2017年 09月 03日 ( 1 )
8月24日に聞こえてきた声
金沢動物園で暮らすコアラ、ユイ
a0164204_13114482.jpg
静かな部屋に一人
今年の夏は静かに一人
a0164204_13152503.jpg
そっと眺めた窓の外
雨が多いと思った日々は過ぎ、夏の終わりにまた夏空光る
a0164204_13152583.jpg
今年も暑い日、8月24日
暑くて暑くてこんな日は、誰もみんな思い出す
a0164204_13235941.jpg
あの庭でそっと微笑むおでこに“シワ模様”
笑顔と優しい声を思い出す
a0164204_13240024.jpg
a0164204_13271682.jpg
今年もまた8月24日
悲しい日、寂しさ心の奥底膨らむ日
a0164204_13271685.jpg
でも大切な日
a0164204_13235925.jpg
高い雲は秋の雲
秋の準備は進んでる
ぽろりと一粒涙をこぼせば秋は近づく
a0164204_13214213.jpg
もっと近くに、もっと傍に
8月24日
風さえ吹けば秋はすぐそこ
a0164204_13334603.jpg
───ドアをそっと開けてオセアニア区に出る
a0164204_13350592.jpg
a0164204_13334629.jpg
───大きなユーカリの木、何度も何度も見上げて歩く
a0164204_13375551.jpg
a0164204_13375577.jpg
───こっち側からにしようか
a0164204_13350534.jpg
a0164204_13334631.jpg
───それとも少し静かな向う側
a0164204_13350528.jpg
a0164204_13404841.jpg
───部屋で一人過ごす時間、私は色々考える。頭の中に色々な景色や音、風の雰囲気、草の匂い
a0164204_13440749.jpg
───暑くなれば私はいつも考える、あの場所、あのお庭。そこまで歩く私
a0164204_13440777.jpg
───でも
a0164204_13440732.jpg
「駄目だ、今日もやっぱり開いていない───」
a0164204_13481872.jpg
飼育係さんがどんなにちゃんと閉めても私が押せばそっと開く部屋のドア
いつの頃からだろう、どうしてもドアは開かなくなった
オセアニア区へ、動物園のどこかへ、私はお散歩が出来なくなっていた
a0164204_13481899.jpg
あそこを通ってあの場所へ
───石のヒロキさんが待っているあの場所へ
a0164204_13524695.jpg
a0164204_13524660.jpg
a0164204_13481932.jpg
8月24日───お姉ちゃんと二人、飼育係さんに教えてもらった日
側へ行こうと思っていたのにドアは開かない
a0164204_13543180.jpg
暑くなってからずっと考えていたこと、傍へ行くこと
それを今日するはずだったのに、なんでだろう
───ドアが開かない
a0164204_13543185.jpg
a0164204_13543102.jpg
a0164204_14004301.jpg
仕方がないから私は窓の向こう、オセアニア区を眺めてまた思う
a0164204_14004356.jpg
a0164204_14004385.jpg
「ドアを開けて大きなユーカリ眺めながらあそこを歩いて、こっち側、それとも向う側───」
a0164204_14075370.jpg
a0164204_14075238.jpg
「ヒロキさん、ごめんね。なんだか傍にいけないみたい」
a0164204_14075274.jpg
a0164204_14093695.jpg
こんな時、お母さんならどうしただろう
こんな時、お姉ちゃんならどうしただろう
a0164204_14125661.jpg
こんな時、私はどうすればいいんだろう
a0164204_14125540.jpg
飼育係さんに聞くわけにはいかない
a0164204_14125687.jpg
───全部内緒のことだから
a0164204_14125689.jpg
a0164204_14144963.jpg
私はコアラ
長く眠る
a0164204_14162361.jpg
今日の夢はどんな夢
a0164204_14162278.jpg
飼育係さんとたくさん話す、そんな夢
a0164204_14184156.jpg
a0164204_14184049.jpg
いつもよりもたくさん話す、そんな夢
a0164204_14195951.jpg
a0164204_14195916.jpg
今日の夢はどんな夢
a0164204_14215426.jpg
オセアニア区をてくてく歩いて大きなユーカリそっと見上げて
a0164204_14215487.jpg

