カテゴリ:上野動物園( 151 )
イコロが見た北極星、デアが見ていた北極星
上野動物園で暮らすホッキョクグマ、イコロ
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このお話は前回→☆☆☆☆☆の続きになります
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エミューに見送られ上野動物園を出発したモノレールは星空の中に吸い込まれ滑るように走り続け、
そして今度は北極圏、月に照らされぼんやり輝く氷の大地に引き寄せられるように降りていく。
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運転手の猿はいつまでも静かに上野動物園のモノレールを走らせ、動物園を出発してからもあまり話はしなかった。
走り出してから一言二言ほど話し、そしてさっき『北極点の近くまで来ました───』と言ったっきり、また黙っていた。
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上野動物園のモノレールはスピードを落として地面のすぐ上を走っていた。
ときおり雪のような氷の粒が舞い上がるのが見える。
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───どこまでいくんだろう
星空の中を抜け出してからだいぶ時間が経った気がした僕は、運転手の猿に小さな声で訊く───運転手の猿はうるさいのが嫌いなんだ。

「あとどれくらいかかるんだい?」
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その声を聞いた運転手の猿は運転席の前の窓をちらりと上目遣いで見た。
きっと僕の顔が映っているんだろう。
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「そうですね、ではこの辺りにしましょうか───」

そう小さな声で一言言うと、上野動物園のモノレールは更にスピードを落とし、そして氷の大地の上にそっと停まった。
静かに動いていたモノレールのモーターの音が止まり、そっとドアが開く。
「さあ、着きましたよ」と、運転手の猿は僕の方に振り返る。
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ドアの外へ出た僕はまず最初に夜空を見上げた。
普段見る夜空とは何もかもが違う、僕一人を包み込むような力強い星空が広がっている。
「あぁ、凄いや───」
僕の口からふいに言葉が出る。
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傍で僕を見つめる運転手の猿の顔は少し微笑んでいる。
「どうかしたのかい?」と僕が聞くと、
「みんな同じ、だなと思いましてね」と、星空を見上げて言った。
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「ここへ来た、またはこんな星空を見た動物達はみんなイコロ君と同じような顔をして、同じようなことを言うものです。運転している間、ずっと考えていたんです───イコロ君はどんな顔してなんていうかなって、てね」
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「そうしたら想像通りの感じでイコロ君は星空を見上げた。それが少し可笑しかった、ってだけのことです」
運転手の猿は今までで一番楽しそうだ。
少し照れくさかった僕は少し慌て、少し早口で訊いた。
「北極点、北極点はどこなんだい?僕は北極点に行くためにモノレールに乗ったんだ」
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「実を言うと、北極点まではまだもう少しかかります。まだ見えているわけじゃありません」
あいかわらずの小さな声で運転手の猿は話す。顔はもう笑ってはいないように見える。
「またモノレールに乗れってことかい?」
僕は戸惑いを隠すように、なるべくゆっくり、なるべく静かに一言また訊いた。

運転手の猿はゆっくりと首を横に振り、指差しながらまた小さな声で話し始めた。
「向こうの方角です。ここから先はイコロ君、自分で歩いて一人で行きなさい。考えていた、モノレールを走らせながらずっと考えていたんです。なにも、星空を見上げた時のイコロ君の顔のことだけ考えていたわけじゃありません」
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「自分で、自分で歩く───」
運転手の猿が指差す方を僕はじっと見つめたけど何かが見えるわけじゃない。ただ氷の大地がどこまでも広がっている。
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「───いいですか」
運転手の猿はそう切りだし、静かに話を始めた。

「もう動物園からはずっと遠い所に私達はいるんです。モノレールを走らせれば北極点まではすぐに着きます。ただ、さっきも言ったとおり私は考えていた。イコロ君にとって一番いい形で北極点まで行くことということは、それはどんなことなのか、ってことをね。考えた結果が最後は自分で歩いて行く、っていうことなんです」

風も無い北極圏、たくさんの星はそれぞれがそれぞれに瞬くけど、当たり前のように音がするわけじゃない。
静かな静かな北極圏に運転手の猿の小さな声だけが聞こえている。

「少しの距離でも自分で歩き、一人でたどり着く。ただ誰かに連れられて行ってきたってだけじゃない、ということ。それだけでも意味があるでしょう。特にイコロ君、君は男のホッキョクグマだ。旅には冒険、素敵なことです。大丈夫だとは思いますが万が一迷いそうになってもその時は───きっと君を誰かが導いてくれることでしょう」
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───北極点に向かって長い時間、もう何時間も僕は歩いていた。
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ユキオさんの代わりになろうとなんて思っていない、僕が上野動物園のホッキョクグマだとと胸を張って言える日なんていつ来るのかわからない。
けどデアと一緒に暮らしたい、暮していきたい。勝手だけれどデアの傍でデアを支えていきたいと思っていた僕には迷いがなかった。
「きっと何かを感じることができるでしょう───」と運転手の猿は言った。
僕はもっとたくましく、立派な大人になりたい。

