2017年 03月 03日 ( 1 )
ユイのポッケにどんぐり一つ



金沢動物園で暮らすコアラ、バニラとユイ
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ずっと一緒、くっついて暮してきた二人
お姉ちゃんのバニラ、そして妹のユイ
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今、同じ家のままだけど少しだけ距離は離れ、二人はのんびりのんびり
のんびりと暮らす毎日
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時々は前のように肩寄せあって小さな声で話をする
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そんなバニラとユイ、オセアニア区のコアラの家
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悲しいこと(☆☆☆☆☆)があってからずっと涙をこぼし続けてきたユイ、いつも傍にいたバニラ
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オセアニア区の大きなユーカリに見守られる動物達の誰も気が付かない小さな物語
誰よりも優しいコアラ“バニラ”の誰も知らない物語
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「ユイは私の大切な妹───ユイが笑って私に話すこと、私がいつでも笑顔になれるそんなこと」
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───あの日からユイの笑顔は変わった
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今までよりももっともっと輝いて、もっともっと幸せそうな優しい笑顔
何度もあった悲しいことをそっと優しく包んでやわらげる、そんななにより素敵な笑顔───

それは“お母さんの笑顔”と一緒だった
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ユイはそんな笑顔で私に言う

「お姉ちゃん、ポッケの中に赤ちゃんが入っていった」
「お姉ちゃん、ポッケの中の赤ちゃんが少し大きくなってきた」
「お姉ちゃん、ポッケの中の赤ちゃんがもぞもぞ動いてるよ」
「お姉ちゃん、ポッケの中の赤ちゃんが小さな小さな小さな小さな声を出した」
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ユイは幸せそうだった
飼育係さんもお客さんもみんな、みんなが笑顔で、みんながユイを眺めていた

でもある日、ユイからそんな笑顔が消えた

「お姉ちゃん、ポッケの中の赤ちゃんが動いていないの───」
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「眠っているだけだよ。コアラだもん、長いこと眠っているだけ───」
私の言葉を遮るようにユイは何度も首を振った
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「お姉ちゃん、言わなかっただけ。もうしばらくこのまま、このままなんだ───」
ユイの目から最初はぽろぽろと、そしていつのまにかたくさんの涙が溢れ出していた

気がついてからもしばらくユイは頑張って笑っていたんだろう
みんなを心配させないように、もう一度動き出すと信じて───明日にはまた心から笑えるように
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しばらくして飼育係さんがユイのポッケの中をそっと覗く
ユイは飼育係さんの顔を見ようとはしないで遥か遠くを眺めていた
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飼育係さんは手で顔を覆い肩を落とし、ふらふらと戻っていく
私の心が悲しさでいっぱいになっていく
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ユイにもそれは伝わった、きっとわかってしまった
本当は最初からわかっていたことを、もう一度確認してしまっただけのことなのかもしれない
泣いてない、もちろん笑ってもいない
ただ一言呟いた
「お母さん、私はお母さんのようになれなかった、みたいだよ」

ユイから表情が消えてしまっていた───
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そのまま時間は過ぎていく
楽しいことがあっても悲しいことがあっても、時間だけはどんなときでも変わらず過ぎていく
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夕暮れオセアニア区が夜へと変わる
冬の始まり夜空には、冬の星座とたくさんの星
青い夜空を飛んでくる、青い羽の一羽の鶏
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ユイのポッケをちょっとつつく
優しくそっと、ちょっとつつく
そんな不思議な青い羽の不思議な鳥
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今が何時かなんてわからない
星空見えても昼なのか、青空見えても夜なのか
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ユイのポッケがぼんやり光る
小さな小さな、小さなコアラがポッケの中から顔を出す
青い羽の鳥の背中にそっと乗る

小さなコアラ、ユイの赤ちゃん
儚くそっと笑ってる
聞き取れない、声にもならない小さな声でユイに言う
口の動きを見ていればすぐにわかる

「あ り が と う」

私の目から涙が溢れる
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ユイに声をかけたけど、私はちゃんと喋れなかった
言ってあげたいことがあったのに、私はちゃんと喋れなかった
きっとユイには何も聞こえていない
ユイはただぼんやり空を見上げ、もう枯れてしまっていた涙の最後のひと粒をぽろりとこぼした
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ぱたぱたぱたぱた
小さなコアラを背中に乗せて青い羽の鳥が飛んで行く
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大きなユーカリの大きな枝の間を抜けて、オセアニア区の上でぐるっと大きく一回り

ぱたぱたぱたぱた、ぱたぱたぱたぱた
ふわっと浮かぶ白い雲の上まで、青空の中、星空の中へ

ぱたぱたぱたぱた
小さなコアラを背中に乗せて青い羽の鳥が飛んで行く
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「ユイ、ユイはちゃんとお母さんだよ。その子の大切なただ一人のお母さんだよ───」
私はさっき言ったことをもう一度言った
でもユイにはまた届いていない、きっと届くはずがない