a0164204_14215556.jpg
a0164204_14232918.jpg
咲き戻したブラシノキの花やっぱり真っ赤
a0164204_14215351.jpg
a0164204_14215491.jpg
ほら、石のヒロキさんも笑ってる───
a0164204_14162255.jpg
今日の夢はどんな夢
a0164204_14261787.jpg
a0164204_14261708.jpg
a0164204_14302520.jpg
ワライカワセミの子供、私の所へ飛んできて
なぜか知ってる声で話す
a0164204_14334021.jpg
「その声は───ヒロキさん?」
a0164204_14261700.jpg
『少し身体を借りたんだ。また空を飛んでみたくって、少しの間、この子に身体を借りたんだ』
a0164204_14334161.jpg
a0164204_14364975.jpg
『ユイ、大事なことだ───目を覚まさないでいい、夢の中で僕の話をそのまま聞いてくれないか』
a0164204_14364963.jpg
『ドアが開かなかったこと、外へ出ることができなかったこと───それは少し残念だと思ったかもしれないけれど大切なことなんだ』
a0164204_14412171.jpg
『コアラの神様がユイを大切に思い、しばらくの間ドアを開かなくさせた。そういうことなんだ』
a0164204_14412029.jpg
『飼育係さんに心配かけるわけにもいかないしね』
a0164204_14450874.jpg
『ユイ、わかっているんだろう? ───君にもその理由が、さ』
a0164204_14450925.jpg
『今はそっと、お部屋でそっと過ごすんだ。いいね?』
a0164204_14450858.jpg
『一人で頑張るユイに優しい人からのプレゼントがある。きっと素晴らしい贈り物に違いない───』
a0164204_14522943.jpg
a0164204_14523050.jpg
『また夜中まで動物園が終わらない日が来る。今年最後の2回、知っているだろう?』
a0164204_14551391.jpg
『暗くなってもお客さんが帰らなければその日ってことだ。その日が来たら、ユイ───』
a0164204_14551231.jpg
『いつもなら空が暗くなって、コアラ達の目が覚めるころ───ユイ、君はもう一度眠るんだ。大丈夫、プレゼントを楽しみにしていれば夢を見るための準備は出来ている』
a0164204_14523071.jpg
『いつも見る風景から夢は始まり、その中へいつものようにそっと入っていくことが出来るだろう』
a0164204_14584926.jpg
『その夢の中のユイはきっと自由さ。夢の中ならなんでも出来るって信じる気持ちで自由を感じてしまえば後は大丈夫』
a0164204_15001359.jpg
『優しい人が用意してくれたプレゼント、素晴らしい贈り物───その場所まできっと、きっとたどり着くことが出来るだろう』
a0164204_15001391.jpg
『いつもと違うことだからもう一度言うよ。空が暗くなったら眠るんだ。わかったね?───』
a0164204_15202926.jpg
『ユイ、今日は8月24日だ───僕のこと、想ってくれてどうもありがとう』
a0164204_15210090.jpg
『じゃあ、またね』
a0164204_15253576.jpg
───すぐ傍にヒロキさんの顔を見た気がした
a0164204_15210081.jpg
「暗くなったらまた眠る」

夢の中でヒロキさんが言っていたこと、私は忘れないように何度も呟いた
───そう、夢で見たことはすぐに忘れてしまうかもしれないから
a0164204_15210003.jpg
あんなにはっきりと聞こえていたヒロキさんの声
今はもう聞こえない
いつもどおり、静かなお部屋に私一人
a0164204_15311285.jpg
8月24日
外へは出ることが出来なかったけど、私はヒロキさんに会うことが出来たようだ
a0164204_15311255.jpg
a0164204_15354945.jpg
“優しい人からのプレゼント”
それはどんな物なんだろう

“優しい人”
それはどんな人なんだろう
a0164204_15375584.jpg
考えていたらまた眠くなってきた
私はコアラだから───
a0164204_15375474.jpg

「ひかりのコアラ」→☆☆☆☆☆へ続く





    

by bon_soir | 2017-09-03 15:40 | 金沢動物園 | Comments(4)