ワリの夏、始まる夏
ズーラシアで暮らすセスジキノボリカンガルー、ワリ
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午前のワリは台の上
すやすやすやすや、お昼寝すやすや
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夏の陽射しを避けるため、お気に入りの場所でこうして眠るため
すだれが着いた
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嬉しいね
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滑り止めかな
横木にロープ
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みんなワリの応援団
世界一のおばあちゃんを支えていく、一つ一つ
優しい一つ
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支えられてワリ
愛情感じて
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ワリ
キノボリカンガルーのワリ
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寒いのとても辛いけど
暑すぎるのも本当に辛い
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ワリの長い夏
ワリの暑い夏
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ワリの夏
始まる夏、しばらく続く夏
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食べ残していた葉っぱ、トコロ
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まだしなびてないね
美味しいね!
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食べる動物、眺めていれば
なんだか安心、今日も少し安心
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ワリ、元気
本当に元気
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夕方、閉園少し前
傾く太陽、でも陽射しはまだ強く
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夏が来たことみんなで感じる
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眺める景色
変わらない場所、変わっていく場所
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季節を感じて想う場所


季節の食べ物、たくさん持ってきてもらう
秋にワリは何食べる、冬にワリは何食べる
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春にワリは何食べる
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夏のワリは何食べる
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かわいいおばあちゃん
飼育係さんをそっと待つ
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今日もそろそろお別れの時間
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夏のワリ
いつもアマゾンセンターで待っていてくれるワリ
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閉園時間
差し込む光、西から光
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跳んだ
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# by bon_soir | 2017-06-16 14:20 | ズーラシア | Comments(2)
特別な日、特別な旅、特別な二人
上野動物園で暮らすホッキョクグマ、イコロとデア

このお話しは前回→☆☆☆☆☆の続きになります
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北極点から眺める北極星、それは僕の頭の上でそっと瞬き輝いていた
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同じ時刻、きっと大勢のホッキョクグマ達が世界中から眺めていたことだろう
同じ時刻、北への目印にして旅をしている仲間たちがいたのかもしれない
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そんな北極星の隣で僕を見守ってくれていたユキオさんとレイコさんが輝かせるあの星は、さらにゆっくりと瞬き
ときには強く、時には優しく光り、まだ大人になりきれない僕に話しかけてくれているようだった
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「あの光り方、あの感じ。デアも眺めていたのかな───」

帰りのモノレールの中、北極点への旅を思い出していた僕
冬の始まり、少し冷えてきそうな窓の外、星空見つめ、僕はふと呟く
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───毎日窓の外を眺めるデアの顔を綺麗な星空に重ね、ふと、そう呟いていた
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「そろそろ動物園に着きますね」
運転手の猿はいつもの小さな声だ
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その声は少しぶっきらぼうにも感じるけど不思議と聞き取りやすく、何故か優しく僕の心をそっと撫でる
見下ろせば街の灯───今回の旅はもう少しで終わりになる

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「デアはまだ眠っているのかな」と、またデアのことを考えた
思えば最初から最後まで僕の頭の中にはデアの顔があった

