カテゴリ:五月山動物園( 22 )
フクとガラスに映る自分の瞳


五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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秋になれば自分の目に映る世界が変わる、自分も変わる、変わらなくちゃいけないと自覚している夏のフク
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夏の日差し、ガラスに反射
夏の風景、ガラス越し
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フェンスからガラスに変わり、見える世界はどこか現実離れ
一見透明、何も無い
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よく見てみればガラスの色を重ねた世界
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朝から昼間、昼から夕方
晴れの日雨の日曇りの日
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変わる色を薄く重ねた不思議な世界
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不意に映る自分の顔
向こうも見つめる自分の瞳
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「これが僕だ───」
そっとつぶやく
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「君がフクかい?僕はフクだ」
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「今僕の瞳に映っているのは君の瞳、僕の瞳が僕の瞳を見つめている」
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「そう、ただそれだけのことなんだ」
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「ドアの前で考えがまとまらなかったり、何も出来ずにうろうろしていたり────」
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「君はきっと全部を見ているんだろうね」
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「ガラスの僕、君にも見えるだろ? 今日はこんなに晴れている」
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「ガラスの僕、そっちから見たワインさんはどうだい? 暑そうにしているかい?楽しそうにしているかい?」
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「僕はガラスの僕にばかり話しかけ続ける」
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「君はなぜ僕をずっと見つめているんだい? そんなことより教えてくれよ、僕はこのままでいいのかい?僕はこれでいいのかい?」
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「わかっているよ、僕だって間抜けじゃない。君はただの僕だ。ただ少し、僕は馬鹿なふりをしてみただけなんだ」
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「間抜けなふりも僕はそのうちできなくなるのさ。僕も大人だからね」
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「なんてことだ。明日を、次の季節を望んでいると、過ぎた昨日を後悔してしまう」
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「そう、僕は時間を無駄にしているような気がしてくる」
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「ガラスの僕、僕を見つめ続けてくれていい。その黒い瞳に僕を映し続けてくれていればいい。それだけでいい」
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「僕も君を見つめ返してみるよ。わかるだろ?」
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「そうだ、君が笑顔ならその時僕も笑顔なはずだ。そういうことだ────」
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「のんびり行こうよ、ガラスの僕」
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「僕等はウォンバット。のんびり行こう────」
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目の前何かが塞いでる
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ちゃんと見て考えて、きっとこれだと先へ行く
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振り返れば通過したことなんでもないこと
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その繰り返し

春夏秋冬、繰り返し
その中、繰り返さないことがある
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繰り返しやって来ないことは重要なことばかり
フクに大切なことばかり
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その時フクはどんな顔
笑っている時、泣いている時
その時フクはどんな顔
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その時みんなはどんな顔
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ガラスに映ったみんなの顔はどんな顔
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ちょっとどけよと少しわがまま
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甘えてわがまま
一人でわがまま
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動物園の夏の日は静かに進む
変わる、変わっていくその前は変に静かに進んでいく
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静かに駆け出す夏のフク
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木漏れ日そっと影作る
足音かき消すセミの声
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見える世界はどこか現実離れ
ガラスに映った姿、きっと何処かは違っているはず
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変わる色を薄く重ねた不思議な世界
そこにはきっと────
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────そこにはきっとみんなの笑顔
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ガラスに映った顔は笑っているのか涙溢して泣いているのか
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動物園の動物時間
呼吸合わせてのんびりのんびり
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のんびりのんびりまた今度
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今日の続きを信じて帰る
星空信じて今日は帰る

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そんなフク




     

