2017年 08月 02日 ( 1 )
フクといつもの夏、新しい秋

五月山動物園で暮らすウォンバット、フク
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秋には────ということで女の子のウォンバットが日本へ、五月山動物園へと来てくれる
それを知ったフク
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「本当かな────」
夏の青空ふと見上げ、気がつけばすぐに大きくなる夏の雲を眺め、何度も呟いてしまう
そんなフク
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「もし本当に来てくれるなら、今は最後の夏だ。一人気ままにのんきに暮らせる最後の夏だ」
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「もう悲しい思いはしたくないしさせたくもないからね。そう、アヤハのことは忘れないよ」
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「僕はもう子供じゃない。ワインさんとワンダーさん、二人をずっと眺めてきてわかったんだ」
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「助け合う、支え合う、なにより二人で一緒に笑うってことの大切さをね」
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「あの二人は本当に素敵なウォンバット。僕にはそう見えるよ」
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「ここに来た人もみんなきっとそう感じた、そう見えたはずだ。二人に会えたならきっとそう思ったはずなんだ」
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「────そして優しい気持ちをたくさん貰ったはずなんだ」
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「それがわかる僕は誤魔化せない。知っていることに何もしない訳にはいかない。それは男らしくも優しくもない。知らないよりも悪いこと」
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「こんな僕の所へ遠くタスマニアから来てくれるんだ。僕は傍で優しくいつまでも微笑むんだ。ワインさんのようにね」
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「一人気ままにのんきに、きっとそれも悪いことじゃない。でも僕はワインさんとワンダーさんに出会ったからね。あの幸せから目をそらしてしまっては駄目だろうね」
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「二人で一緒に食べて寝て、お散歩したり星を眺めたり────笑って、そして悲しい時には一緒に涙をこぼすんだ」
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「ずっとずっといつまでも、ね」
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「まずはそれだけ、本当に大切なのはそんな幸せ。期待されているのはわかるけど、赤ちゃんはその次のこと。予定なんてすることじゃない」
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「簡単じゃないんだ、大きすぎる幸せを感じる、作り出すってことはね」
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「今日も本当に暑いんだ。ずっと外に、日向にいれば身体には悪いくらい。冬寒かった僕の庭でギリギリだ。ワインさん、ワンダーさんは平気かな」
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「でもこれがいつもの夏。セミがうるさい当たり前の夏のこと」
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「ただそのうちに特別な秋が来るってこと、それを知ってからこの夏は少し変わった」
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「特別な秋の前、この夏もまた少し特別な夏。色々なことをたくさん考える、気持ちの準備をする────特別の前の少し特別」
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「それがこの夏────わかるだろ?」
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「見えるかい?イチョウだって秋へと準備をはじめてる。秋はそのうちやってくる。みんなの所へちゃんとやってくる」
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「僕達の庭はまた黄色く染まるのさ」
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「みんな決して騒がない。本当にいつもの夏なままなのか、いつもどおりなフリしてそっと夏を越えるのか」
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「動物園はいつもの夏。少し特別だと感じているのは僕だけか」
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「まあでもそれでいい、それが一番いいことだ」
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「どんな顔した女の子が来てくれるんだろうね、どんな笑顔をするんだろうね────」
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「今日も太陽が眩しいよ」
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「────レモンライム、夏って本当に暑いよね」
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一人気ままにフクの夏
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のんきに少しわがままに
そんなフクの暑い夏
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でも、そんなフクの夏も今年が最後
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秋が来れば傍で微笑むウォンバットに恋をして、その子に何をしてあげることが出来るのか毎日毎日考えて
そして一緒に笑うフクになる
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ワインとワンダー、二人を眺めて育ったフクは知っている
幸せってどういうことか、悲しみってどういうことか────フクはきっと知っている
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────優しさってどういうことか
きっとフクは知っている
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庭のフェンスはガラスへ変わり、見える景色は色鮮やか
春の色、夏の色、黄色い秋から青濃く広がる空の冬へ
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いつもの夏はいつのまにか少し特別な夏になって、そして特別な秋へと少し駆け足
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その特別からまたその先の特別へ
行けたらいいなと声を出さずにそっと願う
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その特別は時間をかけてただ幸せな日常へ
そこまで進めば一安心
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長く長く続いていくための“ふりだし”はきっとその時
のんびりのんびり、静かに幸せ
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聞こえてくるのは鳥の声、耳をすませば虫の声
風にそよぐ草の音と木々の音
流れる時間は動物時間
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素敵な動物園はきっとそんな動物園
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遥か彼方タスマニア
ウォンバットが橋を架ける
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これからずっと幸せであるように
これからずっとみんなが優しい気持ちであるように
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動物達も人達も、みんな笑顔であるように
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みんなの愛情、気持ちに変えて
ウォンバットが海を越え、未来へ繋ぐ橋をそっと架ける
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セミの声が聞こえてこなくなる頃か、イチョウが色づく頃なのか
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黄色い絨毯の上を駆け抜け、空が高くなる頃か
ほっぺた木枯らし当たる頃になるのか────
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動物達はあわてない
ウォンバットはあわてない
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いつもの夏を駆けていく
少しの特別そっと感じて、ただ夏を駆けていく
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のんびりゆっくり動物時間
動物園に居る時は人も一緒に動物時間
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それがいい
きっとそれが一番いい
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新しい秋へと向かうフク
いつのまにか大人のフク
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by bon_soir | 2017-08-02 19:08 | 五月山動物園 | Comments(8)