カテゴリ:五月山動物園( 37 )
黄色い世界の真ん中で
──────あの日、黄色い世界の真ん中で僕は一人泣いたんだ
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イチョウの葉っぱひらりと舞えば思い出す
あの日、黄色い世界の真ん中で空を見上げて君を見送り、僕は一人泣いたんだ
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あの日、黄色い世界は君からの贈り物
みんなが「わぁ」と驚いた
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僕はその後気がついた
あの黄色は空から僕等を探す目印にもなっていたんだね
──────そうさ、僕はその黄色の真ん中にいる
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空を見上げて変な顔して泣いていたのが僕なのさ
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フクの言うとおりだ
あんなに綺麗な青空なのに、今は寂しくて寂しくてたまらない
一度君はお庭のお花に姿を変えて風に吹かれて傍で揺れる
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僕に優しく語りかけてくれるよう──────
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ただね、どうやら今までが幸せすぎたようなんだ
ワンダーさん、君と暮らした毎日がどうやら幸せすぎたようなんだ
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何にも変えることが出来ない大切な時間だったのさ
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僕はあれから涙を溢してばかり
大人なのに時々ぽろぽろ
僕はあれから涙を溢してばかり
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僕と君との物語
まだまだずっと書き続け、自分で読んで自分で泣いて
僕はあれから涙をぽろぽろ溢してばかり
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こんな僕に君はどんな言葉をかけてくれるんだろう
もし君が傍に居てくれたなら、こんな僕にどんな言葉をかけるのだろう
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空に君を探してしまうよ
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まだ星は出てないっていうのにね
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──────黄色い世界の真ん中で僕はワンダーさん声を聞く
夢の中、夢の中ならきっと傍から聞こえて来るはずさ
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黄色い世界の真ん中で、僕は夢を見るための準備を始める
幸せな夢、黄色い世界でワンダーさんに会って二人笑うんだ
そんな夢を見るための、大切な準備を僕は始める
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準備ができればあとは自然と眠くなる
夢を見るための準備ができた僕たちは、そっと目を閉じ眠るのさ──────その大切な夢を見るためにね
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──────もしその夢の中で君に逢えなかったらどうしよう
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すぐに起きてまた夢を見なおすか──────
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───────そうじゃない
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夢を途中で終わりにしてはいけないんだ
普段みんなが僕等を起こさないようにしてくれているのはそれもあるってことなのさ
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じゃあどうするのかって?
──────簡単なことさ
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──────夢の中で君に逢えなければその夢の中でまた夢を見る
夢の中で夢を見て、またその夢の中で夢を見る
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いつかきっと僕は逢える、いつかきっと逢えるはずさ
簡単なことだろう──────
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黄色い世界の真ん中で僕は今一人
夢を見るための準備をしながら僕は一人、今一人
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冷たすぎる冬の風
吹かれて歌う僕とワンダーさん、二人幸せの歌
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みんなの足音、リズムもばっちりちょうどいい
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歌詞はすらすら語呂よく素敵に生まれるよ
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空に向かって口ずさむ
君のところへ届くように、君も一緒に歌えるように
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君が送ってくれた黄色い世界
今ここは僕のステージさ
冬の太陽明るく照らすライトアップ
輝くイチョウ、歩けばリズム軽く刻む
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観客は飼育係さんとお客さん
そして空の上からワンダーさん、サツキにサクラ、ティアにアヤハ
世界で暮らす百万匹のウォンバット
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幕は上がり、みんな笑顔
僕は拍手に包まれて、いつしか寂しさ癒やすのさ
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幕は下りて舞台袖
ワンダーさんの笑顔が見えた
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ほら、ワンダーさんの声、傍で聞くこと出来ただろう
幸せな夢、黄色い世界でワンダーさんと逢って二人笑う夢
ほら、僕は見ることできただろう──────
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ぽかぽかぽかぽか陽が当たる
ワンダーさんの傍で僕は眠ってる
幸せな夢見て僕はまだまだ眠ってる
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楽しい夢、幸せな夢はまだまだまだまだ
もっともっと続いてく
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まだまだもっと、もう少し
僕は眠ったままでいよう
まだまだもっと、もう少し
夢の中でワンダーさんと笑っていよう
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黄色い世界の真ん中で一人泣いた涙が全部乾くまで
またいつかいっぱいたくさん泣けるよう、涙が一度全部乾くまで
まだまだもっと、もう少し
僕は眠ったままでいよう
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「空の上、星の世界はどんな感じだい? 楽しくやってるかい? みんなと楽しくやってるかい」
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「ごめんね、僕はまだまだそこへは行けないようだ。もう一度、何度でもこの黄色い世界を歩きたい、それは僕の願い事」
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「そう、黄色い世界の真ん中にずっとずっと僕はいる。空の上からだって目立つはず、見えるはずなのさ──────僕を探してくれないか」
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仲良く遊ぶコウとユキにあの楽しかった日々を重ね
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悩むフクの姿に大人になった時の自分を重ね
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マルにワンダーの姿を重ねてそっと微笑む
ガラスに映った自分の姿、眺めて見つめてそっと頷く
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思い返せば幸せな日々、本当に本当に幸せだった日々
途中悲しいこともあるけれど、二人幸せな物語
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ワインとワンダー、二人の物語はまだまだ途中
あと何ページ続くかなんてきっと誰にもわからない

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黄色い装丁、厚い本
一巻、二巻、三巻と、どこまで続く
小さな小さな動物園のかわいい幸せ、二人ウォンバットの物語
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イチョウの葉っぱはだんだん減って、そのうち綺麗さっぱり消えていく
春になれば葉はまた茂りだし、夏には木陰を作り風に揺れ
秋が来ればまた黄色く染まりだし、冬の初めに舞い落ち敷き詰め笑顔を作る
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また来年
また来年
みんなの心にまた来年
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また来年
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先ずはなにより『また明日──────』
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明日、明後日、いつのまにか季節は変わる
そのうちまた、春が来る
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みんなの声を聞きながら
みんなと一緒に季節は進む
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──────あの日、黄色い世界の真ん中で僕は一人泣いたんだ
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イチョウの葉っぱひらりと舞えば思い出す
あの日、黄色い世界の真ん中で空を見上げて君を見送り、僕は一人泣いたんだ
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僕と君との物語
まだまだずっと書き続け、自分で読んで自分で泣いて
僕はあれから涙をぽろぽろ溢してばかり




    

by bon_soir | 2017-12-27 19:31 | 五月山動物園 | Comments(4)
千の言葉を一つ一つ
「あの日、動物園はそこいらじゅうが黄色でさ、もしかしたら世界中が黄色なのかもしれないなんて思ってみたりしてみてさ、そんな黄色の世界の真ん中でワインさんが泣いててさ──────」
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「『フクちゃん、フクちゃん』って僕を呼ぶ、あの優しい声が頭の中に聞こえてきたよ」
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「僕も黄色い世界の中を歩き出し、一歩一歩足踏み出せばワンダーさんの声の次にはあの笑顔が空に浮かんできたよ」
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「乾きかけたイチョウの落ち葉に涙が一粒、それはすぐに染みていったんだ」
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「見上げた空は青空だ。星が輝き出すまで時間がかかる。今はあの青色が寂しくてたまらない、悲しくてたまらないんだ」
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朝が来ればいつものように日が昇り、星が姿を消していくかわりに黄色く染まった地面がみんなの瞳に浮かび上がる
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一歩一歩、足踏み出せば優しい声と優しい笑顔のウォンバットのことを頭に描く
食べた干し草、お皿ですっかり冷えている
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そう、季節はもうすっかり冬で、吹く風はどんどん身体を冷たくしていきそう
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マルを眺めてフクは思う、冬の朝にフクは思う
目の前でフクをそっと見つめるガラスの自分もぽとりと一粒、涙を葉っぱの上に落としてる
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「─────僕はあんなふうにただ優しく大きな声で泣くことができるのだろうか」
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「寂しいこと悲しいことが無いのが一番、それは誰もが思ってる──────楽しいこと嬉しいことばかりじゃないってことも今の僕にはわかってる」
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「賑やかだった秋、どうしようもなく寂しい今の冬──────次の春はどんな春になるんだろう」
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「マルと二人、僕等はどんな景色を見るんだろう──────どんなことを話しているんだろう」
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「──────今はまだ、わかるわけがないんだ、先のことなんて誰もわかるわけ、ないんだ」
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ワイン、ワンダー、そしてフク
三人で暮らしてきた五月山動物園に、タスマニアからマル、コウ、ユキが来たのはほんの少しだけ前のこと
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秋、そして今の冬
まだ二つだけ
フクとマル、二人で過ごした季節はまだ二つだけ
その冬なんてまだまだ始まったばかり
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二人の思い出まだまだ少し
未来のほうがずっと長い
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「マル、次の季節は春なんだ─────楽しみだ。僕等二人で過ごす春ははどんな春になるんだろうね」
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ご飯を食べてお散歩始めた黄色い世界
ワンダーが最後に残した幸せ祈る、幸せ託すその黄色
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窓越し見える遠くの景色、フクを見つめるお客さん
涙で霞む、なにもかも
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ワインの涙に感じて見えた愛情、絆、暮らしの歴史
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頭に浮かぶ、空に浮かぶ
目を開いていても、閉じていても
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『フクちゃん、フクちゃん』
優しく呼ぶ声、浮かんだ笑顔と一緒に聞こえて涙がぽろり、またぽろり
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庭の黄色が温かく、庭の黄色はときおりなんだか悲しく見える
いつかこのイチョウの葉っぱは無くなっていくこと知っているからよけいに寂しい
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また来年、一年後
イチョウが色づき青い空に輝きだしたら、それが合図
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大切な日がやって来る
忘れちゃいけない日がやって来る
そんな合図
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時間がその後少し経ち、また黄色い世界に包まれて
見上げた青空きっと寂しく寂しく澄んでいると今から思う
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雲一つない青空はどこか寂しい晴れた空
どこを見つめたらいいのかわからない、何もない空、どこを見つめたらいいのかわからない
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どんなに綺麗な青空だったとしても、なにもないこと、なにも浮かんでいないこと
それは寂しい冬のこと
秋の終わりの出来事を冬になっても思い続けた日々のこと
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星の数ほどたくさんの、言葉を探して伝えていけば
きっと一つの想いを届けることができるかも