───そう、一人で北極点にたどり着く
大好きなデアの顔を思い浮かべれば大丈夫、簡単だ
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「日本も北極圏も今は冬の始まり、特に北極圏の夜は驚くほど長い。だから時間がかかってしまっても大丈夫」と、運転手の猿は教えてくれた。
だから最後まで頑張りなさいという、そんな小さな声のメッセージだ。
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───デアは今頃どうしているんだろう。
いつものようにデアの北極星を窓から探し眺めているのだろうか、それとももう夢の中へと入っていったのだろうか───
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ユキオさんのことを今日も思い出し、そっと涙を溢しているのだろうか───
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それとも、今部屋にいない僕のことを少しでも思ってくれてはいるのだろうか───
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圧倒的な数の星にも慣れてきた僕は、その星空を眺め考え出していた。
「そうだ、北極星ってどれだろう───」
一人でいる時、考えていることはふいに声になる。
でも今はまず先に北極点に行くことだけを考えなくてはいけないのかもしれない───そう、北の果てまでの冒険中だ。緊張感が無ければ僕自身の強さはきっと生まれない。
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夜は長く昼が短いと言っても少しずつ空は明るくなりだしていた。
もうどれだけ歩いたんだろう、僕はまだ北極点にたどり着かないことに少し焦りを感じ出していた。
早くたどり着かないと星も見えなくなってしまうかもしれない。北極星を見ることが出来なければここまで来た意味が無くなってしまいそうだ。

北の果てで世界中で一番大きな北極星を見る───それがこの旅の目的だ。
運転手の猿は元の場所で待っている、今僕は北極圏に一人、ただ一人歩くホッキョクグマだ。
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寂しくなるとデアの顔が頭に浮かぶ。
デアだけじゃない、お母さんやキロル、みんなの顔が次々に思い出されていく。
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「みんな、元気かな」
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流れ星が続けて輝き、明るくなりだした夜空へと次々に消えていく。
流れ星は見る方向見る方向で輝き流れている時もあれば、何故かなかなか目に入らない時もある。
星空の動きが止まり静かさがふと僕を包んだ瞬間、僕はやっぱり不安になった。
「星ばかり眺めすぎたのか───道に迷ったのかもしれない」
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「緊張感を───」と考えていたはずなのに、すぐに忘れてしまっていた僕はなかなか駄目な奴だ。
一度不安になると急に怖くなってくる。思えば一人でどこかへ行ったことなんか今まで無かった。
初めての引っ越しだってキロルと一緒だ。お母さんがいない寂しさもキロルと二人一緒だったから自然と乗り越えていたのかもしれない。

今、僕は一人だ。運転手の猿はモノレールと一緒に待っていてくれているのかもしれないけど、後戻りはしたくない。
僕は一人でもデアを支え、守ることができるホッキョクグマにならなくてはいけない。
“北極点には着かなかった” ってことじゃ恥ずかしくてたまらない。
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ふと見上げた星の一つが急に強く、明るく瞬き出した。
その星の色は白く、瞬くリズムはゆっくりと落ち着いていて、眺めていると何故か気持ちが落ち着いてきた。
明るくなり始めた空に雲が一つ浮かんで見える。その雲はホッキョクグマのような形だと僕は思った。
頭の中にデアの顔がまた浮かび、今度はその雲から声が聞こえた。
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『輝く星が見えるかい?その方向へ歩くんだ。後は君ならすぐわかる』
落ち着いていてどこまでも優しい声、その声は男のホッキョクグマだ───

「ユキオさん、かい?」
僕はふと声に出して、星の方へと歩きだしていた。
会ったこともないのに絶対にそうだと、ユキオさんの声だと決めつけた。

そう決めた瞬間、今の僕の顔は小さかった頃のように無邪気に笑っている、そんなことを感じだしていた。
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一回、二回、三回、四回……と星が瞬く。僕は何故か子供のように数を数えて歩いている。
「十回だ」と呟いて声がした雲の方に振り返った。
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もうそこにさっきの雲は浮かんではいなかった。
「ユキオさん」
僕はもう一度呟いた。
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ふと足元を見ると大きな足跡が一直線に続いていた。
僕でもわかる。ホッキョクグマの足跡、大きな男のホッキョクグマの足跡だ。
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───北極点を目指して歩いたホッキョクグマが今の僕一人ってわけじゃない。
野生のホッキョクグマ、日本の、世界の色々な動物園で暮らしているホッキョクグマ。
そして遥か昔のことまで考えることをしたならば、それはもう数え切れない数のホッキョクグマが北極点へと歩いたことだろう。
いまここにある足跡はそんな北極点を目指し歩いたホッキョクグマの足跡だ。
僕より少し前のことかもしれない、もしかするとずっと昔のこと、ユキオさんの足跡なのかもしれない。
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そうだ、今はこの足跡をたどるんだ。
仲間たちの、先輩たちのこの大きな足跡を追いかけて、僕は北極点まで歩いていけばいい。
僕は今一人だけど一人ぼっちじゃない。今もどこかでホッキョクグマは暮らしてる。
そして上野動物園にはデアがいて、ユキオさんとレイコさんが僕達二人をきっと見守ってくれている。

僕は歩いた、足跡をたどり星を時々見上げ、疲れているのに早足だ。
「デア、僕は北極点まであと少し、僕の北極星に会えるまであと少しみたいなんだ」

頭の中に浮かぶのデアの顔はいつのまにか優しく微笑んでいた。
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さっきよりもより明るくなってきた空に照らされ、ぼんやりと浮かび上がる柱のようなものが遠くに見えてきた。
高く空を突き抜けていくようにそびえ立ち、足跡もそこへと向かって一直線───

