと、きっとそういうこと
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─────④いつかまた、二人
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──────僕はどれくらい眠ってしまったんだろう
目を覚ますとどうやら辺りは薄暗い
これから夜になるのか、それともこれから夜が明けるのか
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「─────お父さん」
どこか懐かしい言葉を聞いた僕は、その声がした庭の方を部屋の中からそっと見た
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二人の女の子─────僕の目から涙が溢れる
「サツキ、サクラ、どうしたんだい?」
僕は二人のところへ駆け寄った
僕はすっかり歳をとってしまったけれど、サツキもサクラはあの頃と何も変わらない
サツキ、サクラ─────僕とワンダーさんのかわいい子供達
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「ワインさん」
気がつくとワンダーさんは僕達のすぐ後ろで泣いていた
僕等の庭とお部屋の間の金網が今は綺麗さっぱり何も無い
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「しばらく内緒にしておいたことがあります。ワインさん、私はサツキとサクラと一緒に出かけなければいけなくなりました」
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─────サツキとサクラの姿を見た時に、嬉しさと一緒に感じたこと
それはやっぱり間違いじゃなかったんだ
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明日の深夜か明日の朝
そのくらいで最後の旅に出ると言う
わかっていたほうがいいのか、わからないままお別れしてしまうのがいいことなのか
今の僕にはわからない、考えることもできやしない
ただ後から後から溢れる涙をこらえ、ときおり拭うだけで精一杯だった
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イチョウ舞い散る黄色い地面、僕はそっと切り取って、君をふわっと包む毛布にしよう

あの空、上手に切り取って、君を映し僕等を映す水色の窓にしよう

あの雲、幾重に重ねてさ、君が大空羽ばたき翔る羽にしよう
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夜から朝まで寒くて寒くてしょうがない
だから、イチョウ舞い散る黄色い地面、僕はそっと切り取って、君をふわっと包む毛布にしよう
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僕等を映すカメラが新しくなったのさ
だからいつでも君が動物園を眺めることができるように、あの空、上手に切り取って、君を映し僕等を映す水色の窓にしよう
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空の向こうずっと遠く、行くっていうのは大変さ
途中で疲れてしまわないよう、あの雲、幾重に重ねてさ、君が大空羽ばたき翔る羽にしよう
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ははっ、なんてことだ
どれも全部僕が必要な物じゃないか
どれも全部僕が欲しい物じゃないか
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寒い日、夜空に君の星を眺めるために
空の上のカメラで君を眺めるために
君の所にいつでも飛んでいけるように

僕が必要だって思う物ばかり─────こんなわがまま言うような僕なのさ
きっと何一つ叶えることなんかできないよ、ワンダーさんにあげることなんかできないよ
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僕はいつまでたっても君に甘えてばかり
歳をとっても時間が過ぎても、僕は君に甘えてばかり
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僕にはワンダーさんが必要なんだ
僕にはあの優しい笑顔が必要なんだ

僕は弱虫、僕はこんなにただの弱虫
「ワンダーさん、こんな僕とずっと一緒で、それで本当に良かったのかい─────」
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サツキとサクラは帰ること無くずっとワンダーさんの傍にいる

背中に乗った小さなサクラ、隣で笑うかわいいサツキ
僕らはお客さんのように写真を撮ったり出来ないけれど、この風景はそうだ「家族写真」
色鮮やかに小さな幸せそっと写したような、そっと見つめる僕の心に優しい優しい家族写真
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─────なぜワンダーさんは遠く旅立ってしまうのか
この前の旅でその理由がわかったって、ワンダーさんはそっと話してくれたんだ
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「ワインさんと私の物語は終わらない、まだまだずっと続くから────」
涙が光る優しい笑顔でワンダーさんは言ったんだ
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生きてる間じゃ時間はぜんぜん足らないってワンダーさんは涙をこぼして笑うんだ
僕と出会ったから、僕と過ごしてきたから、だから足らない、まだまだ二人の物語は続いてく
物語は同じ場面ばかりじゃない、寂しいこと悲しいこと、嬉しいこと楽しいこと
今までだって色々あったって、熱をこめて話し続ける
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─────そうだ、今この瞬間も僕達二人の物語
まだまだ続く、ずっと続く僕達二人の物語
一度離れ離れになったって、いつかまた
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僕達二人はいつかまた、一緒に歩ける時が来る─────
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お別れは本当に寂しいね
今までずっと一緒だったのに、これから先は一度お別れ
飼育係りさんよりずっと長く、誰より長くワンダーさんと一緒いたはずの僕だけど、これから先はみんなと一緒、ワンダーさんと一度お別れさ
これからできることはただ一つ、今までどおりワンダーさんを想うこと
ただそれだけさ
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心残りはただ一つ
これから高く遠くまで行かなきゃいけないっていうのにさ、隣でワンダーさんの手を引いてあげることはできないんだ─────サツキとサクラに任せるより他はない
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次の日の夜が明ける前のこと、ウォンバットの神様やって来た
朝といえば朝だけど、まだまだ空には星が光る
思った通り寒くて寒くてしかたない
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「忘れないで」と、ウォンバットの神様が静かに言う
サツキとサクラがワンダーさんを連れて行くのはあの星光る向こう側だと、ウォンバットの神様が僕に言う
ティアもアヤハもすぐ傍にいるという
──────あの幾つかの優しい光、それはウォンバット達の星なんだ
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イチョウ舞い散る黄色い地面、僕はそっと切り取って、君をふわっと包む毛布にしよう
あの空、上手に切り取って、君を映し僕等を映す水色の窓にしよう
あの雲、幾重に重ねてさ、君が大空羽ばたき翔る羽にしよう

