「ぼくはウォンバット、うまれたときからウォンバットだよ、当たり前だけどね」
「シカの赤ちゃんだって、うまれたときからシカだよね」
「おとなりのワラビーの小さな赤ちゃんも、うまれたときからワラビーに決まってる」
「かわいいね、本当にかわいいね」
「君は微妙だね、うまれたときはたまごだもの……」
「きみは、違うんだ。丸太くん。きみは、うまれたときは葉っぱだったんだ。ちっちゃな葉っぱだったんだ」
「それが大きく大きくなって木になった。そしてちょっと切られて……丸太くんとなってぼくのところにきてくれた」
「丸太くん、きみはいったいどこにいたの? ぼくはね、オーストラリアで生まれたんだよ。飛行機でうんと前に多摩にきたんだ」
「オーストラリアにもとってもたくさん木があったよ、きれいな不思議な形の葉っぱも見たような気がする」
「こうやって、オーストラリアのことを思い出しながら、丸太くんとおひるねをするととってもいい夢を見るんだよ」
「それは見たことがあるような、ないような景色の夢なんだ。大きな木がたくさんあるけれど、とても明るい森なんだ」
「おだやかないい風が吹いていて、きれいな色の鳥たちがやってくるのが見える……不思議に気持ちがいい夢なんだ」
「あの森はどこなんだろう。丸太くんが木だったころ、いつも見ていた景色だったんじゃないかなって、いつも目覚めて思うよ」
「丸太くんがいた森は、今でもあるんだろうか……丸太くんが夢で見せてくれる景色の場所を訪ねて行けたら…」
「丸太くんといっしょに行けたら、素敵だろうね。いつか行こうね、丸太くん。その景色がまだあるのなら」
「今日のところは、いつものぼくの庭の端っこまでいこう。そこはいつも通りのワラルー天国の景色だけれど」
「ここがちょっと難所なんだよね」
「でもこれくらい乗り越えられなきゃね、丸太くんとの旅の道はもっともっと険しいはずだから」
チューバッカは何度も何度も自慢の力強い鼻で、丸太くんをぐいぐい押します。
ちょっと持ち上がっては、戻り、そしてもう一度ぐいぐい、やっとひとやま越えることができました。
「さてひとやま越えたからね、ひとやすみしようね丸太くん。今度はぐっすり休みたいから、夢は結構だよ」
チューバッカは1986年の9月4日に多摩へやってきてくれました。
いつも変わらず、かわいいかわいい姿を私たちに見せてくれて本当にありがとう、チューバッカ。
できることなら、本当はチューバッカが生まれたふるさとを訪ねていきたいよ、チューバッカと一緒にね。
チューバッカが生まれて初めてみた景色はどんな様子だったのでしょう。
3月生まれのチューバッカ。おかあさんのポッケからのぞいた空は、どんな色の空だったのでしょう。
丸太くんの夢のように、チューバッカを抱っこしてお昼寝したら、見えるかな、チューバッカ。
* なかなかチューバッカに会いにいくことができず、今回の写真はひとつき前、8月のはじめに撮影した写真です。地獄のような暑さも切り抜けて、チューバッカは9月に入っても元気ですごしているようです。