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優しいモモコに優しく傍で
茶臼山動物園で暮らすウォンバット、モモコ
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茶臼山動物園のウォンバットの家
あらかじめ決まっている日に、そしてまた突発的に、モモコと近くで会えるイベントが行われています
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この日はちょうど突発的な方のイベントが行なわれました
・飼育係さんにお時間がある
・モモコが部屋の方で起きている
そんな日に行うことが多いそうなので運次第なところもあると思います
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そんなイベント中でのモモコ
最初、お部屋の入り口でごそごそと
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そして飼育係さんがドアを開けると、モモコはゆっくりと外へ
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家の周りの通路を歩くウォンバット───
穏やかなウォンバット、モモコ
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モモコも外の景色を眺めたり、普段あまり来ない場所にいることが楽しそう
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お客さんの靴紐噛むのが好きっぽいモモコ
当然ながら靴は汚れてしまうので、それは自分で洗いましょう
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外へ出てしまいそうになったので連れ戻されたモモコ
かわいらしくてしかたない
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体重、大体30kgくらいとのこと
コモンウォンバットの平均的な感じでしょうか
手足の裏はぷにぷに
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外をまた眺めるモモコ
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人懐っこいというよりは、近くに知らない人がいても特に気にしないといった印象
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どうやら布っぽい物、紐っぽい物が好きそう
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汚れます
やっぱり自分で洗いましょう
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そんなこと、わかっていて許せる人、なんでも許せる優しい人、他なにかあっても自分の責任にできる人
モモコの傍にいさせてもらいましょう
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モモコの温かさ、モモコの優しさ感じることが出来たなら
きっともっと、もっともっとモモコのことが好きになる、はず
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この時のスミレ
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何も気にせず上の方で一人
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階段降りて踊り場うろうろ
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花壇的なところなのかなんなのか
壁際隙間に登るモモコ
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隙間にある土の固まり
ぼりぼりと大きな音がする
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噛み砕くのが好きなよう
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木の根っこなどを齧るだけあって、やっぱり顎の力はとても強い
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なんで土を齧るのかちょっとわからないけど、なんだか凄いね
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そんな時のスミレ
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盛ってもらった土の上でなんだかポーズ
急いで駆けて撮りました
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これは怒られたのかな……
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机の下、落ち着くのかな
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でもどうやら外へ出てみたそうなモモコ
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好きあらば階段降りていく
みんなと一緒にね
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「初めて出ました」
という階段降りた外のこと
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知らない景色ばかり
楽しいね!
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連れ戻されつつ、ウォンバットのお話
足はどうしても上がっちゃうのかな
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「ここがポッケ」
飼育係さんの楽しい説明
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ウォンバットは有袋類
ポッケのある女の子
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楽しいね、かわいいね
もっともっと、ずっとずっと好きになるね
頑張ってくれてありがとう
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モモコが疲れないうちにイベントは終わります
いつもやってるわけじゃない、長い時間やってるわけじゃない
モモコ次第、その日次第
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無理強いは駄目、絶対駄目
全てはモモコ次第、その日次第
モモコ、今日はありがとう
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そんな時のスミレ
盛り土の上でうとうと
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もうすぐ閉園の時間だね
部屋に戻らなくていいのかな
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なんだかまた静かに怒られた
そんなスミレ
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当たり前のようにずっと傍にいてくれるけど、きっと少し疲れているのかも
そんなモモコ
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スミレ、夕方ちょっと目を閉じた
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イベント終わって人またまばら
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モモコ今日はさようなら
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スミレも今日はさようなら
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モモコはお部屋へ
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もしこうしてモモコが傍に来てくれたなら
その時はどうか優しくしてあげてください
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難しいこと何も無い
ただ優しく、優しく優しくしてあげてください
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こんなに特別なことは無いのだから
日本でこの先、こんなに素敵なことはきっと無いことだから
モモコが本当に優しいウォンバットなだけだから
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動物園が笑顔で溢れるように───モモコは頑張ってくれています
支える人達も一生懸命頑張ってくれています

こんなに素晴らしい日が一日でも多くあるように
ウォンバットを、動物達を好きだと言う人が一人でも多く増え、愛情みんなに伝えられるように
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優しく優しく
なにより大切、なにより必要な───優しく優しく
貰った愛情、大きく増やして

優しく優しく───





      