僕はもう一度そうやって呟いた
心の中で言葉をそっと温めて、一言一言気持ちをこめて呟いた
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ウォンバットの神様が涙を流して僕に言う
「見てごらん、一つだけ、一つだけは届いたようだ」と、空を見上げて僕に言う
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「あっ」

少しだけ明るくなり始めた東の空に漂う雲が集まりだして、ワンダーさんの傍で幾重に重なり羽になる
ワンダーさんをそっと空へと連れて行く、大きな大きな羽になる
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「ワインさん、ありがとう」
ワンダーさんの目からは涙がこぼれ、傍にいた僕の手の上にそっと落ちた
その涙は冷たい空気の中でひときわ温かく、悲しみ冷えた僕の心を温める
「ワンダーさん、ありがとう」
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続けた言葉は二人同時に重なった
「いつかまた、二人でさ─────」
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大きな羽が羽ばたくたびに黄色く染まったイチョウの葉っぱが何枚も何枚も舞い落ちる
ワンダーさんが夜空を黄色く輝かせ、動物園を真っ黄色に染めていく
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サツキとサクラが手を振っているのが見える
「ワンダーさんをよろしくね」
涙で霞む三人の姿から目を離さないように、僕はまばたきもしないで見つめ続けた
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空に溶けかけた鳥から一度でも目を離せば、もう決して見つからないことを僕は知っていたからだ
見つめ続け、空の彼方に消えるまで、少しでも長くみんなの背中を見続けなければいけない
僕が最後にできることはただそれだけだ
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ワンダーさんが空の向こうへ消える頃、動物園はイチョウの葉っぱでいっぱいになった
今までのどの秋の終わりよりも黄色く染まって輝いている
「凄いや」
僕は辺りを見渡し、涙をていねいに拭ってから教えてもらった星がある方角をもう一度眺めた
星の数がさっきよりも三つ増えている
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ワンダーさん、空の上から動物園の場所がわかるかい?
君が黄色く染めた場所だよ、そこから僕が見えるかい?
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その日の朝、飼育係さん達がワンダーさんのいない部屋に驚いて、あたり一面のイチョウの葉っぱと一緒にどういうことなのかを気がついて泣き出した
大人なのに泣くということはウォンバットも人も一緒、同じこと
「ありがとう」
ワンダーさんのために涙をこぼしてくれる人達に僕はお礼をしていくことにした
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今はもう僕の庭の隣にワンダーさんはいない
今頃きっと太陽に照らされ黄色く光る動物園を空の向こうから眺めてる
サツキとサクラ、ティアとアヤハときっと一緒だ
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庭へ出た僕をマルが少し不思議そうに目で追った

─────そうだ、一つ困ったことがあったんだ
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僕はくるくるくるくる左回り
いつのまにかにね
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いつものように君が優しく呼んでくれないと、僕はどこへ向えばいいのかわからない
だから今日も僕はくるくるくるくる
僕はくるくるくるくる左回り
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ああ、まただ─────
僕はくるくるくるくる左回り
いつのまにかにね
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僕がまっすぐ歩くには、ワンダーさん、君が必要だったのさ
今僕はどこへ行けばいいのかわからない
星が出てない昼間はさ、僕は何を見つめたらいいのかわからない
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いつかまた会えると知っていても、今この瞬間が僕のことを寂しく悲しくさせてしまう
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僕は少し疲れて一休み
泣き疲れて僕は一休み
のんびりいこう、僕はもう大人なんだから─────
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喜びと悲しみを僕等は感じて大人になった
二人笑顔の喜びは突然やって来る悲しみに打ち消され、その悲しみを超える喜び見つけて、重ねて繋げてさ
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僕はこれ以上大人にはなるのかな
喜ぶことはきっとまだまだたくさんあるけれど、ワンダーさんが隣にいない悲しみ以上の悲しみがこの世にあるはず無いのだから
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それに僕はもうお爺さんだ
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生きてる間だけじゃわからないこと多すぎる
きっとみんな、全部のことをしらないままいつかそっと旅立っていくんだろう
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大丈夫、僕達の物語、みんなの物語はずっとずっと続いていく
─────そうだろ、ワンダーさん
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まだまだこれから
まだこれからだ
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冬だって始まったばかり
きっとそういうことなんだ
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色々なことに悲しんでばかりじゃ駄目なんだ
忘れないこと、想うこと
その気持ちがあれば大丈夫
きっと大丈夫
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大切な誰かにきっと
わかってもらえるさ
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いつかきっと自分にも
わかる日が来るのさ
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イチョウ舞い散る黄色い地面、僕はそっと切り取って、僕達ふわっと包む毛布にしよう