「北極点だ───」

僕は力を振り絞って走り出す。あと少し───そんな時はきっと誰でも走り出す。
早くそこまで行きたい、早くそれを見たい───それは当たり前の気持ちなんだ。
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遠くから見たとおり北極点には大きな棒が立っていた。ずっと上まで伸びていて真下から見上げるとてっぺんは見えない。
触るとほんのり温かく、小さくずっと振動している。
少し上には“N”と書いてあった。
注意深く辺りを見回すとこの棒に向かってたくさんの足跡が集まってきている。
それは色々な方角からここを目指したホッキョクグマ達の足跡だ───

───僕は今、北極点に辿り着いた

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「デア───」
そう呟いたときにはもうイコロは眠ってしまっていました。
北極点にそびえ立つ“地球が自転するための芯棒”にもたれかかり腰掛けて、幸せそうにそっと微笑み、すぐにイコロは夢の中。
たくさん歩いて身体は疲れ、いつのまにか夢の中。

今日の夢は何の夢
今日の夢はホッキョクグマが笑う夢
今日の夢は世界中のホッキョクグマが北極点で集まりみんなで笑う、イコロの夢はそんな夢
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静かな静かな北極圏、北極点にそびえ立つ大きな芯棒の下
一人眠り続けたイコロ。

「おはよう、イコロ君」
夢から醒めそっと目を開くと、目の前には運転手の猿がいました。上野動物園のモノレールもしっかりと側まで来ています。

辺りを見回し「おはよう」とだけ少し寝ぼけた声で言うイコロ
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「そうだ、北極点に僕は今いるんだった。ありがとう運転手さん、ここまで来てくれたのかい?」

「最初からイコロ君が到着する頃を見計らって迎えに行くつもりだったんですよ。でも先に着いてしまい、少し待っていました。イコロ君がなかなか来ないから少し心配しました。少し道を外れていたようですが、よくここまで辿り着けましたね。きっと導きがあるとは信じてはいたのですが───もう少しで探しに行こうと思っていたところです」
運転手の猿はイコロに近寄り、そう言って優しく微笑みました。

「イコロ君が気持ちよさそうに眠りだしたから声はかけませんでした。きっと疲れていたんでしょう。でもその分いい夢を見られたんじゃないですか?」
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「なんだ、ずっと見られてたのか。僕は確かに道に迷ったんだ。星があまりにも凄くてさ、ずっと上ばかり見て歩いてたら変な方へと向かってしまったみたい。でもね、そのおかげなのか僕は声を聞いたんだ。その“導き”っていうのかな───きっとユキオさんの声だ」
イコロは頭のなかに残るユキオの声を何度も思い浮かべ、落ち着いて話していきました。

「ユキオさん、ですか?」

「そうだよ、あの声はきっとユキオさんの声だ。わかるんだ、今回はなぜかね」
頷く運転手の猿の顔を見てイコロはそっと微笑みました。

「それとさ、足跡があるんだよ。先にここまで来た大勢のホッキョクグマの足跡が、地面にしっかりと残っていたんだ。途中からはその足跡をたどって歩いたんだ」
薄っすらと残るたくさんの足跡を指差してイコロは笑いました。
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「でもモノレールには気がつかなかった。きっとこの棒しか目に入ってなかったんだろうね。こんな凄いものがあるなんてさ───」
そう言って見上げるイコロ。ずっと眠っていたせいかすっかりと青空が広がり、星は見えません。
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小さな声で運転手の猿は話し出しました。
「この棒はですね、地球を北極と南極をつらぬいています、端っこがこうしてそびえ立って見えるんです。南極点の方もこうして同じようになっています。地球が自転するために必要な芯棒なんですよ。地球が自転しなければ一日が昼ばかりか夜ばかり、どっちかになってしまいます。一日という時間も味気なくなってしまいますね。とても大切な芯棒なんですよ」
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「なるほど、だからほんのり温かくて小さくずっと振動しているんだね」
手を芯棒にあて、もう一度温度と振動を感じ取ったイコロ。
「───あっ」と、大切なことを思い出し、傍で微笑んでいる運転手の猿に訊きました。

「北極星を見ていないんだ。あの時、歩いて行くってことに驚いていたからさ、どの星かを聞くのを忘れた。だからどれなのかわからなかった」
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「大丈夫、そろそろまた暗くなります。星はまたすぐに輝き出します。北極の冬はすぐに暗くなり、なかなか明るくなりません。もう少し待ってなさい」
イコロにそう言うと「寒い」といって上野動物園のモノレールの中へ入り、そっと目を閉じた運転手の猿。