by bon_soir | 2017-08-07 11:09 | 五月山動物園 | Comments(4)
フクといつもの夏、新しい秋

五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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秋には────ということで女の子のウォンバットが日本へ、五月山動物園へと来てくれる
それを知ったフク
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「本当かな────」
夏の青空ふと見上げ、気がつけばすぐに大きくなる夏の雲を眺め、何度も呟いてしまう
そんなフク
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「もし本当に来てくれるなら、今は最後の夏だ。一人気ままにのんきに暮らせる最後の夏だ」
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「もう悲しい思いはしたくないしさせたくもないからね。そう、アヤハのことは忘れないよ」
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「僕はもう子供じゃない。ワインさんとワンダーさん、二人をずっと眺めてきてわかったんだ」
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「助け合う、支え合う、なにより二人で一緒に笑うってことの大切さをね」
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「あの二人は本当に素敵なウォンバット。僕にはそう見えるよ」
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「ここに来た人もみんなきっとそう感じた、そう見えたはずだ。二人に会えたならきっとそう思ったはずなんだ」
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「────そして優しい気持ちをたくさん貰ったはずなんだ」
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「それがわかる僕は誤魔化せない。知っていることに何もしない訳にはいかない。それは男らしくも優しくもない。知らないよりも悪いこと」
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「こんな僕の所へ遠くタスマニアから来てくれるんだ。僕は傍で優しくいつまでも微笑むんだ。ワインさんのようにね」
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「一人気ままにのんきに、きっとそれも悪いことじゃない。でも僕はワインさんとワンダーさんに出会ったからね。あの幸せから目をそらしてしまっては駄目だろうね」
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「二人で一緒に食べて寝て、お散歩したり星を眺めたり────笑って、そして悲しい時には一緒に涙をこぼすんだ」
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「ずっとずっといつまでも、ね」
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「まずはそれだけ、本当に大切なのはそんな幸せ。期待されているのはわかるけど、赤ちゃんはその次のこと。予定なんてすることじゃない」
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「簡単じゃないんだ、大きすぎる幸せを感じる、作り出すってことはね」
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「今日も本当に暑いんだ。ずっと外に、日向にいれば身体には悪いくらい。冬寒かった僕の庭でギリギリだ。ワインさん、ワンダーさんは平気かな」
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「でもこれがいつもの夏。セミがうるさい当たり前の夏のこと」
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「ただそのうちに特別な秋が来るってこと、それを知ってからこの夏は少し変わった」
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「特別な秋の前、この夏もまた少し特別な夏。色々なことをたくさん考える、気持ちの準備をする────特別の前の少し特別」
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「それがこの夏────わかるだろ?」
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「見えるかい?イチョウだって秋へと準備をはじめてる。秋はそのうちやってくる。みんなの所へちゃんとやってくる」
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「僕達の庭はまた黄色く染まるのさ」
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「みんな決して騒がない。本当にいつもの夏なままなのか、いつもどおりなフリしてそっと夏を越えるのか」
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「動物園はいつもの夏。少し特別だと感じているのは僕だけか」
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「まあでもそれでいい、それが一番いいことだ」
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「どんな顔した女の子が来てくれるんだろうね、どんな笑顔をするんだろうね────」
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「今日も太陽が眩しいよ」
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「────レモンライム、夏って本当に暑いよね」
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一人気ままにフクの夏
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のんきに少しわがままに
そんなフクの暑い夏
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でも、そんなフクの夏も今年が最後
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秋が来れば傍で微笑むウォンバットに恋をして、その子に何をしてあげることが出来るのか毎日毎日考えて
そして一緒に笑うフクになる
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ワインとワンダー、二人を眺めて育ったフクは知っている
幸せってどういうことか、悲しみってどういうことか────フクはきっと知っている
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────優しさってどういうことか
きっとフクは知っている
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庭のフェンスはガラスへ変わり、見える景色は色鮮やか
春の色、夏の色、黄色い秋から青濃く広がる空の冬へ
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いつもの夏はいつのまにか少し特別な夏になって、そして特別な秋へと少し駆け足
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その特別からまたその先の特別へ
行けたらいいなと声を出さずにそっと願う
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その特別は時間をかけてただ幸せな日常へ
そこまで進めば一安心
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長く長く続いていくための“ふりだし”はきっとその時
のんびりのんびり、静かに幸せ
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聞こえてくるのは鳥の声、耳をすませば虫の声
風にそよぐ草の音と木々の音
流れる時間は動物時間
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素敵な動物園はきっとそんな動物園
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遥か彼方タスマニア
ウォンバットが橋を架ける
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これからずっと幸せであるように
これからずっとみんなが優しい気持ちであるように
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動物達も人達も、みんな笑顔であるように
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みんなの愛情、気持ちに変えて
ウォンバットが海を越え、未来へ繋ぐ橋をそっと架ける
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セミの声が聞こえてこなくなる頃か、イチョウが色づく頃なのか
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黄色い絨毯の上を駆け抜け、空が高くなる頃か
ほっぺた木枯らし当たる頃になるのか────
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動物達はあわてない
ウォンバットはあわてない
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いつもの夏を駆けていく
少しの特別そっと感じて、ただ夏を駆けていく
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のんびりゆっくり動物時間
動物園に居る時は人も一緒に動物時間
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それがいい
きっとそれが一番いい
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新しい秋へと向かうフク
いつのまにか大人のフク
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by bon_soir | 2017-08-02 19:08 | 五月山動物園 | Comments(8)
フクちゃん
五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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工事前のとある日
朝のフクちゃん
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何度か部屋に戻っていくけどまたすぐに出てきていたフクちゃん
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フクちゃんの庭、日陰ばかり
見ているお客さんもまた、日陰ばかりでとても寒い