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きっと時間はかかるけど、伝わる時はたぶん一瞬
一秒前と一秒後
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千の言葉を一つの想いに変えていく
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一つの想いで足らなければまた千の
千の言葉をまた伝え
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繰り返し繰り返し
言葉を想いにそっと変え
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星の数ほど言葉を伝えて、届け届と心に願う
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傍で眺めているだけだったら何も何も伝わらない
ただ眺めているだけだったなら、きっと何も伝わらない
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想い
一つも届かない
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仲良くなったその先の
ずっとずっとその先まで二人一緒に行くため、願いに色をつけるため
積み重ねていく言葉一つ
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積み重ねていく言葉一つ一つ
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たった一つの大切な想い届けるために今日も一つ、この瞬間に一つづつ
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軽くなったりしないよう、一生懸命考えて最初の千に向かって言葉を一つ
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大切に
一つ一つ大切に
重ねる言葉、一つ一つ
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まだ最初の秋、まだ最初の冬
まだ焦ることなど必要ない
丁寧に、優しく伝える一つ一つ
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ワインはワインの言葉を一つ一つワンダーに伝えて想いを届けてずっと
ずっと一緒に暮らして、一度別れて涙を溢した
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想いがこもった熱い涙
どんどんどんどん溢れ出したあの熱い涙
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──────あんなふうに優しく愛せるのだろうか、二人未来へ進むこと、できるのだろうか
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フク、寂しいことがあった冬に一人思う
思い想うただ一人
伝える言葉心の中で温めて、冬の風に冷えぬよう
冬の風に負けぬよう
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想いに変える大切な言葉を心の中で温めて、冬の風に冷えぬよう
冬の風に負けぬよう
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「あの日、動物園はそこいらじゅうが黄色でさ、もしかしたら世界中が黄色なのかもしれないなんて思ってみたりしてみてさ、そんな黄色の世界の真ん中でワインさんが泣いててさ──────」
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「『フクちゃん、フクちゃん』って僕を呼ぶ、あの優しい声が頭の中に聞こえてきたよ」
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「僕も黄色い世界の中を歩き出し、一歩一歩足踏み出せばワンダーさんの声の次にはあの笑顔が空に浮かんできたよ」
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「乾きかけたイチョウの落ち葉に涙が一粒、それはすぐに染みていったんだ」
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「マル、次の季節は春なんだ─────楽しみだ。僕等二人で過ごす春ははどんな春になるんだろうね」
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「春になるまでに僕は君にいくつの言葉を伝えることが出来るかな」
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「空を見上げて星を見つめ、木を眺めて風に吹かれてさ。僕は思っていること言葉に変えてくよ」
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「いつかそれがその意味が、僕の気持ちが君に伝わればそれでいい」
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「仲良くなったその次の、ずっとずっと一緒にいるために大切な、大切なことなのさ」
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「ワインさんとワンダーさんに教えてもらった大切な、本当に大切なことなのさ」
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「僕の幸せ、君の幸せと一緒なら。僕の悲しみ、君の悲しみと一緒なら、僕等二人きっとその時上手くやっているはずさ」
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「ワインさんの涙を見てさ、僕は少しわかった気がしたんだよ」
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「あとはそれを千の言葉、星の数の言葉に変えて君に伝えていくだけさ」
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「春が来るまでにいくつ言葉にすること出来るかな」
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「いくつの言葉、君に伝えることが出来るかな─────」
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千の言葉を一つ一つ
大切に想いをこめて大切な想い伝わるように
一つ一つ
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by bon_soir | 2017-12-23 13:35 | 五月山動物園 | Comments(4)
ユキとわくわく

ここのドアが開くんだ
ここのドアはいつかそのうち開くんだ
遠くへ行こう、もっと遠くまで行ってみよう
大丈夫、傍には僕がいるからね─────
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ユキがどこに向かっていくのか、僕にはいつもわからない
ユキは教えてくれない
いつだって一人、どこかへ向かって歩いてく
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いままでよりもたくさん散ったよ、黄色い葉っぱ
ユキ、知ってるかい? イチョウって言うんだよ
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イチョウを見ながらワインさんが泣いていた
大人なのに泣いていたんだ
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いつか僕にもそんな気持ちがわかるかな
空を見上げてずっと涙をこぼす日、いつか僕にもあるのかな
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ユキは止まらない
くっついていくだけで精一杯
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本当は横顔見て歩いていたいけど、今見えているのはユキの背中
ユキ、ちょっと待ってよ
あそこ、鳥が飛んで行くよ
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僕はユキを呼び止めることがまだ出来ない
きっと僕のほうがユキより小さいからなんだ
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でもさ
トンネルくぐるのは僕のほうが上手いんだ
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お部屋に戻っていたユキは、空を見上げてポツリと言った
「─────ワインさん、優しいな」
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─────ユキ、僕だって優しくできると思うんだ
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僕はいつも君を追って歩いているだけじゃないんだよ
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もっともっと聞かせてよ
どんなことでもいいからさ、何かあれば僕に聞かせてくれよ