「もう少し、か───」と、空を見上げまた暗くなるのを待つイコロ。
自転のための芯棒は震え続け地球は少しづつ回転し、時間もゆっくりと進んでいきました。
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一人空を見上げていると何度もデアの顔が浮かんできます。
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一人のデア、そして今まで浮かぶことのなかった自分と一緒、イコロとデア、二人のホッキョクグマの姿も浮かんでくるようになりました。
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「デア、北極星を見たらすぐに動物園に戻るからね。そうしたら二人で話をしよう。この旅の話、ユキオさんやレイコさん、そして僕達二人の話をたくさんしよう───」
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「デアは本当にかわいいね」
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モノレールのドアが開き、運転手の猿が静かに出てきました。
(どの星が北極星なんだい?)とは聞かず、ただ芯棒にもたれて座り、「運転手さん」と微笑んだイコロ。
見上げた空はすっかり暗くなり始め、気の早い星から順番に輝きだしていました。
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「イコロ君、真上を見上げて見なさい」

「真上、真上かい?」
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「北極点から真上に光る星、あの星が北極星ですよ」
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「そして北極星は“こぐま座”を形取る星、そういうことなんです」
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北極星を眺め、ふとあることに気がついたイコロは涙を溢していました。
「やっぱりそうだったのか。やっぱり、やっぱり───」と、声にならない小さな声で何度も何度も呟きます。

「イコロ君、」と運転手の猿が声をかけるようとすると、イコロは涙を何度も拭いました。
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「僕を励まし、導いてくれた星はあの星だ。北極星の隣で輝く、優しい光のあの星だ───」
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「デア、ユキオさんとレイコさんが輝かせている星を眺めてるって、それがデアの北極星だって、君はそう言っていたね」
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「僕にはわかる、デアの眺める星はきっとあの星だ───北極星を傍で眺めるあの星だ。僕もユキオさんとレイコさんの星を見ていたんだ」



続く



   

by bon_soir | 2017-03-23 06:01 | 上野動物園 | Comments(4)
春にアズマ
上野動物園で暮らすマレーグマ、アズマ
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アズマの傍の春
アズマの傍にスズメ達
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チュンチュン、チチチ
チュンチュン、チチチ、と集まった
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上野の春は賑やかな春
次から次へと人の波
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のんびり一日過ごすには向いてない
そんな時、アズマはどういう気持かな
そんな時、アズハは何をするのかな
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そんな時、いつものハトも何を思うかな
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by bon_soir | 2017-03-22 12:33 | 上野動物園 | Comments(0)
冬のペリカン
上野動物園で暮らすペリカン達の冬
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夏の間は蓮の葉ばかりの不忍池
冬の間はきらりきらり湖面が光る
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ペリカン達はきっと今はここにいない
悲しく辛い病気から守るため、みんな元気でこれからも暮らすため
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避難する前
そんなペリカン達は池をすいすい、すいすいすいすい
すーっと
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冬枯れ蓮をくぐり抜け
すいすい、すいすいすいすい
すーっとのんびり穏やかに
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みんなが安心できる日はいつだろう
大きなくちばし広げて笑う日は、いつのことになるんだろう
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きらりきらりと湖面は光る
風でさざなみ
湖面が光る
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夏、照りつけた太陽は
冬、そっとみんなを温める
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すいすい、すいすいすいすい
すーっと
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きらりきらりと湖面は光る
風でさざなみ
湖面が光る
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すいすいすいすいすーっと
きらりきらりきらきらきらきら
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今は辛抱
少しの間のみんなの辛抱
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青い空は無くならない
いつになっても無くならない
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早く会えたらいいね
またすぐに会えるんだろうね
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by bon_soir | 2017-02-15 07:00 | 上野動物園 | Comments(4)
大きなあくびとジローさん
上野動物園で暮らすカバ、ジロー
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会うのも久しぶり
水の中じゃないのもなんだか久しぶり
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あくびした
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大きな身体であくびした
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お客さんがみんな言う
「凄い凄い」と、みんな言う
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ジローさんは大きなカバ
なんだかとっても可愛らしくて大きなカバ
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33歳
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またあくび
大きな、本当に大きなあくび
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顎は、口はどうなってるのかな
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ジローさんは素敵だね
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またまたあくび
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大きな大きな、本当に大きな大きな
大きなあくび
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あくびじゃなかったりしてね
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その大きさならなんでも入るねジローさん
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きっとどんな物でも入っちゃうねジローさん
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何度も何度も大きな大きな
大きな大きなジローさんの大あくび
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そのまま飼育係さんを気にしちゃう
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そんなかわいいジローさん
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上野動物園にはカバがいる
大きな大きなカバがいる
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大きなカバは大きな口で大あくび
誰にも負けない大あくび
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地面についちゃったよ、ジローさん
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そのままちょっと、少し休憩、ジローさん
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楽しいね!
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あの悲しいこと
お別れ
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15年も一緒だったサツキさんが旅立ってからもずっと頑張るジローさん
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のんびりと頑張る
のんびりのんびり暮らしてる
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大好きなジローさん