小さな日向でじっとするフクちゃん
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眠いよね
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小さな日向
向こう側にはワインとワンダー
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なんだかちょっと羨ましい
二人の庭は日向が多い
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そしてなにより、二人は幸せそう
毎日毎日、それはそれは幸せそう

フクちゃん木に足を乗せる
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少し不安定
この木は少し不安定
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ワインとワンダーの笑い声、楽しそうな会話が聞こえてくるね
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なにより二人は温かいね
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小さな日向でだんだん身体が温まる
ついついあくびが出てしまう
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地球は回る
自転する
小さな日向も動いていく
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合わせて移動
日向に合わせて移動しなければ寒くて寒くてしかたない
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小さな日向でだんだん身体が温まる
ついついあくびが出てしまう
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あくびの終わり
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気持ちいいね
そんな朝だね
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なんだか少し寒い
そんな冬の終わりの朝のこと
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小さな日向でだんだん身体が温まる
ついついあくびが出てしまう
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小さな日向は今日もまたいなくなる
そっと隠れ、そっと離れてまた後で
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工事前
ブルーシートを気にしてました
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工事終わってよかったね
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頑張れフクちゃん




   

by bon_soir | 2017-03-01 11:00 | 五月山動物園 | Comments(4)
ワインとワンダー、まだまだ続く物語
五月山動物園で暮らすウォンバット、ワインとワンダー