出発する時、北極の氷の大地に立った時、北極点を目指し歩いている間一人道に迷った時
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そして北極星を、ユキオさんとレイコさんの星を見上げている時───
ずっと、ずっとデアのことを思い浮かべていた
───僕にとってのデアは上野動物園で暮らす理由、その全てになっていた
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右側の窓の向こうにエミューの姿が見えた
「ただいま」と、小さく呟いてみた
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モノレールは東園駅へと静かに吸い込まれていく
「到着です」と、運転手の猿は停まったモノレールのドアを静かに開け、僕の方に振り返る
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「楽しかった、素晴らしかったよ。そして色々なことを考えた」
僕がそう言うと運転手の猿は軽く頷き、そしていつもより少しだけ大きな声で言った
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「また来なさい。特別だと思った日、大切だと思った瞬間、いつだって私は大好きなモノレールを走らせます。動物達を乗せて走らせるモノレール、それはとても素敵なものです。時には悲しい時、寂しい時もありますけどね」
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「そうだね、きっとまた来るよ」
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僕がそう言うと運転手の猿は一度大きく頷いて、すぐに猿山に向かって走り出した
その背中は小さいけれど暖かい
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「ああ、そうだイコロ君。その時はまたフクロウから切符を貰ってくださいね」
と振り返って最後に一言
「あぁ、わかってる。今日はありがとう」と、僕が言うと、柵を軽く飛び越え運転手の猿は猿山へ帰っていった
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───僕も早く帰ろう
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明るくなり始めた東の空、気の早い小鳥の賑やかな声が遠くの方から聞こえていた
北極圏ほどじゃないけれど、やっぱり少し冷えてる夜明けの時間
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なんだか急に眠くなってきた僕は東園駅からホッキョクグマの家に向かって少し急いで歩く
空を見上げて大きく息を吸った
朝日の明るさで星はもう見えない、朝の月がぼんやり大きく街の建物のすぐ上にただ浮かんでいた
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『キッ』と少し音がするドアを開けてそっと部屋に入る
デアの部屋の方へ視線を静かに動かすと、目を覚ましていたデアは僕のことをじっと見つめている
入ってくる所から全部見られていたのかもしれない
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二人目を合わせて何秒間───すっ、とデアの姿は見えなくなる
どうやら床で横になったようだ
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壁を背にして座った僕はふと部屋の天井を見つめた
するとその天井は急にどこまでも広がり僕を囲む
無機質な色、風合いは青い夜空に変わり、北極点から見上げた星空、北極星が真上に輝くあの星空が部屋一面に広がった
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僕の身体は宙に浮き、部屋の星空へと吸い込まれていく
「夢への入り口───今日はここ、こんなふうなんだ」
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不思議な夢
不思議で楽しいホッキョクグマの夢
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ホッキョクグマの夢
大勢のホッキョクグマが北極点へと歩く夢
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北極点の夢
自転の芯棒そびえ立つ、あの北極点にホッキョクグマが集まり笑う
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そんな夢
なかなか覚めないそんな夢
深い眠りの僕が今、見ている夢はそんな夢───
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広がる青空、冬の空
アシカの声が大きく響く
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夢から覚めても僕はぼんやり、頭の中にはあの星空とデアのことばかり
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大勢のお客さん達が今日も僕等に会いに来ている
入れ代わり立ち代わり、すぐに過ぎていく人、長く見ている人
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一人のような人、二人で来ている人、大勢で来ている人
みんなそれぞれだ
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そんなお客さん達を眺めていて、僕はふと思った
───昨日一日、僕は動物園にいなかったはずなのに、なんでみんなは何も思ってないんだろう
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そういえば飼育係さんに会った時もみんないつもどおり、普通の朝だ
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あの時確かに運転手の猿は言っていた

『動物がモノレールに乗っていくこと、それは飼育係さんも知らない内緒のこと───』

そういうことなんだと
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聞いたときは深く考えなかったけど、こうして後から考えるととても不思議だ
「まあいいか」と、空を見上げ呟いた
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あの星空、輝く北極星の素晴らしさと比べたら、そんなことはちっぽけなこと
そう、ちっぽけだ
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冬の夕暮れ、それは凄く駆け足
動物園に閉園の時間が来るより早く陽は落ちて、いつのまにか増えてきた雲が空一面を覆ったこともあってか、辺りはもう薄暗い
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部屋へ戻るドアがいつものようにゆっくり開いて閉園の時間だといつものように僕に言う
動物園は今日一日何もなく、みんなただ穏やかに過ごせたようだ
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部屋に戻り夜を待つ
真っ暗になる少し前からデアはいつものように窓の外、いつもの夜空を眺め始める
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北極点への旅、あの素晴らしい光景のことをデアに話したかったけど、夜空に星を探し見つめるデアに僕は話しかけることが出来ない
星にユキオさんの姿を重ね、一緒に過ごしたその日々を想う時間───デアにとってきっと何より大切なその時間
───邪魔することなんて僕には出来ない
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長い時間、夜空を見つめるデア
「君はいつもそうだ───」