    

by bon_soir | 2017-02-13 07:47 | 上野動物園 | Comments(6)
立派なQ
上野動物園で暮らすエゾシカ、Q
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上野動物園の五重塔の下
いつも静かに暮らすQ
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角が本当に立派
しっかりと大人になってた
そんなQ
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眠いのかな
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ベロが出たら始まりの合図
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それは
あくび
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ゆっくりとした
そんなあくび
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あくびの終わり
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かわいいQ
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かっこいいQ
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ナギはどこ?
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ナギはここ
いつものここ
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エゾシカのQ
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カモシカのナギ
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上野動物園の五重塔の下
仲がいいのか、そうでもないのか
静かに、一緒に暮らす二人
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お腹空いたね
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ナギもね
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Q、大きな角
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Qが来る前の偉大なエゾシカ、トンちゃん
トンちゃんのようにずっと長く生きて、愛されまくって欲しい
そうだよ、Q
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みんなと一緒に、長く長く
ここでずっと、長く
来ればいつでも会えるよう
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そんな、そんなエゾシカ
名前は、Q
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by bon_soir | 2017-02-12 08:51 | 上野動物園 | Comments(2)
モモコ
上野動物園で暮らすマレーグマ、モモコ
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すごく久しぶりに会う上野動物園のマレーグマ
大好きなウメキチとフジの大好きなお母さん
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特になにも変わってない
そんなマレーグマの庭
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いつもどおり
おやつが置かれてく
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そっと出てきた、モモコ
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ここに手を入れる仕草
おやつを引っ張り出す、そんな光景
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変わらないね
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おやつはまだまだ置いてある
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早くしないと鳥達に持ってかれちゃうよ
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どんな顔も、どんな仕草も
みんなモモコだね
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☆☆☆☆☆あの頃から、そのずっと前から変わらない
ずっとかわいいモモコだね
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バナナ
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甘くて美味しいね
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下と上
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美味しいね
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モモコはお母さん
子どもたちは遠くへ引っ越してしまったけれど、大丈夫
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いつまでたってもずっとみんなのお母さん
優しくてかわいい、マレーグマのお母さん
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会いたくなったらモノレール
上野動物園にはモノレールがある
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美味しいね!
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バナナが甘くて美味しいね
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やっぱりここは思い出の場所
きっとこれからもまた思い出ができる場所
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大好きなマレーグマ
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大好きな親子達
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マレーグマは木に登る
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大人も子供も、みんな木に登る
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風に吹かれておやつを食べて、風に吹かれ見上げる青い空
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マレーグマ、だね
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上野動物園のマレーグマ、だね
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あの頃のことを今は懐かしく思うけど、いつかは今日のことが懐かしく感じられるかもしれないね
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続いていくね
動物園はこれからもずっと続いていくね
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あれ?
へんな寝相のモモコ
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日向だもん、暖かいよね
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起きてる?
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眠っているよ
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by bon_soir | 2017-02-11 14:43 | 上野動物園 | Comments(0)
雨にはしゃぐ
上野動物園で暮らすクロサイ、マロ
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ハシビロコウも静かに濡れる雨の上野動物園
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マロが何かしそう
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それは突然に
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雨降る庭でゴロンと転がる
顔も面白い
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そんなクロサイ
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マロ
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戻る
こっち見る
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もう一度
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雨の降る日も楽しいね!
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戻る
こっち見る
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さっと立つ
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そんなマロ
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アルゴ
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穏やかな顔のクロサイ
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優しい瞳のクロサイ
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そんな時、飛んだ水しぶき
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マロ、雨の中
マロ、走り回る
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走れば速い
走ると速い
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大はしゃぎは楽しいね
大はしゃぎは最高だね
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隣を気にする
隣を覗く
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だって大好きなアルゴがいるから
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いつのまにか雨音しか聞こえなくなるサイの庭
いつのまにかみんな静かなサイの庭
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そんな雨の日の上野動物園





  

by bon_soir | 2016-05-31 08:26 | 上野動物園 | Comments(2)
イコロと上野動物園のモノレール
ユキオが遠く高い所へ旅立ってからちょうど一年経った日の昨日
デアの涙を見たイコロはどうしても眠れないまま、いつもと同じような朝を迎えていました

庭へと出たイコロは空に浮かぶ秋の雲をぼんやりと眺め、一人考えていました
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「デアは確かに泣いていた。きっと一年前の悲しい日のこと、悲しい時間、お別れの瞬間のことを思い出して泣いたんだ。僕が上野動物園に来る前からずっと毎日、毎日デアは星を眺め寂しさをこらえていたんだ。毎日探したデアの星、その星が輝くずっと向こう側、どこかで見守るユキオさんとレイコさんの姿を心に映し、溢れる涙をずっとこらえていたんだ」
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「一年経ってもまだ悲しい、きっと十年たってもまだまだ悲しい。ある日、自分の目の前から大切な、大好きな命がいなくなる───そんな悲しみを僕はまだ知らない」
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「悲しみを知らないままの僕がどんなに慰めても、どんな言葉をかけてあげても、それはきっと薄っぺらな言葉になってしまう」
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「悲しみを知っているだけ、流した涙の分だけデアの方が僕よりずっと大人だ。そしてこのままじゃその差は埋まらない」
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「デアのために、デアとのこれからのために───そして僕のために」
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「僕はもっと大きな、身体も心も大きなホッキョクグマになりたい。僕は誰よりも優しく強い男のホッキョクグマになりたい」
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「ユキオさんのような“上野動物園のホッキョクグマ”に僕はなりたい」
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「デアは今日も遠くを眺めている。きっと今夜も星空を一人見つめ“北極星”を探すんだろう」
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「デア、僕じゃ駄目かい?」