by bon_soir | 2017-04-06 10:06 | 茶臼山動物園 | Comments(4)
スミレと春の毛づくろい、盛ってくれた土
茶臼山動物園で暮らすウォンバット、スミレ
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山の上にあるのんびりとした動物園に降り注ぐ朝の陽射し
そして温かい春の地面の上で
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スミレ、気持ちがよくてなんだか楽しい
そんな季節の途中、ゆっくりとした時間の中で
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飼育係さんが部屋のお掃除に来るまでお部屋で眠っていることも多い、そんなスミレ
それでもこんなにとても気持ちよく晴れ、風も穏やか過ごしやすい、とある春の朝
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部屋に入ることなく庭で過ごすスミレ
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スミレの庭にもふきのとう
雪解け春の大切なお客さん
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スミレは誰より毛づくろいが好き
大好き
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少しうとうと夢の入り口
気持ちがいい朝、春を感じていたいのか
───陽だまりそっと眠ってみたいのか
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気持ちがいいね
うとうとうとうと
気持ちがいいね
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でもやっぱり大好きな毛づくろい
お昼寝するのは少し後
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手、足、柱、色々使って毛づくろい
ウォンバットだから
───スミレだから
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お尻は柱で
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誰より念入り、誰より長い
そんなスミレ
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何もなかった雪の下
雪は溶けて一昨日より昨日より、春の草が伸びだした
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季節は過ぎる
どんどん過ぎる
4つの季節は次々とかわるがわる過ぎていく
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どんなところでも、どんなときでも
スミレはいつもの毛づくろい
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春の訪れ細胞活発
寒い時期から暑い時期へ
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そしてスミレは女の子
動物達は時間をかけて毛づくろい
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部屋で眠っていたときに付いた干し草、顔から全部無くなった
でもまだまだ
まだまだスミレは毛づくろい
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この短い棒はお尻向け
こすってお尻も気持ちいい
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どんなに器用な手と足でも、届かない所たくさんあるね
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そんなとき、この短い棒がお手伝い
やっぱりとっても気持ちいい
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大好き、念入り毛づくろい
スミレのかわいい毛づくろい
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一番上まで来たスミレ
ここはガラスと盛ってくれた土の隙間
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きっとここが温かい
きっとここが気持ちいい
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モモコの様子を少し確認
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スミレはいつの間にかに夢の中
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スミレの見る夢どんな夢
スミレの見る夢、もちろん春の花の夢
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きっとどこかでそっと咲いている小さな“スミレ”の、そんな夢
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「お客さんの傍で眠っていると、色々な声が聞こえてくる」
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「夢の中でもそっと、そっとお客さんの声が聞こえてくる」
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「そう、私達はウォンバット。この動物園でそっと暮らす二人の女の子」
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「モモコちゃんが言う。『ふきのとう食べた?』って楽しそうに言ってくる」
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「そう、もうそんな季節───春なんだよね」
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「飼育係さんが土を盛ってくれた。少し小高くってなんだか柔らかい」
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「今までより少しだけ遠くまで見える。そんな気がする」
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「なんだか楽しい。お部屋で眠ってはいられない」
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「楽しいのは今日に限ったことじゃないのかも。なんだかずっと、毎日楽しいって思ってる気がするから───」
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「毛づくろいばっかりしちゃうね」
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「しかたないよ、気持ちがいいからね」
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「そしてそんな気持ちよさはというと、ね」
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「眠気に、変わる……」
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「地面からふきのとうが伸びてるんだよね───後で齧ってみようかな」
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「モモコちゃんも言ってたし、ね」
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「モモコちゃん、楽しいね。二人で過ごす毎日は、本当に楽しいね」
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「春が来たよ。私達の大好きな春がまたやって来たよ───」
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飼育係さんにも時々怒鳴るスミレ
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でも人の傍で静かに眠っているときもある
そんなスミレ
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気難しいのか優しいのか
それはわからない
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でもそれがスミレ
何もかもがかわいいウォンバット
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それが茶臼山動物園のウォンバット、スミレ
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眠っていたかと思ったら、トコトコ歩いて庭のどこかへ
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陽だまり春の暖かさ
花咲く季節に体が動く
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暖かい、そして温かい
春の動物園はそんな場所
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部屋に戻る
ドアはずっと開いている
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中で青草ひとつまみ
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美味しいね
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スミレとモモコ
二人のウォンバットがそっと暮らす
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のんびりとした動物園で女の子が二人
二人のウォンバットがそっと暮らしてる
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眠っているかもしれません
歩いているかもしれません
どこかを眺めているかもしれません
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でもそれが全て
どれもみんなウォンバット
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スミレとモモコ、会いに行けばかわいい二人は待っている
それは確かな素敵なこと
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その先はみんなの愛情しだい
それに気づいた二人しだい
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そしてウォンバットの神様しだい
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眠っているところもかわいいから大丈夫
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きっと大丈夫
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毛づくろい
本当に大好き
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斜面を下る
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少し緊張
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すぐにこうしてしまうというU字形
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季節の青草
大好き
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美味しいね!
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モモコと同じようにふきのとうを気にして散歩
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この日お気に入りの場所
盛ってくれた土を少し掘った場所
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スミレの顔も本当に個性的
かわいいね
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みんなの記憶に経験に、今日のことが優しく残ったならそれは幸せ
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儚く健気に、そっと暮らすウォンバット達のこと
みんなの心の中にそっと残ってくれたなら、きっとそれで幸せ
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スミレとモモコもそう思ってる
きっとそう思ってる
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夕暮れ寂しい動物園
スミレは部屋へ戻ります
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部屋で何かをそっと呟き、そしてまた───
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───ふきのとう待つ庭をまた登っていくスミレ
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もう静かな動物園
一人静かに夕暮れ楽しむウォンバット、スミレ
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「モモコちゃん、私にはわかるよ。きっと明日もよく晴れる」
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「ふきのとう、かわいいから食べられないよ」
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「今日も楽しかった。春の一日、とても楽しかった」
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「明日もきっと楽しいよ。春の動物園はきっと毎日楽しいよ」
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「また明日───モモコちゃんと二人、明日もここで待ってるよ」
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by bon_soir | 2017-04-05 14:45 | 茶臼山動物園 | Comments(4)
モモコと最初はふきのとう