お腹のポッケが空っぽになる、考えてもなかった出来事でポッケの中には何も無くなってしまう
きっと、そんなに悲しいことは他にない

ユイは疲れたのかいつのまにか眠っていた
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ユイが見る夢どんな夢───
コアラのお母さんが見る夢どんな夢───
小さな赤ちゃん抱っこする、小さな赤ちゃんおんぶする
風に吹かれて木に揺れて、二人で笑って二人でお昼寝
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ユイが見る夢どんな夢───
コアラのお母さんが見る夢どんな夢───
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あの日からユイに私は話しかけることが出来ないでいた

ただ毎日お願いだけをしていた

「ユイを守ってあげてね、お母さん───」
オセアニア区の大きなユーカリの木よりももっと上を見つめ、どこかで見守ってくれているお母さんにただ毎日お願いをして過ごした
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「お姉ちゃん、なんでコアラにはポッケがあるの?」

クリスマスが近づいたある日、ふと遠くを眺めながらユイが言った
ユイの方を見ると目に涙が浮かんでいる
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「ポッケ、無くてもいいよね」

ユイの声はどこか冷たく、かわいい顔は涙に濡れ、そしてその日は少しも動かず少しもユーカリを食べなかった


「ユイ、駄目だよ───思い出してよ、私達のお母さんのポッケのことを。あの温かくって柔らかくって優しくて幸せだった、あのポッケのことを思い出してよ───」
そう言えばいい、と思っても言葉に出来ない
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私にはユイの気持ちがよくわかる
そして勇気の出ない私は弱虫だ
大切な妹一人励ましてあげることが出来ない
あの日からずっと、私はずっと弱虫コアラだった
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元気がないユイを見ていると何かしなくちゃって思う
それはユイのためかもしれない、弱虫コアラのままの私のためなのかもしれない

「───お母さん、ヒロキさん」
大好きだった二人の顔がぼんやり浮かぶ
私は外へのドアをそっと開け、ヒロキさんのお庭へと歩いた
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「何も変わってないね、ヒロキさん
涙で霞むヒロキさんの庭、そしてヒロキさんの写真を眺めているとふと小さく声に出た
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すると今にも開きそうなドアの向こう、中庭から声が聞こえたような気がした
「ヒロキさん? ヒロキさんなの?」

少し隙間の出来たドアの向こうにそっと浮かぶヒロキさんの顔
それが本当のことなのか、私の頭の中だけのことなのかはわからない
変わらない、優しいヒロキさんが今目の前にいる
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(バニラ、君は優しいコアラ、コアラの女の子だ。そしてみんなが言うとおり少し不思議な不思議コアラ、昔からそうだろう。ユイのために出来ること、当たり前のことばかり考えていたってしかたないよ。君がすること、なんでもみんなを楽しくさせてきた。想像力だ、バニラ。君が思っているほど君は駄目じゃない)


「ヒロキさん、私駄目なの。私は弱虫、弱虫コアラなの。大切だと思っていても、思っているだけ。怖くて怖くて、何か言ってあげる、してあげることも出来ない弱虫コアラなの」
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(バニラ、君は弱くない、虫でもない。そうだ、弱虫コアラなんかじゃないよ。ユイのために何かをしなくちゃいけないよ、そしてきっと何かしてあげられるはずだ。想像するんだ、楽しいことを。ユイを笑わせる、なんだか楽しいことを想像するんだ。大切な妹のことを想い、想像する。君が笑った時、きっとユイも笑顔になるよ)
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「ヒロキさん」


(バニラ、僕の庭の花壇を見てごらん。もし君の顔に笑顔が戻ったのなら、今度は君が、君がユイを笑顔にしてあげるんだ。いいね、バニラ───)


私はヒロキさんの庭の花壇を見た───
季節外れのたんぽぽ一つ、ヒロキさんも私もユイも大好きな、黄色いたんぽぽ一つ
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なんだかニコニコ笑ってる
黄色いたんぽぽ一つ、花壇のすみに咲いていた

「ヒロキさん───」
振り返るともうそこにヒロキさんはいない
───大丈夫、夢でもなんでも大丈夫
ヒロキさんが言ったとおり私は笑顔になっていた
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涙をぬぐって走り出す
大きなユーカリの木が揺れて応援してくれる
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ユイの笑顔が頭に浮かぶ
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楽しい毎日、お母さんも隣で笑うあの楽しい日々
色々なことが頭に浮かぶ
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「あの日からずっと、ユイはポッケを見ていない」
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「お母さんになれなかった───そう考えてしまっているから駄目なんだ」
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「ユイはちゃんとお母さんできていたのに、ポッケの中にかわいい赤ちゃんがちゃんと入ってたのに。赤ちゃん、笑顔でお空の向こうへ行ったのに───」
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「───それなのに」
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「ユイはポッケのことを見ようとしない」
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「ユイがこのまま、ユイがこのままポッケを嫌いになる前に」
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「大切なポッケを嫌いになって、そのまま嫌いなまま、笑顔も取り戻せなくなるその前に───」
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「私は何をすればいいんだろう、何してあげればいいんだろう」
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「ユイがそっと笑うには、可愛い笑顔を見せてくれるには、私は何をすればいいんだろう───」
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クリスマス前のオセアニア区
冬の風が吹き外を駆けるバニラの身体をだんだんと冷やしました
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アフリカ区へ向かう坂道の途中で少し休憩をして、「アフリカ区、それともユーラシア区かなぁ」と呟いたバニラ
ヒロキに言われたように一生懸命にユイのことを想い、そして笑顔になるその時を想像していました
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「ユイ、やっぱりポッケは大切だよ。あの温かさ、覚えてるでしょ。ポッケを嫌いになんかならないで、ユイ───」
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「ユーラシア区に行ってみよう」
そう呟いたバニラがあるき出したその時、藪の中からコロリと転がり出てきた物がありました
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それは一粒のどんぐり
リスたちが食べ忘れた、少し大きめの丸いどんぐりでした