その夜、窓からいつもの様に夜空を眺めるデアを、いつもの様に見たイコロ
これまでと一つだけ違うこと、それはデアが毎日何を想いそうしているのか───それを知っているということでした
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イコロはそっとドアを開け部屋を出ました
静かな夜の上野動物園、そこで見上げた夜空にはたくさんの星が輝いていました

「北極星ってどれだろう、デアが見つめる星はどれなんだろう」と、小さな声で呟くイコロ
部屋へ戻ろうと振り返った瞬間、目の前を横切り、大きな鳥がどこかへ向かって飛んでいくのが見えました
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「こんな夜に鳥だ」
イコロは自然とその鳥が飛んでいった方へと歩いていました
ホッキョクグマの家の裏へと続く坂を登り、夜空に映しだされた猿山の横を抜けて歩くイコロ
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そんなイコロを猿山の上から猿が一人眺めていました
「イコロ君、か」
とその猿は表情を変えずに呟き、そして柵を飛び越えイコロの後を追いかけるように静かに走り出しました
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目の前を飛んでいった鳥を追いかけ、少し早足で歩いたイコロ
イコロが辿り着いたのはモノレールの駅でした
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「これが上野動物園のモノレール──」
イコロは駅の中で静かに停まるモノレールを見つけ、しばらくの間動けずただ見つめていました
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「あっ、さっきの鳥は、あの大きな鳥はどこだ───」
駅の中をくまなく探したイコロは自分のことを見ている大きな目に気が付きました

券売機の所にそっと止まり、目を光らせイコロを見つめていたのは一羽のフクロウでした

「フクロウ、フクロウさんだよね? こんな夜にどうしたの?」
イコロがそう訊いてもフクロウは何も答えず、ただ丸く大きな目をくるくると動かしています
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「イコロ君」
戸惑うイコロの後ろから小さな声がしました
振り返るとそこには猿が立っています。イコロを追いかけ走ってきた猿もまた、明るい夜空にぼんやりと照らされたモノレールの駅へとやって来ていました

「そう、僕はイコロ。ホッキョクグマのイコロです。あなたは、あなたは誰ですか?」
名前を呼ばれたことを不思議に思い、目の前に立つ猿にイコロは訊きました
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「私はただの運転手です。自慢は上野動物園の動物達のことを誰より知っていること」とその猿は言い、フクロウと一緒に券売機の横に立ちました

状況がつかめず戸惑ったままのイコロに向かい猿は話を続けます
「どこか行きたいと考える場所があるんじゃないのですか? だからモノレールの駅まで来た、そういうことではないのですか?」
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「僕はただ夜空を眺めたくて部屋を出た。部屋にはデアがいるからね、すぐ傍で一緒に眺めていたらきっと嫌がると思ったんだ」

「なるほど」
猿は表情一つ変えずただ頷きます

「そうしたら目の前をそこにいるフクロウさんが飛んでいった。ただ気になって追いかけただけなんだ」

「なるほど。誰かにこのモノレールの話を聞いたわけではないんですね──」
猿はイコロの顔をじっと見つめ、少しだけ大きな声で話しを続けました
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「イコロ君、上野動物園にはモノレールがあります。それは知っていますね? 動物園に来たお客さんを乗せて何度も走る、このモノレールです」
猿は目の前に静かに停まる上野動物園のモノレールを見ました。

「知ってるよ、でも実際に見るのは初めてだ。こういう形でこんな色なんだね。なんだか楽しそうだ」
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そう言って楽しそうに微笑むイコロを見た猿はまた頷き、今度はモノレールのドアを開けて言いました
「上野動物園のモノレールは動物達を乗せて走る日があります。飼育係さんも知らない内緒のことです」

「えっ?」
イコロは何のことなのかわからず、なにも答えることができません
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「今日は特別です。ユキオさんが旅立ってから一年経った次の日、今日は特別な日です。私は運転手、君のためにこのモノレールを今日は走らせましょう」
小さな声でそう言った運転手の猿はモノレールの中へと入って行きました

「どこか行きたいと思う場所をフクロウに言い、そこまでの切符を貰いなさい。イコロ君の行きたいと思う場所はどこですか? 円山動物園ですか? おびひろ動物園ですか? それとも他に何処かありますか?」
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「行き先を言わなければ切符は貰えません。切符がなければモノレールを走らせることはできません。さあ早く、フクロウに行き先を言いなさい」
そうして淡々と運転手の猿に言われたイコロの口からぽつりとした言葉が出てきました

「北極星が見たい」
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「北極星?」
運転手の猿はイコロに訊き返します

「そうだ、僕は北極星が一番きれいに見える所に行きたい。それはどこですか? そもそも北極星はどこにありますか?」
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運転手の猿はそのイコロの言葉にどこか懐かしさのような物を感じだしていました
「北極星は北に光ります。その名の通り遥か北で光っています。ここからも見えるはず──」

そう言いかけた運転手の猿の話が終わらないうちにイコロは大きな声で言いました
「それならば北だ、とにかく北へ行きたい。少しでも北極星の近くへ行ってそこで見たい。北へ、北の果てに僕は行きたい」
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そのイコロの言葉に運転手の猿は大きく頷き、嬉しそうに微笑みました
「それならば“北極点”ですね。ユキオさんも大好きだと言っていた、そんな素敵な場所です」