工事が本格的に始まる前、冬の終わりかけの少し暖かい日
ワンダーは穏やかに微笑み、どこか名残惜しく感じる朝を漂い始めていました
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「この風景がもうそろそろ変わるんだね───」
ワンダーはわかっていました
長い間過ごしてきたこの庭が変わる日がすぐそこだということを
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朝の日差しがウォンバット達を少し温め、ときおり吹くゆっくりとした風がまた少し身体を冷やす
そんな晴れた冬の朝
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庭を散歩して眺めていると、なぜだか色々な風景が時々目の前に表れます
懐かしい声が耳の傍で、そして少し離れた所から聞こえてきます
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ワンダーはその度に足を止め、その懐かしい姿を目で追い、聞こえる笑い声に耳を傾けました
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全てはこの庭で過ごしてきた日々の記憶
嬉しいこと、悲しいこと
楽しかったこと、寂しかったこと
そんな全部のこと
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ワインと一緒に笑って、そして泣いた
───二人と五月山動物園の物語
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この風景が変わる前にその物語をもう一度読み返すような、そんな不思議な時間をそっと過ごす
そんなワインとワンダーの、そんなある日の朝のこと
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「ワンダーさん、おはよう」
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「朝ご飯、美味しいかい? たくさん食べられているかい?」
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「美味しく、ちゃんとたくさん食べられているなら安心だ。なんの不安もない」
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「ワンダーさん、気がついているんだろう?この風景がもう少しで変わっていくことを」
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「気がついているんだろう?サツキとサクラ、そしてティアやアヤハの姿も今ぼんやり、そっと見えていることが、ね」
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「そうだ───全ては僕達の記憶の中のこと」
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「───僕ら二人の物語だ」
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「色々なことがあった。楽しいこと嬉しいこと、悲しいこと寂しいこと───本当にいろんなことがあったんだ」
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「ワンダーさん、僕はね。二人でいたから良かったんだと思うよ、一緒に笑って、喜んで───そして一緒に涙を溢してこれたからね
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「一人だったらね、きっともっと味気なく、そしてもっと辛かったはずなんだ───物語はすぐに終わってしまっていたかもしれないね」
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「そうだよ、ワンダーさんと僕の物語は二人だからこれからも続くんだ───」
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「まだまだ途中、終わりなんかぜんぜん見えてこない、そんな物語がね」
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「これからもずっと続いていくんだ」
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「ヒーローは僕、ヒロインは君。いろいろあるけれど、最後は必ず傍にいる───そんな当たり前の物語」
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「それでいいよね、それがいいよね───大丈夫僕ら二人、ほら、わくわくしてる
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「サツキもサクラも、ティアもアヤハもみんな、みんなが動物園を見守っている、見守ってくれている」
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「きっと大丈夫。この物語はハッピーエンドだ」
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心配していたワンダーとワイン
ワンダーは部屋の前でも青草をたくさん食べ、不安はどこにもありません
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ぽかぽかとした陽気の中へ、走るわけでもなくそっと滑り込む
そんなワンダー
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なにより大切な「いつもどおり」
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光る朝日の光、ずっと変わらない陽の光
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ふわふわワンダーの毛がきらきら光る
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そのフェンスはもう無くなるよ
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それは寂しいけれど、必要なこと
人の都合で申し訳ない、動物達にそんなお願い
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動物達に頼ってばかり
そんなわがまま、そんなお願い
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ワンダーさんは穏やかに
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朝日の中で朝ご飯
穏やかな陽の光、穏やかなその笑顔
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ワインを癒やし、みんなを癒やす
小さな身体の大きな笑顔
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ワンダーさんの素敵な笑顔
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そんなワンダーさんをワインはずっと気にかけ眺めるフェンス越し
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それはいつものことだけど、やっぱり嬉しいワンダーさんを大好きな優しいワイン
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なるべく近くへ
なるべくなるべく、なるべく近くへ
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なるべく
近くへ
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かわいいワイン
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ワンダーさんが一度離れてしまっても大丈夫
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ずっと隣を気にしていれば大丈夫
ワインの時間はワンダーさんに捧ぐ、そんな愛情を生むための時間だから
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ワンダーさんの方からちゃんと傍へやって来る
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食べてる間も一緒だよ
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ワインはワンダーさんと一緒だよ
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きっと一緒だよ
ずっと一緒だよ
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ワインとワンダーいつまでも一緒
きっと、ずっと一緒───
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「───ワンダーさん、聞いてるかい?」
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「きっと無くなるフェンスにさ、秋の名残、冬が消しきれなかった物があったんだ」
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「ワンダーさんの大好きなイチョウの葉っぱさ。あの日のことを思い出すだろう、また物語の一部が浮かんでくるだろう?」
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「散歩してれば色々見つけるんだ。季節が変わっていく時はっきりとしていない部分、そんな曖昧なところをね」
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「これが“滲んでる”ってことなんだろうね」
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「そんな“滲み”が今は心地よいね。なんだか曖昧な方がいい、はっきりばかり少し冷たい気がするんだよ」
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「思い出だってそうさ。なにからなにまではっきり覚えていることばかりじゃないだろう?」
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「少しずつ滲み、曖昧になっていくことだってあるだろう」
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「その方が楽なことだって、いくつか思い出の中にあるだろう?」
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「わかるかい?物語はそうして出来ていくんだ」
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「嬉しいこと楽しいことはもっと大きく滲む、嬉しいこと楽しいことは暖かく周りを包むように滲んでいくんだ」
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「そして悲しいこと寂しいことを少し曖昧にしてくれる。そう、そっと包み込むように、ね」
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「こうして、いつのまにか物語は出来上がっていく。最後はハッピーエンド、全体はとっても温かい───そんな僕らの物語さ」
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「いつかどこかで読み返す、一緒に作った物語をいつか二人で読み返すんだ」
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「この物語はどこでだって読めるんだ。二人一緒にいる時はいつだって読めるんだ」
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「もちろん今だってそうさ。物語を作りながら僕達は読み返す。そんな途中───」
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「まだまだ続く旅をしているような物語、書くのは僕らさ」
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「そして読むのも僕ら。そんな僕らのお話、それが僕ら二人の物語」
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「今、物語は重要な場面を迎えたんだ。工事が始まり風景が変わるって言う大事な場面だ」
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「騒々しいのは嫌いな僕らだ。少し我慢をしなければいけないね」
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「慣れた風景がが変わること、寂しくて、でも少し楽しみだ」
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「ほらね、もう少し滲んでる。気持ちはやっぱり曖昧で、もう滲み出している」
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「あとはみんなが変わらず元気で、その変わった風景を一緒に眺めること。それだけでいいんだ」
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「騒々しいのを少し我慢。大丈夫、工事なんか上手くやってくれるさ」
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「ワンダーさん、知っているだろ。君には僕がいる」
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「君のことをかわいいと思ったあの日から、いつだって君の傍に僕はいる」
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「サツキもサクラも、ティアもアヤハも、どこか近くで見てくれてるさ」
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「僕ら二人の物語はまだまだ続く。まだずっと続いていく」
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「何ページあったとしても足らないよ、ぜんぜん足らないよ」
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「長い長いお話さ、どこかに書き留めるには無理がある」
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「だから僕ら二人の心の中に書いていく、それがいい」
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「僕が書き忘れたこと、知らなかったこと───それを君が僕に読み聞かす」
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「君が書き忘れたこと、知らなかったこと───それは僕が君に読み聞かす」
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「二人の物語だからね、それできっとちょうどいい」
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「ワンダーさん、いつか君はどんなお話をしてくれるんだい?」
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「ワンダーさん、君はどんなお話を聞きたいって思うんだい?」
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「いつかどこかで読んで過ごそう、ずっと二人で毎日毎日読み続けて過ごそうよ」
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「まだまだ続く長い物語、二人で暮せば終わりなんか来るはずないよ」
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「先のことは考えなくて大丈夫、きっと大丈夫。さっき言ったとおりさ───」
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「いつかの最後はハッピーエンド、全体が温かい───そんな僕らの物語さ」
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何事もなく工事が早く終わること
それを祈って───