茶臼山動物園で暮らすウォンバット、モモコ
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たくさん積もっていた雪は溶け、出てきた地面はまだ何もなく土の色ばかり
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それでもどこかに確実に、そっと春の訪れ見えてくる
そんなウォンバット達の庭
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探せばきっと見つかる春のこと
みんなに季節の移り変わりをお知らせしていく小さな手がかり
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柔らかくてほっと優しい緑色
それは春の始まり、自然の色
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晴れた日、日向はぽかぽか陽気
光と影と、その境い目はっきり紫外線
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モモコの背中に陽があたる
ゆっくり身体が温まればみんな少し眠くなる
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少しして歩き出したモモコ
眠ってばかりはいられないと、爽やかぽかぽか気持ちも歩く午前中
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スミレはスミレらしく隣でいつもの毛づくろい
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モモコもふと少しだけの毛づくろい
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朝から大勢のお客さん
春の動物園はどこでも賑やか笑い声
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モモコ、ガラスの向こうの春に気づく
みんなの服は色とりどりで可愛いものばかり
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ぽかぽか陽気、明るく晴れて強めの太陽紫外線
冬がしてきた春の準備、今度は春がしていく夏の準備
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お花を咲かせて次の緑へ
そんないつもの春のこと
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庭の隅にふきのとう
最初の花はふきのとう
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匂いを嗅いでそっと触れ
春を感じたふきのとう
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食べる食べない考えた
そんなかわいいふきのとう
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「雪が溶けるとすぐに春。私もスミレちゃんもそのことだけは知っている」
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「土ばっかりに見えるこの地面。どこかに、ほんとはそこいらじゅうに春の手がかりあるんだよ」
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「スミレちゃんも探してる。きっとどこかに“スミレ”も咲きだしているのかもね」
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「チャタロウさんのお庭が一番自然。眺めてみれば季節がわかる」
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「ほら、みんなにも見えるかな」
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「向こうにはたくさんのふきのとう。綺麗な緑が増えてってるね」
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「春の色が見えるかな、春の香りはわかるかな───みんなに季節がわかるかな」
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「必ず感じてもらえるはず、動物園で自然を眺めて必ず感じてくれるはず」
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「お散歩してれば私にはたくさん見えるから、たくさんたくさん見つかるから」
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「春の始まり、どんなとこにもどこにでも───」
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「ほら、ここにも小さなふきのとうがいっぱいだよ」
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「かわいいね」
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「食べてみようかどうしようか、もったいないかな美味しいのかな」
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「えいっ」
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「ふきのとうはやわらかくていい匂い」
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「でも、やっぱり食べちゃ駄目みたい」
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「もう食べるのはやめておこう……」
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「ふきのとうに悪いことしちゃったかも」
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「ふきのとう───ごめんね」
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「なんかあくび出た。眠いのは春だからってわけじゃない───ウォンバットだからだよ」
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「スミレちゃんは珍しくお外で眠ってる」
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「お客さんは笑顔だね。動物達と一緒、春が来て暖かくなってなんだか楽しくて、みんなみんな笑顔だね」
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「そう、優しい笑顔で動物達に会っていってね。みんな優しい動物達だから、そっと優しく会いに来てね」
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「愛情いっぱいあげるから、愛情いっぱいくださいね」
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「それが楽しい動物園、それで幸せ動物園───みんな傍にいたいから、優しい声を聞かせてね」
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「約束だよ」
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儚く健気にウォンバット
そっと静かに、そっと暮らす
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どこで会ってもみんな一緒
きっと野生でもただそっと
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そっと暮らすウォンバット
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ウォンバットの優しさに、動物達の優しさに一度気持ちが触れたなら、きっとみんな温かくなっていく
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きっとみんな優しくなれる
純粋過ぎる動物達の優しさに、強さを感じる季節の移り変わりに触れたなら、きっとみんな優しくなれる
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動物達の可愛らしさ、動物達の優しさを、ウォンバットはきっと教えてくれる
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優しい気持ちで会いに来たのなら、会って優しい気持ちになれたなら───
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モモコはきっと傍に来てくれる
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優しい気持ちに向かって、優しい気持ちをたくさん持って
傍に傍に
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モモコは優しい人の所へやって来る
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動物達はそっと静かに季節を眺めてる
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同じようにそっと静かに、そして優しく動物達を眺めていれば
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きっと傍へ───
動物達はそっと傍へ、みんなの傍へ来てくれる
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間にガラスがあっても柵があっても、たとえ距離が少しあっても
───それでもきっとみんなの傍へ
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動物達から愛情たくさん貰ったら、今度は動物達にそれ以上の愛情を───
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それできっと上手くいく
春夏秋冬、きらきらふんわり暖かい、そんな時間が過ぎていく
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日本で暮らす、日本で暮してきたウォンバットの中でも一番優しくて、一番人に寄り添っているのはモモコ
きっとモモコ
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そんなモモコに、貰える以上の愛情あげることができるのか
それはなかなか難しい
けどもし会いに行くのなら、もしもモモコに会えたなら───
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優しさ伝えていくように、持ってる限りの愛情全部モモコにあげていかないと───
モモコもきっと笑わない
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優しく優しく、温かく
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優しい気持ち、動物達に───





   

by bon_soir | 2017-04-04 14:45 | 茶臼山動物園 | Comments(8)
フクちゃん
五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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工事前のとある日
朝のフクちゃん
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何度か部屋に戻っていくけどまたすぐに出てきていたフクちゃん
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フクちゃんの庭、日陰ばかり
見ているお客さんもまた、日陰ばかりでとても寒い

小さな日向でじっとするフクちゃん
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眠いよね
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小さな日向
向こう側にはワインとワンダー
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なんだかちょっと羨ましい
二人の庭は日向が多い
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そしてなにより、二人は幸せそう
毎日毎日、それはそれは幸せそう

フクちゃん木に足を乗せる
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少し不安定
この木は少し不安定
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ワインとワンダーの笑い声、楽しそうな会話が聞こえてくるね
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なにより二人は温かいね
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小さな日向でだんだん身体が温まる
ついついあくびが出てしまう
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地球は回る
自転する
小さな日向も動いていく
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合わせて移動
日向に合わせて移動しなければ寒くて寒くてしかたない
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小さな日向でだんだん身体が温まる
ついついあくびが出てしまう
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あくびの終わり
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気持ちいいね
そんな朝だね
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なんだか少し寒い
そんな冬の終わりの朝のこと
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小さな日向でだんだん身体が温まる
ついついあくびが出てしまう
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小さな日向は今日もまたいなくなる
そっと隠れ、そっと離れてまた後で
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工事前
ブルーシートを気にしてました
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工事終わってよかったね
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頑張れフクちゃん




   

by bon_soir | 2017-03-01 11:00 | 五月山動物園 | Comments(4)
ワインとワンダー、まだまだ続く物語
五月山動物園で暮らすウォンバット、ワインとワンダー