あの空、上手に切り取って、僕等みんなをそっとを映す水色の窓にしよう

あの雲、幾重に重ねてさ、僕達が大空羽ばたき翔る羽にしよう
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「いつかまた、二人─────手を取り合って旅に出よう」
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昼の間、僕は見つめる物を一つ見つけた

タスマニアの旅の時、ワンダーさんが一番かわいいって言っていたワイルドフラワーがそっと一輪咲いていたんだ
庭の片隅、ワンダーさんが日向ぼっこをしていた場所に、ね



    

by bon_soir | 2017-12-05 20:52 | 五月山動物園 | Comments(10)
そっと食べる

茶臼山動物園で暮らすウォンバット、スミレ
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日が暮れだした動物園の、残り少ない時間
冷たい空気の中のこと
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お部屋の中で座っているスミレちゃんにと飼育係さんが持ってきた
そう、柿みたいだよスミレちゃん
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でもドアの所に置いたのはバナナ
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上がってきたスミレ
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かさかさかさかさ
夕方、かさかさ
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モモコは今頃ぐっすりお部屋
スミレちゃんは夕方大好き
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お客さんはもうほぼいない
静かな静かな動物園
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かさかさかさかさ
足音かさかさ
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美味しそうな匂いに気がついた
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置いてあった
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食べたことあるってことだけど
すぐに食べないスミレちゃん
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そっと
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美味しいかな?
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美味しかったよう
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季節の風景
茶臼山動物園
季節の食べ物
食べるスミレちゃん
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時間はそっと過ぎていく
過ぎて進んで季節も変わる
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明日は何を、次は何を食べられる
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飼育係さん、色々何か考えてくれて
動物園での暮らしを彩る彩る少しづつ
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小さな楽しさ
小さな幸せ
その積み重ねでちょうどいい
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きっとちょうどいい
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モモコと二人
得意なそれぞれ
スミレとモモコ
二人は山のウォンバット
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会うたび色々教えてくれる
会うたびまた来ようって必ず思う
かわいい二人、大切な二人
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背中に落ち葉
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さっきのバナナ
まだそのままだった
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で、食べた
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美味しいね
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本当に日は暮れて
もう本当にこれで最後
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スミレちゃん、眠らない
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ウォンバットは穴を掘る
木には登れないけど、穴を掘ることが出来る
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こんなふう
泥んこスミレ
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背中に落ち葉
今度はモミジ
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掘るスミレ
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今日はこれでさようなら
二人と一度、さようなら
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辺りはもう暗いよ
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by bon_soir | 2017-11-30 12:34 | 茶臼山動物園 | Comments(0)
ワンダーさんのお知らせ
五月山動物園のウォンバット、ワンダー
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大好きなワインと二人、ずっと仲良く暮してきたワンダーさんが11月25日の未明、空の向こうへと旅立っていきました。
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ワイン
ワンダーさんは28歳
尊敬することばかりです
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今はただ
ただ伝えたいこと
ありがとう
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儚く健気
そしてなにより美しかったワンダーさん
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何十回、何百回と会えたわけじゃないけれど
いつだってときめきをくれたワンダーさん
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本当にありがとう
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ワイン
寂しくなるね
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ワイン
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by bon_soir | 2017-11-27 15:18 | 五月山動物園 | Comments(4)
スミレと冬の前の朝
茶臼山動物園で暮らすウォンバット、スミレ
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秋の終わり
茶臼山には冬の風
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でも晴れた空、日向は少しぽかぽか
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モモコより少し遅れて出てきたスミレ
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敷き詰められた落ち葉の上をゆっくりゆっくり
一歩一歩さくさくさくさく
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スミレ、出てきた時にはいつも長い毛づくろい
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時々しか会いに来れてないけれど、本当にいつも“いつもどおり”
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安心安心
いつもどおり
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ぽかぽか日向でいつもどおり
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山の季節はやっぱり早い
進む時期、進むスピード
都会よりも何歩も先行く、そんなこと
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北の国にウォンバットが暮していたならもっともっと早いけど
今の日本ではスミレとモモコが一番先に季節を感じるウォンバット
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スミレの背中にモミジがひらり
秋の終わりがスミレにそっと話しかけた
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秋と会うのはまた来年
秋、一度さようなら
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春も夏も、秋も冬も
山の中は見どころたくさん
毎日毎日お散歩しても、毎日毎日見つけるものがきっとある
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毎日毎日感じること、感じる自然がきっとある
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朝ごはん
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すっきり晴れて、ときおり冷たい風が吹く
暖かい、なんだか寒いの繰り返し
爽やかな朝、朝ごはん
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ちょうど日陰
眩しくない
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でもきっとちょっと寒い
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戻ってみたり、また戻ってきたり
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スミレの朝はのんびりゆっくり
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特別なことするわけじゃない
特別なことあるわけじゃない
それがウォンバット
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儚く健気にただ暮らす
のんびりのんびりウォンバット
いつもどおりのスミレ
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秋の背中を探して見つめて
もっともっと感じにいこうかな
どこかにまだまだみてない秋があるのかな
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落ち葉の積もる庭をくまなく歩いて、色々眺め
今度は冬を迎えに行かないと
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寒くてたまらない冬だけど、今度は春を連れてくる
冬は大好きな春の準備して、時期がくれはばそっとここまで連れてくる
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大切な季節
一つ、大切な季節
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冬が来る
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この庭で一番赤いモミジの葉っぱ
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モミジが散りだすことは一つの合図
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眺め続けた秋の背中が見えなくなっていく
そんな合図
一つの合図
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そんなモミジに近づく
少しでも近くへと登る
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傍まで行けば優しい光
木漏れ日秋色葉っぱ越し
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秋、静かに一度さようなら
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朝のお散歩、もう少し
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赤い絨毯
また来年
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また来年も会えるかな
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モミジの葉っぱはまた芽吹き、大きくなって赤くなって
また散って