「北極点───そうだ、僕をそこまで連れて行ってください。世界で一番大きな北極星を僕に見せてください」
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運転手の猿の頭の中に忘れられないあの光景がはっきりと戻ってきていました
「ユキオさんはレイコさんを連れ北極点まで行きました。イコロ君はデアと一緒じゃなくてもいいのですか?」

イコロは寂しそうに微笑み、デアの顔を思い浮かべます
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「今はまだ、今はまだ駄目なんだ。デアの心には僕より大きなユキオさんがいる。デアの中にある僕の存在はまだまだちっぽけなんだ」
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「なるほど」
と小さな声で言い納得した様子の運転手の猿はその後は何も言わず、何かを想い一生懸命に伝えようと頑張っていたイコロにそっと微笑みかけました
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「いつか一緒に、いつか絶対にデアとも行くよ。二人で笑って楽しく行ける日が来るように、そんな日のために今日は一人で行く。そんな僕の気持ちがわかるでしょう?」
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「ええ、もちろんわかりますよ」
運転手の猿はそう言ってもう一度頷き、券売機の前に止まるフクロウの方へ目をやりました

イコロも頷き、微笑みながらフクロウに言いました
「北極点まで、北極点までの切符を一枚ください」
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「僕は今モノレールに乗っている。静かで速い、そんな乗り物。運転手は猿だ」
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あの時、僕が『北極点までの切符を──』と言うと、フクロウはくちばしで券売機のボタンを押した。すると一枚の切符が出てきたんだ
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“上野動物園→北極点”と書いてある小さな切符だ。それを運転手の猿に見せるとモノレールは静かに走りだした
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出発してすぐ、左側窓の外に大きな鳥の顔が見えた。券売機のフクロウじゃない黒っぽくてもっと大きな鳥だ。『“エミュー”です』と運転手の猿は言う
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モノレールに乗るお客さん、そして動物達を毎日いつも見送ってくれていると運転手の猿は言う
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そんなエミューに『行ってきます』と僕は小さな声で言った。旅の目的地は北の果て“北極点”だ
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デアは今も夜空を眺めているのだろうか、今日もデアの北極星を探しその光を見つめているのだろうか
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今日もユキオさんのことを想い一人涙をこぼしているのだろうか
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僕が喋らなければ運転手の猿もしゃべらない、そんな静かなモノレール
僕は窓の外でキラキラと光り流れる街並を見ながら、そんなデアのことを考えた
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『北極点までは遠いんです。スピードを上げますよ』と小さな声で運転手の猿が言う
するとモノレールのモーターの音が少しだけ大きくなった
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『うるさいのは少し苦手』と運転手の猿は言う
だから僕も小さな声で話す
「僕もユキオさんの様になれるかな?」
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すると運転手の猿は“大好き”だというモノレールの運転を続けたまま、前を向き振り返らないまま小さな声で話す
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「それはわかりません。ユキオさんはユキオさん、イコロ君はイコロ君です。ただこうして旅に出れば少しずつ大人になっていくことと思います。あなたはホッキョクグマです。北極点に行けばきっと何かが変わります。その時、夜空に輝く北極星を見上げ、イコロ君が何を感じ何を思うか──それがなにより大切なことかもしれませんね」



上野動物園のモノレールはどんどんスピードを上げていく
街の明かりは遠くなり、今度は輝く星空へと吸い込まれていく

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「デア、そこから夜空を走るモノレールが見えるかい? 僕は一度見てくるよ。北極点から北極星を、一番大きく輝くそんな北極星を見てくるよ」
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「いつか一緒に北極点へ行こう。ユキオさんとレイコさんの様に二人で歩いて北極点まで行こう。二人で北極星を見上げ、そして一緒に笑おう」
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「大丈夫、その時は僕がかっこ良く案内するよ。一度行けば大丈夫、一度見れば大丈夫。僕は道のりを忘れない」
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流れる星空の向こうにデアの顔が浮かび続ける
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窓の外を眺め微笑んでいる、そんなデアの顔が浮かび続けている
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「イコロ君、もう少しです。北極点の近くまで来ましたよ」
運転手の猿が少しだけ大きな声で僕を呼ぶ
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窓の外は氷の大地だ