工事が本格的に始まる前、冬の終わりかけの少し暖かい日
ワンダーは穏やかに微笑み、どこか名残惜しく感じる朝を漂い始めていました
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「この風景がもうそろそろ変わるんだね───」
ワンダーはわかっていました
長い間過ごしてきたこの庭が変わる日がすぐそこだということを
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朝の日差しがウォンバット達を少し温め、ときおり吹くゆっくりとした風がまた少し身体を冷やす
そんな晴れた冬の朝
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庭を散歩して眺めていると、なぜだか色々な風景が時々目の前に表れます
懐かしい声が耳の傍で、そして少し離れた所から聞こえてきます
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ワンダーはその度に足を止め、その懐かしい姿を目で追い、聞こえる笑い声に耳を傾けました
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全てはこの庭で過ごしてきた日々の記憶
嬉しいこと、悲しいこと
楽しかったこと、寂しかったこと
そんな全部のこと
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ワインと一緒に笑って、そして泣いた
───二人と五月山動物園の物語
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この風景が変わる前にその物語をもう一度読み返すような、そんな不思議な時間をそっと過ごす
そんなワインとワンダーの、そんなある日の朝のこと
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「ワンダーさん、おはよう」
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「朝ご飯、美味しいかい? たくさん食べられているかい?」
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「美味しく、ちゃんとたくさん食べられているなら安心だ。なんの不安もない」
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「ワンダーさん、気がついているんだろう?この風景がもう少しで変わっていくことを」
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「気がついているんだろう?サツキとサクラ、そしてティアやアヤハの姿も今ぼんやり、そっと見えていることが、ね」
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「そうだ───全ては僕達の記憶の中のこと」
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「───僕ら二人の物語だ」
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「色々なことがあった。楽しいこと嬉しいこと、悲しいこと寂しいこと───本当にいろんなことがあったんだ」
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「ワンダーさん、僕はね。二人でいたから良かったんだと思うよ、一緒に笑って、喜んで───そして一緒に涙を溢してこれたからね
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「一人だったらね、きっともっと味気なく、そしてもっと辛かったはずなんだ───物語はすぐに終わってしまっていたかもしれないね」
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「そうだよ、ワンダーさんと僕の物語は二人だからこれからも続くんだ───」
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「まだまだ途中、終わりなんかぜんぜん見えてこない、そんな物語がね」
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「これからもずっと続いていくんだ」
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「ヒーローは僕、ヒロインは君。いろいろあるけれど、最後は必ず傍にいる───そんな当たり前の物語」
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「それでいいよね、それがいいよね───大丈夫僕ら二人、ほら、わくわくしてる
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「サツキもサクラも、ティアもアヤハもみんな、みんなが動物園を見守っている、見守ってくれている」
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「きっと大丈夫。この物語はハッピーエンドだ」
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心配していたワンダーとワイン
ワンダーは部屋の前でも青草をたくさん食べ、不安はどこにもありません
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ぽかぽかとした陽気の中へ、走るわけでもなくそっと滑り込む
そんなワンダー
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なにより大切な「いつもどおり」
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光る朝日の光、ずっと変わらない陽の光
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ふわふわワンダーの毛がきらきら光る
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そのフェンスはもう無くなるよ
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それは寂しいけれど、必要なこと
人の都合で申し訳ない、動物達にそんなお願い
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動物達に頼ってばかり
そんなわがまま、そんなお願い
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ワンダーさんは穏やかに
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朝日の中で朝ご飯
穏やかな陽の光、穏やかなその笑顔
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ワインを癒やし、みんなを癒やす
小さな身体の大きな笑顔
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ワンダーさんの素敵な笑顔
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そんなワンダーさんをワインはずっと気にかけ眺めるフェンス越し
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それはいつものことだけど、やっぱり嬉しいワンダーさんを大好きな優しいワイン
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なるべく近くへ
なるべくなるべく、なるべく近くへ
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なるべく
近くへ
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かわいいワイン
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ワンダーさんが一度離れてしまっても大丈夫
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ずっと隣を気にしていれば大丈夫
ワインの時間はワンダーさんに捧ぐ、そんな愛情を生むための時間だから
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ワンダーさんの方からちゃんと傍へやって来る
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食べてる間も一緒だよ
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ワインはワンダーさんと一緒だよ
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きっと一緒だよ
ずっと一緒だよ
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ワインとワンダーいつまでも一緒
きっと、ずっと一緒───
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「───ワンダーさん、聞いてるかい?」
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「きっと無くなるフェンスにさ、秋の名残、冬が消しきれなかった物があったんだ」
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「ワンダーさんの大好きなイチョウの葉っぱさ。あの日のことを思い出すだろう、また物語の一部が浮かんでくるだろう?」
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「散歩してれば色々見つけるんだ。季節が変わっていく時はっきりとしていない部分、そんな曖昧なところをね」
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「これが“滲んでる”ってことなんだろうね」
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「そんな“滲み”が今は心地よいね。なんだか曖昧な方がいい、はっきりばかり少し冷たい気がするんだよ」
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「思い出だってそうさ。なにからなにまではっきり覚えていることばかりじゃないだろう?」
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「少しずつ滲み、曖昧になっていくことだってあるだろう」
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「その方が楽なことだって、いくつか思い出の中にあるだろう?」
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「わかるかい?物語はそうして出来ていくんだ」
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「嬉しいこと楽しいことはもっと大きく滲む、嬉しいこと楽しいことは暖かく周りを包むように滲んでいくんだ」
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「そして悲しいこと寂しいことを少し曖昧にしてくれる。そう、そっと包み込むように、ね」
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「こうして、いつのまにか物語は出来上がっていく。最後はハッピーエンド、全体はとっても温かい───そんな僕らの物語さ」
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「いつかどこかで読み返す、一緒に作った物語をいつか二人で読み返すんだ」
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「この物語はどこでだって読めるんだ。二人一緒にいる時はいつだって読めるんだ」
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「もちろん今だってそうさ。物語を作りながら僕達は読み返す。そんな途中───」
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「まだまだ続く旅をしているような物語、書くのは僕らさ」
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「そして読むのも僕ら。そんな僕らのお話、それが僕ら二人の物語」
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「今、物語は重要な場面を迎えたんだ。工事が始まり風景が変わるって言う大事な場面だ」
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「騒々しいのは嫌いな僕らだ。少し我慢をしなければいけないね」
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「慣れた風景がが変わること、寂しくて、でも少し楽しみだ」
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「ほらね、もう少し滲んでる。気持ちはやっぱり曖昧で、もう滲み出している」
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「あとはみんなが変わらず元気で、その変わった風景を一緒に眺めること。それだけでいいんだ」
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「騒々しいのを少し我慢。大丈夫、工事なんか上手くやってくれるさ」
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「ワンダーさん、知っているだろ。君には僕がいる」
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「君のことをかわいいと思ったあの日から、いつだって君の傍に僕はいる」
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「サツキもサクラも、ティアもアヤハも、どこか近くで見てくれてるさ」
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「僕ら二人の物語はまだまだ続く。まだずっと続いていく」
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「何ページあったとしても足らないよ、ぜんぜん足らないよ」
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「長い長いお話さ、どこかに書き留めるには無理がある」
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「だから僕ら二人の心の中に書いていく、それがいい」
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「僕が書き忘れたこと、知らなかったこと───それを君が僕に読み聞かす」
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「君が書き忘れたこと、知らなかったこと───それは僕が君に読み聞かす」
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「二人の物語だからね、それできっとちょうどいい」
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「ワンダーさん、いつか君はどんなお話をしてくれるんだい?」
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「ワンダーさん、君はどんなお話を聞きたいって思うんだい?」
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「いつかどこかで読んで過ごそう、ずっと二人で毎日毎日読み続けて過ごそうよ」
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「まだまだ続く長い物語、二人で暮せば終わりなんか来るはずないよ」
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「先のことは考えなくて大丈夫、きっと大丈夫。さっき言ったとおりさ───」
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「いつかの最後はハッピーエンド、全体が温かい───そんな僕らの物語さ」
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何事もなく工事が早く終わること
それを祈って───