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季節はまたもう一度一巡り
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季節の巡り
その傍スミレ
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静かな動物園でそっと一人で人の傍
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スミレの一日まだ半分
秋の終わりはまだ半分
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by bon_soir | 2017-11-25 15:18 | 茶臼山動物園 | Comments(2)
舞う落ち葉、傍でモモコ
茶臼山動物園で暮らすウォンバット、モモコ 
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秋の庭をくまなく散策
秋の色を見てまわる“夢を見るための準備”
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今日の夢はきっと秋色
でもまだ準備は終わらない
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そよ風、落ち葉の乾く匂い
モモコの背中をそっと押し、モモコの鼻をそっとくすぐる
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聞こえてくるのは秋の声
「さようならだね」
と優しくお別れ、秋の声
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さようなら
また来年
秋、さようなら
また夏の次にこんにちは
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秋の色した夢の中
その秋の背中を覗く季節
また冬がやって来る
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ももこ、この日はごきげん
静かに眺めているだけでいつの間にか傍でお話
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夏の喧騒どこかへ行った
秋、日を重ねるごと静かになって動物園日和
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ちょっと寒い瞬間あるけれど、静かに楽しい冬の入口動物園
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さようなら
また来年
秋、さようなら
また夏の次にこんにちは

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ときおり舞い散る落ち葉にそっと伝える
「秋、今年は一度さようなら」
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その時、強い風吹いた
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ひらひら、さーっと
ざわり揺れる落葉樹
ウォンバットに落ち葉舞う
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秋の声を風に乗せ
詳しいことは落ち葉が通訳
秋の声は風に乗り
はっきり聞こえる「さようなら」
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秋、さようなら
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秋の背中をそっと見つめてもう一度
秋、さようなら
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一度は部屋に帰りかけたけど、寂しくなって後追いかけた
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秋の背中はまだそこに
まだすぐ傍を歩いてる
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かさかさかさかさ落ち葉を触り
かさかさかさかさ
かさかさかさかさ
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木枯らし秋風少し混じって
背中を追いかけるモモコの背中をそっと押す
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追いつけなくても大丈夫
また来年、夏の次にやって来る
季節のお話、土産話
また来年、また来年の夏の次
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眠ろうとしないこの日
モモコはまたみんなの傍へ
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日が暮れる前の小さなガイド
モモコのお話
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足、かわいいね
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大好きな場所へそっと登る
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そっと登れば高さが合った
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ベビーカーの赤ちゃんと記念撮影
赤ちゃんちょっと泣いちゃったけど、きっと思い出
色あせない、秋の思い出ウォンバット
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机の上に置いてあった
確かそれはお芋の葉っぱ
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そんなに好きじゃ無さそう
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置いてあったカバンにちょっかい
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楽しいね!
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優しい優しいウォンバット
モモコ
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茶臼山動物園のウォンバット、モモコはいつも穏やかに人の傍
スミレと暮らすこの部屋で、そっと話しているのかも
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この喜びがみんなのためにあること
この喜びがモモコとスミレのためにそっとあること
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茶臼山動物園のウォンバット、モモコはいつも穏やかに人の傍
スミレと暮らすこの部屋で、そっと微笑んでいるんだよ
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心で人と、大好きな飼育係さんと話す時、それを見る時
きっと儚さ、健気さ、愛情感じること出来る
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愛情伝えて愛情貰って温かい
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それを伝えて表して
広がる広がる優しい思い
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足、かわいいね
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傍でうとうと眠ること
それは特別
特別なこと、モモコは伝えてうとうとうとうと
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茶臼山動物園のウォンバット、モモコはいつも穏やかに人の傍
スミレと暮らすこの部屋で、そっと微笑んでいるんだよ
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眠くなったモモコ
温かいお部屋で眠ります
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さようなら
また来年
秋、さようなら
また夏の次にこんにちは
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by bon_soir | 2017-11-21 14:08 | 茶臼山動物園 | Comments(2)
秋の最後に

