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金沢動物園のおだやかな午後
おひるね中のヒロキです。穏やかな後ろ姿に、ほっとしたながらも、お顔が見えずにちょっとがっかりな日ようびの午後。
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あたたかいおひさまの日ざしがあふれていても、とけない雪がまだそこかしこに残るお庭には、大きな大きな穴。
この穴から今にもヒロキの楽しい笑い声が聞こえてきそうで、朝はきっと愉快なことがたくさんあったんだろうね、ヒロキ。
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白い毛のルビーくんもあいかわらずまろやかに。
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静かにお庭をお散歩中なのは、ホンシュウジカの女の子。アズキちゃんかな。
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バーラルのお庭もあたたかい日ざしが注ぎます。クィーンさんでしょうか、角が折れても優しくて気高いお顔です。
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足を止めるお客さんには頑張って顔を上げてみせていたイチローくんも、お客さんがいなくなると、うとうとうとうと。
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もちろんアノアのさつきちゃんも、あたたかいひだまりの定位置で、大好きな景色を眺めていました。
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春の香りがまざりはじめたお日さまを、いち早く楽しんでいた金沢動物園のどうぶつたち。
ほんの少しずつ緑色が出始めてきたお庭の中にとけ込んでしまうほど、本当に穏やかな姿です。
彼らの前を、ちょっとだけ薄着になった子どもたちが走り抜けていく様子は、微笑ましくも少しもったいない気がしました。
どうぶつたちが見せてくれるやわらかくてやさしい時間をのんびりと楽しむのは、大人たちの方が得意かもしれませんね。


さっきまでおひるねをしていたシロイワヤギさんが、ひょっこり立ち上がったり
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このところちょっと元気がなかったように見えたプロングホーンのブッチくんも、ほらこの通り。
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ブッチ! と声をかける前に、ちゃんとこちらを向いてくれました。
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小突きあってたワカメとモモ。写真は穏やかとはいいかねるけれど、不思議ななかよしはいつも通りです。
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いつもはおひるね三昧なアグアが、たくさんの雪が残るお庭でごきげんにお散歩をしていたのは、予想外でした。アグア、かわいいよ。
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そろそろヒロキも起きた頃でしょうか。少しずつ翳りはじめたおひさまを見ながらオセアニア区へ向かいます。


もぞもぞするけれど、ヒロキはお顔をあげてはくれません。
食欲より眠気がまさるおひるねです。きっと午前中にめいっぱい楽しい時間をすごしたのでしょう。
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なごりおしかったけれどこの日はこのまま、お顔を見ずに帰ります。こんな日もたまにはいいかな。またね、ヒロキ。
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今朝、日テレのzipで紹介されていたヒロキ。おそらくこの日に撮影されていたんじゃないかなと思います。とっても張り切ってたね、ヒロキ。

次に会う時には、こんなふうなやさしい顔のヒロキに会えますように。
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日本にいるウォンバットたちは、オーストラリアの彼らとは違い、さわったりかわいがったりはできないけれど
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みんなそれぞれ個性があふれでていて、目を離すことのできない、いとおしいウォンバットたちです。
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決してみんな若くはないけれど、大切に大切にお世話してもらいながら、気ままに毎日を過ごす彼らに
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優しい応援をしていただけたら、とても嬉しいです。


もうじき3月。あたたかい春はもうじきですね。2月はなかなか更新ができませんでしたが、来月はもう少しがんばります。
いつもみなさんのご訪問、本当にありがとうございます。
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by bon_soir | 2014-02-27 03:09 | 金沢動物園 | Comments(0)
冬のリス
リスといえば井の頭動物園のリスの小路ですが、上野動物園でも大勢のリス達が大騒ぎしています。
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ぎゅっとした手がとてもかわいいですね。

じっと見ている所を気が付かれました。
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かわいいですね、本当に。