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僕達二人、まだまだ傍にいるんだから
こうして二人、いつも一緒にいるんだから
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困ったな
ご飯をたくさん食べているのに、まだユキのほうが大きいや
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僕は色々なものを見たいんだ
きっとユキだって同じ気持ち
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二人で見れば、二人で話せば楽しいものさ
きっとどんなことでもね
きっとどこへ行ってもね
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悲しいことがあったって、二人で一緒に泣いたらそれでいいんだよ
多分それでいいんだよ
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僕はまだまだわからないこと、知らないことばかり
でもそうさ、きっとそうさ
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僕達二人そうやって、そうして大人になっていくのさ
そうさ、きっとそうさ
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イチョウの季節はまた来年だってさ
日本に来てさ、秋が好きになったよってカッコつける
そんな僕さ
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ユキ、どこへ行くんだい?
お鼻にさ─────
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またユキを追っていく
そんな僕さ
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ユキはあそこだ─────
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この前ここが開いたのに、今日もどうやら閉じたままだとユキは言う
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そう、ここが開けば僕等二人はもっと遠くまで歩いていける
もっと色々なものを見て回ることができるんだ
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ユキ、今度ここが開いたらさ、この前よりも遠くへ行こう
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ユキ、今度ここが開いたらさ、もっと色々見て回ろう
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わくわくするね
なんだかとってもわくわくするね
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きっとワラビー達ともお話できるよ
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わくわくするね
僕達まだまだ知らないことばかり
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わくわくわくわくしてくるね
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フクさん、知ってる?
あそこの扉
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みんなで行けたらいいののね
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ユキ、その時僕は隣を歩こう
歩きたいんだ、隣でさ
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ユキの背中を見るのだって嫌いじゃないよ
でもやっぱり見ていたいのはかわいい顔さ
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そう、いつものようにお部屋を出たら左に行こう
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きっと開いてる時がある
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何かあったとしたってさ、ユキは心配しないで大丈夫
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後戻りなんかしなくたって大丈夫
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僕が傍にいるからね
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その時僕は君の後ろになんていないのさ
君の隣、君の前で笑っていよう
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僕はユキを守るんだ
任せておいてよ、ご飯はたくさん食べてるよ
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怖いことなんかあるもんか
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僕は男のウォンバット
まだまだ身体は小さいけれど大丈夫
そうさ、絶対大丈夫
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あのドア開くその日まで、遠くへ出かけるその日まで
やっぱりユキを追って歩く、そんな僕さ
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何も言わないユキの後、背中を見つめてそっと歩く
そんな僕さ
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わくわくするんだ、止まらないんだ
早く遠くへ行きたいな
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開いてくれよ、早く開いてくれよ
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開かないね
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僕等のわくわく
二人一緒に毎日わくわく
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大人になるため
わくわくわくわく
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昼も夜もわくわくわくわく
青空、星空
昼の日向、夜はすっきり月明かり
影も伸びて一緒にわくわく
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ユキの後ろで
僕はわくわく
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隣で笑うよ
わくわくわくわく
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まだまだ知らないことばかり
わくわくわくわく

僕はわくわく




   

by bon_soir | 2017-12-12 14:48 | 五月山動物園 | Comments(6)
ユキを追って
コウとユキ
一緒に過ごしている日々は、また一つの物語
まだまだ始まったばかり、終わりなんてちっとも見えない書き溜めていく物語
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五月山動物園で暮らすウォンバット、コウとユキ
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日向がとっても暖かい、離れたくなくなれば季節は冬
二人にとって初めての日本の冬
イチョウは散って地面を温め、明るく明るく動物園を黄色く照らす
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毎日自由気ままに過ごす女の子、ユキ
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トンネルからそっと出てきてお昼ごはん
今日はちょっとお寝坊さん
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ご飯の場所に陽がそっと
そっと当たって気持ちがいい
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そう、きっと今日も素敵な日
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遅れて外へ出てくれば、ユキの姿を先ず探し
日差しが眩しくコウを照らす
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コウはいつもユキを追う
きっとずっといつまでも、何かにそっと導かれ
コウはいつもユキを追う
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一緒に食べよう、隣でそっと
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今日の青草、二つの入れ物
潤沢、潤沢
まだまだたくさん
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ユキは静かな女の子
普段はコウに何も言わずにただ気まま
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お行儀良いのかどうなのか
静かに静かに二人でご飯
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美味しいね!
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向かいで食べる? 隣で食べる?
コウはやっぱり隣で食べる
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コウも静かに何も言わずに隣でそっと
二人のご飯はただそっと
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交わす言葉
そっと一言「美味しいね」
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お客さんも少ない日
コウもユキも、動物園もなんだか静か
風の音も聞こえない
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食べている、陽に照らされている
ゆっくりゆっくりぽかぽかぽかぽか
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冬の晴れた日、日向がみんなを温めて
ぽかぽかぽかぽか、気持ちぽかぽか
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ぽかぽかぽかぽか
傍にいればみんなでぽかぽか
温かさ、暖かさ
伝わる伝える温かさと暖かさ
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はみ出しちゃったご飯を食べるコウ
お皿のご飯を食べるユキ
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そっとごめんね「ありがとう」
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「─────僕はユキの傍がいい」
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「ユキは何も言わないけれど、大丈夫」
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「そう、僕も何も言わなきゃいい─────」
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「追いかけて傍にいるだけ、それだけで楽しいからね」
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「ユキは僕を誘うわけじゃない、ただ一人そっと出かける」
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「静かに急いで追いかける、そんな僕さ」
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「『ユキ、今日はそこ開かないよ』と、わかっていても僕は言わない」
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「がっかりさせたくないからね」
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「大丈夫、またそのうち開くよ。そのドアは、ね」
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「お昼寝でもするのかと思ったけれど、ユキはまた出かけた」
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「毛づくろいしていて出遅れた、そんな僕さ」
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「……止まらないよ」
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「ユキは何処だと、探す僕」
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「寄り道してたら見失う」
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「─────ユキ、僕はここにいるよ」
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「どうやら僕と入れ違い」
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「やっぱりさ、僕が声をかけなきゃいけないね」
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「やっぱりさ、早く大人になりたいね」
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「ユキのこと、追いかけてるだけじゃ駄目だよね」
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「でもさ─────僕は今、それが楽しいんだよ」
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晴れた空の青と散り行くイチョウの黄色の中で、コウとユキはころころころころ
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コウは静かにユキを追って、ころころころころ
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二人はころころ
そっところころ、小さな二人
ころころころころ
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今は後を付いていくだけだけれど
いつか二人、隣で手を取りいつまでも
ワインとワンダー、二人のようにずっと、ずっといつまでも
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二人の暮らし、まだ始まったばかり
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追いかけて、追いかけあって
支えて支えて、支えられて
二人大人になっていく
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今はただユキを追って─────
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ユキを追って、いつも隣に
ずっとずっと隣で二人一緒
─────ここで暮らそう
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五月山動物園で二人、一緒に暮らしていこう





    

by bon_soir | 2017-12-10 14:56 | 五月山動物園 | Comments(2)
いつかまた、二人
イチョウ舞い散る黄色い地面、僕はそっと切り取って、君をふわっと包む毛布にしよう
あの空、上手に切り取って、君を映し僕等を映す水色の窓にしよう
あの雲、幾重に重ねてさ、君が大空羽ばたき翔る羽にしよう
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─────①ワイン
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────朝と夜、太陽が見えない間はずいぶんと寒くなった
秋が終わって冬が来たんだ
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冬に向かって空の様子はどんどん変る
晴れた空はより青く、夜空の星はどんどん数が増えていく
そう、一日一日と空気は澄みきっていくんだ
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「あの星座はなんて言ったかな────」
みんなが寝静まった頃、なぜか眠れない僕は一人夜空を見上げ、なんとなく呟いた
月明かりに明るく照らされた動物園と僕、そして少しづつ動き夜空を漂う雲
冷えた空気の中、すべての形がはっきりと浮かび上がっていた
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ワンダーさんは部屋で眠っている
寝息と一緒にときおり動く手と足は昔から変わらず小さい
ずっと見てきた、触れてきたかわいい手とかわいい足だ
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「ワンダーさん、大丈夫かい────」
なにか楽しい夢を見てそうにそっと微笑むワンダーさんの寝顔を近くで眺め、そっと呟いてみる
僕は気になっていた
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足元から影が伸び始めた夕暮れ時
なんだか少し身体が重い、ご飯があまり美味しくないと、ワンダーさんから聞いたからだ
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あの時の無理して見えた力の無い笑顔に僕は胸騒ぎ
色々なこと、昔のとある日々のことを思い出す
気がつけば見上げた月の色と模様がいつもと少し違って見える
「どんなことでも“いつもどおり”がいいんだけどね」
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穏やかだった夜風がふいに強く吹き、イチョウの枝と僕の身体を少し震わせる
「寒いね」
無意識なうちに出たのは冬の言葉だ
急に寒くなったからワンダーさんも少し調子を崩したんだろう、慣れればきっと大丈夫────と、不安を無理に隠すように僕は自分勝手を納得させる
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────そう、誰だって嫌なこと、嫌な気持ちからは離れていたい
ごまかしてばかり
良くないことだと知っておきながら、駄目な僕は自分の気持ちから距離を置こうとしてしまう

「知っていることあったらさ、僕に教えてくれないか────」
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僕は気配を感じた方へ向かってささやいた
「いるんだろ、僕に教えてくれないか────不安で不安でどうにかなりそうなんだ」
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「ワンダーさんを眺めていたんだ。ワイン君、気がついていたのかい?────久しぶりだね」

静かな優しい声と一緒に部屋の中へ影が伸び、すっと入ってくる
感じた気配どおり、ウォンバットの神様は部屋の外
変に明るい月明かり、星明かりにそっと照らされていた
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「────ワインさん、誰かいるの?」