   

by bon_soir | 2017-02-23 07:00 | 五月山動物園 | Comments(8)
フクちゃん
五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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フクちゃん覗く向う側
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なんだか“そわそわ”
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何か言って微笑む
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撫でてもらった
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よかったね!
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by bon_soir | 2016-12-14 22:59 | 五月山動物園 | Comments(4)
フクとみんなの言葉
五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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まだまだ子供のように感じられるフク
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でも本当はもう立派な大人
大人のウォンバット
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五月山動物園で日本の四季を何度も感じ、そしてこれからも巡り続ける季節を眺める
そんなウォンバット
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悲しいこと寂しいことも何度も経験し、優しく、強くいつの間にか大人になった
そんなウォンバット
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ワイン、そしてワンダーから本当の優しさを、そして純粋な愛情の意味を
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アヤハ、そしてサツキから生きていることの意味、そして命の尊さを───
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みんなから教えてもらい、そして自然と感じ、学び
フクは大人になっていました
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フクには聞こえていました
フクには聞こえています
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優しい動物達の言葉が
そして飼育係さんやお客さん達の声が───言葉が聞こえています
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言葉を聞いて喜ぶ、笑う、楽しくなる
時には悲しく、寂しく、涙さえこぼす
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それがフク
それが動物園の動物達
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秋の終わり、冬の始まり
また季節が一回り
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もう戻せない時間と引き換えた、そんな想い
大切な言葉───
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「あの日、ワンダーさんは泣いたんだ」
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「イチョウの木が──と悲しみ、たくさんの涙がこぼれ落ちた」
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「あの日、たくさんの言葉を聞いたんだ」
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「ワンダーさんが悲しむ言葉、そんなワンダーさんをそっと包むワインさんのあったかい言葉」
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「そうだ、大切な二人の心の言葉、優しい気持ちの言葉だ」
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「どんなに不安なことを考えてしまっても優しい言葉さえあれば大丈夫、気持ちの言葉さえあれば大丈夫」
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「僕はワインさんとワンダーさんに、教えてもらっている。毎日、いつだって教えてもらっている」
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「いつもの優しい顔を見て、心が作る言葉を聞く───」
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「それで大抵のことは大丈夫」
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「本当にそうなんだ」
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「僕はちゃんと聞いている、どんな言葉でもちゃんと聞こえている」
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「あまり悲しい言葉は聞きたくないね」
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「動物達から、飼育係さん達から───そしてお客さん達から」
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「悲しい言葉までちゃんと聞こえているんだ、聞こえてしまうんだ」
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「出来ることなら僕は聞きたくないね」
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「でもね、嬉しい言葉、楽しい言葉、悲しい言葉と寂しい言葉、そして嫌な言葉。全部を聞いてわかったこともある」
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「結構上手く出来ているんだ───この世界はね」
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「嬉しい知らせ、楽しい知らせはゆっくりとやって来る。予告もあるしだんだんと近づいて来る」
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「わくわくする気持ちはその間にだんだんと大きくなってくる、長い時間幸せな気持ちでいられるんだ」
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「わかるかい?」
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「そして悲しいこと、寂しいこと───その知らせは突然やって来るんだよ、急に聞こえてくるんだよ」
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「心配が、不安が長い時間続かないようにね」
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「もしそんなことが長く続いたらどうだい? 辛くてしかたないだろう? 待っているなんて耐えられないだろう?」
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「上手く出来ているんだ」
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「あてはまらないこともあるだろうけどね」
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「僕はたくさんの言葉を聞いてきた。そして大人になった」
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「これからもたくさんの言葉を聞くだろう、そして大人の次は何になるんだろう───」
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「おじいさんか───その前にお父さん、なのか」
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「わからないね」
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「ワインさん、ワンダーさん、動物園の動物達、飼育係さんやお客さん達───」
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「これからもたくさんの言葉を聞くんだろう。みんなの言葉を、声を聞いていくんだろう」
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「そうだね、嬉しい言葉、楽しい声をたくさん聞きたいね」
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「ゆっくりと時間をかけて幸せだと思うその時まで、できる限り長い時間をわくわくと───」
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「そうだったのなら僕は幸せだ」
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「そして、あなたには聞こえますか?」
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「僕の声が聞こえていますか?僕の言葉が聞こえていますか?」
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「僕にはあなたの声が聞こえるんだ。あなたにも僕の言葉が聞こえるはずなんだ」
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「楽しいかい?嬉しいかい?───動物達の声を聞いて幸せだと少しでも思えるかい?」
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「そうか、ありがとう───」
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「ワンダーさん、知っているかい? あの大きなイチョウの木、今僕の傍にいてくれているよ」
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by bon_soir | 2016-12-11 10:45 | 五月山動物園 | Comments(4)
ワインと黄色い落ち葉