   

by bon_soir | 2017-02-23 07:00 | 五月山動物園 | Comments(8)
ウォレスと人間の神様③

☆☆☆☆☆←前回よりの続きです
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「僕が頼まなければいけないのは───人間の神様だ」

いつもどおりの優しい笑顔に会い、いつもどおりの楽しい日々を過ごしたい
「特別嬉しいことは必要ない、ただこれまでどおりいつもどおり───」
閉園後、一度部屋に戻ったウォレスは今日お昼寝をしているときに見た怖くて寂しい夢のことを思い返し、“これからもいつもどおりに──”ということだけを願うように考えていました
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そうして考えついたのは
「人間の神様にお願いすること」
そのことでした
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「ウォンバットのことはウォンバットの神様にお願いしている。今の飼育係さんとずっと一緒に過ごせるようにお願いするには、きっと人間の神様にお願いしなくちゃいけない───」
何度も頭のなかでそのことを考え、何度か小さな声でそのことを呟いた
そんなウォレス
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大きな月が夜空に浮かぶ冬の寒い真夜中、ウォレスは一人そっと外へ出ました
澄んだ夜空には月だけじゃなく、たくさんの星が動物園をそっと照らし、どこか動物達を呼んでいるようでした
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綺麗な夜空の下、穴を掘り始めたウォレス
ウォレスはウォンバット、木には登れないけど穴を掘ることができます
静かな夜、ただ静かに“さっさっさっ”と穴を掘り続けるウォレス
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「人間の神様に会ってお願いをする、それはどういうことなんだ。僕はどうすれば人間の神様に会えるんだろう───」
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穴を掘っていた手を一度止め、ウォレスは夜空を見上げました
東の空は光で滲み始め、不思議な色で朝が近づいてきたことを知らせています
「寒いね」
冷たい地面に穴を掘り続けたウォレスは少し前から泥で汚れ、かじかんできていた自分の手を一度見つめ寂しそうに微笑み、温かい干し草のベッドが待つお部屋へと戻っていきました
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「また朝になれば飼育係さんが迎えに来てくれる、眠っている僕を起こしに来てくれる───」
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ウォレスはそっと目を閉じ、すぐに夢の中へと滑り込んでいきました
「飼育係さん、これがオーストラリアだよ」
小さな声で寝言を言ったウォレス
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明け方から朝に見ていた夢
それは夜の動物園で見る星を100倍にもしてぶちまけたような星空の下、大好きな飼育係さんと一緒にオーストラリアの高原を散歩してまわる、そんな夢でした
もちろんひときわ明るく輝く南十字星も二人の目にはそのまま輝いています
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「最高の気分だ」
動物園にはすっかりと朝日が登っていましたが、ウォレスはもう一度寝言を言い、楽しい夢を見続けていました
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夢の中で飼育係さんがウォレスを呼びます
「ウォレス、ウォレスっ!」
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「ウォレス」
その声はそのまま眠っているウォレスを呼ぶ声へと変わっていきました
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「朝だ、ウォレス」
そのいつもの優しい声に起こされたウォレス
少し寝ぼけながら庭へ向かい、ふと立ち止まり晴れた空を見上げ、ウォレスを待ついつもの笑顔を見つめます
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「良かった、今日もいつもどおりの朝だ」
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「そう、またいつもどおりの一日が始まる───」
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ウォレスは毎朝と同じように壁を見て、そして土管へと向かいます
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「今日は昨日よりも少し暖かい」と呟き、とことこと歩くウォレス
いつもと少し違うのは動物園を歩く人の中に“人間の神様”を探すこと───
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少し探したくらいでは見つかりません
そもそも今、人間の神様が傍にいるのかいないのか、ウォンバットのウォレスには全くわかりません
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「この土管の向う側に神様がいればいいのにな」
ウォレスはそう言って、いつものように土管の中に入りました
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「神様に会うためには、そしてお願いをするためには、やっぱりお行儀よくしていた方がいいかもね」
そう考え、はみ出た干し草を集める
そんなウォレス
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全部土管の中へ───
それはお昼寝も気持ちよくするためには重要なこと
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丁寧に丁寧に
手前から奥の方へと、丁寧に丁寧に
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そして今日もお昼寝の間の夢の中
温かい干し草に顔を埋めて夢の中
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テポリンゴ達の声もだんだんと小さくなって夢の中
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ウォレスはいつものように土管の中で夢の中
きっと心配なんていらない、そんないつもどおりの動物園でいつもどおり夢の中
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夏の虫、虫の声に代わり聞こえてくるのは渡ってきている鳥の声
少し冷たい冬の風、空気を澄ませる冬の風
風と一緒に空は澄んで、動物達は青い世界に包まれる
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「ウォレス、ウォレス」
いつものように飼育係さんがウォレスを優しく起こす優しい声がしました
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すぐに目を覚ましたウォレス
「やあ、今日は少し早いんだね。朝の夢が途中で終わってしまったよ」
そう言ったウォレスの顔は嬉しそうに微笑んでいました
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ウォレスが楽しむ動物園、ウォレスが幸せだと感じる動物園
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ウォレスと楽しむ動物園、ウォレスに愛情を、幸せを貰う
そんないつもどおりの東山動物園
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ウォンバットの神様がいるように、どこかに人間の神様がいてくれるなら
この小さな幸せがずっと続くように、ずっといつまでもみんなの幸せが続くように、と
ただそれだけを、お願いします
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人が幸せを祈るように、動物達も幸せであることを祈ります
いつもどおり、いままでどおり
ただそれだけの小さな幸せ
ただそれだけを、お願いします
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「今日は“ほうき”じゃないんだね。草を持ってきてくれたのかい?」
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「みんなにとっての幸せってどんなこと?僕にとっての幸せってこんなこと」
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「好きな人の笑顔を見て僕も笑う、そうやってただ毎日過ごす。今日も明日も明後日も───」
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「僕の幸せって、ただそんなこと」
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「飼育係さんが干し草を撒く。新しいふかふかの干し草だ」
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「僕は干し草を土管の中に集める。また、もっともっと、あるだけ全部集めていく」
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「干し草と一緒に集めるのは愛情だ」
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「みんなになら僕の言っていることがわかるだろ」
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「えっ、反対側から出ちゃってるって?」
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「ああ、本当だね……」
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「大丈夫、少しくらいどうってことない」
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「飼育係さんがたくさん持ってきてくれたんだ、大丈夫」
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「干し草は潤沢だ」
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「一緒に集めた愛情もね、もちろん潤沢だ」