ワンダーさんは静かに、そっと目を覚ました
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─────②ワンダー
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─────ワインさんの庭との間、私はフェンスの横を走り回ることが好きだった

お天気の良い日、気分がいい日に外へ出ればワインさんは必ず近くへ来てくれた
すれ違いざま何度も何度も目が合って、私達は他愛もない短い話を何度もかわし、小さな幸せの中、ゆっくりと日が暮れる

そんないつもどおりの日々の中、私はフェンスの横を走り回ることが好きだった
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─────ワインさんの庭との間、私はフェンスの横を走り回ることが好きだった
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ふとしたある日、私は自分が少しおかしいことに気がついた
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今までのように身体は動かず、あまり急いで走れない
すぐに疲れてぺたりと座りたくなってしまう
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ご飯もあまり美味しいとは感じない
見る夢も短くて、その景色は不思議と色が薄く見えた
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そう、私が私でないように
色々考えてみたとしても、頭の中に浮かんでくるのは不安なことばかり
なんだか寂しいことばかり
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ワインさんはぐっすりと眠っているような、とある日、晴れた夜のこと
夜風はそっと優しくて、月も星もふんわり明るく私を照らす
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なぜか眠れない私は一人夜空を見上げ、星と星とを見えない糸で繋いで星座を作る
下手くそだったり、少し無理があったり
一つ作って、二つ作って何度も笑う
「こうして、こうして、あっちとこっち─────できた、これがワインさん座」
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夜空に浮かぶワインさん
ワインさんはその夜空でも優しく笑っていた
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穏やかだった夜風がふいに強く吹き、イチョウの枝と私の身体を少し震わせる
「寒い」
夜露が降った庭の中、空気は冷えて温かい手を恋しくさせる
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いつも触る、いつも握る優しくて温かい
そんなワインさんの大きな手
身体がうまく動かない、今の私はいつもどおりの優しさに触れることもままならない
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「これから私、どうなっちゃうんだろう────」
声に出るのはそんな弱音
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そう今、私の身体は弱っている
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ぽろりと一粒、涙が落ちた
─────ワインさんの庭との間、ゆっくりでもいいからフェンスの横を走り回ること
私は後どのくらい出来るんだろう────
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今すぐワインさんを小突いて起こして優しい声を聞いていたい
今すぐワインさんの目を見つめながらその手にそっと触りたい
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いつもどおりの日々というのは優しさ愛情溢れた日々のこと
─────知っている
私は凄く幸せなウォンバットなんだ
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涙を私はもう一つ、続けてこぼれてもう一つ
ほっぺをつたって落ちるその瞬間、流れ星も一つ二つと輝き、消えた
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「お母さん」
私を呼んだ懐かしい声
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振り返るとそこには二人のウォンバット
サツキとサクラ─────私とワインさんの大切な子供達
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私は二人をぎゅっと抱きしめる
なんだか上手く動かなかった身体にその時ぐっと力が入った
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「お父さん、眠っているけど起こそうか。今まであんまり何も言ってなかったようだけど、きっとあなた達には会いたいと思っていたはずだから」
そう言った私にサツキとサクラ、二人は涙をこぼして横に首を振る
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「駄目、お父さんにはまだ言えないこと、これからお母さんには伝えなければいけないから」

サツキとサクラはそう言ってもう一度涙をこぼす
最初よりもたくさんの涙、月明かりと星明かりできらきら光る
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私にはわかる
二人が何を言おうとしているのか、それがわかる
「大丈夫、あなた達の顔を見た時に全部わかったよ」
そう話すと私達三人は静かに抱き合い、そして静かに涙をこぼし続けた
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二人が言うとおり、ワインさんにはまだ伝えることができない
悲しい気持ち、寂しい気持ち
ただそれだけの日、ただそれだけの残り時間になってしまいそうだから
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残り何日かはまだわからない
ただ遠く高い所でサツキとサクラは待っている
心配そうに見つめてくるワインさんに身体のことだけ少し話し、いつもどおりの日々が少しでも長く続くように力を振り絞って私は笑った
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なるべく多くお昼寝をして身体を休める
そして夜にもまた長く眠っていた
不思議と怖い夢を一つも見ない
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夢の世界の良い所
夢の中なら毎日毎日少しだるい私の身体もちょっと自由
ささいだけれど大切な、そういうこと
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夢でワインさんとサツキとサクラが遊んでいる
それは家族写真のように幸せを映して私の頭の中へ
お客さんたちのように私達は写真なんて撮らないけれど、幸せな家族写真のように心の中へとしっかり残る
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みんな笑ってる
ワインさんもサツキとサクラも
みんな、みんな夢の中で笑ってる
私には今、なんの不安も無い
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夢の中に誰なのか知らない声がそっと聞こえてきた
誰の声かは知らないけれど、優しそうで温かそうで
─────とても素敵な声がそっと聞こえた
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夢の中に現実のことが少し滲んでいるみたい─────
滲み出した元の方を見るように、私は夢から一度醒め、声のする方そっと見る
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「────ワインさん、誰かいるの?」

ワインさんの横には大きなウォンバットが立っている
─────きっとウォンバットの神様だ
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「二人共、僕の話を聞いてくれないかい─────」
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─────③二人の旅
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「本当なら目的地まで行く途中のことも楽しめるのが旅なんだ。でもいつか説明したいけど今回は時間が無い。二人でそっと目を閉じて、二人で一緒の夢を見なさい。二人一緒に目を覚ました時、そこは旅の目的地─────君達はタスマニアにいるはずさ」


────そうだ、僕とワンダーさんは今タスマニアにいる
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あの時、ウォンバットの神様は僕と後から目を覚ましたワンダーさんに言った
「遅くなってしまったけど旅に出かけよう。いつかワイン君が言っていたはずさ。フクの所にお嫁さんが来たら、その時出かけようって言っていた旅だ」
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そう、いつか確かに僕は言った
僕等の遠い記憶の片隅、タスマニア
色々見て回ってフクや動物園のみんなに土産話をすればきっと楽しいよって、ね
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その時の話、タスマニア旅行へ今僕等は出かけてきている
帰ったらちゃんとみんなに旅の話をしてあげよう
でも、そうだ─────フクはもうマルに色々聞いているのかもしれないね
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まあいいさ、大丈夫
僕等はマルもコウとユキも知らないタスマニアを見て回ればいいだけのこと
きっとそういうことだ
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少し歩いた所で気がついた
身体が重いと言っていたワンダーさんは今は平気だと笑顔で走り回って見せてみる
僕等はやっぱり夢を見ているのだろうと考えたけど、大丈夫
夢じゃないようだ
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楽しいことを夢に見るのもいいけれど、やっぱりちゃんと起きている時にしっかりと自分の目で見て回ること
きっとそれがいちばん大切なのさ
なぜなんだろう、夢というのはいつか忘れてしまうもの
なぜなんだろう、実際に見たこと感じたことっていうのはいつまでも忘れたりはしないもの
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できるというなら後回しなんてしては駄目
少し無理してでも頑張るべきなんだ──────

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綺麗な街、たくさんの公園、たくさんの大きな公園
たくさんの山、滝、洞窟に湖と川
ワンダーさんが歩きたがっていた深い森
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ここタスマニアには本当に多くの自然がある
流れる空気、吹き抜ける風、冷たいお水に澄んだ空

そして何よりクレイドルマウンテンだ
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その景色に僕とワンダーさんは言葉を失う
そうだ、表現なんてできっこない

ここの景色をどうすれば伝えることが出来るのだろうか
ここで感じたこの気持ち、僕等はどうすれば伝えることが出来るのだろうか
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─────答えは出ない、出るわけない
来るしかないんだ、見るしかない、感じるしかないことなんだ
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タスマニアの11月は春から夏に変わる時期
高原は色とりどり、見たことのないお花がたくさん咲いている
「ワイルドフラワー」
見渡すかぎりのお花に囲まれたワンダーさんはそう言うんだって幸せそうに笑って喜ぶ
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「このお花、中でも一番かわいいね」
ワンダーさんがとびきりの笑顔を見せた
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この笑顔、僕は今まで何回か、何回も見ているはずさ
凄く凄く懐かしい、そんな気持ちが心の中をそっと少しずつ熱くする
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「このままここで星が見たい」
ワンダーさんはそう言って、暗くなり始めた空をいつもの何倍にも輝く瞳で見上げていた
夕暮れ綺麗なタスマニアの空に一番星が光りだす
明るく輝いていた太陽は山あいにゆっくり沈む
きっと最高の夜が僕等の所にこれから静かにやって来る
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この夜、僕等と一緒にいるのは百万本のワイルドフラワー
そういうことだ
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いつも見ている夜空とは違う星空
南半球、タスマニア
僕等は今、遠く離れた場所にいる
本当は懐かしいはずなのに僕は何も覚えちゃいない
僕等は日本のウォンバット、素敵な動物園で優しい人達と一緒にずっと過ごしてきた日本のウォンバット
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そういうこと
きっとそういうこと
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「ワインさん、素敵な旅だね」
僕のすぐ傍、隣で肩寄せ、ワンダーさんはそっと小さく声に出す
「本当だね」と、僕はただ一言