五月山動物園で暮らすウォンバット、ワイン
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庭に落ちたイチョウの葉、すっかり黄色くなったイチョウの葉
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ワインはお昼前からせっせとお散歩
冬が来る前に見る風景は毎年変わらないことばかり
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冷たい風がワインのほっぺにあたり、秋から冬への交代を告げるよう
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立ち止まっては思い出す、思い出してはそっと微笑む
そんな一日を過ごすワイン
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ワインにとって、秋は大切な季節
巡る四季の中、過ぎていくのが惜しい季節
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五月山動物園の秋は今年も過ぎていく
ワイン、ワンダー、そしてフク
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みんなの秋は今年もそっと、最後に少しだけ存在感を示して過ぎていく
黄色い秋が過ぎていく
そんなある日のお話
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「雨は少ししか降らなかった」
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「でも、そのせいだろうか。今日は少し暖かい」
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「不思議だね。晴れた日が続くほうが朝と夜は寒いんだ」
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「そうだ、今日ならワンダーさんも外へ出てきやすいだろうね」
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「まだ部屋で眠っているようだ。長いお昼寝、ウォンバットだからね」
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ワインは大きなイチョウの木を眺めました
風に吹かれた黄色い葉がときおり地面に向かってはらりと落ちてきます
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「今年、大きなイチョウの木が一人、そこからいなくなってしまった」
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「ワンダーさんは酷く寂しがっていた。ずっとそばに居てくれた木だったからね」
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「横になったイチョウの木───しかたないとはいえ、それは確かに寂しく悲しい光景だった」
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「残ったイチョウの木もきっと同じ気持ちだ。眺めていればわかる、声を聞かなくてもわかる───僕達は昔からずっと一緒だったんだ」
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「ずっとイチョウの木と一緒だったんだ、わからないわけ、感じないわけがない」
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「一度落ちた葉っぱが春にまたそっと出てきて大きくなる、夏はその葉っぱが木陰を作り、そして秋の中で黄色くなるんだ」
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「そして冬へと進む時、僕達の庭を黄色く染めるんだ───」
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「今年もそう、残ってくれた木がそうしてくれた。今までと同じように、あったかく優しくね」
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「変わらない、ずっとずっと変わらない───僕達の大好きなイチョウの木、僕達の大好きな季節」
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「───あの時、僕達がまだ小さかったあのときもそうだったんだ。イチョウの木は僕達を優しく見つめ、そして微笑んでいたんだ」
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“あのとき”
その言葉を声にしたワインはまだ小さな時の記憶を鮮明に思い出していました
散歩をしながら思い出し、
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道草しているときも考え続け、
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そして大好きなイチョウの木を見上げて微笑みました
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あの日のまだ幼い自分と、小さなワンダー
きらめくように大切な子供の頃のどこまでも純粋に澄んだ想い、気持ちの記憶
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ワインの胸を今また満たす
“あの日”の思い出───
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「───今日のような秋の終わり、冬の始まり。そんな日だ」
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「ワンダーさんは朝から喜んでいた。前の夜に風が強く吹いたんだろう。散ったイチョウの葉っぱで僕達の庭が一面黄色に光っていたからだ」
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「ワンダーさんは駆け回って笑っていた。その笑顔は今まで見たなにより輝いていた───その時僕は見とれていたんだ」
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「時間を忘れ、大好きなご飯のことや、ときおり身体をぶるっとさせる冬の風のことも忘れて、ずっと───ずっとね」
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「黄色い庭に聞こえる可愛い声。僕は思ったんだ、この風景が秋の終わりの僕達の風景なんだってね」
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「そして、ワンダーさんには黄色が似合う───そう、感じたんだ」
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「ずっと見とれていた、ずっと眺めていた。黄色い世界の中で僕はワンダーさんから目を離さなかった」
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「そうさ、それは今も変わらないこと。あの日から今までずっと変わらない、そんなことだ」
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「そしてあの瞬間がやって来る───」
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『どうしたのワインさん、なんだかぼーっとしてる』
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「ワンダーさんは立ち止まり、僕の顔を眺めてそう言ってそっと笑った」
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「いや、なんでもないよ───」