干し草が少し多いこと
それ以外何も変わらない、みんなが望むいつもどおりの一日
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眠っているといつの間にか閉園の時間
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目を覚ましたウォレスはすぐに部屋へと戻っていきました
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「人間の神様、聞こえているかい?どこかで聞いてくれているかい? 今日一日、特に何も無いような一日だった。ただの冬の一日さ」
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「これでいいんだ、これだけでいいんだ。このくらいでも望んじゃだめかい? お願いしちゃ駄目なのかい?」
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「いつもどおり、何も変わらずいつもどおり、こんな日々はずっと続いていくんだよね?」
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「続けさせてくれるんだよね?」
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「特別美味しいものを食べさせろとか、そんなことは言わないよ」
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「草だけでもいいんだ」
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「眠る場所も土管でいい。いままでどおりだって言っただろ。あの土管は大切な物だ」
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「人間の神様、ウォンバットの声は聞こえるかい? 変わらないいつもどおりの毎日を、ずっと、これからも───」

「ウォレス、何を話しているんだ?」
ウォレスが呟いていると、大好きな飼育係さんが家に帰る前にウォレスの様子を見に来ていました
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見上げればいつもの優しい笑顔
「あぁ、ごめん。なんでもないよ」
ウォレスは首を少し横に振り、微笑みながら飼育係さんの目を見つめます
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「そうだ、これから僕と一緒にオーストラリアに行かないかい?」
ウォレスがそう聞くと少し驚いて、飼育係さんが笑いました
「今からかい? そんなこと、できたら楽しいだろうね───」
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「本当さ、僕はからかってるわけじゃない。嘘を言ってるわけでもない───本当のことさ」
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「オーストラリア大陸へ、行こう。僕と一緒に、今から、ね」
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「いいね。行こうか、ウォレス」
飼育係さんは今までで一番優しい顔で微笑みました
ウォレスも微笑んで頷き、「着いてきて」と一言言って歩き出しました
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「オーストラリアへは土管のトンネルを抜けていく。知っているかい?庭にあるあの土管はオーストラリアと繋がっているんだ」
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「行こう、僕と一緒にオーストラリア大陸の旅に出かけよう」
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「わくわくする気持ち、それだけあれば旅の準備は出来ている」
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「優しい人、大好きな人。僕と一緒にオーストラリア大陸へ旅に行こう。土管のトンネルを僕と一緒にくぐり抜けて出かけよう」
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「ちゃんと帰ってくるから怖くない。優しい人、みんなを僕はオーストラリアへと連れて行く」
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「それが僕の役目だ」
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by bon_soir | 2017-02-10 11:00 | 東山動物園 | Comments(8)
ウォレスと人間の神様②
☆☆☆☆☆←前回よりの続きです
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「“ほうき”だ───」
───いつもと同じあの“ほうき”が目の前で動く
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夢の中にいるのか、もう目は覚めているのか───
どっちなのかわからなくなっていた僕は“いつものように”手を伸ばす
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呼ばれるように、迎え入れるように───求めるように
手を伸ばし、起き上がり、そして近づきさえすれば“ほうき”は僕を気持ちよくしてくれる
───そのはずなのに
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「待ってくれよ」
僕が追いかけてもなかなか手は届かない、僕の身体は土管から出ようとしない
“ほうき”を動かす人は黙っているまま、何も言わない
辺りからは誰の声も聞こえない、なんの音も聞こえてこない
───僕は怖くなってきていた
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「飼育係さん、どうしたんだい?意地悪しないでくれよ───」
僕は必死になって声をあげ、土管から出ようとした

“ほうき”を持つ人、僕と遊んでくれる、安心させてくれる優しい人───
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いつもの飼育係さんの顔が見たい、僕をその温かい目で見つめてもらいたい
『ウォレス』
あの声で呼んでもらいたい───
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“ほうき”を追いかけ、土管からなんとか出た僕は見上げたんだ
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そこにはじっと見下ろす光りの無い目があった
冷たく無表情で、僕を見ているようで見てくれていない
そう、どこも見ていない、動物達のことなんかきっと見てはいない
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「あなたは誰、あなたは誰なんだ───」


色々な人がウォンバットの庭を眺め、「寝てるね」と微笑んでいました
ウォレスはいつものように土管の中でぐっすりと眠っていたのです
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ウォレスが見た“ほうき”が揺れていた光景、見上げた知らない人、何もかも全て夢だったのです
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「ウォレス、ウォレスっ!」
いつもの声を聞いたウォレスは終わりかけの嫌な夢から醒めはじめ、楽しい動物園の日々の中へ戻ろうとしていました
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少し顔を上げた時、「ウォレス、起きたー!」と、喜ぶお客さん達の声も聞こえ、陽の光やフカフカの干し草の温かさがウォレスを包みます
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「ウォレス!」
その声が聞こえる方をそっと見上げると、大好きな飼育係さんの優しい顔がウォレスをいつものように見つめ、静かに微笑んでいます
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「ウォレス、起きたか?」
その声、その笑顔、動かしてくれるいつもの“ほうき”
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全てに愛情を感じたウォレス
ふと安心して、ついついと呟いてしまいます
「さっきのは夢だ、全部、全部夢だ───」
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何もかもが“いつもどおり”
いつもどおりの動物園の、いつもどおりの楽しい時間
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会いにきてくれるみんなのいつもどおりの顔、喜ぶ声
何もかもがいつもどおりの東山動物園
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それがウォレスの大好きな日々
ウォンバットのウォレス、ずっと過ごしてきた日々
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「ウォレス」
何度も呼びかけてくれるその優しい声
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そして優しく温かい手
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ウォレスは思います
「こんな日がずっと続いていけばいい。僕が生きている間、ずっとずっと続いていけばそれでいい───」
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「みんなもそう思うだろう? こんな楽しい日々が続いていけば、ずっと続いていけばって、ね」
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「動物園は動物達と人が交わる場所、繋がっていく場所なんだ」
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「楽しい声、優しい笑顔、色々なものが溢れる毎日がこの先ずっと、ずっと続いていけばいい───」
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「そう思うだろう?」
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「そのために、僕には、こんな毎日のためには必要なんだ」
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「僕は大好きなんだ───」
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「───この人、この飼育係さんが大好きなんだ」
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動物園にみんなの笑顔が溢れ、ウォレスもまたそっと眠ります
風も収まり少し暖かくなった、そんな冬の動物園
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今度は楽しい夢を見てウォレスはそっと眠ります
ウォンバットは穏やかに、動物園の動物達はそっと穏やかに眠ります
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会いにきた人に愛情を伝え、会いにきた人から愛情を感じて動物達は眠ります
幸せだって感じること、動物達のも人も皆、みんなが幸せだって感じること
それが楽しい動物園、それでやっと楽しく素敵な動物園