きっとそれだけ言えばいいはずだ
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「日本へ一緒に行った、ずっと一緒に暮らしてきた男の子がワインさんで良かった─────ありがとう」
ふいにそんなことを言い出すから僕は戸惑いあわてて夜空を指差し、少し早口
「ワンダーさん、ほらあれが南十字星─────」
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お返事は聞こえない
ワンダーさんは眠っていた
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たくさん歩き回ってたくさん喋ってたくさん笑って、きっと疲れてしまったんだろう
月明かりが幸せそうに微笑みながらそっと横になったワンダーさんを優しく照らす
「ワンダーさん、そろそろ動物園に帰ろう─────」
僕はワンダーさんの隣で横になり、そっと目を閉じた
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二人でそっと目を閉じて、二人で一緒の夢を見る。二人一緒に目を覚ました時、そこはきっと動物園
僕等の大好きな五月山動物園──────そういうこと、きっとそういうこと
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─────④いつかまた、二人
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──────僕はどれくらい眠ってしまったんだろう
目を覚ますとどうやら辺りは薄暗い
これから夜になるのか、それともこれから夜が明けるのか
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「─────お父さん」
どこか懐かしい言葉を聞いた僕は、その声がした庭の方を部屋の中からそっと見た
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二人の女の子─────僕の目から涙が溢れる
「サツキ、サクラ、どうしたんだい?」
僕は二人のところへ駆け寄った
僕はすっかり歳をとってしまったけれど、サツキもサクラはあの頃と何も変わらない
サツキ、サクラ─────僕とワンダーさんのかわいい子供達
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「ワインさん」
気がつくとワンダーさんは僕達のすぐ後ろで泣いていた
僕等の庭とお部屋の間の金網が今は綺麗さっぱり何も無い
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「しばらく内緒にしておいたことがあります。ワインさん、私はサツキとサクラと一緒に出かけなければいけなくなりました」
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─────サツキとサクラの姿を見た時に、嬉しさと一緒に感じたこと
それはやっぱり間違いじゃなかったんだ
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明日の深夜か明日の朝
そのくらいで最後の旅に出ると言う
わかっていたほうがいいのか、わからないままお別れしてしまうのがいいことなのか
今の僕にはわからない、考えることもできやしない
ただ後から後から溢れる涙をこらえ、ときおり拭うだけで精一杯だった
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イチョウ舞い散る黄色い地面、僕はそっと切り取って、君をふわっと包む毛布にしよう

あの空、上手に切り取って、君を映し僕等を映す水色の窓にしよう

あの雲、幾重に重ねてさ、君が大空羽ばたき翔る羽にしよう
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夜から朝まで寒くて寒くてしょうがない
だから、イチョウ舞い散る黄色い地面、僕はそっと切り取って、君をふわっと包む毛布にしよう
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僕等を映すカメラが新しくなったのさ
だからいつでも君が動物園を眺めることができるように、あの空、上手に切り取って、君を映し僕等を映す水色の窓にしよう
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空の向こうずっと遠く、行くっていうのは大変さ
途中で疲れてしまわないよう、あの雲、幾重に重ねてさ、君が大空羽ばたき翔る羽にしよう
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ははっ、なんてことだ
どれも全部僕が必要な物じゃないか
どれも全部僕が欲しい物じゃないか
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寒い日、夜空に君の星を眺めるために
空の上のカメラで君を眺めるために
君の所にいつでも飛んでいけるように

僕が必要だって思う物ばかり─────こんなわがまま言うような僕なのさ
きっと何一つ叶えることなんかできないよ、ワンダーさんにあげることなんかできないよ
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僕はいつまでたっても君に甘えてばかり
歳をとっても時間が過ぎても、僕は君に甘えてばかり
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僕にはワンダーさんが必要なんだ
僕にはあの優しい笑顔が必要なんだ

僕は弱虫、僕はこんなにただの弱虫
「ワンダーさん、こんな僕とずっと一緒で、それで本当に良かったのかい─────」
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サツキとサクラは帰ること無くずっとワンダーさんの傍にいる

背中に乗った小さなサクラ、隣で笑うかわいいサツキ
僕らはお客さんのように写真を撮ったり出来ないけれど、この風景はそうだ「家族写真」
色鮮やかに小さな幸せそっと写したような、そっと見つめる僕の心に優しい優しい家族写真
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─────なぜワンダーさんは遠く旅立ってしまうのか
この前の旅でその理由がわかったって、ワンダーさんはそっと話してくれたんだ
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「ワインさんと私の物語は終わらない、まだまだずっと続くから────」
涙が光る優しい笑顔でワンダーさんは言ったんだ
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生きてる間じゃ時間はぜんぜん足らないってワンダーさんは涙をこぼして笑うんだ
僕と出会ったから、僕と過ごしてきたから、だから足らない、まだまだ二人の物語は続いてく
物語は同じ場面ばかりじゃない、寂しいこと悲しいこと、嬉しいこと楽しいこと
今までだって色々あったって、熱をこめて話し続ける
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─────そうだ、今この瞬間も僕達二人の物語
まだまだ続く、ずっと続く僕達二人の物語
一度離れ離れになったって、いつかまた
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僕達二人はいつかまた、一緒に歩ける時が来る─────
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お別れは本当に寂しいね
今までずっと一緒だったのに、これから先は一度お別れ
飼育係りさんよりずっと長く、誰より長くワンダーさんと一緒いたはずの僕だけど、これから先はみんなと一緒、ワンダーさんと一度お別れさ
これからできることはただ一つ、今までどおりワンダーさんを想うこと
ただそれだけさ
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心残りはただ一つ
これから高く遠くまで行かなきゃいけないっていうのにさ、隣でワンダーさんの手を引いてあげることはできないんだ─────サツキとサクラに任せるより他はない
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次の日の夜が明ける前のこと、ウォンバットの神様やって来た
朝といえば朝だけど、まだまだ空には星が光る
思った通り寒くて寒くてしかたない
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「忘れないで」と、ウォンバットの神様が静かに言う
サツキとサクラがワンダーさんを連れて行くのはあの星光る向こう側だと、ウォンバットの神様が僕に言う
ティアもアヤハもすぐ傍にいるという
──────あの幾つかの優しい光、それはウォンバット達の星なんだ
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イチョウ舞い散る黄色い地面、僕はそっと切り取って、君をふわっと包む毛布にしよう
あの空、上手に切り取って、君を映し僕等を映す水色の窓にしよう
あの雲、幾重に重ねてさ、君が大空羽ばたき翔る羽にしよう

僕はもう一度そうやって呟いた
心の中で言葉をそっと温めて、一言一言気持ちをこめて呟いた
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ウォンバットの神様が涙を流して僕に言う
「見てごらん、一つだけ、一つだけは届いたようだ」と、空を見上げて僕に言う
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「あっ」