そう言いかけた瞬間のことだ
風に乗ったイチョウの黄色い落ち葉がワンダーさんのおでこにそっと乗った
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「あっ!」
僕の口からふいに声が出る
『えっ!?』
ワンダーさんは僕の目を見つめながら少し戸惑う
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「なんでもないんだ、ごめん」
とだけ小さな声で言った
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僕はおでこに乗っかった葉っぱのことをワンダーさんには言わない
もし、「おでこに葉っぱが───」と教えていたら、きっとすぐに払ってしまっていただろう
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おでこにイチョウの葉っぱのワンダーさんがとても可愛らしくて、少しでも長く見ていたくて
だから僕は教えなかった
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『なんだか変なワインさん』
ワンダーさんはそっと微笑みながら僕に言う
上手く話せなかった僕は思っていたことを慌てて言った
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「ワンダーさんには黄色が似合うよ」
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その時僕はきっと変な顔していたんだろう
ワンダーさんは困ったような顔をして、僕から目をそらした
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そしてそのまま小さな声で言った
『ありがとう。でも何で黄色が似合うと思ったの?』
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「ごめん、ただなんとなく、なんとなくだよ───」
僕はそう答えることしかできなかった
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言葉になんか出来ないそんな気持ち
僕はワンダーさんのことを好きになっていた
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「フク、君にも来る。必ず来る」
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「僕がワンダーさんのことを好きだと思った日のような、世界が違って見える素晴らしい日がきっと来る」
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「君がアヤハのことをどう思っていたかはわからない。ただこうして大人になった君なら感じるだろう、きっとわかるだろう」
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「フクのその目で優しく見つめ、大切に思うということがなんなのか───」
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「そのうちきっとわかるだろう。フクならきっとわかるだろう」
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冬になるとすぐに夕方がやってくる
少し暗くなりだすとワンダーさんが部屋から出てきて散歩を始めた
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イチョウの黄色い落ち葉が輝く庭のお散歩
少しだけ少ないけれど、あの時と同じ黄色く輝く僕達の庭だ
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そうだ、何から何まで一緒だ
あの時と同じ、イチョウの葉の上で楽しそうに微笑むワンダーさんを僕は傍で見つめている
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『ワインさん』
ワンダーさんがふと遠くを眺めていた僕をそっと呼ぶ
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僕と目が合ったワンダーさんは、地面の落ち葉を一枚優しく手に取りおでこにそっと乗せた
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『どう?似合ってる?』
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あぁ、あの瞬間と一緒だ
小さかった頃、あの日の思い出───幼い僕とずっと小さなワンダーさんが頭の中を駆け巡り、僕は一粒涙を溢す
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来年も、そのまた来年も
ずっと、ずっとずっといつまでも僕達は一緒だ
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「似合ってる、ワンダーさんにはやっぱり黄色が似合うよ」





   