僕は遠くまで来た
北の果て北極点まであと少し──








by bon_soir | 2015-11-26 08:00 | 上野動物園 | Comments(4)
イコロとデアの北極星
上野動物園で暮らすホッキョクグマ、イコロ
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と、デア
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イコロにとっては上野で過ごす初めての11月
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そしてデアにとっては大好きだったユキオが高く遠い所へと旅立ち一年が経つ、そんな11月
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イコロとデア、これからは二人で小さな幸せなを作り、上野動物園を明るく温かく照らす
そんなことを期待させる、色々な風景の11月
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「春、おびひろ動物園からやって来た僕は、ここで一人の女の子に出会った」
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「その女の子はあまり僕に話しかけては来ない」
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「ときおり目が合ってもすぐに違うところを見る」
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「いつだってどこか遠くを眺め、何かを探している」
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「それは昼の間でも、夕方部屋に戻っても一緒だ」
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「僕には笑顔を見せてくれない」
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「僕はいつだって二人で笑おうと準備しているのに」
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「弱気な僕は話しかけられない。いつの間にか話しかけようとも思わなくなっていた」
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「ただ、『デア』って笑顔で呼べばいいだけなのに」
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「私の時間は止まってしまった。思っていたよりもずっと、そして強く止まってしまっていた」
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「あの秋の終わりの日からすぐに寒い冬が来てお花が咲く春がきた」
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「突然夏が来て、いつの間にか過ぎていった」
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「そしてまた――また秋が来た」
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「この一年、当たり前だけど季節は変わる。一日一日と少しずつ色々なものが変わっていく」
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「でも私の時間は止まっている。びっくりするほど止まったままでいる」
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「そう、ユキオさんが上野動物園からいなくなってしまってから、私の時間は止まったままだ」
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「デアはかわいいんだ」
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「会ってすぐに好きになった。これからは僕の傍にデアがいる、そう思っただけで嬉しかった」
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「これからは上野動物園のホッキョクグマに二人でなろうって、そう考えた」
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「引っ越しの寂しさなんかすぐに忘れたよ。デアと初めて会ってからの僕の目、この目に映る風景が今までとは違って見えたから」
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「僕の頭の中にはいつもデアがいる。朝も昼も、そして星が輝く夜の間もだ」
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「でもデアの頭の中に僕は今いない、きっといない」
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「僕だって馬鹿じゃない、デアの顔を見ればわかるんだ」
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「そんなデアに僕は話しかけることが出来ない。デアのことが本当に好きなのに弱虫な僕は話しかけようとも思わない」
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「大きくなった気でいたけど、やっぱり僕はまだ子どもだ」
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「これからどうしたらいいのか――僕はわからないでいる」
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「毎日毎日ただデアを見つめ、ただ時間が過ぎ一日が終わる」
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「気持ちがいい秋もすぐに終わりそうだ」
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「デア」
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「君は何を見ているんだい? 君は何を考え何を想うんだい?」
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「君の中に僕は少しもいないのかい?」
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「デアは部屋の窓から夜空を眺める。眠る前の長い時間、ただ静かに夜空を眺めている」
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「それは毎日、曇りの日でも雨の日でも。夜空を眺め、何かを探し、ふと寂しそうに微笑んでいる」
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「どうしたんだろう、と初めのうちはそんなデアを僕はずっと見つめていた」
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「いつの間にかそれも普通のこととなり、僕は『今日もか――おやすみ』と心の中だけで言い、先に眠ってしまうようになっていた」
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「秋もそろそろ終わりだと言っているような、とても冷えたある日の夜のこと。窓の側に座るデアの様子がいつもとは少し違っていた」
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「デアの目から一粒の涙がこぼれ、『一年経ってしまいました』と寂しそうに悲しそうにぽつりと呟いていたんだ」
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「デアは続けていくつもの涙をこぼす。“どうしたんだい?”と考えた刹那、僕の心の奥から力が湧いた」
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「僕は『デア』と精一杯の小さな声で話しかけていた」
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「するとデアは窓から夜空を見上げたまま言ったんだ」
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『イコロさん、私は毎日ある星を見ています。曇って見えない日も雲の向こうに思い浮かべ、毎日欠かさず、ある星を見ています』
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『それはユキオさんとレイコさんが温かく光らせてくれている私だけの北極星。その私だけの星を見ればどこかからユキオさんが見守ってくれているような、そんな気持ちになれるんです』
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「そう話しゆっくりと振り返ったデアの瞳の奥に輝く光を僕は見つめ『星、北極星――』と、ふと呟くと、何故か出る涙で目が霞んだ」
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「『ユキオさんが旅立ってから今日で一年が経ったんです』とデアは涙で光るその目で僕を見つめ返し、そして悲しく微笑んだんだ」
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「ユキオさん――デアの心の中にずっとあるのはユキオという大きなホッキョクグマとの辛い別れだ」
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「そうだ――デアの時間を止めているのも北極星、そしてデアの時間をまた動かすのもきっと北極星だ」
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「北極星はどこだ? 北極星っていったいなんなんだ?」



続く


by bon_soir | 2015-11-25 06:00 | 上野動物園 | Comments(2)
穏やかにサイ
上野動物園で暮らすクロサイ、アルゴとマロ
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とある日の上野は曇り空
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そんな日でも二人は穏やかに、そして少し楽しそう
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置いてあった枝と遊ぶ
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サイは硬い所もちゃんと噛む
すると唇が可愛らしくなる
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楽しいね!
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そんなアルゴを柵越しに見つめるマロ
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見られてる、見られてる
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そわそわしだすのは何故?
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おやつを貰えるから
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じつに美味しい
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向かい合うアルゴ
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唇が可愛らしくて仕方ない
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アルゴは噛みつかない
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遊んでおやつを貰うだけ
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実に美味しい
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お客さんが見てる
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かわいいところをみんなで見てる
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そんな楽しい時間
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口の中にニンジン
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もっと欲しいな、と思うけどマロの所へ行ってしまう
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早くください
そうせがむ
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なんだか楽しいね!
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もうすぐ冬
もう街はクリスマス
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動物達のクリスマス
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by bon_soir | 2015-11-22 08:53 | 上野動物園 | Comments(0)