今年は体の調子がいいと飼育係のお姉さんが言う、金沢動物園のウォンバット、ヒロキ
暑い夏、そして寒い冬は体調管理のためお部屋ぐらしをしてきましたが、今年はお庭に出ている日がほとんどのようです
それは少し心配ですが、元気でいてくれているというのであればとても嬉しいこと
無理だけしてほしくはありません
ヒロキは暖かい“ひなた”が大好き
おもわず笑顔がこぼれます
「いつも言っているように、僕はオセアニア区の青い空が大好きなんだ」
「僕が小さな頃から眺めてきた大きなユーカリの木、今でも少しづつ大きくなっていく」
「もっと、もっと大きくなれって思うよね」
「ここ何年か、冬の間は暖かいお部屋からあまり出なかった」
「今年はとても気分がいい。少しくらい寒くたってお庭を散歩したくなる」
「ひなたはとても暖かくて気持ちがいいからね」
「お庭で色々な声、色々な音を聞くことができれば、寝ている時に見る夢も楽しい物になる」
「そんなことをあなたは知っていますか?」
「リス達の声をあなたは聞いたことがありますか?」
「耳をすましてごらんよ。冬の間、彼らは金沢動物園の中でよく遊んでいる。きっと楽しい声が聞こえてくるよ」
「もしあなたがリス達に会えたなら、きっと今夜はリス達の夢を見るだろう」
「僕と一緒の夢を見るんだ」
「夢の中でも僕とあなたが会えるかもしれないね」
「僕はいつものを食べるけど、あなたのお昼ごはんはどんなものですか?」
「一生懸命作ったお弁当を持ってきましたか?それとも、オセアニア売店で何かを買いましたか?」
「楽しく、美味しく食べられたのならどんなものでもいいんだ。それも動物園の楽しい思い出だ」
「金沢動物園、オセアニア区のことをみんなに好きになってもらいたい」
「ここはいいところだよ。本当にいいところだよ」
「大丈夫、あなたならきっとオセアニア区が素敵な所だってことに気がついてくれる」
「僕達に会いに来てくれたあなたなら、オセアニア区を、金沢動物園をきっと好きになってくれる」
「ありがとう」
「僕は今少し心配なことがある」
「中庭から見える所に、いつもは無い大きな箱がいくつもあるんだ」
「お姉さんたちが何かをしているところも見てしまった」
「いつもと少し違うこと、それはいつだって僕を不安にさせる」
「ただ、わくわくしてくる少し違うことだってちゃんとある」
「例えば、僕のお庭のお花のことだ」
「見上げてみれば、ミモザの蕾が大きくなってきているんだ」
「毎日少しづつ、大きくなって色がついていく」
「お花が咲く頃、また僕のお庭に来てね。一緒にミモザのお花を見よう」
「寒い冬、無理をしてはいけないけど、お部屋の中から外に出ないなんてつまらない」
「僕もなるべく頑張るよ。飼育係のお姉さんと相談しながらね」
「だから僕に会いに来てね」
「金沢動物園に来てね、オセアニア区で僕達に会いに来てね」
「冬の動物園、少し寒いけどきっと楽しいと思うんだ」
「寒くなったら“ひなた”にいくんだ。僕もそうしてる」
「夏は“ひかげ”に行こう。それがいい」
「ごめんね。そろそろお部屋に戻らなくちゃいけない」
「お腹が空いてきたし、そしてご飯を食べたらきっと眠くなる」
「だからお部屋に戻らなくちゃいけない」
「また僕達に会いに来てね」
「リス達もそのうち家に帰るだろう。また明日、また明日だね」
「約束だ。僕達にまた会いに来てね」