あ、寒いと感じだしたら秋の終わり 
日陰でぶるっと震えたらもう冬の始まり
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茶臼山動物園で暮らすウォンバット、モモコ
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秋の終わりをとても感じる落ち葉の積もった庭を歩く
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庭のモミジも散りだした
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もう秋も終わりだね
もう冬の始まりだね
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朝、お部屋から出てきたモモコは少し昇る
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モミジの木の下
赤を重ねた地面を歩く
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ふわり、かさかさ
落ち葉を踏みしめ
ふわり、かさかさ
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秋の終わり
ふわり、かさかさ
冬の始まり
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ここは前にも来てた場所
大きな穴を掘った場所
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モモコはウォンバット
このモミジの木に登ったりは出来ないけれど、傍に大きな穴を掘ること出来る

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土と落ち葉
まとめて掘った
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モミジのすぐ側
奥へ奥へ
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モモコ、穴掘り得意
大きくて、綺麗で深い
素敵なトンネル掘ってくよ
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顔に付いた土ははらう
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かなり掘ったモモコ
綺麗な落ち葉、また上へ上へと重ねた土
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四季を感じる動物園
四季を通り抜けてくモモコ達
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スミレちゃんも出てきたよ
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スミレちゃんはいつもの長い毛づくろい
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掘ってお腹が空いたモモコは坂道登って、まだ野草が残るお気に入りの場所へ
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落ち葉も少々
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モモコ、秋のアラカルト
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秋の風もそろそろ終わりに近づいて、北風混じって身体が冷える
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秋に冬が滲む時期
滲み出したこと、ただ眺めていればどんどんどんどん冬は濃くなる
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あと少し
あと少しで冬の色
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山の上に風が吹く
冬の背中をぐっと押す、冷たい冷たい風が吹く
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こうして野草を食べるのもあと少し
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きっとあと少し
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モモコの長い冬が始まる
スミレと一緒に春を待つ、そんな長い冬がもう始まってる
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落ち葉、そのうち見えなくなっていく
雪、そのうち深く積もる
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日向とお部屋の温かさ
感じて微笑むようになる
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落ち葉さくさく
登ってさくさく
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日向、ぽかぽか
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のんびりのんびり
ぽかぽかぽかぽか
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秋の終わり、モモコは過ごす
秋の終わりをモモコは感じる
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ずっとここで暮してきたから、空の色も風の香りも、どんなことでも知っている
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時間の流れ、四季の進み方
今自分がどの辺りなのか
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モモコもスミレも感じてる
青空、高い冬の空
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みんなみんな知っている

さっきから顔に影
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誰かがモモコを眺めてる
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モモコも誰かを眺めてる
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スミレも秋色
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冬になって色が減る前、森の色
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日向でうとうと
窓際うとうと
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目を開いたなにかのはずみ
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見えているのは秋の色
もしかしたら冬の顔
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白銀、白い世界もいいけれど、やっぱり色付き温かみ
そんな所にもう少し、もうあと少し暮したい
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ぐっぐって雪の音
それもいいけど、かさかさかさかさ心地良い
秋の音ももう少し、もうあと少し聞いていたい
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秋の終わりの音はかさかさ
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かさかさかさかさ
かさかさかさかさ
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向こうの方に見えてきたよ
冬の笑顔がそっと近づいてきているよ
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北風まだ弱く、冷え方まだ優しくて
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秋の終わりをもっと楽しもうと笑ってる
冬の笑顔は静かにふわりと雪のよう
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モモコもそっと近づいていくよ
冬の笑顔に誘われて、そっとそっと歩きだすよ
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今年も秋を通り抜け、冬を迎えに歩いていくよ
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さくさくさくさく、落ち葉のリズム
秋だけの音に気持ちは満足
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秋の景色をしっかりしっかり心の中に
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今年の秋の思い出をそっと重ねたら、二人そっと次の季節へ
春夏秋冬いつだって、重ね続けてほっと気持ちが温かい
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秋の最後はいつだって、色とりどりに笑ってる
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次に来るのは真っ白で、なんだか静かな冬の世界
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モモコはきっとわかってる
この秋はこれからも心の中で色鮮やかに気持ち温める
そっとそっと色鮮やかに、そっとそっと温かく
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モモコもスミレもわかってる
冬だって優しいこと、きっとわかってる
心配してない、全部わかってる
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秋の終わりは温かく色鮮やかに
山の上の動物園と動物達に話しかけている
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「また来年、また来年─────きっとだよ」
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by bon_soir | 2017-11-19 14:29 | 茶臼山動物園 | Comments(6)
ただ訪れる冬
前回(→☆☆☆☆☆)からの続きになります