少しだけ明るくなり始めた東の空に漂う雲が集まりだして、ワンダーさんの傍で幾重に重なり羽になる
ワンダーさんをそっと空へと連れて行く、大きな大きな羽になる
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「ワインさん、ありがとう」
ワンダーさんの目からは涙がこぼれ、傍にいた僕の手の上にそっと落ちた
その涙は冷たい空気の中でひときわ温かく、悲しみ冷えた僕の心を温める
「ワンダーさん、ありがとう」
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続けた言葉は二人同時に重なった
「いつかまた、二人でさ─────」
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大きな羽が羽ばたくたびに黄色く染まったイチョウの葉っぱが何枚も何枚も舞い落ちる
ワンダーさんが夜空を黄色く輝かせ、動物園を真っ黄色に染めていく
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サツキとサクラが手を振っているのが見える
「ワンダーさんをよろしくね」
涙で霞む三人の姿から目を離さないように、僕はまばたきもしないで見つめ続けた
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空に溶けかけた鳥から一度でも目を離せば、もう決して見つからないことを僕は知っていたからだ
見つめ続け、空の彼方に消えるまで、少しでも長くみんなの背中を見続けなければいけない
僕が最後にできることはただそれだけだ
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ワンダーさんが空の向こうへ消える頃、動物園はイチョウの葉っぱでいっぱいになった
今までのどの秋の終わりよりも黄色く染まって輝いている
「凄いや」
僕は辺りを見渡し、涙をていねいに拭ってから教えてもらった星がある方角をもう一度眺めた
星の数がさっきよりも三つ増えている
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ワンダーさん、空の上から動物園の場所がわかるかい?
君が黄色く染めた場所だよ、そこから僕が見えるかい?
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その日の朝、飼育係さん達がワンダーさんのいない部屋に驚いて、あたり一面のイチョウの葉っぱと一緒にどういうことなのかを気がついて泣き出した
大人なのに泣くということはウォンバットも人も一緒、同じこと
「ありがとう」
ワンダーさんのために涙をこぼしてくれる人達に僕はお礼をしていくことにした
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今はもう僕の庭の隣にワンダーさんはいない
今頃きっと太陽に照らされ黄色く光る動物園を空の向こうから眺めてる
サツキとサクラ、ティアとアヤハときっと一緒だ
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庭へ出た僕をマルが少し不思議そうに目で追った

─────そうだ、一つ困ったことがあったんだ
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僕はくるくるくるくる左回り
いつのまにかにね
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いつものように君が優しく呼んでくれないと、僕はどこへ向えばいいのかわからない
だから今日も僕はくるくるくるくる
僕はくるくるくるくる左回り
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ああ、まただ─────
僕はくるくるくるくる左回り
いつのまにかにね
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僕がまっすぐ歩くには、ワンダーさん、君が必要だったのさ
今僕はどこへ行けばいいのかわからない
星が出てない昼間はさ、僕は何を見つめたらいいのかわからない
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いつかまた会えると知っていても、今この瞬間が僕のことを寂しく悲しくさせてしまう
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僕は少し疲れて一休み
泣き疲れて僕は一休み
のんびりいこう、僕はもう大人なんだから─────
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喜びと悲しみを僕等は感じて大人になった
二人笑顔の喜びは突然やって来る悲しみに打ち消され、その悲しみを超える喜び見つけて、重ねて繋げてさ
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僕はこれ以上大人にはなるのかな
喜ぶことはきっとまだまだたくさんあるけれど、ワンダーさんが隣にいない悲しみ以上の悲しみがこの世にあるはず無いのだから
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それに僕はもうお爺さんだ
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生きてる間だけじゃわからないこと多すぎる
きっとみんな、全部のことをしらないままいつかそっと旅立っていくんだろう
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大丈夫、僕達の物語、みんなの物語はずっとずっと続いていく
─────そうだろ、ワンダーさん
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まだまだこれから
まだこれからだ
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冬だって始まったばかり
きっとそういうことなんだ
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色々なことに悲しんでばかりじゃ駄目なんだ
忘れないこと、想うこと
その気持ちがあれば大丈夫
きっと大丈夫
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大切な誰かにきっと
わかってもらえるさ
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いつかきっと自分にも
わかる日が来るのさ
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イチョウ舞い散る黄色い地面、僕はそっと切り取って、僕達ふわっと包む毛布にしよう

あの空、上手に切り取って、僕等みんなをそっとを映す水色の窓にしよう

あの雲、幾重に重ねてさ、僕達が大空羽ばたき翔る羽にしよう
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「いつかまた、二人─────手を取り合って旅に出よう」
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昼の間、僕は見つめる物を一つ見つけた

タスマニアの旅の時、ワンダーさんが一番かわいいって言っていたワイルドフラワーがそっと一輪咲いていたんだ
庭の片隅、ワンダーさんが日向ぼっこをしていた場所に、ね



    

by bon_soir | 2017-12-05 20:52 | 五月山動物園 | Comments(10)
ワンダーさんのお知らせ
五月山動物園のウォンバット、ワンダー
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大好きなワインと二人、ずっと仲良く暮してきたワンダーさんが11月25日の未明、空の向こうへと旅立っていきました。
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ワイン
ワンダーさんは28歳
尊敬することばかりです
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今はただ
ただ伝えたいこと
ありがとう
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儚く健気
そしてなにより美しかったワンダーさん
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何十回、何百回と会えたわけじゃないけれど
いつだってときめきをくれたワンダーさん
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本当にありがとう
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ワイン
寂しくなるね
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ワイン
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by bon_soir | 2017-11-27 15:18 | 五月山動物園 | Comments(4)
ただ訪れる冬
前回(→☆☆☆☆☆)からの続きになります

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「あれが北斗七星、向こうがカシオペア、その間のあの星が北極星────ホッキョクグマの星」
普段見えないような星まで見える不思議な冬の夜空の中に、僕は見覚え、聞き覚えのある星をみつけてなんとなく呟く
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────綺麗な星空、一生のうちに何回見ること出来るのか
僕は辺りを見渡した
ワインさん、ワンダーさん、コウとユキ
ヒツジ達にヤギたち、レモンライム
そしてもちろん隣のマルも────
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────真夜中さ、みんな眠って夢を見てる
そうそれはいつもと同じこと
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僕は部屋に戻りマルが眠っていると思われる場所の壁をそっと叩いてみる
本当は夢を途中で遮ることをしたくはなかったけど、僕はどうしても今日の星空をマルに見せたかった
「起こしてごめん。マル、起きてよ。少し寒いけど外へ出ておいでよ」
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「大丈夫、少し前から目は覚めてたから」
マルはみんなを起こさないように小さな声でそう言った
起こして嫌な気持ちにさせないかと不安だった僕は目を閉じ「ふぅ」と小さな深呼吸
またドアからそっと庭へ出た
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「わぁ」
隣でかわいい声が聞こえた
マルもこの星空に気がついたんだ
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「綺麗だろ。こんな星空は僕も見たことが無いんだ」
僕はタスマニアとは違う星、星座が広がっていることを少しだけ教えた
たくさん教えるには時間がかかる
それに今は必要がない
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マルの顔を僕は見る
昼間と一緒、傍にある優しい顔だ
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マルの瞳にはこの満天の星
これからの冬の星空全部をまとめて一度に広げてしまったような数の星が映る
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僕とマルの間にはいつもの金網
けど今それは気にならない
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二人見上げた星空は今もこれからもずっと一緒、同じ物
空が区切られること、ここの動物園に僕ら二人一緒にいれば絶対に無い
────それだけでも幸せさ
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「あっ!」
見上げた直した夜空に一つ二つと流れ星
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「見えた?」
とささやく僕にマルは言う
「うん、見えた」
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そうさ────僕ら二人、一緒の星空を見上げてる
そういうことなんだ
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“カシャ”

小さな音がした方を見てみると、マルの可愛い爪が金網からそっと出ているのが見えた
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僕はそっとその爪の上に自分の爪を重ねていた
何も考えずただそっと、当たり前のように自然にただ
ただそっと
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────マル

マルの爪に、マルの手に温かさを感じたその時だった
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僕ら二人の身体がふわりと地面を離れ浮かび上がる
ゆっくりゆっくり、だんだんと高く金網の上を越えていく
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久しぶりに見る金網越しじゃないマルの顔
身体が何故浮いているのかと考えるのは後回し
僕は傍にある顔をただ、ただ見つめて「マル」とさっきまでより少しだけ大きな声で言った
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「────っ」

マルが恥ずかしそうに小さな小さな声で何かを言った瞬間のこと────
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「えっ!?」
僕等の身体はすごいスピードで星空へ吸い込まれるように高く飛んで行く
マルが何を言ったのか、突然のことで僕はちゃんと聞き取れなかった
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僕の名前を呼んだような感じ
どう呼んでくれたのかはわからない
どんな状況かも今は関係ない
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ただ金網越しじゃない、かわいい顔が隣に、一番傍で微笑んでいること
それが一番大切なこと、きっときっと大切なこと
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僕は今どんな顔でいるんだろうと、映るガラスの無い夜空に向かってそっと微笑んでみた
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その間にもどんどんどんどん地面を離れて夜空の奥へ
向かう先は雲一つない星空さ
僕等は何も怖くない、不思議だけれど怖くはない
向かう先は雲一つない綺麗な綺麗な星空さ
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「夢、夢なのかな?」
僕はマルに訊いてみた
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訊いておきながら僕は思う
現実のことであったら嬉しいと、夢であっても構わない、と
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いつもよりも多く近くで輝く綺麗な星、遥か下の方輝き流れる街の灯り
そして傍にある顔────現実だろうと夢であろうと僕は今幸せさ
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僕の目に映るものは変わらない、別にどっちであっても幸せさ────
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「────夢だよね」
と、言おうとしたその瞬間、マルがにっこり笑って僕に言った
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「多分────きっと、きっと夢だよ」