リス達の所へは午前中早めの訪問だったので、わりと活発に動いていました。そして色々な物を食べていました。

この子は大きな松ぼっくりをもう一人と取り合って喧嘩の合間に大きな松ぼっくりから剥ぎ取って食べてます。
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松ぼっくりは美味しいみたいです。
カリカリと音をたてて可愛らしく食べて、時々キッキッと鳴いて喧嘩します。
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見ていて飽きません。


お腹はふわふわ。冬毛の頃は耳の毛も長く一番かわいいですね。
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クルミが一番おいしそう。
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かわいいリス達でした。
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ニホンリスはかわいいですね。



 

by bon_soir | 2014-02-20 22:59 | 上野動物園 | Comments(0)
フジと旅の思い出、2回目のモノレール
上野動物園にも大雪が降った日、マレーグマのフジはお庭から空を見上げていました。
次々と大粒の雪が空から降ってきて、あっという間にフジのお庭は雪で覆われ、真っ白になりました。
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フジはそっとつぶやきました。

「あの日の雪と同じだ。運転手の猿が円山動物園に降らせてくれた雪と同じ、白くて冷たい綺麗で明るい雪だ」

フジは毎日のように思い出しているあの日のことを今日はことさら細かく思い出していました。
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「僕の初めての旅はとても楽しい旅だった。忘れないよ」
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「大好きなお母さんと一緒に会いたかったお兄ちゃんに会いに行ったんだよ、静かで不思議なモノレールに乗ってね」

夏の終わりのとある日、街の灯とたくさんの星に照らされながら上野動物園のモノレールはフジとモモコを乗せて走って行きました。
ウメキチが暮らす円山動物園までモノレールは運転手の猿が静かに走らせたのです。
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そして静かにお行儀よくしていたフジへのご褒美に、たくさんの雪を運転手の猿は降らせてくれたのです。

それはフジとモモコ、そしてウメキチの3人にとってずっと忘れられない素敵な日になっていました。
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お庭に置かれたおやつを食べながらフジはあの日からずっと毎日その旅のことを思い出し、木の上に登って考えていたのです。
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「僕の次の旅はいつになるんだろう」


フジにとっての2回目の旅はどういう旅になるのか、フジにはわかりませんでした。
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初めての旅のように自分で行き先を決めることが出来るのか、それとも誰かに決められる旅なのか……
ただ考えていてもそれはわかりません。
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大好きなお母さんのモモコにもなぜか相談できないでいました。
フジは少しずつ大人になっていたのです。男の子のフジはいつの間にか甘えん坊の男の子ではなくなっていたのです。
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「そのうちだ、僕はお兄ちゃんのように遠くに旅に出ることになってしまうのかもしれない」
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「円山動物園で楽しそうに暮らしているお兄ちゃんに会って、僕の遠くに行く旅の不安は無くなった」

「運転手の猿がモノレールを走らせてくれるから、お母さんと会えなくなるわけじゃない」
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「だけど何故なんだろう、お兄ちゃんのような旅に僕はまだ出発したくないんだ」


「今まで暮らしてきた上野動物園のことは大好きだ。離れることは少しさみしい。少しさみしいだけなんだ」
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「僕は男のマレーグマだ。さみしいだけで怖いわけじゃない」
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「僕は強いんだ」


フジは体も大きくなり、お父さんのアズマのようにたくましい体つきになっていました。
立派な男のマレーグマです。

フジはお庭に積もったたくさんの雪を見つめ、あることを考えました。
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「いつどんな旅に出かける日が来ても大丈夫なように準備をしよう。後悔のないように準備をするんだ」
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フジは夜が来るのを待って寝室の鍵を開け、月と星、そして降り積もった雪が優しく辺りを照らしている外に出ました。

「上野動物園のみんなに会っておこう。みんなのことを記憶しておこう」
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フジは知っていました。円山動物園に行った時に気がついていたのです。
1度でも会った動物のことはずっと忘れないということを。

フジは夜誰もいない上野動物園の中を走り回りました。朝が来る前に上野動物園の中全部を回らなくてはいけないと思いました。
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まず最初にクマたちの丘をまわります。ホッキョクグマのデア、ツキノワグマのみんな、ヒグマのポンポロ兄弟に会いました。
「フジ君、どうしたんだい?こんな夜に」 とみんなが聞いてきます。
フジは答えます。