by bon_soir | 2016-12-07 14:43 | 五月山動物園 | Comments(6)
ワンダーと黄色い季節
五月山動物園で暮らすウォンバット、ワンダー
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庭一面のイチョウの落葉
急に広がりだんだんと減ってくる
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秋の終わりは冬の始まり
あまり寒くなると散歩はしにくくなってしまう
気持ちのいい時間、大切なその刹那
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この日は遅くなってから出てきたワンダー
隣でずっと待っていたワインを気にして、フェンス際のいつもの小道
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ワインの声、ワインの匂い、ワインの温かさ
ワインの存在を感じていつもの小道
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ワンダーとワイン
幸せな二人の一番幸せな時間
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その時間に日本の四季は欠かせない
四季が変えていく風景、混ぜる色が欠かせない
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イチョウの黄色、五月山の秋の色が無くなっていく
その途中の秋の終わり、冬の始まり
ワンダーはふと思い出し、本当に小さな声でそっと呟きました
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「あっ、ワインさんの背中にイチョウの落葉。可愛い黄色のイチョウの落葉」
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「私はこの黄色が好き」
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「紅葉した黄色、イチョウの黄色。この色、この季節、秋のことが一番好き」
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「春のお花のピンク色、暑い夏のお庭の緑色、晴れた冬の空の青い色。どんな色もみんな大好きだけど、秋の黄色が一番好き」
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「それはワインさんが『似合うよ』って言ってくれた色だから───」
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「それはずっと昔のこと───ワインさんも私もまだ子供だった今日と同じような秋の終わりのあの日のこと」
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「ワインさんは照れくさそうに───そう、はにかみながらそっと言った」
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「ワンダーさんには黄色が似合うよって、落ち葉の中走り回る私を見て言ってくれた」
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「男の子からそんなことを初めて言われてびっくりして、そして私まで照れた。ワインさんの顔、ちゃんと見ることができなかった」
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「でも、そんなあの日からずっと、あの時からずっと───私は秋の黄色が一番好き」
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「ワインさんが『似合うよ』って言ってくれた黄色、イチョウの葉っぱのこの黄色が一番好き」
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「ただ、どうしてだろう。今年は大きなイチョウの木が切られてしまった。私の庭の隣の木が一本、無くなってしまった」
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「長い時間音がして、ふと気がつたらイチョウの木は倒れていた」
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「横になってしまった大きなイチョウの木、『さようなら』って言っていた気がした───寂しそうに笑っているように、私にはそう見えた」
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「部屋の中で座っていると、涙が溢れた。ここに来てからずっと私達を見てくれていた大きなイチョウの木、優しかったイチョウの木」
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「その一人と急なお別れだから」
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「そんな私をワインさんも飼育係さんも慰めてくれた」
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「まだ全部無くなったわけじゃないよ。また秋にはきっと庭を綺麗な黄色にしてくれるよって、落ち込む私に言ってくれた」
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「いなくなってしまった木だって、また形を変えて傍に来てくれるかもしれないよってワインさんは言った」
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「いつもと同じように、優しい顔で、優しい声でそっと言う。ワインさんはそんなウォンバット───」
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「大好きな、私の大好きなワインさん」
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「ワインさんが言ってくれた」
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「黄色が似合うよって言ってくれた」
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「春のお花のピンク色、暑い夏のお庭の緑色、晴れた冬の空の青い色。どんな色もみんな大好きだけど、秋の黄色が一番好き」
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「そんなあの日からずっと、あの時からずっと───私は秋の黄色が一番好き」
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「来年も必ず秋はやって来る、季節はこれからも巡ってくる。今の葉っぱが無くなってしまっても、きっとまた動物園を黄色くしていく」
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「私達の庭に黄色い葉っぱが敷き詰められていく」
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「春のお花のピンク色、暑い夏のお庭の緑色、晴れた冬の空の青い色。どんな色もみんな大好きだけど、秋の黄色が一番好き」
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「あの日からずっと、あの時からずっと───私は秋の黄色が一番好き」
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「それはずっと変わらない、子供だったあの日から今日までずっと、これからもずっと」
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「ずっとずっと変わらない───」
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「今、ワインさんは傍にいる」
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いつだって一緒だよ
私たちはいつだって一緒だよ
これからもずっとずっと一緒だよ
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私はワインさんにそっと呼ぶ
「ワインさん」
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「どう? 似合ってる?」
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ワンダーとワイン
秋の終わりの二人のお話






   

by bon_soir | 2016-12-05 15:41 | 五月山動物園 | Comments(4)
五月山
秋の終わりの五月山
ワンダー、ワイン、そしてフク
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ウォンバット達はみんな元気

秋の終わり、冬の始まり
みんなそれぞれ、一人ひとりのお話はきっとある



   

by bon_soir | 2016-12-03 14:31 | 五月山動物園 | Comments(8)
眠るレモンライム、眠いフク
レモンライム
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五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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フクは起きている間、色々な所を散歩する
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一度部屋へ戻ったり
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またすぐ出てきたり
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そんな色々なこと
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陽が落ちるのが遅いこんな季節
まだまだ明るい夕方前

でも眠くなってしまうのもウォンバット
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眠いね
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フクが眠気を感じる前から、ずっとレモンライムは眠ってる
自慢のベロが見えない
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眠いね
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寝てるね
自慢のベロが見えた
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レモンライム
相変わらずかわいいミニブタのレモンライム




by bon_soir | 2016-06-10 07:00 | 五月山動物園 | Comments(4)