────そうだ、僕等二人同じ夢の中、同じ夢を今一緒に見ている
きっとそうなんだ
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────夢のほうがいいことがある
今こうして目の前に金網が無いように、たくさんの星の傍にいるように
想えばなんでも出来そうだって思えるように
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そう夢の中なら僕は自由、夢の中なら僕等は自由
僕等は二人一緒に雲一つないこの夜空を、この星空を駆けることが出来るんだ
自由に、醒めるまでは僕等は自由
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同じ時間、同じ瞬間、同じ夢の僕とマル
────そう、今僕等はきっと夢の中
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夢は素敵で楽しい方がいい
きっと現実はそればかりじゃないからね
────なんでもない日常が一番幸せ
僕はワインさんとワンダーさんに教わったのさ
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僕等は自由に星空を駆ける、飛んで駆けていく
夢の中なら僕等は自由、想うだけで僕等は自由
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ほら、見てごらん
あそこにいるのがタスマニアデビルの二人、女の子
同じタスマニアから来て今あそこで笑ってる
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────そう、僕等は今、きっと東京上空
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リンゴがたわわな山道を眺めて、土管の中をくぐり抜け
僕等は笑って夢の中
ウォンバットが今日もどこかで夢を見ている
今もどこかで、夜も昼間も夢を見ている、僕等二人、みんなは日本で暮らすウォンバット
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ウォンバットは木には登れない
穴を掘ることが出来るんだ
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食べて眠って散歩して、穴を掘ってあくびして、飼育係さんや歌のお姉さん、そしてみんなと一緒に笑うんだ
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そう、わかるかい?
なんでもない日常がきっと一番幸せ、そんな気持ちをわかってもらえるかい────
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きらきらきらきら、すぐ傍で星が光る
きらきらきらきら、すぐ傍でマルも光る
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きらきらきらきら、光る幸せ僕等の夢さ
きらきらきらきら、マルの笑顔は夢の中でも普通の時間の流れでも
きらきらきらきら、マルの笑顔は光って見えるのさ
きらきらきらきら、笑顔はきらきら、これからずっと瞬いて光るのさ
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爪に、指に触れてこの時間が始まったように
僕はこの先どんなことでもそっと触れて、そっとさわって始めよう
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自然になんでもないように、なんでもない幸せな毎日の中でのことさ
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自然にさ、僕は自然にこの先どんなことでもそっと触れて、そっとさわって始めよう

ワインさん、ワンダーさん
そうだろ? そういうことなんだろう?
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夢の中なら自由だけれど、それよりもっと、もっと幸せなこと────
こうして素敵な夢を見たから僕は本当によくわかる
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二人、幸せに暮らすワインさんとワンダーさんをずっと眺めていたからよくわかる
なんでもない日常はいつか自然に夢通り抜けてもっと先へ、もっと幸せ感じるその時へとたどり着く
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傍にある顔、進む季節
それだけだ
僕の幸せたどり着く、僕等二人の幸せにたどり着くのに必要なのはきっとそれだけ
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後は自然にその時が来る
そっと触れて、そっとさわって、その時にまた進んでいこう
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────夢の中のはずなのに夜が明けていく
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レモンライムの寝言が聞こえる
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僕等、そろそろ目が覚めるのか────

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動物園はいつもの朝だ
今日もよく晴れて木漏れ日眩しい、もうすっかりと冬の朝
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日陰は少し寒くなった
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ワインさんはどんな夢を見たんだろう
どんな夢を見てきたんだろう
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ワインさん、僕は幸せ者だね
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あの星空とマルの笑顔
冬が始まる日の思い出さ
きっとこの先ずっと色あせない、僕等二人の思い出さ
大切な思い出なのさ
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またそのうちに夜が来る
こんなに晴れた日のことさ、またたくさんの星が輝くだろう
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でもそれは、その星たちはここから遥か遠く絶対に手が届かないところで輝いている

────そうだ、隣を見るんだ
僕、隣を見ろ────

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隣の笑顔は今もすぐ傍、これからもずっとすぐ傍に
そうだよ、わかるだろう、わかっただろう────何が一番大切なのかがさ
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大丈夫、最初からわかっていたことさ
夜空を埋め尽くしたたくさんの星と踊りだした冬の星座
昨日のことは確認、きっとそうさ

僕の一番大切な、ね
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あの時、マルは僕のことをなんて呼んだんだろう


   

by bon_soir | 2017-11-16 17:35 | 五月山動物園 | Comments(6)
傍の顔と冬の星空
五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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毎日毎日少しずつ
冷えていく空気と増えていく星の数

「イチョウの葉っぱ、まだ散らないのかな」
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冬が来ること、来たことを感じだしてふと呟いたフク
でもただそれはただ、考えもなし深く思うこともなし
ただ呟いただけ
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あの日に見えた、思い描いた未来のこと
そのことがフクの頭の中、心の中にいつまでも残り
マルの顔をふと見るたびにそれはまた色濃く大きなっていく
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毎年この時期に気にしていたこと
イチョウの葉っぱの綺麗な黄色、青く高くなった空のことや軽く流れていく雲のこと
冷たいと感じだした水のことや、かなり減ってきた庭に生える草
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今までは毎日いつも眺め、考えていたこと
そんなこと全部、今はただ瞳に映るだけ
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思うこと、想うこと
起きている間、散歩している時間、ご飯を食べている間
そして夢の中までも
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マルの顔と思い描いた未来がフクの今、全部
隣で、傍で温かく
微笑む顔がただ、今のフクには全ての毎日
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向こう側で散歩を続けるマルを眺めふと思い呟いたフク
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「────今度はいつ、いつこのフェンスは開くんだろう」
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「なんだか恥ずかしいからさ、君に言ったことはないけれど、僕の頭はいっぱいなんだ。これ以上溜めておくことはもう無理、溢れ出してる」
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「あの時に見えてしまった幸せそうなあの未来、そこへ行くにはどうしたらいいのかって考え続けてさ、もう僕の頭の中はいっぱいなんだ」
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「傍で微笑む君の顔をずっと眺めてる、目が合うたびにまたいろんなことを考える」
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「馬鹿みたいだろ────もう僕は大人なのにさ」
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「馬鹿みたいだろ────本当にさ」
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「こんなに晴れた日の朝はさ、少し離れて散歩したっていいんだよ。君の可愛い顔に変な影がかかっちゃうからね」
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「これだけ明るいんだ。少し離れていたって君の顔はよく見える。だから少し離れていたっていいんだよ」
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「ごめん、嘘ついた。どんな時でも傍に居てくれたほうがいい」
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「可愛い顔を傍で見せてくれたほうが嬉しいよ」
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「やっぱり恥ずかしくってさ、こんなこと声には出来ないけどね────」
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「ワインさん、こんな時に僕はどうしたらいいんだい? こんな気持の時は何を考えればいいんだい?」
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「ワインさんとワンダーさんのようにさ、ずっとずっと幸せに暮していくにはどうすればいいんだい?」
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「僕の思い描いた未来はさ、ワインさんとワンダーさんの暮しそのものなんだよ」
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「ワインさん、僕もそこまでいけるかな────マルと二人、僕らは越えていけるかな」
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「わかってるよ。僕が思い描いた未来のこと、それは僕次第。わかってる、僕次第ってことなんだろうね」
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色々考えているうち陽は傾きゆっくりと、なんだか早く沈みだし
動物園は閉園を告げる声
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フクの傍に居たマルは日課のような道草おやつ
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「マル、そろそろ閉園の時間だよ」
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フクがそっと声をかけても楽しそうに駆け回り、お気に入りの道草おやつ
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「────あぁ、まただ。また見える。幸せな未来がさ」
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「マルの後ろをついてまわる小さな小さなウォンバット、君のことがまた見えてくるよ────」
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「はっきりと、ぼんやりと。僕の目には見えてくる。思い描いたあの未来────そう、見えてくる」
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「そこへ行くには、手にするにはどうすればいいんだろう────そのことでまた頭と心がいっぱいだ」
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「そしてそのまま、お部屋に戻る僕さ。そのうちマルも戻るだろう」
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「マル、夜になると冷えるね。冬だよ、もう、ね」
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────部屋に戻ってすぐに眠り、僕はいつものように夢を見た
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庭のガラスに映った僕の変な顔
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そしてすぐ傍となり、マルの顔と猫の声
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その猫達の声で僕はそっと目を覚ます
良くあること
また夢の中へ現実が滲んでいたらしい
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僕は部屋のドアをそっと開け庭へ出た
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真冬のような寒い夜
息は白く、ふとしたはずみに身体は震える
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ただそんなことが関係ないほどに素敵なことももちろんあった
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────見上げた夜空を埋め尽くすたくさんの星
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冬の星座が賑やかに踊りだす
見たことがない星空が冷えた身体を心の中から温める