「準備をしているんだ」

それだけを言って、フジはまた走って行きます。
次はゾウのすむ森です。
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大きくなったフジよりもまだまだずっと大きなゾウたちにフジは少しびっくりしましたが、長いお鼻に触っていたずらをしました。
フジは大人にはなりきれていません。どんどん楽しくなってきました。
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色々なサルたちに会い、モノレールの運転手の猿のことを思い出します。
「運転手さんに会うのは最後にしよう」

フジはそうつぶやいて、五重の塔に向かいます。
途中、プレーリードッグ達に会い、ペッカリーの3姉妹とお話をします。
アメリカバイソンのグンマのことを聞き、少し涙が出ました。

「こんな後悔をしないように今日は全員に会うんだ」

フジはペッカリーの3姉妹にそう言ってまた走り出します。
すごいスピードです。
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五重の塔の下でQとナギに会い、小川のカモ達やニホンリス、カケス達、日本の鳥達に挨拶をします。
「僕がマレーグマのフジです」

フジは本当に楽しそうです。

キジや鳩達の前を通りながらパンダ舎へと向かいました。
昼間は大勢のお客さんで賑わうパンダ舎も、夜は誰もいません。
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フジは2人のパンダに会いました。リーリーとシンシン、フジより少し大きくて白と黒のかわいい2人です。
「パンダさんはどこから来たの?」

「中国っていう外国だよ」

フジは初めて外国という言葉を聞きました。そしてどういうことなのかを2人のパンダに教えてもらいました。
少し難しかったけど、地球は日本だけじゃないということを考えることができました。
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「僕は外国に行くかもしれない」

そうつぶやいて少しワクワクして、少しだけ不安になりました。

「上野動物園のモノレールは外国まで走れるのかな……運転手さんに聞こう」


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フジは東園を走り抜けていきます。フジの足跡が真っ白な雪に残り、フジの後をどんどん追いかけていっていました。
ワシ、タカ、フクロウの猛禽類の小屋を訪れ、トラとライオン、そしてテナガザル、賑やかなゴリラの家族の所をぐるっと回りました。
フクロウを見た時、切符をくれるフクロウのことを思い出しました。

バードハウスが見えてきました。
昼間は外にいるキバタンも夜はいません。
フジはバードハウスの扉を静かに開けてそっと中に入りました。
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鳥達はみんな寝ていました。フジはみんなを起こさないように注意しながら小さな声で挨拶をしました。
「僕がマレーグマのフジです」

「あなたは誰ですか?」
フジに後ろから声をかける動物がいました。コアリクイの子供、ヒナタちゃんです。

「僕はマレーグマ、マレーグマのフジっていうんだ。今は上野動物園のみんなに会っている途中。小さな旅の途中なんだ」

フジは自分よりずっと小さいコアリクイのヒナタちゃんに優しくお話をしました。
「そして、長い旅の準備をしている」


コアリクイのヒナタちゃんは小さな目を大きく開いてフジを見ていました。
「そうなんですね。あなたが羨ましい。私も大きくなったら外に、遠くに出てみよう。なんだか楽しそうなんだもん」

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「そうだね。きっと楽しいと感じるよ。そして大切なことだってわかってもらえる」
フジは少しお兄さんみたいに話しました。





フジはバードハウスを出てバクとカピバラさんに会い、その後は西園へと向かいました。途中、モノレールの駅がありましたが寄らないで西園に急ぎました。
モノレールを見送ってくれているあのエミューさんの姿はその時は見えませんでした。


橋の上からレッサーパンダに声をかけ、雪あかりに照らされた不忍池の遠くの島にペリカン達を見つけました。
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「ペリカン達に声は届かないな。それに眠っているみたいだ」
フジはペリカンに声をかけることを諦め、子ども動物園に向かいます。
ウシや馬達が出迎えてくれました。そして子ども動物園のみんなを曲屋に呼んでくれました。