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「あれが北斗七星、向こうがカシオペア、その間のあの星が北極星────ホッキョクグマの星」
普段見えないような星まで見える不思議な冬の夜空の中に、僕は見覚え、聞き覚えのある星をみつけてなんとなく呟く
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────綺麗な星空、一生のうちに何回見ること出来るのか
僕は辺りを見渡した
ワインさん、ワンダーさん、コウとユキ
ヒツジ達にヤギたち、レモンライム
そしてもちろん隣のマルも────
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────真夜中さ、みんな眠って夢を見てる
そうそれはいつもと同じこと
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僕は部屋に戻りマルが眠っていると思われる場所の壁をそっと叩いてみる
本当は夢を途中で遮ることをしたくはなかったけど、僕はどうしても今日の星空をマルに見せたかった
「起こしてごめん。マル、起きてよ。少し寒いけど外へ出ておいでよ」
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「大丈夫、少し前から目は覚めてたから」
マルはみんなを起こさないように小さな声でそう言った
起こして嫌な気持ちにさせないかと不安だった僕は目を閉じ「ふぅ」と小さな深呼吸
またドアからそっと庭へ出た
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「わぁ」
隣でかわいい声が聞こえた
マルもこの星空に気がついたんだ
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「綺麗だろ。こんな星空は僕も見たことが無いんだ」
僕はタスマニアとは違う星、星座が広がっていることを少しだけ教えた
たくさん教えるには時間がかかる
それに今は必要がない
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マルの顔を僕は見る
昼間と一緒、傍にある優しい顔だ
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マルの瞳にはこの満天の星
これからの冬の星空全部をまとめて一度に広げてしまったような数の星が映る
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僕とマルの間にはいつもの金網
けど今それは気にならない
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二人見上げた星空は今もこれからもずっと一緒、同じ物
空が区切られること、ここの動物園に僕ら二人一緒にいれば絶対に無い
────それだけでも幸せさ
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「あっ!」
見上げた直した夜空に一つ二つと流れ星
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「見えた?」
とささやく僕にマルは言う
「うん、見えた」
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そうさ────僕ら二人、一緒の星空を見上げてる
そういうことなんだ
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“カシャ”

小さな音がした方を見てみると、マルの可愛い爪が金網からそっと出ているのが見えた
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僕はそっとその爪の上に自分の爪を重ねていた
何も考えずただそっと、当たり前のように自然にただ
ただそっと
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────マル

マルの爪に、マルの手に温かさを感じたその時だった
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僕ら二人の身体がふわりと地面を離れ浮かび上がる
ゆっくりゆっくり、だんだんと高く金網の上を越えていく
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久しぶりに見る金網越しじゃないマルの顔
身体が何故浮いているのかと考えるのは後回し
僕は傍にある顔をただ、ただ見つめて「マル」とさっきまでより少しだけ大きな声で言った
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「────っ」

マルが恥ずかしそうに小さな小さな声で何かを言った瞬間のこと────
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「えっ!?」
僕等の身体はすごいスピードで星空へ吸い込まれるように高く飛んで行く
マルが何を言ったのか、突然のことで僕はちゃんと聞き取れなかった
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僕の名前を呼んだような感じ
どう呼んでくれたのかはわからない
どんな状況かも今は関係ない
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ただ金網越しじゃない、かわいい顔が隣に、一番傍で微笑んでいること
それが一番大切なこと、きっときっと大切なこと
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僕は今どんな顔でいるんだろうと、映るガラスの無い夜空に向かってそっと微笑んでみた
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その間にもどんどんどんどん地面を離れて夜空の奥へ
向かう先は雲一つない星空さ
僕等は何も怖くない、不思議だけれど怖くはない
向かう先は雲一つない綺麗な綺麗な星空さ
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「夢、夢なのかな?」
僕はマルに訊いてみた
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訊いておきながら僕は思う
現実のことであったら嬉しいと、夢であっても構わない、と
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いつもよりも多く近くで輝く綺麗な星、遥か下の方輝き流れる街の灯り
そして傍にある顔────現実だろうと夢であろうと僕は今幸せさ
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僕の目に映るものは変わらない、別にどっちであっても幸せさ────
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「────夢だよね」
と、言おうとしたその瞬間、マルがにっこり笑って僕に言った
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「多分────きっと、きっと夢だよ」