そんな夜の空気のように僕の気持ち、もやもやとしていた僕の気持ちは透き通っていったんだ────
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───続く





       

by bon_soir | 2017-11-12 15:56 | 五月山動物園 | Comments(4)
二人、小さなウォンバット
遠く離れた日本まで、二人の旅は一回目
みんなの想いで伸びた道、島と島を繋げた長い橋
二人、旅の目的────それは何
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コウとユキ
二人、小さなウォンバット
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立派な巣穴を掘った
中で落ち着き、時々外へと出てきてわくわく
二人、一人ずつ
二人、気ままに何も決めてない
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見つけたもの、感じたこと、気がついたこと
後でコウに教えたら、後でユキに教えたら
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それが二人の物語
1ページ、1ページ────
書き溜めていく二人の長い物語
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頭の中で心の文字に
心の文字、かすれたりはしないはず
自分たちの目で見たこと
強く残るよ、心の文字は
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フクに話しかけたコウ
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何を聞けばいいのか
何を伝えればいいのか
どんな笑顔を見せればいいのか
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まだ良くわからない
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小さかったフクも今、立派な大人
落ち着き、優しくコウに話す
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「あ、待って────」
コウ、フクを呼び止める
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一度立ち止まるフク
「────時間ほど大切なものは無いよ。ゆっくりだけど止まらないし戻らない。のんびりのんびりしていても、君もすぐに大きくなるのさ」
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「────僕の様に、ね」
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「僕はここで大きくなるのかな。ユキと一緒、僕等はここで大人になっていくのかな────」
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コウとユキ
二人の季節はこれから冬
初めて見た日本の秋はそっと進み冬へと進む
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今年の秋は特別な秋
小さな二人が初めて見た秋
黄色く染まり冬へと進む
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────僕はユキを誘ったんだ
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青空が綺麗だよ、少し一緒に散歩でもしようよって、ね
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「後で行くよ」
可愛い声でユキは言う
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日が暮れるまでに出てきてほしいな、と僕は呟く
大丈夫、きっとユキには聞こえてない
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タスマニアで過ごした日々を思い出した
ずっと仲が良かった僕等
こことは違う星空眺めて僕等は笑う
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あの日、「仲良く笑顔のままで日本へ行こう。また会いにいくよ、元気でね」と優しく言ったひげの人
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そう、振り返ればそれは思い出
僕はユキと一緒に進んでいる
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────大丈夫、僕等二人、楽しくやってるさ
変わらない笑顔のまま、僕等二人仲良く一緒に暮しているよ
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「────いつかまた、あの人に会いたいな」
僕はそっと呟いた
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ユキ、出ておいでよ
風が気持ちいいよ
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そう、風が気持ちいいいんだ
こんなよく晴れた日はね
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ユキ、君の右手はそう、“温かい雪”のよう
ユキ、君の右手はそう、あの青空浮かぶ“柔らかそうな雲”のよう
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いつも僕をそっと触る、僕の手そっと優しく掴む
もっと笑顔にしてくれる魔法の手
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僕はユキが好きなんだ
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「ユキ」
僕は呼ぶ
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ユキは僕の顔を見てただ優しく、かわいらしく笑っている
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僕はユキを追いかける
ユキはおどけて、また笑う
僕のことを追いかける
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楽しいね
僕等二人、こうして遊んで一緒に笑って
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────楽しいね
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────本当に楽しいね
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二人で書くよ
僕等二人の物語
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今の見出しは「楽しい秋の日」
それでどうだい?
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あの大きな木
イチョウって木なんだってさ
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葉っぱはきれいに色づいて、風も黄色くなっていく
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地面を黄色く染めてはさ、みんなを笑顔にしていくらしい
そう、秋の笑顔だ
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ユキ、君に黄色は似合うかな?
黄色い葉っぱ、たくさん集めて手に持って
にっこり笑って歌うんだ
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みんなが歌う“ウォンバットの歌”
僕等二人、黄色い庭で一緒に笑って歌うんだ
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僕はもう覚えたよ
ユキ、君はどうだい
覚えたかい?
踊って楽しく歌えるかい?
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そう、
ウォンバットパーティー始まるよ
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小さな動物園で始まるよ
楽しい楽しいウォンバットパーティー

みんなと一緒に始めるよ────
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ユキ
コウに向かって飛びかかる
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嫌がってるわけじゃない
楽しく、少し激しく見える子供の遊び
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小さな二人、追いかけて追いかけられて
なんだか楽しく
楽しい声とかわいい顔
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ウォンバットどうしがこうして触れる、触れ合い遊ぶ
夢のよう
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心の中に描き続けた夢のよう
ここにくれば見ること出来るかもしれない、そんな夢
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きっとこれからも
ずっとずっと見ること出来る
小さな動物園で見ること出来る大きな夢
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続く
続いていく
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夢のような日々はずっとずっと続いてく
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これが当たり前のようになってはいけない
特別なこと、とても素敵なことだから
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遠く離れた日本まで、二人の旅は一回目
みんなの想いで伸びた道、島と島を繋げた長い橋
二人、旅の目的────それは何
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コウとユキ
二人、小さなウォンバット
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見つけたもの、感じたこと、気がついたこと
後でコウに教えたら、後でユキに教えたら
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それが二人の物語
1ページ、1ページ────
書き溜めていく二人の長い物語
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頭の中で心の文字に
心の文字、かすれたりはしないはず
自分たちの目で見たこと
強く残るよ、心の文字は
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コウとユキ
二人、小さなウォンバット
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二人にとっても、ワインやワンダー、フクとマル
みんなにとっても特別な年、特別な秋

もちろんみんなを眺める人達にとっても特別
本当に特別な年
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そしてこれからもここで過ごす時間は少し特別で大切な時間
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続いてく
ずっとずっと、みんなと一緒
続いてく
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小豆色のあの電車に乗って、みんなで行こう
楽しい楽しいウォンバットパーティー
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商店街をとことこ歩いて
坂道、階段登ってみんなで行こう
あの、楽しい楽しいウォンバットパーティー
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ころころ走って、のんびりおしゃべり
少し疲れてお昼寝みんな夢の中
そんな楽しい楽しい、僕等みんなのウォンバットパーティー
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小豆色のあの電車に乗って、みんなで行こう
楽しい楽しいウォンバットパーティー
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秋にはイチョウ
冬は雪
春になれば桜が咲くよ
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小豆色のあの電車に乗って、みんなで行こう
楽しい楽しいウォンバットパーティー
9時15分に始まるよ



        

by bon_soir | 2017-11-07 15:34 | 五月山動物園 | Comments(4)
フク、そっと
五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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隣でマルが暮らすようになって、話しかけたりしての忙しい時
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伝えたいこと話したいこと
たくさん
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でもちゃんと休む
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隣はちゃんと気にして
でもちょっと変な顔
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ゆっくりのんびり
秋の日々、今年は少し忙しい
そんな今までとはちょっと違う秋の日々
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眠そう
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あれだけいつも忙しくしてたらさ
やっぱり眠いね
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マルはいつも傍にいる
傍にいてくれる
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頑張る
伝えたいこと話したいこと
たくさん
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焦らないで急がないで大丈夫
のんびりのんびり
ウォンバットはそれでいい
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空、見上げよう
必ず一度立ち止まって
空、見上げよう



   



by bon_soir | 2017-11-06 13:03 | 五月山動物園 | Comments(4)