デアの心には星がはっきり見えているのか───今日も夜空は曇り空、目では見えないはずなのに
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気がつけばもう何日も曇りの日が続いていた
すっきりと青く高い空、澄んだ空気、綺麗に見えるようになった冬の星座も眺めることが出来ない
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ある日のこと
朝が来て目を覚ましたデアは空を見上げため息一つ、今日も肩を落としていた
今夜もこのまま曇り空───さみしげに思うこと、それはそういうことなんだろう
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僕等にとって気持ちがいい季節、冬はもう始まっているはずだった
雲の向こう、空はきっと青いんだ
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雲の向こう、夜空の星はとても綺麗なはずなんだ───
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デアが夜空を眺める時間はだんだんと短くなっていった
やっぱりどんなに想像力があったとしても、星の無い夜空は寂しいんだろう
雲の向こうにユキオさんとレイコさんが輝かせるあの星をいくら思い描いたとしても、きっと本当の輝きには勝てやしない
雲の向こうで輝いているはずなのに目で見ることが出来ないということ───きっとなにより寂しいんだろう
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窓から離れたデアの背中、悲しげなその背中を見た僕に不思議な力が湧いた───初めて「デア」と声をかけたあの日のように
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「デア」
この一言がまたやっと声に出た
初めて声をかけたあの日、その時よりも力強く大きな声で、僕はデアを呼び止めた
北極点から見上げた北極星、あの輝きが僕の心に力をくれる
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振り返り僕を見たデアの顔、涙に濡れてる綺麗な瞳
不思議な力に後追され僕の想いは声になり、驚くほどに次から次へと言葉になった
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「デア、この前僕は旅をした。上野動物園のモノレールで行く、動物達の素敵な旅だ」

「旅?」
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「そう、旅だよ。あまり長い旅じゃないけれど、僕は遠くへ行ったんだ。どこだと思う?僕が目指したのは北極点さ。全ての北の終わり、北が集まるただ一つの場所、それが北極点なんだ。北極点には何があると思う?僕も知らないことだったけど、北極点には地球が回転するために必要な芯棒が立っている。芯棒は地球をつらぬき、その端っこがはみ出して、高くそびえ立って見えるんだ。それは本当に大きな大きな芯棒なんだ」

「北極点───」
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「デア、僕は北極星が見たかったんだ。そう、僕が声をかけたあの時、君が毎日眺めていると言っていた星、北極星。この世界で一番大きく見えるかも知れない場所から北極星が見たかったんだ。モノレールの運転手さんから聞いた北の果て、それが北極点。世界で北極星に一番近いかもしれない場所、それが北極点。そこまで行ってデアの北極星、デアが眺める北極星を僕は探し、眺めてみたかったんだ」

「私の北極星───」
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「デアと同じ星を眺めたい───違うな、色々な意味で同じ風景を見たい、って僕の気持ち───少しはわかってくれるかい?」

「わかるよ、伝わるよ。イコロさんは今、とっても真剣だもの───」
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『キッ』と少し音がするドアを開けて部屋の外へ出た二人
イコロはデアを連れ、モノレールの東園駅へと歩き出しました
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それは曇ったままの重苦しい空の下、風一つ無い静かな夜のこと
饒舌だったさっきまでとは違い、イコロは少し緊張していて何故かやや早足
横を歩いていたはずなのに、いつの間にか歩くはデアの数歩前
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後ろで聞こえる足音、静かな吐息、微かに感じられるその体温
それは今まで感じたことの無い存在感となり、イコロをさらに緊張させていきました
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「大丈夫、僕は一度経験している。大丈夫、前と同じように星とホッキョクグマ達が僕等を導いてくれる───」
デアに聞こえないように小さく呟いたイコロ
歩いたまま一度振り向くと、ただイコロの背中を見つめ後を一生懸命についてくるデアと目が合いました
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「あっ」
つい声が出てしまったイコロは少し照れ、前に向き直すともうすぐそこにモノレールの駅が見えてきていました
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イコロは一度大きく頷いて、もう一度小さく呟きました
「大丈夫、きっと大丈夫───僕はデアを連れて行く。北極星を、デアの北極星を大切な場所で二人一緒に見上げるんだ」
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「止まったままのデアの時間をまた動かすんだ───」
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「フクロウさん、いますか?」
駅に着くとまず最初に券売機の前に立ち、イコロはフクロウの姿を探しました
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「あっ」
フクロウを呼んで数秒、暗闇に大きな丸い目が浮かんでいることをデアは見つけ、「ねえ、あそこ───」とイコロにそっと声をかけました
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二人に気がついたフクロウはパタパタと飛び、券売機のすぐ上、イコロとデア、今度は二人の前に止まりました

