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ワインと黄色い落ち葉

前回→☆☆☆☆☆からの続きです 

五月山動物園で暮らすウォンバット、ワイン
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庭に落ちたイチョウの葉、すっかり黄色くなったイチョウの葉
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ワインはお昼前からせっせとお散歩
冬が来る前に見る風景は毎年変わらないことばかり
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冷たい風がワインのほっぺにあたり、秋から冬への交代を告げるよう
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立ち止まっては思い出す、思い出してはそっと微笑む
そんな一日を過ごすワイン
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ワインにとって、秋は大切な季節
巡る四季の中、過ぎていくのが惜しい季節
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五月山動物園の秋は今年も過ぎていく
ワイン、ワンダー、そしてフク
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みんなの秋は今年もそっと、最後に少しだけ存在感を示して過ぎていく
黄色い秋が過ぎていく
そんなある日のお話
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「雨は少ししか降らなかった」
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「でも、そのせいだろうか。今日は少し暖かい」
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「不思議だね。晴れた日が続くほうが朝と夜は寒いんだ」
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「そうだ、今日ならワンダーさんも外へ出てきやすいだろうね」
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「まだ部屋で眠っているようだ。長いお昼寝、ウォンバットだからね」
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ワインは大きなイチョウの木を眺めました
風に吹かれた黄色い葉がときおり地面に向かってはらりと落ちてきます
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「今年、大きなイチョウの木が一人、そこからいなくなってしまった」
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「ワンダーさんは酷く寂しがっていた。ずっとそばに居てくれた木だったからね」
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「横になったイチョウの木───しかたないとはいえ、それは確かに寂しく悲しい光景だった」
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「残ったイチョウの木もきっと同じ気持ちだ。眺めていればわかる、声を聞かなくてもわかる───僕達は昔からずっと一緒だったんだ」
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「ずっとイチョウの木と一緒だったんだ、わからないわけ、感じないわけがない」
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「一度落ちた葉っぱが春にまたそっと出てきて大きくなる、夏はその葉っぱが木陰を作り、そして秋の中で黄色くなるんだ」
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「そして冬へと進む時、僕達の庭を黄色く染めるんだ───」
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「今年もそう、残ってくれた木がそうしてくれた。今までと同じように、あったかく優しくね」
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「変わらない、ずっとずっと変わらない───僕達の大好きなイチョウの木、僕達の大好きな季節」
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「───あの時、僕達がまだ小さかったあのときもそうだったんだ。イチョウの木は僕達を優しく見つめ、そして微笑んでいたんだ」
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“あのとき”
その言葉を声にしたワインはまだ小さな時の記憶を鮮明に思い出していました
散歩をしながら思い出し、
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道草しているときも考え続け、
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そして大好きなイチョウの木を見上げて微笑みました
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あの日のまだ幼い自分と、小さなワンダー
きらめくように大切な子供の頃のどこまでも純粋に澄んだ想い、気持ちの記憶
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ワインの胸を今また満たす
“あの日”の思い出───
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「───今日のような秋の終わり、冬の始まり。そんな日だ」
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「ワンダーさんは朝から喜んでいた。前の夜に風が強く吹いたんだろう。散ったイチョウの葉っぱで僕達の庭が一面黄色に光っていたからだ」
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「ワンダーさんは駆け回って笑っていた。その笑顔は今まで見たなにより輝いていた───その時僕は見とれていたんだ」
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「時間を忘れ、大好きなご飯のことや、ときおり身体をぶるっと震わせる冬の風のことも忘れて、ずっと───ずっとね」
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「黄色い庭に聞こえる可愛い声。僕は思ったんだ、この風景が秋の終わりの僕達の風景なんだってね」
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「そして、ワンダーさんには黄色が似合う───そう、感じたんだ」
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「ずっと見とれていた、ずっと眺めていた。黄色い世界の中で僕はワンダーさんから目を離さなかった」
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「そうさ、それは今も変わらないこと。あの日から今までずっと変わらない、そんなことだ」
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「そしてあの瞬間がやって来る───」
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『どうしたのワインさん、なんだかぼーっとしてる』
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「ワンダーさんは立ち止まり、僕の顔を眺めてそう言ってそっと笑った」
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「いや、なんでもないよ───」