────そうだ、僕等二人同じ夢の中、同じ夢を今一緒に見ている
きっとそうなんだ
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────夢のほうがいいことがある
今こうして目の前に金網が無いように、たくさんの星の傍にいるように
想えばなんでも出来そうだって思えるように
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そう夢の中なら僕は自由、夢の中なら僕等は自由
僕等は二人一緒に雲一つないこの夜空を、この星空を駆けることが出来るんだ
自由に、醒めるまでは僕等は自由
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同じ時間、同じ瞬間、同じ夢の僕とマル
────そう、今僕等はきっと夢の中
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夢は素敵で楽しい方がいい
きっと現実はそればかりじゃないからね
────なんでもない日常が一番幸せ
僕はワインさんとワンダーさんに教わったのさ
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僕等は自由に星空を駆ける、飛んで駆けていく
夢の中なら僕等は自由、想うだけで僕等は自由
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ほら、見てごらん
あそこにいるのがタスマニアデビルの二人、女の子
同じタスマニアから来て今あそこで笑ってる
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────そう、僕等は今、きっと東京上空
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リンゴがたわわな山道を眺めて、土管の中をくぐり抜け
僕等は笑って夢の中
ウォンバットが今日もどこかで夢を見ている
今もどこかで、夜も昼間も夢を見ている、僕等二人、みんなは日本で暮らすウォンバット
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ウォンバットは木には登れない
穴を掘ることが出来るんだ
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食べて眠って散歩して、穴を掘ってあくびして、飼育係さんや歌のお姉さん、そしてみんなと一緒に笑うんだ
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そう、わかるかい?
なんでもない日常がきっと一番幸せ、そんな気持ちをわかってもらえるかい────
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きらきらきらきら、すぐ傍で星が光る
きらきらきらきら、すぐ傍でマルも光る
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きらきらきらきら、光る幸せ僕等の夢さ
きらきらきらきら、マルの笑顔は夢の中でも普通の時間の流れでも
きらきらきらきら、マルの笑顔は光って見えるのさ
きらきらきらきら、笑顔はきらきら、これからずっと瞬いて光るのさ
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爪に、指に触れてこの時間が始まったように
僕はこの先どんなことでもそっと触れて、そっとさわって始めよう
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自然になんでもないように、なんでもない幸せな毎日の中でのことさ
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自然にさ、僕は自然にこの先どんなことでもそっと触れて、そっとさわって始めよう

ワインさん、ワンダーさん
そうだろ? そういうことなんだろう?
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夢の中なら自由だけれど、それよりもっと、もっと幸せなこと────
こうして素敵な夢を見たから僕は本当によくわかる
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二人、幸せに暮らすワインさんとワンダーさんをずっと眺めていたからよくわかる
なんでもない日常はいつか自然に夢通り抜けてもっと先へ、もっと幸せ感じるその時へとたどり着く
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傍にある顔、進む季節
それだけだ
僕の幸せたどり着く、僕等二人の幸せにたどり着くのに必要なのはきっとそれだけ
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後は自然にその時が来る
そっと触れて、そっとさわって、その時にまた進んでいこう
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────夢の中のはずなのに夜が明けていく
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レモンライムの寝言が聞こえる
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僕等、そろそろ目が覚めるのか────

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動物園はいつもの朝だ
今日もよく晴れて木漏れ日眩しい、もうすっかりと冬の朝
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日陰は少し寒くなった
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ワインさんはどんな夢を見たんだろう
どんな夢を見てきたんだろう
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ワインさん、僕は幸せ者だね
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あの星空とマルの笑顔
冬が始まる日の思い出さ
きっとこの先ずっと色あせない、僕等二人の思い出さ
大切な思い出なのさ
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またそのうちに夜が来る
こんなに晴れた日のことさ、またたくさんの星が輝くだろう
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でもそれは、その星たちはここから遥か遠く絶対に手が届かないところで輝いている

────そうだ、隣を見るんだ
僕、隣を見ろ────

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隣の笑顔は今もすぐ傍、これからもずっとすぐ傍に
そうだよ、わかるだろう、わかっただろう────何が一番大切なのかがさ
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大丈夫、最初からわかっていたことさ
夜空を埋め尽くしたたくさんの星と踊りだした冬の星座
昨日のことは確認、きっとそうさ

僕の一番大切な、ね
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あの時、マルは僕のことをなんて呼んだんだろう