「良かった、今日もここにいてくれたんだね」と、イコロは一人小さな笑顔
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「北極点、北極点までの切符をください。今日は二枚、僕とデアのぶんです。切符を二枚ください」

イコロから行き先を聞き頷いたフクロウは券売機のボタンをそっと押しました
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すっと出てきた二枚の切符、それは前と同じように『北極点』と書いてある小さな切符
「デア、これを持って」と、イコロは切符を一枚デアに渡し、フクロウにお礼をしました
つられてデアもお礼をし、開いているドアに向かって思わず走り出したイコロの背中に可愛らしさを感じ、「待って───」と、後を追いかけます

デアは笑っていました
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静かに優しく、女の子らしく、そして可愛らしく
イコロと上野動物園のモノレールを見つめ、デアは笑っていました
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「君はまたすぐに来ると思っていました」
イコロがモノレールの中を覗くと、運転手の猿の小さな声がしました
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運転席に座ったままイコロに振り向くと、後ろにいるデアのことに気がついた運転手の猿
「デア、よく来ましたね」と、にっこりとした笑顔を浮かべ、イコロを見つめて頷きました
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「運転手さん、これ。また今日もよろしくお願いしたいんだ。ほら、デアも切符を渡すんだ」
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「『北極点』ですか。今日はデアも一緒の旅。なにより素敵な旅になりそうですね」
二人から切符を受け取った運転手の猿は受け取った切符を大切そうに袋に入れ、モノレールを動かす準備を丁寧に始めました
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「危ないですからね。さ、二人共、早く座ってください───」
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静かに上野動物園のモノレールは走り出した
僕を乗せて、デアを乗せて
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今日もエミューが見送ってくれている
「行ってくるよ」
僕は言う、声にはしないで心の中で
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上野動物園のモノレールはスピードを上げ、高く昇っていった
僕等の目には街の灯り、色とりどりの街の灯り
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デアはだんだん離れる街の灯りを眺めて微笑む
小さく一言「綺麗」と呟き微笑む
そう、それでいい───運転手の猿はうるさいのは嫌いなんだと言っていた
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動物園から大きな空へ
それが上野動物園のモノレール
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静かに聞こえるモーターの音
雲を抜けて星空へ、雲の隙間の青空走って、いつのまにか切符に書かれた目指す場所
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それが上野動物園のモノレール
それが動物達が内緒で乗ってる上野動物園のモノレール

運転手は猿だ───
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「デア」
街の灯りが見えなくなって、僕はそっと声をかけた
デアのお返事は無い
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見ればデアは眠っていた
子グマのように無邪気な顔で、お母さんのように優しい顔で
デアはモノレールにゆっくり揺られ、一人そっと眠っていた
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窓の向こう、夜空に浮かんだデアの顔
今はこうして、今日はこうして傍で微笑む
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どんな夢を見てるんだい
誰の夢を見てるんだい
夢に北極星はみえるかい
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僕も眠るよ
君の傍で僕も眠るよ───
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「イコロ君、もう少しです。北極点の近くまで来ましたよ」
運転手の猿が少しだけ大きな声で僕を呼ぶ
前と一緒だ
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身体を起こして覗いて見下ろす窓の外
これから歩く氷の大地
北極圏に僕等は着いた

───僕等、北極点まであと少し
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「本当にまたここでいいんですか?デアもいるのに───」
モノレールを地面に降ろし、ドアを開けた運転手の猿が訊いてくる
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「大丈夫、道ならわかるよ。この前歩いて思ったんだ。北極点はただ見ればいいってわけじゃない。この気持ち、どう説明すればいいのかわからないけどね───」
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運転手の猿とそんな話をしているうちにデアはモノレールを降り、夜空を見上げた

「凄い───」

そう一言呟き、あたり一面の星の中にいつも眺める星座を探す
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動物園から眺める夜空の何倍の星が輝いて見えるんだろう、星座を探すのもままならない
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でも僕にはわかる、北極星の光る場所、ユキオさんとレイコさんの星が光る場所
一度見上げた僕にはわかる

「デア、大切なものは自分で見つけるんだ。迷ったら僕が教える、僕が導く───そう決めたんだ」
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「私はここで待っています。二人で好きなだけ旅を楽しんできてください。二人にもし何かあれば私はわかります。その時はイコロ君達を探しに行くことにしましょう」