「どんぐりさん?どんぐり君? どっちかわからないけどこんにちは」
爪を立てないように、そっとどんぐりを掴んだバニラ
秋のこと───ハヤト、そしてワカが旅立ってしまった日のことがどんぐりに写っているような気がして、ふと寂しく微笑みました
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「ワカちゃん、ハヤト、私達を見守っていてね」
ぎゅっとどんぐりを掴み、そっと呟いたバニラ
ゆっくりと手を開き、またどんぐりを見つめました
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その時風が吹き、どんぐりがぶるっと震えたような気がしました

「お帽子、無いんだね。落っことしちゃったのかな、忘れてきちゃったのかな。もう冬だもん、寒いよね」
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「そうだ───ねえ、温かい所に行かない? 連れてってあげる、決めた!」
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ユイのポッケにどんぐり一つ
ユイのポッケにどんぐり一つ連れていこう
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ユイのポッケにどんぐり一つ
ユイのポッケにどんぐり一つ入れておこう
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ユイのポッケにどんぐり一つ
ユイのポッケにどんぐり一つ笑っているよ
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ユイのポッケにどんぐり一つ
ユイのポッケに丸くてかわいいどんぐり一つ

ユイのポッケに、ユイのポッケにどんぐり一つ
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バニラは眠っているユイにそっと近づき、帽子の無い丸いどんぐりをそっとポッケの中にしまいました
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バニラはそっと自分の部屋に戻り、静かに振り返るとユイはまだ眠ったままでした
「おやすみ、ユイ」
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バニラは微笑み、そして自分も夢の中へと滑り込んでいきます
“夢を見るための準備”
今日一日いろいろなことを考え、いろいろな物を見てきたバニラにはたくさんの準備が出来ていました
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ユイの見ていた夢は途中から変わっていました
バニラがポッケの中へどんぐりをしまってからすぐのこと
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それはコアラのお母さんの夢
ポッケの中で赤ちゃんが育っていっていた、あの幸せなとき毎日のように見ていた
そんな夢でした

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コアラが見る夢どんな夢───
コアラのお母さんが見る夢どんな夢───
小さな赤ちゃん抱っこする、小さな赤ちゃんおんぶする
風に吹かれて木に揺れて、二人で笑って二人でお昼寝

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「なんだろう、なんでこんなに温かい、幸せな夢を見てしまったんだろう」
ユーカリの中でそっと目を覚ましたユイは、明るくなってきた窓の向こうを眺めながら今見た夢を思い返しました
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自分の顔が笑顔になっている、そのことには気がつかないユイ
でも気がついたのはポッケの中に何かがしまってある、ということ
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笑顔になっていたユイはあの日から今まで出来なかったこと
“ポッケの中を覗く”
そんなことが出来るような気がしました
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そっと手でポッケを開き、中を覗いたユイ
そこにはコアラのような顔が描いてあるどんぐりが一つ入っていました
そっと取り出してどんぐりを見つめました
裏側には小さな文字で「あ り が と う」と書いてあります

「お姉ちゃん」
ユイはそう言いながら、隣の部屋を見るとバニラは微笑みながらまだ眠ったままでした
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「お姉ちゃん、こんな下手くそな顔描いちゃ、どんぐりがかわいそうだよ」
そう言ってユイは笑いました
久しぶりに見せるその笑顔はどんぐりに描かれたコアラの笑顔と同じくらい楽しそうに、そして輝いていました
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コアラの姉妹が今日も暮らす、金沢動物園のオセアニア区
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この先どんなことがあったとしても、二人はずっと仲良し姉妹
いつも二人で笑って暮らす、不思議コアラの仲良し姉妹
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二人で一緒に楽しんで、二人で一緒に喜んで
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二人で一緒に涙をこぼす
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バニラとユイ
かけがえのないコアラの二人
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「ユイのポッケにどんぐり一つ、私のポッケにもう一つ」
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「ユイのポッケにどんぐり一つ、みんなのポッケにどんぐりたくさん一つづつ」
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「ユイのポッケにどんぐり一つ、帽子が外れたどんぐり一つ」
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「ユイのポッケにどんぐり一つ、魔法をかけたどんぐり一つ」






    

by bon_soir | 2017-03-03 00:45 | 金沢動物園 | Comments(6)