羊達やトカラヤギ達、アヒルやニワトリ、七面鳥、フジのお庭の木の上にも暮らしているハクビシン。
ロバやブタ、ラマのラーマやアルパカのモコちゃんまで、子ども動物園のみんなが曲屋に集合しました。

「楽しい、なんだか本当に楽しい。動物園は、上野動物園は本当に楽しいところだ」
フジは今が夜なことも忘れ、曲屋でみんなと一緒に大騒ぎしました。
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「あと少しなんだ。僕は行くよ」
フジはそう言ってみんなにお別れをしました。

「フジ君は朝までに何をするんだい?」
ラマのラーマがフジに聞きました。


「僕は旅の準備をしている。いつになるかわからない旅だけど、準備をしておかないと後悔すると思うから」
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ペンギン達、フラミンゴ達、大勢のみんなが西園でも暮らしています。
カンガルー達やナマケモノ、ツチブタのヨシコとアルディー、タテガミオオカミ達、みんなに挨拶をして、一人一人をフジは記憶していきました。


上野動物園で暮らすアフリカの大きな動物達にもフジは初めて出会いました。
シマウマ、バーバリーシープ、カバのジローさんやコビトカバ達。サイやキリン、オカピ。
ゾウたちよりは小さくってもフジにとってはみんな大きな動物達です。

小獣館では逆にフジより小さいみんなに会いました。
ハダカデバネズミの大勢の家族とたくさんの色々な小さなネズミ達、マヌルネコやプレーリードッグ、ケープハイラックス達やミケリスさん。
フジは一生懸命にみんなのことを記憶していきます。
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爬虫類のみんなの所はとても暖かく、ここまで雪の中をずっと走ってきたフジの体を優しく温めました。
ここまで走ってきた疲れも少しなくなりました。
ハシビロコウさんも暖かいライトの下で温まっていたことを思い出しました。

体が温まったフジはアイアイのすむ森に行きました。
ワオキツネザルは寒そうにしています、フォッサに会い、暗い所でアイアイ達に会いました。

「あと少しで上野動物園全部、全部を回って全員に会えるんだ」
フジはそう声に出して言うと、少し嬉しくなりました。

東の空が少し明るくなってきています、星の数も減り夜明けが近づいてきていました。

ツノメドリや水鳥のみんなを記憶に留め、フジの上野動物園の小さな旅は終わろうとしていました。
その時、フジは池にある小屋のような所で佇むオオワシを見つけました。

「あの鳥に会えば最後みたいだ」
今まで走って上野動物園を回ってきたフジでしたが、そのオオワシのところへは何故かゆっくりと歩いていきました。

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「ここには一人で暮らしているんですか?」
フジは岸からすぐそばにいるオオワシに訊ねてみました。

「前は東園にいたけどね、もう何年もずっとここだよ」
オオワシは小さいけれどしっかりとした声で答えました。

「でも、今はここで一人。寂しかったりしないんですか? あっ、でもここには網や柵も無いから色々な所へ出かけることができますね」


「私はここからあまり離れることができない」
オオワシは表情ひとつ変えずに答えます。


フジは良くわからないまま続けて質問をしました。今日の大勢の動物達に会ってきたことがフジを少し饒舌にさせていたのです。
「じゃあやっぱり寂しそうです。僕は今日上野動物園を全部回って大勢に動物達に会ってきました。本当に楽しかったです。旅の準備をしていたんです。長い旅が始まる日も近いかもしれないから」

フジは得意気に話しました。

「オオワシさん、あなたもきっと楽しいと思いますよ。ここにじっとしていたってしょうがないじゃないですか。色々なものを見て回ったほうが素敵じゃないですか」


するといままで星空を見上げていたオオワシはフジの方を見てゆっくりと話しだしました。
「私はもう飛ぶことができないんだよ。たくさん歩くこともできないんだ」


「えっ?」
フジは予想もしていなかった答えに戸惑いました。


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「私は海の近くを飛んでいた時に銃で撃たれてしまったんだ。優しい人間に助けてもらったが、それ以来体が不自由なんだ。飛びたくてももう飛ぶことはできない」

