金沢動物園のお花たちも次の季節へと、静かに移っていきます。
ヒロキの毎日も、木陰でのんびりお昼寝シフトから、お部屋でのゴロゴロお昼寝シフトになっていくのでしょう。
少し日付をさかのぼって、今からひと月ほど前こと。
ジリジリと真夏のような日ざしが照りつけていましたが、ヒロキはお庭ですやすや。
眠りながらも、かわいくむにゃむにゃと動くヒロキの手は砂だらけ。うんと大きな穴をお昼前に掘ったようでした。
にぎやかだったオセアニア区も静かになってきた夕方近く。いつものすずめさんもやってきてヒロキが起きるのを待っています。
そして飼育員のおねえさんが、おいしそうな青草を持ってヒロキを迎えにやってきました。
それなのに…予想通りでしたがヒロキは帰らずに、ごろごろねそべったまま。まだまだおうちに帰りたくないのかもしれません。
おなかがすいて動けなかっただけなのかな、もそもそと青草を食べはじめたら、すっかり元気に立ち上がったヒロキ。
さて帰ろうね、ヒロキ。
と思ったら、お庭の点検、それも大きく掘った穴の中へ入っていくヒロキ……
そろそろとゆっくり、ひんやりした穴の様子を確かめながら、そっとそっと穴の中に入っていきます。
そしてまたすぐにUターン。さてどうやって、今日はおうちに帰ろうかな。ヒロキはぼんやり考えごとをしているようでした。
おねえさんは、坂道におちた葉っぱたちをせっせとお掃除をしています。ちらちらとそれを見るヒロキ。
坂道が終ったら、お庭のおそうじと穴埋め作業をしにおねえさんはやってくるはずです。
「そのときまでそーっとじっとしていよう。今日はとってもいい穴がほれたんだ。それをちゃんと説明しなきゃね」
さっきまでの神妙な顔はどこへやら。俄然うれしい顔になったヒロキ。
まだまだ、ヒロキはお庭でおねえさんと過ごしていたかったのかもしれません。
お部屋ですごすことになったら、それは秋までおあずけなんだもの。
こうしてヒロキは真夏のシフトが始まっていきます。
もちろん、ヒロキもお外で過ごしやすい日には、お庭に出てきてくれることでしょう。
幸いにも食欲もいつも通り、まだヒロキの体重は変わらずにいてくれているようです。
今年の夏こそ、誰もが過ごしやすい夏でありますように。