いつもどおりが続くこと、なにより幸せないつもどおりが続くこと
もっともっとを求めなくても大丈夫
ただこんな日が、いつもと同じ幸せな日々がただ続くこと───


夕方になりもう一度優しく起こされたウォレス
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根っこごと抜いてもらった草を少し食べ、きちんと目を覚ます
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そんなウォンバット、ウォレス
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もそもそと食べ、奥でお水を少し飲む
そんな閉園前の静かな動物園
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儚く健気に、ウォンバット達は暮します
今日も一日、地球は一回転
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また明日、また次の一回転のために、ウォレスは部屋へと戻ります
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部屋に戻ったウォレスは今日の一日のことを思い返していました
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いつもだったらそのうち、いつの間にか忘れてしまう夢
でも今日見た夢のことは忘れてしまっていけない
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なぜだかそう思いました
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「夢に出てきたあの人は誰だったんだろう───」
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「怖くて寂しい夢だったけれど、僕はそれでわかったよ」
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「僕にはあの飼育係さんが必要だ」
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「その人はここのところ赤い手袋をしている」
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「僕はあの人が好きだ」
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「あの飼育係さんが来てくれるようになってから、僕にもお客さん達にも笑顔が増えたんだ」
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「ただいつ今日の夢のように“違う人”が来るようになるのか、それがわからない」
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「ずっとあの飼育係さんと、大好きなあの人と過ごせるように、僕はそう願うんだ」
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「でもそれは人の世界のこと───僕が決めることじゃない、決められることじゃない」
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「そうだ、ウォンバットの神様にお願いしても駄目だろう」
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「───誰にお願いすればいい、誰に頼めばこの毎日は続いていくんだい?」
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「やっぱりそうか。そうだね、わかったよ」
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「僕が頼まなければいけないのは───人間の神様だ」



続く




   

by bon_soir | 2017-02-09 14:03 | 東山動物園 | Comments(2)
ウォレスと人間の神様①
東山動物園で暮らすウォンバット、ウォレス
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“土管王子”、ウォレス
ウォレスの普段の毎日は特に何も無い、そんな何も変わらない平穏な毎日
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でも別に退屈じゃない、そんな毎日
いつも見に来てくれる優しいお客さん、色々な動物達の賑やかな声
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そして、誰よりも大好きな飼育係さん
何よりも楽しい飼育係さんと遊ぶ時間
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「特に何も無い、そんな何も変わらない」
それはウォレスにとって、そして会いに来るお客さん、一緒に暮らす動物達
みんなにとっての安心でした
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眠っていてばかりだけれど、それがウォンバット
土管の中で眠っていてばかりだけれど、それがウォレス
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それが東山動物園、“とある場所”でのいつもの風景
ゆっくりと動物達の時間が流れる、いつも変わらない優しい毎日でした
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ウォレスの毎日は変わらない、動物達の微笑みは変わらない
もし変わることがあれば、それはたいてい人間の都合
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変わることがいいときもある、変わらないことがいいときもある
どんなことでももちろん、それは誰にもわからないことばかり
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晴れているけど寒い
そんな冬のある日のこと───
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「朝だ。良く晴れた、当たり前のように寒いけど爽やかな朝だ」
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「こんな日はそうだ───いつも会いにきてくれるお客さん、みんなの笑顔がガラスの向こうで待っている」
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「部屋から出た僕はゆっくりと歩き、一度壁を眺める」
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「眠っている間におかしな場所へ来てしまっていないかを確認するんだ。いつもの壁が見えればOKだ」
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「そして次にゆっくりと振り返る」
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「みんな、いつもの笑顔だ」
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「今日も僕に会いにきてくれてありがとう」
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「今、そっちへ行くよ」
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「いつもの土管のところだ。今そっちへ、僕は行くよ」
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「ゆっくりゆっくり歩くんだ。みんなに僕の顔が見えるように、僕はゆっくりと歩くんだ」
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「ちゃんと意識しながら、ね」
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「僕は今日もここにいる、ちゃんとここで暮らしてる」
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「当たり前だけど、当たり前のようなことだけど嬉しいね、当たり前で嬉しいね」
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「みんなも笑顔さ。嬉しいね、僕を見ている優しい笑顔───きっと日向よりも温かいのさ」
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「今日も変わらない、きっと何も変わらない一日になる」
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「───本当に嬉しいね」
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「今朝もみんなに会えた、いつもと変わらないみんなの笑顔を見ることが出来た」
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「さぁ、行くよ」
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「そう、土管の中へと歩くんだ」
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「大丈夫、夢を見るための準備はもう出来ている───僕は大好きな土管の中で眠るんだ」
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───今日の夢はどんな夢