オオワシは明るくなってきた空にうっすらと照らされながらフジの目を優しく見て話しました。
フジは失礼なことを言ってしまったと思い、自分が少し恥ずかしくなりました。


「飛べないことは寂しいよ。私は鳥だからね。でもね辛くは無いんだ」


「どうしてですか?僕は自由に歩けなかったり木に登れなかったら辛いかもしれません」
フジはオオワシの前にちょこんと座って話を続けました。きっと今日一番の大切なお話だと思い始めていました。


「私には以前自由に大空を飛んできた記憶がたくさんある。高い空から見てきた風景の記憶がたくさんある。それはとても素晴らしいものだ。君はマレーグマだ、大空を自由には飛べないだろう。だから君にこうやって話すことは申し訳無いんだが、空を飛ぶってことはとても素晴らしいことなんだ。綺麗な空は空気が違う、とても澄んでいて気持ちがいい。空だってとても青く見える、海もとても青く見える。そして地球はとても広い。上空から見れば遠くに綺麗な山々が見える、海はどこまでも続いている。どこにでも行こうと思えばすぐに行くことが出来るんだ。
飛べなくなった今だからこそ、飛ぶということ、そしてあの頃の記憶がいかに素敵なものなのかがよくわかったんだ。その大切な記憶があればそれだけでいい。その時のことを思い出すだけで私の頭の中は、そして見える景色はあの素晴らしい空からの物になるんだ。
ここから離れなくてもいい、飛ばなくてもいいんだ。目を閉じて思い出すだけでいい。今はすっかり歳をとってしまった、だけどあの素晴らしい日々を思い出すだけでいいんだよ。いつだって青春時代に帰ることが出来る。
それは幸せなことだ、わかるかい?」


フジは何も話すことができなくなっていました。
お母さんには教えて貰えなかったことを、いまこの少しの時間で教えて貰ったような気がしていました。


「君の青春はこれからだ、時間を無駄にしないでやりたいことを見つけなさい。見たいものを見にいきなさい。旅をするなら目的をもって旅をしなさい。ただゆっくりしたいだけの旅はおじいさんになってからだってできるからね、若い時代はそんなことをする時じゃない。君の今日一日は素晴らしい日だと思う。これで満足してもいけない。未来を諦めてもいけない。頑張りなさい、今日一日のことは素晴らしい日々のほんの一日だ。まだまだ不思議で素敵なことをたくさん経験できるよ」


フジはオオワシの話を聞きながらうなずいていました、真剣に少し涙をしながら何度もうなずいていました。


「夜が明けるよ、さあ行きなさい」
オオワシはそう言うとまた空を見上げました。たくさんあった星は見えなくなっていました。
朝が来るのです。

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フジはイソップ橋を駆け上がりました。
凄いスピードで走ったので目的地にはすぐに着きました。

東園側のモノレール乗り場です。


「運転手さん、運転手の猿さん、いませんか?」
フジは円山動物園に連れて行ってくれた運転手の猿を呼びました。いるかどうかもわからないまま、大きな声で呼びました。



「やあ、やっときたね」
駅に止まっているモノレールから小さな声が聞こえました。
運転手の猿は待っていてくれたかのようでした。


「運転手さん、僕は、僕は今日の夜―」
フジは抑えきれません。

「大きな声は出さないでくれ。私は静かなほうが好きなんだ」
運転手の猿はフジを落ち着かせ、話を始めました。

「君が夜の間中、そうさっきまで上野動物園の中を走り回って動物達に会っていた事は知っているよ。鳩達やフクロウに聞いた」
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「不忍池のオオワシに会ったんだろ?必ず君が会わなければいけない動物だ」


「会ったよ、たくさんのお話をしてくれた。僕はそのことを運転手さんに伝えたかったんだ」
フジは運転手の猿に静かに話しました。
「僕はこの前円山動物園に連れて行って貰って、もうそれで満足していた。もう次の旅がどこでもいいと思っていたんだ。だけどオオワシさんの話を聞いて考えたんだ。今はまだどこに行きたいのか自分ではわからないんだ。だけど必ず行きたい所を見つけるよ。見てみたいものを見つけるよ。だからまたモノレールに乗せてください。モノレールで連れて行ってください。おねがいです」