運転手の猿はモノレールを走らせることが大好きだと言っていた
表情はあまり変わらないけれど、楽しそうにしていることだけはわかる
そしてこの場所、僕とデア、二人のホッキョクグマがここにいるということ。それを大好きだったって言うユキオさんとレイコさんとの旅に重ね、その日のことを思い出しているんだろう

まだ全然ユキオさん達の歴史には足らないけれど、僕とデアもホッキョクグマだ
───上野動物園のホッキョクグマだ
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「明日の動物園はどうなるの? 私達がいないと飼育係さんやお客さん達がびっくりしちゃう」
デアは落ちついた小さな声で運転手の猿に訊いた
前回の旅で僕は気にも止めなかったこと
デアはしっかり者だ
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「一日と一日の間に“動物達だけの特別な一日”を増やしておくんです。飼育係さん達やお客さん達にはその一日は気がつきません。そうすれば旅を思う存分楽しむことができると思います。時間ばかり気にしていたら旅が素敵なものにはなりませんからね。みんな最初は不思議に思うかもしれませんね。でも私にはそれが出来るんです」
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この前もそうだったんだ、と僕は感心した。
不思議なことというのは必ずある、どこにでもある
そうだ、運転手の猿は凄いんだ───ちっぽけなんかじゃない
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「じゃあ行ってくるよ」
僕が言うと、「ああ、ちょっと待ってイコロ君、デア」と、僕等を呼び止める
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「さっきイコロ君は『道ならわかる』と言いましたね。そう、一度歩いたイコロ君なら道が確かにわかるはずだと思います。行き方がわかるなら後は大事なのがその途中、“旅の途中”が大事になるんです。ただ見ればいいってわけじゃないとも言っていたから安心していますけど、今一度イコロ君に教えましょう。旅に大切なことというのはゴールだけじゃありません。旅の途中にたくさんあるんです。道がわかるなら後は途中、何を見るか、何を聞くか、何に触れるのか───そして誰と何を一緒に感じるか」

運転手の猿は少し大きな声で話す
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「誰と何を一緒に感じるか、旅が二人以上の時、誰かと知り合う時───そんな時には大切なことです」
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僕は歩いて、デアの前を
僕は歩いて、北極星を正面に
僕は歩いて、北に向かい
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僕等は歩く、歩いてく
僕等二人、北極点を目指して歩く
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夜空を埋めるたくさんの星、どこを見ても丸い星空
振り返るたびに流れ星、す、す、すーっと流れ星
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北極点へ向かう空、向こうに見える星の輝き
なんでだろう、何故か本当に懐かしい
なんでだろう、何故か本当に暖かい
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なんでだろう、背中がいつもよりも大きく見える
「わかるよ、また伝わるよ。イコロさんは今、とっても真剣でとっても優しいもの───」
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「芯棒が見えてきた───あともう少しだ」
心の中でふと呟く
もうきっとデアも気がついていることだろう、遠くに地球が自転するための芯棒が見えてきた
空を見上げなくなったデア、何も言わず北極点を見つめているんだと思っていた
でもそれは少し違っていた
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芯棒が近づいてくるたびにデアの目には涙が溜まってきている
そしてそれは一歩一歩と歩くたびに、ぽた、ぽた、と落ち始めていた
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芯棒まで本当にあと少し、というところで僕も気がついた
「誰だろう───」
芯棒の下からこっちを眺めているような光が見える
───優しい光のホッキョクグマ
「あれはきっと、ユキオさんとレイコさんだ───」
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僕等は北極点に着いた
自転するための芯棒もユキオさんとレイコさんも目の前だ
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「……はい、元気です。元気で変わらずやっている、そんなつもりです」
デアはユキオさんと話しているようだった。
涙があふれた瞳をたくさんの星で輝かせ、嬉しそうに話を続けた

なぜか僕にはユキオさんの声が聞こえない
でもそれでもいいと思った
悲しく寂しいお別れで涙をこぼし続けたデア、そのデアが今こんなに嬉しそうに涙をこぼしてる
僕にはそれだけで十分だ
北極点まで二人で来れたこと、不思議なことでデアが笑顔を見せてくれたこと
僕にはそれだけで十分だ
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見上げた空には北極星
僕とデア、そしてユキオさんとレイコさんの上で輝く北極星
僕等を誘い、導き続けるそんな星
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北の果て
寒くないんだ、冷たくないんだ