そう言いかけた瞬間のことだ
風に乗ったイチョウの黄色い落ち葉がワンダーさんのおでこにそっと乗った
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「あっ!」
僕の口からふいに声が出る
『えっ!?』
ワンダーさんは僕の目を見つめながら少し戸惑う
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「なんでもないんだ、ごめん」
とだけ小さな声で言った
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僕はおでこに乗っかった葉っぱのことをワンダーさんには言わない
もし、「おでこに葉っぱが───」と教えていたら、きっとすぐに払ってしまっていただろう
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おでこにイチョウの葉っぱのワンダーさんがとても可愛らしくて、少しでも長く見ていたくて────
だから僕は教えなかった
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『なんだか変なワインさん』
ワンダーさんはそっと微笑みながら僕に言う
言葉が上手く続かない────そんな僕は思っていたことを慌てて言った
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「ワンダーさんには黄色が似合うよ」
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その時僕はきっと変な顔していたんだろう
ワンダーさんは困ったような顔をして、僕から目をそらした
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そしてそのまま小さな声で言った
『ありがとう。でも何で黄色が似合うと思ったの?』
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「ごめん、ただなんとなく、なんとなくだよ───」
僕はそう答えることしかできなかった
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言葉になんか出来ないそんな気持ち
僕はワンダーさんのことを好きになっていた
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「フク、君にも来る。必ず来る」
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「僕がワンダーさんのことを好きだと思った日のような、世界が違って見える素晴らしい日がきっと来る」
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「君がアヤハのことをどう思っていたかはわからない。ただこうして大人になった君なら感じるだろう、きっとわかるだろう」
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「フクのその目で優しく見つめ、大切に思うということがなんなのか───」
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「そのうちきっとわかるだろう。フクならきっとわかるだろう」
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冬になるとすぐに夕方がやってくる
少し暗くなりだすとワンダーさんが部屋から出てきて散歩を始めた
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イチョウの黄色い落ち葉が輝く庭のお散歩
少しだけ少ないけれど、あの時と同じ黄色く輝く僕達の庭だ
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そうだ、何から何までみんな一緒
あの時と同じ、イチョウの葉の上で楽しそうに微笑むワンダーさんを僕は傍で見つめている
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『ワインさん』
ワンダーさんがふと遠くを眺めていた僕をそっと呼ぶ
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僕と目が合ったワンダーさんは、地面の落ち葉を一枚優しく手に取りおでこにそっと乗せた
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『どう?似合ってる?』
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あぁ、あの瞬間と一緒、ずっとずっと変わらない
小さかった頃、あの日の思い出───幼い僕とずっと小さなワンダーさんが頭の中を駆け巡り、僕は一粒涙を溢す
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来年も、そのまた来年も
ずっと、ずっとずっといつまでも僕達は一緒だ
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「似合ってる、ワンダーさんにはやっぱり黄色が似合うよ」





   

Commented by Sen at 2016-12-08 09:45 x
おはようございます。
ワインさんとワンダーさんはとてもお似合いです。
素敵なパートナーですね。
ウォンバットの女の子を見たのはワンダーさんが初めてなのですが、なんであんなに可愛らしいのでしょう。
とってもいとおしくなります。
ヒロキくんのミモザの黄色、五月山のみんなのイチョウの黄色
四季の移り変わりの黄色を探すのも楽しみになりますね。
Commented by パイン at 2016-12-08 12:41 x
しむらさん、こんにちは^^

ワンダーさんの事が大好きなワインの物語、すごくロマンチックで優しさがあふれていますね。
きっと、この二人にはこんな素敵な瞬間があったんだろうな~と思います。 
ワンダーさんがイチョウの葉をのせる瞬間のところ、たくさんのかわいい写真のおかげでかわいいワンダーさんの姿表情が、ありありと目に浮かびました^^ あたたかなシーンですね。ワインの、いろんな表情もすごいですね。
私はいつも小さなデジカメでとっていますので気づかなかったのですが、こんなにいろんな表情をしてるんだな~と。。
秋の日のイチョウの頃、五月山できてくださり、こんなに
幸せな物語をありがとうございました^^
Commented by ファルーク・ D・マーキュリー at 2016-12-09 00:55 x
とてもステキなお話 ありがとうございます。
読み終わった後…何とも言えない、ふんわりとした、優しい気持ちになりました。
ワインとワンダーは、ウォンバット界…いえいえ、動物界のベストカップルですね。
フェンス越しのチューも、目撃しちゃった事がありますけど…本当に羨ましいし、素敵過ぎる二人なんです!
フクちゃんだって…お嫁さんが来てくれたら、大人男子?になれるかな??
でも、実は私…そんなフクちゃんの本当は、正義感強い男らしいとこ知ってます!
ワインみたいな大人の魅力?は、まだないけど…フクちゃんにも そんな日が、はやく来ますように!
Commented by bon_soir at 2016-12-09 13:58
Senさん、コメントありがとうございます。
モモコやスミレとは違うウォンバット、小さなウォンバットだからもちろんのこと身体自体小さいのですが、雰囲気はそれ以上に違っていますね。
あの体で子供を育て上げて来たのですから、ほんと別の尊敬の念を抱いてしまいます。
やっぱり四季を感じられるロケーションの動物園はより素敵ですね。
いろいろな色がある、それはしあわせなことですし、写真も華やかです。
今色々と変化のある五月山ですが、みんなの健康、そして雰囲気だけはこのまま続いていってほしいですね。
Commented by bon_soir at 2016-12-09 14:01
パインさん、コメントありがとうございます。
本当にワインとワンダーさんは仲良しのままですね。
素敵な夫婦です。
もう本当に長く二人で暮らしてきてますからね、きっとたくさんのお話があるのではないかと思います。
あとで見直した時、以外な表情に気がつくところも写真のいい所だと思います。
ワインが目を細めると、なんだか不思議と別の何かに見えたりしてしまいます。

またすぐにでも東山や茶臼山にも行きたいですね。
Commented by bon_soir at 2016-12-09 14:11
ファルーク・ D・マーキュリーさん、コメントありがとうございます。
仲良しな夫婦ワインとワンダーさん、これからもずっと健康で暮らしていってもらいたいです。
誰かが欠けても五月山の楽しさ、幸せさは減ってしまうでしょうから。
フクがこの先どんな暮らし、誰と暮らすのか、色々と心配と期待は続きます。
色々と関わる方々も大変かと思いますが、本当にみんなが幸せだと感じる上での変化を期待したいですね。
動物達の夫婦が暮らす温かさ、親子が見せる温かさ。
どれも皆純粋に素敵ですね。

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by bon_soir | 2016-12-07 14:43 | 五月山動物園 | Comments(6)