運転手の猿は少し微笑みながらいつものように小さな声で言いました。
「私はいつだって歓迎だよ。動物達みんなが行きたいと思う所に私も行きたいんだ。私はモノレールを運転することも大好きだからね」

「ありがとう」
フジはほっとしました。

「ちゃんとフクロウから切符を貰いなさいね」
猿はそう言うとなぜかモノレールの運転席に座りました。


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「さあ、フジ君、早くモノレールに乗りなさい」
猿は小さな声でフジを呼びました。

「え? でもフクロウもいないし切符を持っていないよ。僕はまだ行きたい所も決まってないんだ。それにもう朝だ、動物園が始まってしまう」
フジは少し困りながらモノレールに乗り込みました。


すると運転手の猿は前を向いたまま小さな声でフジに言いました。
「不忍池のオオワシともう一人君は会わなければいけない動物がいます。切符はいりません。今日の動物園のことは心配しなくていいです。この前と同じように昨日と本当の今日の隙間に“動物達だけの特別な一日”を増やしてあります」



そう言いながら猿はモノレールを静かに走らせました。ゆっくりと駅から離れて行きます。


「釧路の動物園まで行きましょう」




「釧路?釧路かい?」
フジは聞き慣れない地名に戸惑います。
さっき見た時はいなかったエミューさんがモノレールとフジを見送ってくれているのが見えました。




「ユキオ、ホッキョクグマのユキオです」
猿はそう言ってモノレールのスピードを上げました。空に向かってどんどん登っていきます。




「ずっと上野動物園で暮らしていたホッキョクグマのユキオに君は会わなければいけません」



フジを乗せた上野動物園のモノレールは雲を超えて空に近づき、釧路に向かっていきました。



「オオワシさんが見ていた空と地球はこんな感じだったのかな。本当に綺麗だ」
この前と違い広くて青い空と海を見たフジはそうつぶやいていました。




「ユキオさん」


フジはまだ見ぬユキオを思い描きました。
釧路まではどのくらいで着くのでしょうか。




2回目のモノレールで、フジは空を飛んでいる気分になっていました。
この景色のことはオオワシさんのように、ずっとずっと忘れないと思いました。




 

by bon_soir | 2014-02-15 20:54 | 上野動物園 | Comments(6)
はじめまして、タニちゃん!
ちゃっちゃ、ちゃっちゃと通路を跳ねる軽やかな音。
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美しくてとてもすてきなカステラ色の毛並みが、小さな小さな窓に近づいてきて、どきどき。
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はじめまして。キノボリカンガルーのタニちゃん! 
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大きな大きな海をこえて、オーストラリアのパース動物園からやってきてくれたタニちゃん。
ふくふくしたほっぺが愛らしい2006年12月17日生まれの7歳の女の子です。
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今はこうしてお庭をこの小さなお部屋から、いろんなところを点検したりながめたり。
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タニちゃんは、世界中が一環となって取り組んでいるセスジキノボリカンガルーの繁殖計画の大切な一員。
あわてて出て行ってケガをしたり、お庭が素敵すぎておうちに帰って来れなくなったりしないように……
今はまだまだ練習中なのです。
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お庭の木にやってきた、あったかそうなセーターを着た鳥さんや
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おとなりをテクテク闊歩しているエミューさんたち
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そしてたくさんのアカカンガルーさんたちは、タニちゃんの日本でのたいせつなおともだち。
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私たちも早くタニちゃんとおともだちになれますように。
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あたたかい日ざしがあふれる春がやってくる頃には、もっと楽しい様子のタニちゃんに会えることでしょう。
そのときまでは、しましまの網ごしのタニちゃんに、やさしい応援をお願いしますね。
by bon_soir | 2014-02-05 04:00 | ズーラシア | Comments(2)