   

by bon_soir | 2017-11-16 17:35 | 五月山動物園 | Comments(6)
傍の顔と冬の星空
五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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毎日毎日少しずつ
冷えていく空気と増えていく星の数

「イチョウの葉っぱ、まだ散らないのかな」
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冬が来ること、来たことを感じだしてふと呟いたフク
でもただそれはただ、考えもなし深く思うこともなし
ただ呟いただけ
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あの日に見えた、思い描いた未来のこと
そのことがフクの頭の中、心の中にいつまでも残り
マルの顔をふと見るたびにそれはまた色濃く大きなっていく
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毎年この時期に気にしていたこと
イチョウの葉っぱの綺麗な黄色、青く高くなった空のことや軽く流れていく雲のこと
冷たいと感じだした水のことや、かなり減ってきた庭に生える草
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今までは毎日いつも眺め、考えていたこと
そんなこと全部、今はただ瞳に映るだけ
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思うこと、想うこと
起きている間、散歩している時間、ご飯を食べている間
そして夢の中までも
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マルの顔と思い描いた未来がフクの今、全部
隣で、傍で温かく
微笑む顔がただ、今のフクには全ての毎日
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向こう側で散歩を続けるマルを眺めふと思い呟いたフク
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「────今度はいつ、いつこのフェンスは開くんだろう」
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「なんだか恥ずかしいからさ、君に言ったことはないけれど、僕の頭はいっぱいなんだ。これ以上溜めておくことはもう無理、溢れ出してる」
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「あの時に見えてしまった幸せそうなあの未来、そこへ行くにはどうしたらいいのかって考え続けてさ、もう僕の頭の中はいっぱいなんだ」
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「傍で微笑む君の顔をずっと眺めてる、目が合うたびにまたいろんなことを考える」
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「馬鹿みたいだろ────もう僕は大人なのにさ」
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「馬鹿みたいだろ────本当にさ」
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「こんなに晴れた日の朝はさ、少し離れて散歩したっていいんだよ。君の可愛い顔に変な影がかかっちゃうからね」
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「これだけ明るいんだ。少し離れていたって君の顔はよく見える。だから少し離れていたっていいんだよ」
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「ごめん、嘘ついた。どんな時でも傍に居てくれたほうがいい」
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「可愛い顔を傍で見せてくれたほうが嬉しいよ」
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「やっぱり恥ずかしくってさ、こんなこと声には出来ないけどね────」
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「ワインさん、こんな時に僕はどうしたらいいんだい? こんな気持の時は何を考えればいいんだい?」
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「ワインさんとワンダーさんのようにさ、ずっとずっと幸せに暮していくにはどうすればいいんだい?」
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「僕の思い描いた未来はさ、ワインさんとワンダーさんの暮しそのものなんだよ」
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「ワインさん、僕もそこまでいけるかな────マルと二人、僕らは越えていけるかな」
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「わかってるよ。僕が思い描いた未来のこと、それは僕次第。わかってる、僕次第ってことなんだろうね」
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色々考えているうち陽は傾きゆっくりと、なんだか早く沈みだし
動物園は閉園を告げる声
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フクの傍に居たマルは日課のような道草おやつ
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「マル、そろそろ閉園の時間だよ」
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フクがそっと声をかけても楽しそうに駆け回り、お気に入りの道草おやつ
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「────あぁ、まただ。また見える。幸せな未来がさ」
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「マルの後ろをついてまわる小さな小さなウォンバット、君のことがまた見えてくるよ────」
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「はっきりと、ぼんやりと。僕の目には見えてくる。思い描いたあの未来────そう、見えてくる」
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「そこへ行くには、手にするにはどうすればいいんだろう────そのことでまた頭と心がいっぱいだ」
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「そしてそのまま、お部屋に戻る僕さ。そのうちマルも戻るだろう」
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「マル、夜になると冷えるね。冬だよ、もう、ね」
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────部屋に戻ってすぐに眠り、僕はいつものように夢を見た
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庭のガラスに映った僕の変な顔
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そしてすぐ傍となり、マルの顔と猫の声
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その猫達の声で僕はそっと目を覚ます
良くあること
また夢の中へ現実が滲んでいたらしい
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僕は部屋のドアをそっと開け庭へ出た
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真冬のような寒い夜
息は白く、ふとしたはずみに身体は震える
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ただそんなことが関係ないほどに素敵なことももちろんあった
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────見上げた夜空を埋め尽くすたくさんの星
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冬の星座が賑やかに踊りだす
見たことがない星空が冷えた身体を心の中から温める

そんな夜の空気のように僕の気持ち、もやもやとしていた僕の気持ちは透き通っていったんだ────
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───続く





       

by bon_soir | 2017-11-12 15:56 | 五月山動物園 | Comments(4)