北極点は温かいんだ
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「……大丈夫です。私にはイコロさんがいます。だからレイコさんと二人、また幸せにのんびりとしていてください。いつも見守ってくれているのもちゃんと感じています。ユキオさん、レイコさん。ありがとう、いつもありがとう───今日はさようなら」

ユキオさんとデア、二人の短い邂逅は終わった
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ユキオさんとレイコさん、二人は手を繋いだ
僕は二人にお辞儀をした───その時だ
「デアをよろしく、イコロ君。きっと君なら大丈夫だ。明日も明後日も───そう、何年後もね」
───僕にも聞こえた
優しくて大きなホッキョクグマ、ユキオさんの声が僕にも聞こえたんだ
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遥か空へ、あの星空へ
二人のホッキョクグマはあの星空へ

───デアが眺め続けた、あの星へ
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「あ、あの星は!───」
デアの驚きは声になる
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ユキオさん達が帰っていった星が強く輝いた
デアが見つめ続けてきた星“デアの北極星”が本当の北極星の隣で輝いているということにデアは気がついた
デアの瞳からたくさんの涙がもう一度溢れ出していた
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「デア、また来よう。ここに、北極点にさ。何度でも来ようよ。きっとここから眺める星が一番綺麗だよ」

「駄目だよ、ここには特別な日にだけ来よう。この先きっとやって来る、特別な日にまた来よう。ここは特別な場所だから」

「特別な日? 特別な日ってどんな日だい?」

「もちろん今日みたいな日」

「今日は特別な日になったのかい?」

「イコロさん、あなたは特別だって感じない?」

「感じるよ、感じるよデア───今日はとびきり特別さ」

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僕等の所にやって来る
きっとまた特別な日がやって来る
上野動物園で二人一緒に暮らしていれば必ず特別な日がやって来る
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今日は始まり、その始まり、まだまだ始まり
これからこれから、まだまだこれから
僕は明日を信じてる
今日を明日を明後日を、この先ずっと何年も───
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僕等は未来を信じてる
僕等はもっと笑えるはずさ
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ホッキョクグマの春はその特別、特別なんだ
僕等の春がやって来る
毎年必ず、冬の後にやって来る

特別な気持ちで心がいっぱい、そんな季節

特別な季節さ




      

# by bon_soir | 2017-06-15 06:13 | 上野動物園 | Comments(4)
ステップ
埼玉県こども動物自然公園で暮らすキリン、ステップ
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金沢動物園からお引っ越しして半年と少し
もう慣れたかな
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しゃがんで地面の草を道草
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しゃがみ方が変わらないステップのまま
変わらないことちゃんとあるから嬉しくて懐かしい
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金沢動物園では一緒に過ごしたジャンプもお引っ越し
少しの間に色々変わる、変わっていく
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一緒に写るのはマルかな?マリかな?
仲良く暮しているのかな
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変わらないステップ、変わる環境、変わり始めたステップの世界
元気で暮しているならそれでいい
それだけでいい
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大きくなった、ステップ




   

# by bon_soir | 2017-06-11 13:15 | 埼玉県こども動物自然公園 | Comments(2)
横になってるだけだけど
上野動物園で暮らすゼニガタアザラシ、ユカ
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去年生まれの野生由来
保護されて上野動物園へ
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そんなユカちゃん
この日、横になってるだけだけどかわいい
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すぐ頭抱えちゃう
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横になってるだけだけど、なんか色々やっている
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きっと色々考えている───そうなんだよね
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ベロ見えた
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何やっているのかわからないけどかわいいね
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笑ってユカちゃん
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何か気にしてユカちゃん
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どうしたの
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ふとした時、
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曲がった
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不思議だね
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横になってるだけだけどなんだか目が離せない
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そんなユカちゃん
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楽しいね!
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横になってごろごろ
楽しいね!
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横になってるユカちゃんに会いに行けば見せてくれる
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見せてくれる色々な顔、かわいい顔
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これはあくびかな?
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横になってるだけだけどこんなにかわいい
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横になってるだけだけど離れることが出来ないよ
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かわいいね
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# by bon_soir | 2017-06-10 13:02 | 上野動物園 | Comments(0)