そう呟きながら土管の中へと入っていったウォレス
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土管の中、ふかふかの干し草、ほんのり照らす“あったかライト”
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ウォレスはすぐに夢の中へと入っていきました
ガラスの向こう、お客さんの笑顔を眺めながらまぶたをゆっくりと閉じていきました
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今日の夢はどんな夢
ウォレスが見る夢、ウォンバットが見る夢はどんな夢───
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「僕はいつものようにお昼寝だった」
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「うとうとうとうと、ときおり目を覚ましたりしてまた目を閉じる。そんなお昼寝だ」
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「そうしているといろいろな声が途切れ途切れで聞こえてくる。気持ちよく眠る前に聞く言葉だ、ほとんど忘れてしまうけどね」
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「今日もそんな声が頭の中を通り過ぎていく。僕はいつも通り夢の中へとゆっくり向かっていく」
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「───今日の夢はどんな夢。そう、いつも通りのことだ。大好きな土管の中でお昼寝だ」
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「隣で暮らすテポリンゴ達が跳ねている。今日の夢は動物園の夢らしい───」
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「ただね、この動物園の夢っていうのは少し厄介なんだ。夢の話なのか本当の話なのか、わからなくなってしまう時がある」
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「みんなもそうだろう? 『なんだ夢か……』って思ったり『良かった、夢か……』って思ったり」
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「夢は夢らしい方がいい。世界中を旅するような、そんな夢らしい夢の方がいい───」
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「そんな夢を見れるのは、“夢を見るための準備”が上手く行った時、そんなときだけだけどね」
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「今日の夢は動物園の夢───本当に夢なのか、本当はもう目が覚めているのか、どちらなのかわからない」
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「そんな夢だ」
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「動物園の風景だ。夢の中でも特別なことは起こらない。ゆっくり流れていく時間、のんびりとした僕」
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「夢の中でも同じこと。僕に会いに来るお客さん達の優しい笑顔、楽しそうな声───温かい干し草の匂い」
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「だんだんと本当にわからなくなってくる。僕は今、夢の中にいるのかい?それとももう目は覚めているのかい?」
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「教えてくれよ、テポリンゴ。僕達は今、どっちの世界にいるんだい───」
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「今日は何故か不安なんだ。一度目を覚まそうと思っても上手く行かない───僕は今、どっちの世界にいるんだろう」
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「どっちの世界を散歩して、どっちの世界でお昼寝しているんだろう───」
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今日のウォレスは夢の中をさまよっていました
上手く進むことも出来ず、目を覚ましてやり直すことも出来ない
少し怖くて、なんだか不安でしかたない
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そんな今日のお昼寝
そんな今日のウォレスの夢
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夢の中にいるはずなのに、考えてばかりいるウォレス
夢の中にいるのか、もう目は覚めているのか───いつまで経ってもわからない
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“動物園の夢”
それはウォレスを悩ませ続けていました
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「あっ!」
僕は目の前で動く物に気がついた───
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「僕を気持ちよくする、あのいつもの“ほうき”がやって来た───」
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続く




     

by bon_soir | 2017-02-07 15:54 | 東山動物園 | Comments(6)
フクちゃん
五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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フクちゃん覗く向う側
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なんだか“そわそわ”
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何か言って微笑む
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撫でてもらった
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よかったね!
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by bon_soir | 2016-12-14 22:59 | 五月山動物園 | Comments(4)
フクとみんなの言葉
五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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まだまだ子供のように感じられるフク
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でも本当はもう立派な大人
大人のウォンバット
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五月山動物園で日本の四季を何度も感じ、そしてこれからも巡り続ける季節を眺める
そんなウォンバット
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悲しいこと寂しいことも何度も経験し、優しく、強くいつの間にか大人になった
そんなウォンバット
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ワイン、そしてワンダーから本当の優しさを、そして純粋な愛情の意味を
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アヤハ、そしてサツキから生きていることの意味、そして命の尊さを───
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みんなから教えてもらい、そして自然と感じ、学び
フクは大人になっていました
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フクには聞こえていました
フクには聞こえています
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優しい動物達の言葉が
そして飼育係さんやお客さん達の声が───言葉が聞こえています
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言葉を聞いて喜ぶ、笑う、楽しくなる
時には悲しく、寂しく、涙さえこぼす
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それがフク
それが動物園の動物達
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秋の終わり、冬の始まり
また季節が一回り
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もう戻せない時間と引き換えた、そんな想い
大切な言葉───
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「あの日、ワンダーさんは泣いたんだ」
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「イチョウの木が──と悲しみ、たくさんの涙がこぼれ落ちた」
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「あの日、たくさんの言葉を聞いたんだ」
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「ワンダーさんが悲しむ言葉、そんなワンダーさんをそっと包むワインさんのあったかい言葉」
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「そうだ、大切な二人の心の言葉、優しい気持ちの言葉だ」
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「どんなに不安なことを考えてしまっても優しい言葉さえあれば大丈夫、気持ちの言葉さえあれば大丈夫」
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「僕はワインさんとワンダーさんに、教えてもらっている。毎日、いつだって教えてもらっている」
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「いつもの優しい顔を見て、心が作る言葉を聞く───」
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「それで大抵のことは大丈夫」
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「本当にそうなんだ」
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「僕はちゃんと聞いている、どんな言葉でもちゃんと聞こえている」
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「あまり悲しい言葉は聞きたくないね」
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「動物達から、飼育係さん達から───そしてお客さん達から」
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「悲しい言葉までちゃんと聞こえているんだ、聞こえてしまうんだ」
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「出来ることなら僕は聞きたくないね」
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「でもね、嬉しい言葉、楽しい言葉、悲しい言葉と寂しい言葉、そして嫌な言葉。全部を聞いてわかったこともある」
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「結構上手く出来ているんだ───この世界はね」
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「嬉しい知らせ、楽しい知らせはゆっくりとやって来る。予告もあるしだんだんと近づいて来る」
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「わくわくする気持ちはその間にだんだんと大きくなってくる、長い時間幸せな気持ちでいられるんだ」
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「わかるかい?」
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「そして悲しいこと、寂しいこと───その知らせは突然やって来るんだよ、急に聞こえてくるんだよ」
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「心配が、不安が長い時間続かないようにね」
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「もしそんなことが長く続いたらどうだい? 辛くてしかたないだろう? 待っているなんて耐えられないだろう?」
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「上手く出来ているんだ」
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「あてはまらないこともあるだろうけどね」
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「僕はたくさんの言葉を聞いてきた。そして大人になった」
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「これからもたくさんの言葉を聞くだろう、そして大人の次は何になるんだろう───」
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「おじいさんか───その前にお父さん、なのか」
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「わからないね」
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「ワインさん、ワンダーさん、動物園の動物達、飼育係さんやお客さん達───」
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「これからもたくさんの言葉を聞くんだろう。みんなの言葉を、声を聞いていくんだろう」
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「そうだね、嬉しい言葉、楽しい声をたくさん聞きたいね」
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「ゆっくりと時間をかけて幸せだと思うその時まで、できる限り長い時間をわくわくと───」
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「そうだったのなら僕は幸せだ」
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「そして、あなたには聞こえますか?」
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「僕の声が聞こえていますか?僕の言葉が聞こえていますか?」
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「僕にはあなたの声が聞こえるんだ。あなたにも僕の言葉が聞こえるはずなんだ」
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「楽しいかい?嬉しいかい?───動物達の声を聞いて幸せだと少しでも思えるかい?」
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「そうか、ありがとう───」
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「ワンダーさん、知っているかい? あの大きなイチョウの木、今僕の傍にいてくれているよ」
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by bon_soir | 2016-12-11 10:45 | 五月山動物園 | Comments(4)